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1章「静かな戦い」
4話「翌日」
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鐘が鳴った。
束の間の自由を告げる鐘だ。
空は青く澄んでいるけれど、ずっと向こう側は薄暗い。
「……雨、降るのかな」
こんなにも澄み切った青空なのに、どこかざわめき出しそうな危うさをはらんでる。まるでそう、長期休暇目前の、ホームルームの途中みたいだ。
「ゴールデンウィーク中とはいえ、魔法の扱いには十分注意するんだぞ。じゃあ、また連休明けになっ!」
私の独り言なんて、この浮足立った教室で誰に届くわけもなく、先生の一言で途端に降り出した。蝉時雨にも似た、ざわめきが。
「おーい、八千代(やちよ)。帰ろーぜ」
「ゴールデンウィークですよ!? 5連休です!! せっかくのお休みを無下にはできません、さっそく予定を組みましょう?」
「いいな、それ!」
こんな私にも、実は二人友達がいる。
すっごく可愛い容姿をしてるのに、しゃべり方が男勝りな茶髪と、見た目通り高貴で見た目通り日本人ではない金縦ロールだ。
「ぇ……このあと?」
「あ? なんだよ? なんか予定でもあんのか?」
「そ、それは……」
それは、昨日の夜のこと。
配信が無事に終わって、一息つくと同時に1件LINEが飛んできた。
相手はそう、かの有名な人物、川上莉子《かわかみりこ》を自称するアカウントからで、内容は学校が終わり次第彼女の自宅に集合という旨とその住所だけ。なんとも一方的だった。
「なんだ、その反応?」
「ちょ……ちょっとね」
言えるわけがない、今日はこの後川上莉子と待ち合わせをしているなんて。
そのきっかけが、今朝御茶の間を騒がせた新テレビ塔ハイジャック事件だなんて。
因むとあの事件に遭遇していたみーとぱい先生は軽傷もなかったと、ツイートがあった。よかった。
「あぁ、もしかして恋人とか?」
「ちが──」
「そうなのですか!? ではお休みの間、あまりお会いできないのでしょうか? 喜ばしいことのはずなのに……なぜでしょう、この寂しさは」
「ち、ちがうって! ちゃんと今度説明するから!」
ぱっと口を吐いたけれど、何をどうやって言ったものか、全然思いついてなどいなかった。
それなのに、涙を滲ませながら「いつ教えていただけますか?」っと。
「あー、えーっと……」
「教えていただけないのでしょうか?」
ずるい。同じ種族か疑ってしまうほど可愛い。
「あー、明日! 明日なら……大丈夫だと思う……たぶん」
「明日《あす》ですか! では明日の午後、いつものお店に集まるのはいかがでしょうか?」
「う、うん」
「午後なら俺も大丈夫だ」
そうして、一時的に事なきを得た私は、3人で帰路についた。私は駅までだけど。
教室を出て、廊下を歩き、階段を2階分下がって、靴を履き替える。
なんだかいつも以上に校内が騒がしい気がしたけれど、きっと連休のせい。
「そうなんです、明後日《あさって》は里帰りすることになってまして」
「え? まじ!? アリシアの実家? 行ってみてぇなー」
「ニッポンほど豊かではありませんが、とてもよいところですよ、エリンデル・ワイズは」
「異世界ってそんな簡単に帰れるものなんだね」
「召喚魔法を使うので簡単ではありませんが、すぐですね。2秒程です」
「学校から帰るより速い!」
なんてたわいもない話しをしながら、校門に向かってた。そんな時。
「なにあれ? すっげぇー人」
「なんだろうね、なんかのイベント?」
人だかりを横目に歩いている間にも、続々と人が集まっている。
まるでダイソン。いや、重力を操作する異能でも働いているかのような吸引力。
「あの! サイン貰っていいですか!」
「こっち向いてー!」
「キャーやばい! めちゃくちゃキレイ!」
「今俺、手振られたんだけど!」
聞こえてくる感じ、有名人でも来てるのかな。
「どなたかお越しになられているのでしょうか?」
「ゴールデンウィーク前日にか? そんな話聞いたことないって」
「でもなんか、そんな感じだねー。アリシアはともかく、修斗《しゅうと》は興味ないの?」
「芸能人なら興味あるけどさ、こんなところ来るか?」
「確かにね」
魔法使いの学校なんて、今どき珍しくもなんともない。有名な高校ならともかく、ウチには──
「あっ! 八八地《ややち》!」
時が止まった。
そう表現して差し支えない。
だって、これだけの大人数が一瞬にして静まり、駆け寄ってきた人も携帯を向けていた人もその場に止まり、あまつさえ無関係だと思い込んでいた私の足さえも、止めてしまったのだから。
束の間の自由を告げる鐘だ。
空は青く澄んでいるけれど、ずっと向こう側は薄暗い。
「……雨、降るのかな」
こんなにも澄み切った青空なのに、どこかざわめき出しそうな危うさをはらんでる。まるでそう、長期休暇目前の、ホームルームの途中みたいだ。
「ゴールデンウィーク中とはいえ、魔法の扱いには十分注意するんだぞ。じゃあ、また連休明けになっ!」
私の独り言なんて、この浮足立った教室で誰に届くわけもなく、先生の一言で途端に降り出した。蝉時雨にも似た、ざわめきが。
「おーい、八千代(やちよ)。帰ろーぜ」
「ゴールデンウィークですよ!? 5連休です!! せっかくのお休みを無下にはできません、さっそく予定を組みましょう?」
「いいな、それ!」
こんな私にも、実は二人友達がいる。
すっごく可愛い容姿をしてるのに、しゃべり方が男勝りな茶髪と、見た目通り高貴で見た目通り日本人ではない金縦ロールだ。
「ぇ……このあと?」
「あ? なんだよ? なんか予定でもあんのか?」
「そ、それは……」
それは、昨日の夜のこと。
配信が無事に終わって、一息つくと同時に1件LINEが飛んできた。
相手はそう、かの有名な人物、川上莉子《かわかみりこ》を自称するアカウントからで、内容は学校が終わり次第彼女の自宅に集合という旨とその住所だけ。なんとも一方的だった。
「なんだ、その反応?」
「ちょ……ちょっとね」
言えるわけがない、今日はこの後川上莉子と待ち合わせをしているなんて。
そのきっかけが、今朝御茶の間を騒がせた新テレビ塔ハイジャック事件だなんて。
因むとあの事件に遭遇していたみーとぱい先生は軽傷もなかったと、ツイートがあった。よかった。
「あぁ、もしかして恋人とか?」
「ちが──」
「そうなのですか!? ではお休みの間、あまりお会いできないのでしょうか? 喜ばしいことのはずなのに……なぜでしょう、この寂しさは」
「ち、ちがうって! ちゃんと今度説明するから!」
ぱっと口を吐いたけれど、何をどうやって言ったものか、全然思いついてなどいなかった。
それなのに、涙を滲ませながら「いつ教えていただけますか?」っと。
「あー、えーっと……」
「教えていただけないのでしょうか?」
ずるい。同じ種族か疑ってしまうほど可愛い。
「あー、明日! 明日なら……大丈夫だと思う……たぶん」
「明日《あす》ですか! では明日の午後、いつものお店に集まるのはいかがでしょうか?」
「う、うん」
「午後なら俺も大丈夫だ」
そうして、一時的に事なきを得た私は、3人で帰路についた。私は駅までだけど。
教室を出て、廊下を歩き、階段を2階分下がって、靴を履き替える。
なんだかいつも以上に校内が騒がしい気がしたけれど、きっと連休のせい。
「そうなんです、明後日《あさって》は里帰りすることになってまして」
「え? まじ!? アリシアの実家? 行ってみてぇなー」
「ニッポンほど豊かではありませんが、とてもよいところですよ、エリンデル・ワイズは」
「異世界ってそんな簡単に帰れるものなんだね」
「召喚魔法を使うので簡単ではありませんが、すぐですね。2秒程です」
「学校から帰るより速い!」
なんてたわいもない話しをしながら、校門に向かってた。そんな時。
「なにあれ? すっげぇー人」
「なんだろうね、なんかのイベント?」
人だかりを横目に歩いている間にも、続々と人が集まっている。
まるでダイソン。いや、重力を操作する異能でも働いているかのような吸引力。
「あの! サイン貰っていいですか!」
「こっち向いてー!」
「キャーやばい! めちゃくちゃキレイ!」
「今俺、手振られたんだけど!」
聞こえてくる感じ、有名人でも来てるのかな。
「どなたかお越しになられているのでしょうか?」
「ゴールデンウィーク前日にか? そんな話聞いたことないって」
「でもなんか、そんな感じだねー。アリシアはともかく、修斗《しゅうと》は興味ないの?」
「芸能人なら興味あるけどさ、こんなところ来るか?」
「確かにね」
魔法使いの学校なんて、今どき珍しくもなんともない。有名な高校ならともかく、ウチには──
「あっ! 八八地《ややち》!」
時が止まった。
そう表現して差し支えない。
だって、これだけの大人数が一瞬にして静まり、駆け寄ってきた人も携帯を向けていた人もその場に止まり、あまつさえ無関係だと思い込んでいた私の足さえも、止めてしまったのだから。
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