そこはかとない

第三章：黄金のゴール

数人の質問が終わると、首にチームのロゴ入りのネックストラップをかけた、きちんとした服装の男性が記者たちをスイートルームから退席させた。ただ一人、写真家だけが家族の許可を得て残り、二人の望月兄弟が初めて一緒にプレイする試合を観戦する家族の様子を記録した。

瑛士がルーキーラップのためリンクに出てくると、早めに席についていた観客たちが彼を応援して声を上げる。彼はあえてヘルメットを外して滑っているが、これは安全対策を無視しているためNHLから罰金が課されることは避けられないだろう。しかし、新人選手がヘルメットを外してルーキーラップをするのは伝統の一つだ。

瑛士のラップが終わるとすぐに、コロラド・ボルダーズとフィラデルフィア・フィーンズの選手たちがウォームアップのためリンクに現れる。桂太郎は両親が腕を伸ばしてスマホを掲げ、真一と瑛士が一緒に無人のゴールにシュート練習をしている姿を誇らしげに撮影する様子を眺めていた。

「見て、私の子供たちが！こんなに成長して……」と、母親は感極まった声で言う。

「もう子供じゃないぞ。あそこにいるのは立派な大人の男たちだ！」父親は母親の肩を抱きながら、誇らしげに言う。

ウォームアップが終わると、チームは一旦ロッカールームに戻り、場内には選手やデンバー市の様子を映し出した興奮を煽るビデオが流れ始めた。メインの照明が消え、レーザーショーが始まり、スターティングラインアップの発表に入る準備が進む。

「ボルダーズファンの皆さん、再びお迎えしましょう！」アナウンサーの声がスピーカーを通じて場内に響き渡る。ファンはビデオに興奮し、チームの登場に期待を膨らませている。

「立ち上がって大声を出してください！さあ、皆さん一緒にコロラド・ボルダーズを迎えましょう！」

スタンドからは轟音のような歓声が沸き起こる。

「知ってるだろう、皆が大好きな彼！背番号58、イーサン・ランドリー！」

オルタネートキャプテンのランドリーが青いラインまで進むと、ファンは大きな拍手で迎える。彼に続いて他のフォワードも紹介され、観客の声援が続く。

「背番号98、望月真一！」桂太郎と両親は彼が登場して観客にクールに手を振るとき、特に大きな声で叫んだ。

次々とコロラドの選手がリンクに現れ、場内のエネルギーはますます高まっていく。ディフェンス紹介で瑛士の名前が呼ばれると、桂太郎一家も周りのファンと同じく大きな声で応援の声を上げた。ゴールキーパーがリンクに入って全員揃うと、照明がさらに暗くなり、場内はほぼ真っ暗になった。

突然、二つのスポットライトが現れ、ホームチームのベンチから出てくるトンネルの周りを行き来する。バックグラウンドの低いベース音がますます速くなり、期待が高まる。

「ボルダーズファンの皆さん！もしまだ立っていなければ、立ち上がって、我らのノリストロフィー受賞者を盛大に迎えましょう！背番号8、タイ・マーテル！」

桂太郎は、これ以上場内が盛り上がることはないと思っていたが、マーテルが登場すると、歓声はさらに大きくなった。マーテルがディフェンスマンオブザイヤーに輝いたことは、コロラドのファンの心に彼が深く刻まれた理由だろう。

マーテルはヘルメットを片手に持ち、もう一方の手でファンに手を振りながらリンクに滑り出す。大画面を見て、桂太郎はファンが彼を好む理由を理解できた。チームに才能をもたらすだけでなく、照れた笑顔と赤い頬が、彼をさらに魅力的にしているのだ。やがて彼は青いラインでチームと合流し、他の選手よりも頭一つ分ほど背が高い彼が目立っていた。

場内が落ち着き、照明が元に戻るまでに少し時間がかかったが、その後はすぐに国歌斉唱が始まり、そしてセンターアイスでフェイスオフが行われ、試合がスタートした。

ランドリーがフィーンズの控えめなセンターにフェイスオフで勝ち、パックをオフェンシブゾーンに持ち込む。

最初のピリオドは白熱した展開で、激しいチェックが頻繁に行われ、観客席が揺れるほどだった。両チームの努力にもかかわらず、0-0のままでインターミッションに入った。

20分間のインターミッション中、母親がボルダーズのソーシャルメディアの企画で席を離れている間、桂太郎は父親と小話を交わすのが意外と難しいことに気付いた。

「仕事はどう？例の顧客はまだ問題を起こしてる？」と、桂太郎が父親に尋ねると、父親は質問の途中でスマホを取り出していた。

「まあ、問題はいつもあるさ。」と、ぶっきらぼうに答えた。

父親が反対に彼の仕事について尋ねるかと思っていたが、そうはならなかった。父親はスマホを操作し続け、再び話しかけることはなかった。

しばらくして母親が戻ってくると、場が和んだ。

「オリンピックでの話を聞かれたの！」母親は嬉しそうに笑顔を浮かべながら言った。

「やっと家族で一番のホッケープレイヤーが注目される日が来たわね！」母親は冗談めかして言い、席に戻る。

「素晴らしいね、お母さん！どんな話をしたの？」桂太郎は、話題が変わってくれて安心し、楽しそうに尋ねた。その後、彼らは母親が海外を旅し、アメリカ代表として金メダルを獲得した経験について話し合い、ボルダーズとフィーンズの第二ピリオドが始まった。

第二ピリオドは望月真一のゴールと瑛士のアシストで素晴らしいスタートを切った。場内とスイートルームの皆が立ち上がって歓声を上げ、ゴールホーンが鳴り響く中、他の観客からもハイタッチや祝福の言葉が飛び交った。

大画面には、満面の笑みを浮かべている桂太郎一家が映し出され、観客と一緒に拍手をしている様子が映った。その後、カメラは真一と瑛士に切り替わり、彼らがベンチを通り抜けてチームメイトから祝福の拳を受ける姿が映った。

残念ながら、フィーンズの控えめなセンターがボルダーズのゴールキーパーのグラブサイドに得点を決め、1点目の興奮は薄れていった。その後は猫とネズミのような展開で、ボトム6の選手が得点してコロラドがリードするが、すぐに相手チームが追いついて2-2となった。

第三ピリオドは第二ピリオドほど激