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白無垢
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次の日からおいちは、梅二を注意深く見ていた。顔を洗うのも、ご飯を食べるのも、着替え一つでさえもおいちは目を離さずに陰から見ていた。
おいちの中では、もしかしたら本当の梅二ではないのではと言う疑念があったからだ。
しかし、おいちの心配をよそに梅二は普段の梅二そのままだった。いつもと変わらず、物々交換で訪れた他所の村の人達と楽しそうに話をしたりして、何の変りも見せなかった。
梅二が山で行方不明になってから一か月が経とうとしていた。
これまでずっと梅二を見てきたおいちは、自分の考えが取り越し苦労だったのではないかと思っていた矢先、ゆきの家から使いがやってきた。
「おいちさんはいますかね」
身綺麗な着物を着た男で、嘘の笑顔を顔に張り付けたようないやらしい感じのする男だった。
「はい。おいちは私ですが」
「あんたがおいちさんね。ほう。噂通りの別嬪さんだね。私は武井村の山岸の家で働いてる立本と言うもんです。この度、山岸さんの一人娘ゆきさんが祝言を挙げる事になりましてね。是非、おいちさんに来ていただきたいという事で私がお迎えに上がったんです」
(本当だったんだ)
ゆきが家に来て、佐一郎と祝言を挙げると告げた日からおいちは佐一郎とは会っていない。梅二の事もありそれどころじゃなかったが、頭の片隅には常にあった問題だった。
おいちが何も言えずにいると
「お昼から始まるんですがね。一応その一時間前にはこちらに来てもらいたいんですよ。いえね、色々と準備がありますので。あ、何も持たずに来てもらって結構です。後、本当ならおいちさん一人だけという事なんですが、もしもの時の事を考えて身内から一人一緒に来てもらいたいという事なんです」
「もしもの時?」
「ええ」
立本はその張り付いた笑顔をニヤリとさせた。
「もしもの時ってなんです?」
その嫌な笑いの裏に何が隠れているのか不安になったおいちは聞いてみた。
「いやぁ、それはあなたが来れば分かる事ですよ。あ、それとこれね」
立本は自分の足元にある少し大きめの葛籠を指さした。
「これは?」
「着物一式ですよ。これを着ていらっしゃい。ちょいと山を越えるのに苦労するとは思いますが・・ま、そこはご自分で何とかしてください。じゃ、時間に遅れないように」
そう言うと立本はさっさと行ってしまった。
(着物?祝言に参加するのにわざわざこの着物を着ろと?)
おいちは何が何だか分からなかった。
「おいち。どうしたんだい?」
畑から戻ってきた母親が、玄関先で立ち尽くしているおいちを見て不思議そうに言った。
「あ、お母ちゃん」
「これは?」
見慣れない葛籠を見つけた母親は、肩にかついでいた鍬を下ろし葛籠を開ける。
「え!」
「何だい?これは!」
葛籠の中には祝言を挙げる時に着る白無垢が入っていた。しかもこれは参加する人が着る着物ではなく、祝言を挙げる本人が着るものだ。
「おいち。これは一体・・・」
母親は、驚いた表情でおいちを見るが当のおいちも驚きすぎて言葉も出ない。やっと絞り出すように出た言葉は
「知らない」
だった。
これは一大事と、母親は畑にいる父親と利一を呼びに行くと家族全員家に集められた。
家族が囲炉裏を囲み集まると、全員おいちを見る。
おいちはどこからどう説明したらいいのか分からず、黙っていた。下手に話してしまうと、あの秘密の場所の事が知れてしまうかもしれないからだ。
「おいち。アレは一体どう言う事なんだ?」
父親が口火を切った。
「・・・・・・」
「アレは白無垢だよね。姉ちゃん祝言あげるのかい?」
少し頭の足りない利一は嬉しそうにおいちに言う。
「そんなことあるものかい。私は何も聞いてないよ。どうなの?おいち」
何故か母親は少し不機嫌そうに言う。
「・・・・・・」
「おねえ。前に来たお客さんと何か繋がりがあるんじゃないの?」
流石あめだ。あめは賢い子。すぐに核心をついて来た。
「お客さん?ああ。前に来たわね。あのお客さんの事を聞こうと思っていたら、梅二がいなくなったって騒ぎがあって・・・聞きそびれちゃったのよね。あめの言う通りなの?そのお客さんに関係するの?」
「・・・・」
「おいち。どうなんだい?」
「それは・・・」
おいちが口ごもっていると
「姉ちゃんは好きな人がいるんだよ」
今まで黙って話を聞いていた梅二が口を開いた。
「梅二!」
「もう、隠せないよ」
「好きな人がいる?おいち本当か?それは誰なんだ?」
冷静に話していた父親が少し慌てた様においちにせまる。
「去年の祭りに姉ちゃん出ただろ?その時に知り合ったんだって。相手は狭山村の佐一郎兄ちゃん。俺も知ってる人さ」
「佐一郎・・・」
母親は名前を聞いてもピンとこないようだ。
「その佐一郎の事を好きだと言うのか?」
もうここまで来たらしょうがない、おいちは下を向いたまま頷いた。
「じゃあ。今まで私達に内緒で隠れて会っていたのかい?」
「・・・・・」
「あ、俺知ってる。たまに姉ちゃん昼間山に入って行ってたよね」
利一が、火に油を注ぐ様な事を言い出した。
「まあ!嫁入り前の娘が、そんな事・・・」
母親は、少しだけ顔を上気させながらおいちを見る。
おいちの家庭はそれほど裕福ではないが、母親のしつけや行儀見習いはとても厳しい所がある。
「でもさ、おねえもそろそろお嫁に行ってもいい年頃って前言ってたよね?」
「え・・それは・・・」
あめの鋭い意見に母親は口ごもる。
「それに、毎日のように他所の村からおねえ目当てに物を交換しに来るんだよ?私、おねえがその中の誰かを選ぶのかなって思ってた。ふ~ん。あのお祭りで知り合ったのね」
あめは、ニコニコしながら大人びた口調で話す。お陰で両親は何も言えなくなってしまったのか、お互いに視線をかわすと話を変えて来た。
「それにしても、問題はあの白無垢だよ。お前はその・・・」
「佐一郎兄ちゃん」
梅二が父親の助け舟を出す。
「そう。その佐一郎と祝言を挙げるのか?だから相手があれを用意したという事なのか?」
そうそこである。
「分からないの」
「分からない?だって、そこまで話は進んでいるからアレを持ってきたんだろ?」
「実は・・・」
おいちは、ゆきの訪問の事から今日来た立本の話まで全てを話した。
「え?じゃあ。祝言を挙げるのは武井村の山岸さん家のゆきさんかい?じゃあなんでおいちに白無垢なんて・・」
「だから、分からないの」
こんな奇々怪々な事柄に答えがすぐ出るわけでもなく、囲炉裏の周りに集まった五人は腕を組み唸るばかりだった。
「取り敢えず、行って見れば分かるんじゃないの?」
梅二が言う。
「行くってお前。あんな白無垢を着て村を歩いてごらんよ。大騒ぎになるよ」
母親が慌てる。
「そうよ。行かないと分からないよ。ここで皆で考えてもしょうがないし、取り敢えず行った方がいいと思う。それに気になる事があるじゃない」
「なに?」
「何って、お父ちゃんおねえの話聞いていなかったの?今日うちに来た立本って男の人が言った「もしもの時」の事よ。もしもの時の事を考えて身内から一人連れて来いって言ったんでしょ?凄く気にならない?」
あめの冷静な頭に、おいちは感心した。
「確かに」
「もしもの時って、何なのかしらね。でもよく考えてみるとおかしな話よね。他の村の事だとしても、誰かが祝言を挙げるだとか、葬式があるだとかは必ず話が回るでしょ?なのに、今回の話は誰も知らないわよ。知っていれば誰かしら騒ぐはずだから」
「確かに」
父親は同じ言葉を繰り返しながら頭をひねっている。
「早く支度したほうがいいんじゃない?あの着物着て山を越えるのは大変だよ?」
「でも・・・」
母親は、難しい顔をしている父親の方を見た。
「・・・よし。準備して行ってみよう。あめの言う通り行けば何か分かるかもしれない」
「じゃあ。俺が行く」
「え?梅二が?」
「うん。俺、佐一郎兄ちゃんの事は姉ちゃんより知ってるつもりさ。なんで、姉ちゃんじゃなくてゆきさんを選んだのか聞いてみたいから」
「でも、付き添いが弟で大丈夫かしら」
「身内から一人って言ったんだろ?親とは言ってないから大丈夫だよ。母ちゃん。俺の一番いい着物出して」
「あ・・ハイハイ」
一番幼いあめの意見が通った話し合いは、この後のてんてこ舞いの準備に繋がった。
おいちは、自分がどう動いていいのか分からないまま人形のように固まり母親がその固まったおいちにテキパキと白無垢を着せて行く。
梅二も、一張羅の着物を着てご満悦である。
「さ、出来たよ」
角隠しを被り、白無垢を着たおいちが囲炉裏の周りで待っている家族の前に出された。おいちを見た家族は一様にため息を漏らす。
元々、美しいおいちが純白の白無垢を着た事によりその美しさがより一層引き出された感じだ。
「おねえ。とっても綺麗」
「本当だ。姉ちゃんじゃないみたいだ」
「うん。綺麗だ」
「・・・・・」
それぞれに、感想を言うが父親だけは何とも言い難い表情をしただけで何も言わなかった。
「じゃ、もう行った方がいいよね。でもどうやって山超えるの?姉ちゃんの恰好じゃ難しくない?」
「山の入口までは、荷車に乗せて行こう。おいちと梅二には何か布を被せればいいだろう。村の人達に見られないようにな。利一行けるか?」
「任せとき」
「問題は、山越えだな」
「狭山村方向の山なら詳しいけど、武井村の方の山は俺はあまり詳しくないな」
「道は出来ているから、そんなに険しくはないと思うけどただ、凄い坂道なのよ。登りも下りも結構きついわよ」
「大丈夫?姉ちゃん」
七五三のような格好をした梅二が心配そうにおいちに聞く。
「うん。頑張ってみる」
この時にはもうおいちも行く覚悟が出来ていた。
「よし、じゃあ用意しよう」
家族の協力で、あっという間に荷車の上に二人を乗せると誰にもわからないように筵を掛けた。
おいちの中では、もしかしたら本当の梅二ではないのではと言う疑念があったからだ。
しかし、おいちの心配をよそに梅二は普段の梅二そのままだった。いつもと変わらず、物々交換で訪れた他所の村の人達と楽しそうに話をしたりして、何の変りも見せなかった。
梅二が山で行方不明になってから一か月が経とうとしていた。
これまでずっと梅二を見てきたおいちは、自分の考えが取り越し苦労だったのではないかと思っていた矢先、ゆきの家から使いがやってきた。
「おいちさんはいますかね」
身綺麗な着物を着た男で、嘘の笑顔を顔に張り付けたようないやらしい感じのする男だった。
「はい。おいちは私ですが」
「あんたがおいちさんね。ほう。噂通りの別嬪さんだね。私は武井村の山岸の家で働いてる立本と言うもんです。この度、山岸さんの一人娘ゆきさんが祝言を挙げる事になりましてね。是非、おいちさんに来ていただきたいという事で私がお迎えに上がったんです」
(本当だったんだ)
ゆきが家に来て、佐一郎と祝言を挙げると告げた日からおいちは佐一郎とは会っていない。梅二の事もありそれどころじゃなかったが、頭の片隅には常にあった問題だった。
おいちが何も言えずにいると
「お昼から始まるんですがね。一応その一時間前にはこちらに来てもらいたいんですよ。いえね、色々と準備がありますので。あ、何も持たずに来てもらって結構です。後、本当ならおいちさん一人だけという事なんですが、もしもの時の事を考えて身内から一人一緒に来てもらいたいという事なんです」
「もしもの時?」
「ええ」
立本はその張り付いた笑顔をニヤリとさせた。
「もしもの時ってなんです?」
その嫌な笑いの裏に何が隠れているのか不安になったおいちは聞いてみた。
「いやぁ、それはあなたが来れば分かる事ですよ。あ、それとこれね」
立本は自分の足元にある少し大きめの葛籠を指さした。
「これは?」
「着物一式ですよ。これを着ていらっしゃい。ちょいと山を越えるのに苦労するとは思いますが・・ま、そこはご自分で何とかしてください。じゃ、時間に遅れないように」
そう言うと立本はさっさと行ってしまった。
(着物?祝言に参加するのにわざわざこの着物を着ろと?)
おいちは何が何だか分からなかった。
「おいち。どうしたんだい?」
畑から戻ってきた母親が、玄関先で立ち尽くしているおいちを見て不思議そうに言った。
「あ、お母ちゃん」
「これは?」
見慣れない葛籠を見つけた母親は、肩にかついでいた鍬を下ろし葛籠を開ける。
「え!」
「何だい?これは!」
葛籠の中には祝言を挙げる時に着る白無垢が入っていた。しかもこれは参加する人が着る着物ではなく、祝言を挙げる本人が着るものだ。
「おいち。これは一体・・・」
母親は、驚いた表情でおいちを見るが当のおいちも驚きすぎて言葉も出ない。やっと絞り出すように出た言葉は
「知らない」
だった。
これは一大事と、母親は畑にいる父親と利一を呼びに行くと家族全員家に集められた。
家族が囲炉裏を囲み集まると、全員おいちを見る。
おいちはどこからどう説明したらいいのか分からず、黙っていた。下手に話してしまうと、あの秘密の場所の事が知れてしまうかもしれないからだ。
「おいち。アレは一体どう言う事なんだ?」
父親が口火を切った。
「・・・・・・」
「アレは白無垢だよね。姉ちゃん祝言あげるのかい?」
少し頭の足りない利一は嬉しそうにおいちに言う。
「そんなことあるものかい。私は何も聞いてないよ。どうなの?おいち」
何故か母親は少し不機嫌そうに言う。
「・・・・・・」
「おねえ。前に来たお客さんと何か繋がりがあるんじゃないの?」
流石あめだ。あめは賢い子。すぐに核心をついて来た。
「お客さん?ああ。前に来たわね。あのお客さんの事を聞こうと思っていたら、梅二がいなくなったって騒ぎがあって・・・聞きそびれちゃったのよね。あめの言う通りなの?そのお客さんに関係するの?」
「・・・・」
「おいち。どうなんだい?」
「それは・・・」
おいちが口ごもっていると
「姉ちゃんは好きな人がいるんだよ」
今まで黙って話を聞いていた梅二が口を開いた。
「梅二!」
「もう、隠せないよ」
「好きな人がいる?おいち本当か?それは誰なんだ?」
冷静に話していた父親が少し慌てた様においちにせまる。
「去年の祭りに姉ちゃん出ただろ?その時に知り合ったんだって。相手は狭山村の佐一郎兄ちゃん。俺も知ってる人さ」
「佐一郎・・・」
母親は名前を聞いてもピンとこないようだ。
「その佐一郎の事を好きだと言うのか?」
もうここまで来たらしょうがない、おいちは下を向いたまま頷いた。
「じゃあ。今まで私達に内緒で隠れて会っていたのかい?」
「・・・・・」
「あ、俺知ってる。たまに姉ちゃん昼間山に入って行ってたよね」
利一が、火に油を注ぐ様な事を言い出した。
「まあ!嫁入り前の娘が、そんな事・・・」
母親は、少しだけ顔を上気させながらおいちを見る。
おいちの家庭はそれほど裕福ではないが、母親のしつけや行儀見習いはとても厳しい所がある。
「でもさ、おねえもそろそろお嫁に行ってもいい年頃って前言ってたよね?」
「え・・それは・・・」
あめの鋭い意見に母親は口ごもる。
「それに、毎日のように他所の村からおねえ目当てに物を交換しに来るんだよ?私、おねえがその中の誰かを選ぶのかなって思ってた。ふ~ん。あのお祭りで知り合ったのね」
あめは、ニコニコしながら大人びた口調で話す。お陰で両親は何も言えなくなってしまったのか、お互いに視線をかわすと話を変えて来た。
「それにしても、問題はあの白無垢だよ。お前はその・・・」
「佐一郎兄ちゃん」
梅二が父親の助け舟を出す。
「そう。その佐一郎と祝言を挙げるのか?だから相手があれを用意したという事なのか?」
そうそこである。
「分からないの」
「分からない?だって、そこまで話は進んでいるからアレを持ってきたんだろ?」
「実は・・・」
おいちは、ゆきの訪問の事から今日来た立本の話まで全てを話した。
「え?じゃあ。祝言を挙げるのは武井村の山岸さん家のゆきさんかい?じゃあなんでおいちに白無垢なんて・・」
「だから、分からないの」
こんな奇々怪々な事柄に答えがすぐ出るわけでもなく、囲炉裏の周りに集まった五人は腕を組み唸るばかりだった。
「取り敢えず、行って見れば分かるんじゃないの?」
梅二が言う。
「行くってお前。あんな白無垢を着て村を歩いてごらんよ。大騒ぎになるよ」
母親が慌てる。
「そうよ。行かないと分からないよ。ここで皆で考えてもしょうがないし、取り敢えず行った方がいいと思う。それに気になる事があるじゃない」
「なに?」
「何って、お父ちゃんおねえの話聞いていなかったの?今日うちに来た立本って男の人が言った「もしもの時」の事よ。もしもの時の事を考えて身内から一人連れて来いって言ったんでしょ?凄く気にならない?」
あめの冷静な頭に、おいちは感心した。
「確かに」
「もしもの時って、何なのかしらね。でもよく考えてみるとおかしな話よね。他の村の事だとしても、誰かが祝言を挙げるだとか、葬式があるだとかは必ず話が回るでしょ?なのに、今回の話は誰も知らないわよ。知っていれば誰かしら騒ぐはずだから」
「確かに」
父親は同じ言葉を繰り返しながら頭をひねっている。
「早く支度したほうがいいんじゃない?あの着物着て山を越えるのは大変だよ?」
「でも・・・」
母親は、難しい顔をしている父親の方を見た。
「・・・よし。準備して行ってみよう。あめの言う通り行けば何か分かるかもしれない」
「じゃあ。俺が行く」
「え?梅二が?」
「うん。俺、佐一郎兄ちゃんの事は姉ちゃんより知ってるつもりさ。なんで、姉ちゃんじゃなくてゆきさんを選んだのか聞いてみたいから」
「でも、付き添いが弟で大丈夫かしら」
「身内から一人って言ったんだろ?親とは言ってないから大丈夫だよ。母ちゃん。俺の一番いい着物出して」
「あ・・ハイハイ」
一番幼いあめの意見が通った話し合いは、この後のてんてこ舞いの準備に繋がった。
おいちは、自分がどう動いていいのか分からないまま人形のように固まり母親がその固まったおいちにテキパキと白無垢を着せて行く。
梅二も、一張羅の着物を着てご満悦である。
「さ、出来たよ」
角隠しを被り、白無垢を着たおいちが囲炉裏の周りで待っている家族の前に出された。おいちを見た家族は一様にため息を漏らす。
元々、美しいおいちが純白の白無垢を着た事によりその美しさがより一層引き出された感じだ。
「おねえ。とっても綺麗」
「本当だ。姉ちゃんじゃないみたいだ」
「うん。綺麗だ」
「・・・・・」
それぞれに、感想を言うが父親だけは何とも言い難い表情をしただけで何も言わなかった。
「じゃ、もう行った方がいいよね。でもどうやって山超えるの?姉ちゃんの恰好じゃ難しくない?」
「山の入口までは、荷車に乗せて行こう。おいちと梅二には何か布を被せればいいだろう。村の人達に見られないようにな。利一行けるか?」
「任せとき」
「問題は、山越えだな」
「狭山村方向の山なら詳しいけど、武井村の方の山は俺はあまり詳しくないな」
「道は出来ているから、そんなに険しくはないと思うけどただ、凄い坂道なのよ。登りも下りも結構きついわよ」
「大丈夫?姉ちゃん」
七五三のような格好をした梅二が心配そうにおいちに聞く。
「うん。頑張ってみる」
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