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独り立ち
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次の日は、梅二の独り立ちを祝っているかのような雲一つない晴天だった。
朝から母親は、梅二に持たせるための服や握り飯などの準備に忙しそうに動いている。
梅二も出かける支度をしていた。
「梅ちゃん」
あめは、少し悲しそうな顔をしながら梅二を見ている。
「なんだい?」
「寂しくなるね」
「そうだね」
「帰って来る?」
「・・・・立派になって帰って来るよ」
「そう」
頭のいいあめの事だ。こんなありきたりの言葉では納得しないことも梅二は知っている。
「あめ。母ちゃんの手伝いをしっかりやるんだぞ」
「うん・・・梅ちゃん」
「なんだい?」
「雄一郎は誰なの?」
梅二はドキリとした。
「何でそんなこと言うんだい?」
「だって、姉ちゃんが産んだ時と違う匂いがするんだよ」
そう言えば、あめはおいちのお産の時どうしても産まれたばかりの赤子が見たいと言って母親の側にいた。しかし、匂いとはどういうことだろう。
「違う匂いって、どんな匂いがするんだい?」
「お母ちゃんが姉ちゃんの赤ん坊を産湯にいれてる時は、姉ちゃんの匂いがしたんだ。でも今の赤ん坊・・・雄一郎は違う。泥のような、雨の日の外の匂いのような・・」
「姉ちゃんの匂いか・・・そうか。あめ、いいかい」
梅二はあめの頭を撫でながら
「俺は必ず帰って来る。その時にあめに今までの事全部話してやる」
あめは梅二の目をジッと見ていたが、ニコリと笑うと
「うん」
と頷き母親の所へと言った。
(自分の妹ながら不思議な子供だ。今まで匂いの事なんて一言も言ってなかった。女にはそう言う事が分かるのだろうか)
梅二は不思議に思ったが、深く考える事もなく旅立ちの準備を再開した。
「気を付けてね」
「何かあったらすぐに戻るんだよ」
「俺より立派になって戻って来るなよ」
三人は、大きな風呂敷を背負い玄関先に立つ梅二に、思い思いの言葉をかけた。父親の姿はない。今日の朝早くからどこかに行っているのか。家にはいなかった。
「じゃ、元気で」
梅二は深々と頭を下げると、振り返る事もなく家を後にした。
朝から母親は、梅二に持たせるための服や握り飯などの準備に忙しそうに動いている。
梅二も出かける支度をしていた。
「梅ちゃん」
あめは、少し悲しそうな顔をしながら梅二を見ている。
「なんだい?」
「寂しくなるね」
「そうだね」
「帰って来る?」
「・・・・立派になって帰って来るよ」
「そう」
頭のいいあめの事だ。こんなありきたりの言葉では納得しないことも梅二は知っている。
「あめ。母ちゃんの手伝いをしっかりやるんだぞ」
「うん・・・梅ちゃん」
「なんだい?」
「雄一郎は誰なの?」
梅二はドキリとした。
「何でそんなこと言うんだい?」
「だって、姉ちゃんが産んだ時と違う匂いがするんだよ」
そう言えば、あめはおいちのお産の時どうしても産まれたばかりの赤子が見たいと言って母親の側にいた。しかし、匂いとはどういうことだろう。
「違う匂いって、どんな匂いがするんだい?」
「お母ちゃんが姉ちゃんの赤ん坊を産湯にいれてる時は、姉ちゃんの匂いがしたんだ。でも今の赤ん坊・・・雄一郎は違う。泥のような、雨の日の外の匂いのような・・」
「姉ちゃんの匂いか・・・そうか。あめ、いいかい」
梅二はあめの頭を撫でながら
「俺は必ず帰って来る。その時にあめに今までの事全部話してやる」
あめは梅二の目をジッと見ていたが、ニコリと笑うと
「うん」
と頷き母親の所へと言った。
(自分の妹ながら不思議な子供だ。今まで匂いの事なんて一言も言ってなかった。女にはそう言う事が分かるのだろうか)
梅二は不思議に思ったが、深く考える事もなく旅立ちの準備を再開した。
「気を付けてね」
「何かあったらすぐに戻るんだよ」
「俺より立派になって戻って来るなよ」
三人は、大きな風呂敷を背負い玄関先に立つ梅二に、思い思いの言葉をかけた。父親の姿はない。今日の朝早くからどこかに行っているのか。家にはいなかった。
「じゃ、元気で」
梅二は深々と頭を下げると、振り返る事もなく家を後にした。
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