惑わし

玉城真紀

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後藤

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外はもう真っ暗だった。
雪はさほど降らなかったらしく、申し訳程度に外の景色を白くしているだけだった。
俺はなるべくゆっくり歩いた。風を切ると寒さが余計身に染みるからだ。
(もう何時ぐらいなんだ?)
空を見上げるが、星も月も何も出ていない。雪が降っているせいかやけに白く周りも明るく感じる。
サクサクと足音を立てながら立花の家に向かう。
「こんばんは」
「わっ」
不意に声を掛けられた俺は派手に驚いてしまった。
「あ、すみません驚かすつもりはなかったんです」
見ると後藤が長い首を低くしながら俺の方へ近づいてくる。
「あ、いえ。後藤さんでしたか。こんばんは。寒いですね」
驚いてしまったのがちょっと恥ずかしくなった俺は、何とか平静になろうと形式的な挨拶をした。
「あの、田中さんの家に新しい方が住む事になったって聞いてんですが」
「ええ。あんなに若いのにね。俺も突然立花が連れて来たんで困ってるんですよ」
それに関しては、少し愚痴めいた口調になってしまう。
「そうですね。まだ若い方でしたね。私の所にも挨拶に来たんですよ。私の家は空いてる部屋があるのでそこを使ったらどうかと言ったんですが、立花さんが「田中さんの家の方に行くから大丈夫」って言ったもんでね」
その時思い出した。
俺が後藤さんの家はどうかと言った時の立花の慌てよう。もしかしたらこの男・・・
「そうなんです。俺の家も落ち着いたし使ってない部屋があるので大丈夫なんですよ」
さっき言った事とは違うニュアンスになってしまうが、ここは立花の話に合わせた。
「そうですか。何か困った事があったら言ってくださいね」
そう言うと後藤は家の方へ戻って行った。
(アイツ。こんな寒い夜に何やってたんだ?まさか俺を待ってたわけでもないだろうし。こんな夜でも散歩するのか?)
少し気味の悪さを感じた俺は、早足にその場を通り過ぎた。
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