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影
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立花の家から、ほのかに窓から明かりが漏れている。
俺は一応玄関をノックし
「こんばんは」
と声を掛けた。
すると、中でガタガタと何かを倒すような音が聞こえる。暫くすると、何やら慌てた様子の立花が玄関を開けた。
人は、何かを見られたくない事や知られたくないものを隠した後、やけに笑顔で人と接することを俺は知っている。
まさに今の立花がそうだ。
しかし俺には関係のない事。
「こんばんは。ちょっといいかな」
「あ・・・うん大丈夫だよ。入って」
見られたくないものがあるのだろうか。何をしていたんだ?
部屋に入った俺は関係ないと思いつつも何となく全体を見回してみる。特に変わったところはないか・・・
?
テーブルの上に紙コップが二つある。誰かがいたという事か。だが、その誰かの姿は今は見えない。俺はソレに気がつかないふりをしながら
「悪いんだけど、ストーブ余ってないかな。持ってきてくれたストーブあのちひろちゃんに使ってもらう事にしたんだけど。俺が寒くてさ。流石に部屋を開けて使う訳にもいかないだろ?」
「ああ。そうだよね。そこまで考えなかったよ。え~と・・じゃあこれ持って行ってよ」
と、立花は自分の部屋で使っているストーブを指さした。
「でもこれはお前が使ってるんだろ?この寒さだ。ストーブなしで寝たりしたら死んじまうぞ?」
自殺しようとした俺が言う言葉でもないが、人の事は心配するようだ。
「大丈夫。俺意外に強いから」
訳の分からない事を言う立花に
「そんなの理由にならないよ。俺が借りたせいでお前が死んだなんてなったら困るから、そのストーブはいらないよ。ストーブがなければ布団でもいいんだ。それにくるまって寝るから」
「ああ。布団ね。布団ならたくさんあるよ。そうだ!ちひろちゃんの布団も持っていかなくちゃね。忘れてたよ」
色々と、忘れっぽい奴らしい。
立花は、例の二つ並んだドアの方へ行き右側のドアを開けた。
右側の部屋は見た事がない。左側の部屋は、俺の部屋そっくりだったが右の部屋は・・
気になった俺は立花がドアを開けた瞬間に中を覗き込むように首を伸ばした。
!
立花が部屋の中に入ろうとした時、暗い部屋の中で何かが動いたのが分かった。シルエットからして人だ。その影は俺から見えない位置にサッと隠れるようにして消える。
「どのくらい必要かな」
何枚もの布団を抱えた立花が開け放たれた部屋から出てくる。
「立花・・・今」
「え?何?」
立花は先程の影に気がついてないのか、それとも知っていてとぼけているのか、どちらとも言えない表情で俺を不思議そうに見る。
「・・・いや。何でもない」
俺は気になりながらも、立花が出してくれた布団を抱え家に持って行った。結構な数の布団だったので立花と一緒に二往復もしてしまった。
これだけの数の布団を何処で手にいれたのか普通だったら不思議に思う所だが、その時の俺は、立花が支給係として定着していたので左程不思議に思わなかった。
「これで足りるかな。又何かあったら言ってよ」
「ああ。ありがとう」
家に布団を運び終えた俺達は、少しだけ息を切らせながら言った。
立花が帰り、俺は持ってきた布団を自分の部屋へ運び自分の分とちひろの分とに分けると、和室の方に行き一応襖をノックする。
「ちひろちゃん。布団を持ってきたんだけど」
「すみません」
中から衣擦れの音とちひろの小さな声がする。
引き戸を開けたちひろは、頬がピンク色に染まっていた。それと同時に暖かい空気が外に漏れてくる。どうやら締め切った状態でストーブを使っていたのだろう。
「ちひろちゃん。寒いのは分かるんだけど一酸化炭素中毒にでもなったら大変だから換気は必ずしてね」
「あ・・すみません。気を付けます」
少し頭を下げ謝るちひろに布団を渡し俺も部屋に戻った。
元は廃墟の家。気密性などないこの家は隙間風に苦労する。その辺りも考え修繕したのだが、所詮素人作業。ちひろに換気をするようにと注意したことが恥ずかしくなるくらい寒かった。
俺は夕食を取る事も忘れ早々と布団にくるまった。
「あ~寒い。これ本当にあったまるのか?」
布団の機能までも疑い出した時
「すみません」
ちひろだ。
俺はガバッと起き上がり声のする方へ行く。
ちひろは、俺の部屋の前にいた。引き戸を開けたらすぐ目の前にいたので驚いてしまった。
「な、何?どうかした?」
「あの。ストーブ何ですけど・・・ここに置いてはどうですか?」
ちひろは、廊下を指さした。その辺りは俺がいる部屋とちひろがいる部屋のちょうど中間辺り。もしかしたら気を使ってくれたのかもしれない。
「大丈夫だよ。ちひろちゃんが風邪ひいたら大変だから遠慮なく使いな」
「いえ。ここに厄介になる身ですから。田中さんも風邪ひいたら大変です。外よりは十分暖かいですし。持ってくるの手伝ってもらえますか?」
「本当にいいの?」
「はい」
ちひろはニコリと笑った。
その時初めて知った。左側に八重歯がある。
「じゃあ。この辺りに置こうか」
なるべくちひろの部屋の近くにストーブを置いた。
嬉しかった。
今日初めて会った他人とは言え、久しぶりに自分を心配してくれる言葉を聞いたからだ。
廊下でカンカンと燃えるストーブを確認し、俺達はそれぞれの部屋へ戻った。
さっき、布団の機能を疑った俺だったが心なしかとても暖かく感じた。
俺は一応玄関をノックし
「こんばんは」
と声を掛けた。
すると、中でガタガタと何かを倒すような音が聞こえる。暫くすると、何やら慌てた様子の立花が玄関を開けた。
人は、何かを見られたくない事や知られたくないものを隠した後、やけに笑顔で人と接することを俺は知っている。
まさに今の立花がそうだ。
しかし俺には関係のない事。
「こんばんは。ちょっといいかな」
「あ・・・うん大丈夫だよ。入って」
見られたくないものがあるのだろうか。何をしていたんだ?
部屋に入った俺は関係ないと思いつつも何となく全体を見回してみる。特に変わったところはないか・・・
?
テーブルの上に紙コップが二つある。誰かがいたという事か。だが、その誰かの姿は今は見えない。俺はソレに気がつかないふりをしながら
「悪いんだけど、ストーブ余ってないかな。持ってきてくれたストーブあのちひろちゃんに使ってもらう事にしたんだけど。俺が寒くてさ。流石に部屋を開けて使う訳にもいかないだろ?」
「ああ。そうだよね。そこまで考えなかったよ。え~と・・じゃあこれ持って行ってよ」
と、立花は自分の部屋で使っているストーブを指さした。
「でもこれはお前が使ってるんだろ?この寒さだ。ストーブなしで寝たりしたら死んじまうぞ?」
自殺しようとした俺が言う言葉でもないが、人の事は心配するようだ。
「大丈夫。俺意外に強いから」
訳の分からない事を言う立花に
「そんなの理由にならないよ。俺が借りたせいでお前が死んだなんてなったら困るから、そのストーブはいらないよ。ストーブがなければ布団でもいいんだ。それにくるまって寝るから」
「ああ。布団ね。布団ならたくさんあるよ。そうだ!ちひろちゃんの布団も持っていかなくちゃね。忘れてたよ」
色々と、忘れっぽい奴らしい。
立花は、例の二つ並んだドアの方へ行き右側のドアを開けた。
右側の部屋は見た事がない。左側の部屋は、俺の部屋そっくりだったが右の部屋は・・
気になった俺は立花がドアを開けた瞬間に中を覗き込むように首を伸ばした。
!
立花が部屋の中に入ろうとした時、暗い部屋の中で何かが動いたのが分かった。シルエットからして人だ。その影は俺から見えない位置にサッと隠れるようにして消える。
「どのくらい必要かな」
何枚もの布団を抱えた立花が開け放たれた部屋から出てくる。
「立花・・・今」
「え?何?」
立花は先程の影に気がついてないのか、それとも知っていてとぼけているのか、どちらとも言えない表情で俺を不思議そうに見る。
「・・・いや。何でもない」
俺は気になりながらも、立花が出してくれた布団を抱え家に持って行った。結構な数の布団だったので立花と一緒に二往復もしてしまった。
これだけの数の布団を何処で手にいれたのか普通だったら不思議に思う所だが、その時の俺は、立花が支給係として定着していたので左程不思議に思わなかった。
「これで足りるかな。又何かあったら言ってよ」
「ああ。ありがとう」
家に布団を運び終えた俺達は、少しだけ息を切らせながら言った。
立花が帰り、俺は持ってきた布団を自分の部屋へ運び自分の分とちひろの分とに分けると、和室の方に行き一応襖をノックする。
「ちひろちゃん。布団を持ってきたんだけど」
「すみません」
中から衣擦れの音とちひろの小さな声がする。
引き戸を開けたちひろは、頬がピンク色に染まっていた。それと同時に暖かい空気が外に漏れてくる。どうやら締め切った状態でストーブを使っていたのだろう。
「ちひろちゃん。寒いのは分かるんだけど一酸化炭素中毒にでもなったら大変だから換気は必ずしてね」
「あ・・すみません。気を付けます」
少し頭を下げ謝るちひろに布団を渡し俺も部屋に戻った。
元は廃墟の家。気密性などないこの家は隙間風に苦労する。その辺りも考え修繕したのだが、所詮素人作業。ちひろに換気をするようにと注意したことが恥ずかしくなるくらい寒かった。
俺は夕食を取る事も忘れ早々と布団にくるまった。
「あ~寒い。これ本当にあったまるのか?」
布団の機能までも疑い出した時
「すみません」
ちひろだ。
俺はガバッと起き上がり声のする方へ行く。
ちひろは、俺の部屋の前にいた。引き戸を開けたらすぐ目の前にいたので驚いてしまった。
「な、何?どうかした?」
「あの。ストーブ何ですけど・・・ここに置いてはどうですか?」
ちひろは、廊下を指さした。その辺りは俺がいる部屋とちひろがいる部屋のちょうど中間辺り。もしかしたら気を使ってくれたのかもしれない。
「大丈夫だよ。ちひろちゃんが風邪ひいたら大変だから遠慮なく使いな」
「いえ。ここに厄介になる身ですから。田中さんも風邪ひいたら大変です。外よりは十分暖かいですし。持ってくるの手伝ってもらえますか?」
「本当にいいの?」
「はい」
ちひろはニコリと笑った。
その時初めて知った。左側に八重歯がある。
「じゃあ。この辺りに置こうか」
なるべくちひろの部屋の近くにストーブを置いた。
嬉しかった。
今日初めて会った他人とは言え、久しぶりに自分を心配してくれる言葉を聞いたからだ。
廊下でカンカンと燃えるストーブを確認し、俺達はそれぞれの部屋へ戻った。
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