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私は、イライラしながら内山家を出た。
「何だって言うんだい。みんなして私を無視して・・・・・・」
自分の家の方に戻りながら、引っかかっている事を思い出した。おかしいことばかりだ。立ち止まりよく考えてみる。内山夫婦は私に気がついてない。内山さんの頭を殴りつけた時自分の手はすり抜けてしまった。これは一体・・・・・・
確か今日は、買い物に行くために車を出し運転していた。それで・・・・・・それであの道で・・・・・・
「あ!!猫!そうだ猫が飛び出してきて」
私は無類の猫好きである。野良猫であろうと飼い猫であろうと、猫を見かけると必ず近寄って可愛がる。いつ猫と会ってもいいように猫の餌を小さな袋に入れて携帯しているぐらいなのだ。しかし、息子がアレルギーを持っているので家では猫が飼えない。早く一人暮らしでも、結婚でもして家を出てくれないか。そうすれば猫が飼えるのにと日頃から思っていた。
「そうそう。あの猫ちゃん大丈夫だったかしら。気になる。行ってみよう」
私は、車に乗ろうと自分の車を探したがどこにもない。
「あら?私の車がない。ったく。あの子が乗っていったのかしら?自分の車があるくせに!」
仕方がないので歩くことにした。
暫く歩いていると前から犬を散歩させている近所の人が歩いてくる。
「あ!そうだ。あの人に100円貸してたんだっけ。返してもらわなくちゃ」
私はその人に向かってずんずんと歩いていく。
「ちょっとあんた!」
私が声をかけた時だ。その人が散歩させている犬が私に向かって勢いよく吠え出したのだ。
この犬は、普段私に凄くなついていた。吠えられたことも一度もない。
「なになに。私よ」
犬をなだめるように言うが、犬は牙をむき出しにして私に吠え続ける。
「ふん。バカ犬。前から気に入らないと思ってたのよ。もういいよ!」
吠え続ける犬を懸命になだめている飼い主をやり過ごし、私は歩きだした。
「歩いてあの場所まで行くのは大変だねぇ。バスか何かで行こうかな」
しかし、カバンも財布も持っていないのに気づき、あきらめて歩き続ける。結構な距離を歩き続けたが、不思議と疲れない。
「私もまだ若いからね。このぐらいの距離何てことないのかもね」
機嫌よく歩いていた時、前方に高校生ぐらいのカップルが歩いてくるのに気がついた。
細い歩道を二人並んで歩いてくるので、このまま歩くとどちらかが譲らないとぶつかってしまう。もちろん私は譲る気なんてさらさらない。
「若い方が譲るもんなんだよ」
私は、何か言われた時に言うセリフをすでに口にしていた。段々と距離が近づいてくる。カップルは話がはずんでいるのか楽しそうに二人で話している。その時気がついた。女の方がやけに暗いのだ。まるで、暗い部屋の中にいる人を見ているみたいに。隣の男はそんなことはない。私は、その女の方を気にしながらも二人との距離が目と鼻の先まで近づく。
私は構わずに歩いた。そして・・・・・・ぶつかる・・・・・・
「きゃ!」
「あれ?」
女と私の声は同時に出た。
男の方は不思議そうに
「なに?どうしたの?」
と女の方に聞いている。
私はゆっくりと振り返った。振り返ると女の方と目が合った。女もこちらを振り返って私を見ている。その顔は恐ろしいものを見たかのように引きつっていた。
きっと女は見たんだろう。私が男とぶつかることなくすり抜けてしまったのを。
おびえながら私を見ている女をよそに、私は歩き出した。何となくその場にいたらいけない気がしたのだ。
今のはなんだ?・・・・・・
暫く歩いて後ろを振り向いてみた。もう、あのカップルは見えなくなっている。
「不思議だわ。私がおかしいのか。周りがおかしいのか」
首をひねりながら考えた。
「あら?もう着いた」
考えながら歩いていたせいなのか、あっという間に目的の場所に着いた。
そこには、猫の死体も何もなかった。
「あ~良かった。あの猫ちゃん大丈夫だった見たいね。ん?」
反対車線の方に目をやると、大きな木が今にも倒れそうになっており、それを作業服を着た人たちがクレーンを使って何とかしようと頑張っていた。
「あら~。雷でも落ちたのかしら?」
好奇心は人一倍なので、反対側に回り見物に行く。暇そうな見物人の近くに行くと、その人たちが話しているのが聞こえてきた。
「凄い事故だったんですよ。どか~んとね。俺ぁ何か爆発したのかと思ったね」
「へ~。で、車に乗っていた人は大丈夫だったのかな?」
「いや~。駄目だと思うよ。あれじゃあ」
見た事を思い出したのか、腕をさすりながら肩をすくめ話している。
「ふ~ん。事故があったのね」
その時だ。フラッシュバックのようにこの場で起きた事が頭の中に蘇ってきた。前の車を抜いた時に飛び出してきた猫の顔。それを避けた後目の前に迫る大木。
「・・・・・・」
私はふらふらとその場から離れた。
気がつくと辺りは暗くなっており、いつの間にか自宅の前に立っていた。無意識のうちに家に帰ってきたらしい。帰巣本能とは恐ろしい。こんなに信じられないショックを受けているのにもかかわらずちゃんと家には戻るのだから。
私は、家に入ろうとドアノブを掴んだ。
カチャと開く。鍵がかかっていない。家の中は真っ暗だ。息子はどこにいるのか。車はあったから家にいるはずだが。私は二階の息子の部屋へ向かう。
いない。
急にさみしくなった。こんな気持ちになったのは初めて猫が死んでいるのを見た時以来だ。
「どこにいったんだか。全く!」
急に一人ぼっちになったさみしさに押しつぶされそうになりながらも
「ふ、ふん。なんだいなんだい。人間はね。いずれ一人ぼっちになるのさ」
強がりと分かりながらも言葉に出してみる。言葉にすることで気持ちが変わると思ったのだ。しかし、何も変わらなかった。
息子の部屋を出て一階の茶の間に行く。真っ暗な部屋の中に入り、台所に行き電気をつける。明るい中で見る台所。いつもの私の居場所。綺麗に片付いている。毎日の食事の用意に辟易した日もあったが、もう、これからはそういう日は来ないのだろうか。
余計にさみしくなり、電気を消すと玄関に向かう。
玄関に足を投げ出すようにして座りため息をつく。
「ん?」
何気ない今の行動の中におかしな所があるのに気がついた。
私は急いで茶の間に向かう。電気をつける。ぱぱぱっと電気がつく。もう一度押す。ぱっと消える。
「人には触れないのに、何で物は触れるのかしら?でも・・・・・・内山さん家で暴れた時は何も壊れなかった。なんで?」
私はもう一度茶の間の電気をつけると、手当たり次第に物に触り始めた。
触れる。物を持ち上げることも動かすことも出来る。頭の中が混乱している。
その時、玄関の方で音がした。
行ってみると、大きな袋を持った息子が帰ってきたようだ。
「お帰り」
いつもの癖で声をかけるが、息子からの反応はない。帰ってきた息子は疲れている様子で家に上がると、私の横を通り茶の間に真っ直ぐ行った。
息子と一緒に茶の間に行き向かいに座る。コンビニで買ってきたのだろう。大量の商品をテーブルに出すと黙々と食べ始めた。私はそんな息子を黙って見ていた。ふと部屋の隅を見ると喪服が脱ぎ捨ててある。
「おい。私は死んだらしいぞ。お前ひとりで大丈夫なのか?朝起きれるのか?」
返事はない。
「何か不思議な事が起きてるんだよ。人には触れないのに物には触れるんだ。初めて死んだがこういうものなのかね」
息子は食事が終わったらしく、自分の部屋に戻っていった。
私が生きている時も、一方的に話す私に対して息子は頷くだけ、食べ終わると自室に戻っていく。今も同じようだが、違うのは私の声が息子に届いていないという事。
「ちっ死ぬってつまらんもんだね」
私は席を立ち玄関へ行った。玄関に行っても何もないのだが、なぜか妙に落ち着くのだ。
暗い玄関のたたきに、先程のように足を投げ出し座る。
「あ~あ。私みたいのは死んだら天国に行くと思ってたがね」
ブツブツと言いながらその場にバタンと横になった。その時自分の手が何かにあたる。
「ん?」
見ると、壺のようなものが置いてある。
「なんだいこれ」
その壺はうっすらと光っているように見える。
「ほほう。骨壺だね。何で光ってるんだろう。蛍光塗料でも塗られてるのかな」
その時、息子が二階から降りてきて玄関の方へ来た。
「おい。これ見て見ろ。光ってるんだよ。私の骨が入ってるんだろ?」
息子は一通り玄関を見て確認している。
「ふん。あ、そうだ。物が動かせるのなら・・・・・・」
私は自分の骨壺を動かそうと手で押してみた。しかし、やけに重い。
「ん?な、なんでこんなに重いんだい?入っているのは骨だけだよねぇ」
私は力いっぱい手で押してみたがびくともしない。
「ふぅ~。まあ。私は骨が丈夫だったから重いのかもしれないねぇ。よし!もう一度」
体中の力を込め足を踏ん張り、思い切り手で骨壺を押した。
ズズズ
「やった!動いた」
その時、二階に上がろうとしていた息子がこちらに来た。私は嬉しくなり
「動いたのがわかったのか?それにしてもこれ。重いんだよ」
息子は、怪訝そうに玄関を調べるとブツブツ言っている。すると、骨壺に気がついたようだ。
「ほら見てごらんよ。光ってるんだよ薄っすらとだけどね」
息子は不思議そうな顔をしたが、足で無造作に骨壺を動かすと二階に行ってしまった。
私は息子の後を追い、一緒に部屋に入る。
「少し位聞いてくれてもいいだろ?他人には聞こえなくても、お前は私の子なんだよ。全く!」
私は息子の足を蹴飛ばした。
「何だって言うんだい。みんなして私を無視して・・・・・・」
自分の家の方に戻りながら、引っかかっている事を思い出した。おかしいことばかりだ。立ち止まりよく考えてみる。内山夫婦は私に気がついてない。内山さんの頭を殴りつけた時自分の手はすり抜けてしまった。これは一体・・・・・・
確か今日は、買い物に行くために車を出し運転していた。それで・・・・・・それであの道で・・・・・・
「あ!!猫!そうだ猫が飛び出してきて」
私は無類の猫好きである。野良猫であろうと飼い猫であろうと、猫を見かけると必ず近寄って可愛がる。いつ猫と会ってもいいように猫の餌を小さな袋に入れて携帯しているぐらいなのだ。しかし、息子がアレルギーを持っているので家では猫が飼えない。早く一人暮らしでも、結婚でもして家を出てくれないか。そうすれば猫が飼えるのにと日頃から思っていた。
「そうそう。あの猫ちゃん大丈夫だったかしら。気になる。行ってみよう」
私は、車に乗ろうと自分の車を探したがどこにもない。
「あら?私の車がない。ったく。あの子が乗っていったのかしら?自分の車があるくせに!」
仕方がないので歩くことにした。
暫く歩いていると前から犬を散歩させている近所の人が歩いてくる。
「あ!そうだ。あの人に100円貸してたんだっけ。返してもらわなくちゃ」
私はその人に向かってずんずんと歩いていく。
「ちょっとあんた!」
私が声をかけた時だ。その人が散歩させている犬が私に向かって勢いよく吠え出したのだ。
この犬は、普段私に凄くなついていた。吠えられたことも一度もない。
「なになに。私よ」
犬をなだめるように言うが、犬は牙をむき出しにして私に吠え続ける。
「ふん。バカ犬。前から気に入らないと思ってたのよ。もういいよ!」
吠え続ける犬を懸命になだめている飼い主をやり過ごし、私は歩きだした。
「歩いてあの場所まで行くのは大変だねぇ。バスか何かで行こうかな」
しかし、カバンも財布も持っていないのに気づき、あきらめて歩き続ける。結構な距離を歩き続けたが、不思議と疲れない。
「私もまだ若いからね。このぐらいの距離何てことないのかもね」
機嫌よく歩いていた時、前方に高校生ぐらいのカップルが歩いてくるのに気がついた。
細い歩道を二人並んで歩いてくるので、このまま歩くとどちらかが譲らないとぶつかってしまう。もちろん私は譲る気なんてさらさらない。
「若い方が譲るもんなんだよ」
私は、何か言われた時に言うセリフをすでに口にしていた。段々と距離が近づいてくる。カップルは話がはずんでいるのか楽しそうに二人で話している。その時気がついた。女の方がやけに暗いのだ。まるで、暗い部屋の中にいる人を見ているみたいに。隣の男はそんなことはない。私は、その女の方を気にしながらも二人との距離が目と鼻の先まで近づく。
私は構わずに歩いた。そして・・・・・・ぶつかる・・・・・・
「きゃ!」
「あれ?」
女と私の声は同時に出た。
男の方は不思議そうに
「なに?どうしたの?」
と女の方に聞いている。
私はゆっくりと振り返った。振り返ると女の方と目が合った。女もこちらを振り返って私を見ている。その顔は恐ろしいものを見たかのように引きつっていた。
きっと女は見たんだろう。私が男とぶつかることなくすり抜けてしまったのを。
おびえながら私を見ている女をよそに、私は歩き出した。何となくその場にいたらいけない気がしたのだ。
今のはなんだ?・・・・・・
暫く歩いて後ろを振り向いてみた。もう、あのカップルは見えなくなっている。
「不思議だわ。私がおかしいのか。周りがおかしいのか」
首をひねりながら考えた。
「あら?もう着いた」
考えながら歩いていたせいなのか、あっという間に目的の場所に着いた。
そこには、猫の死体も何もなかった。
「あ~良かった。あの猫ちゃん大丈夫だった見たいね。ん?」
反対車線の方に目をやると、大きな木が今にも倒れそうになっており、それを作業服を着た人たちがクレーンを使って何とかしようと頑張っていた。
「あら~。雷でも落ちたのかしら?」
好奇心は人一倍なので、反対側に回り見物に行く。暇そうな見物人の近くに行くと、その人たちが話しているのが聞こえてきた。
「凄い事故だったんですよ。どか~んとね。俺ぁ何か爆発したのかと思ったね」
「へ~。で、車に乗っていた人は大丈夫だったのかな?」
「いや~。駄目だと思うよ。あれじゃあ」
見た事を思い出したのか、腕をさすりながら肩をすくめ話している。
「ふ~ん。事故があったのね」
その時だ。フラッシュバックのようにこの場で起きた事が頭の中に蘇ってきた。前の車を抜いた時に飛び出してきた猫の顔。それを避けた後目の前に迫る大木。
「・・・・・・」
私はふらふらとその場から離れた。
気がつくと辺りは暗くなっており、いつの間にか自宅の前に立っていた。無意識のうちに家に帰ってきたらしい。帰巣本能とは恐ろしい。こんなに信じられないショックを受けているのにもかかわらずちゃんと家には戻るのだから。
私は、家に入ろうとドアノブを掴んだ。
カチャと開く。鍵がかかっていない。家の中は真っ暗だ。息子はどこにいるのか。車はあったから家にいるはずだが。私は二階の息子の部屋へ向かう。
いない。
急にさみしくなった。こんな気持ちになったのは初めて猫が死んでいるのを見た時以来だ。
「どこにいったんだか。全く!」
急に一人ぼっちになったさみしさに押しつぶされそうになりながらも
「ふ、ふん。なんだいなんだい。人間はね。いずれ一人ぼっちになるのさ」
強がりと分かりながらも言葉に出してみる。言葉にすることで気持ちが変わると思ったのだ。しかし、何も変わらなかった。
息子の部屋を出て一階の茶の間に行く。真っ暗な部屋の中に入り、台所に行き電気をつける。明るい中で見る台所。いつもの私の居場所。綺麗に片付いている。毎日の食事の用意に辟易した日もあったが、もう、これからはそういう日は来ないのだろうか。
余計にさみしくなり、電気を消すと玄関に向かう。
玄関に足を投げ出すようにして座りため息をつく。
「ん?」
何気ない今の行動の中におかしな所があるのに気がついた。
私は急いで茶の間に向かう。電気をつける。ぱぱぱっと電気がつく。もう一度押す。ぱっと消える。
「人には触れないのに、何で物は触れるのかしら?でも・・・・・・内山さん家で暴れた時は何も壊れなかった。なんで?」
私はもう一度茶の間の電気をつけると、手当たり次第に物に触り始めた。
触れる。物を持ち上げることも動かすことも出来る。頭の中が混乱している。
その時、玄関の方で音がした。
行ってみると、大きな袋を持った息子が帰ってきたようだ。
「お帰り」
いつもの癖で声をかけるが、息子からの反応はない。帰ってきた息子は疲れている様子で家に上がると、私の横を通り茶の間に真っ直ぐ行った。
息子と一緒に茶の間に行き向かいに座る。コンビニで買ってきたのだろう。大量の商品をテーブルに出すと黙々と食べ始めた。私はそんな息子を黙って見ていた。ふと部屋の隅を見ると喪服が脱ぎ捨ててある。
「おい。私は死んだらしいぞ。お前ひとりで大丈夫なのか?朝起きれるのか?」
返事はない。
「何か不思議な事が起きてるんだよ。人には触れないのに物には触れるんだ。初めて死んだがこういうものなのかね」
息子は食事が終わったらしく、自分の部屋に戻っていった。
私が生きている時も、一方的に話す私に対して息子は頷くだけ、食べ終わると自室に戻っていく。今も同じようだが、違うのは私の声が息子に届いていないという事。
「ちっ死ぬってつまらんもんだね」
私は席を立ち玄関へ行った。玄関に行っても何もないのだが、なぜか妙に落ち着くのだ。
暗い玄関のたたきに、先程のように足を投げ出し座る。
「あ~あ。私みたいのは死んだら天国に行くと思ってたがね」
ブツブツと言いながらその場にバタンと横になった。その時自分の手が何かにあたる。
「ん?」
見ると、壺のようなものが置いてある。
「なんだいこれ」
その壺はうっすらと光っているように見える。
「ほほう。骨壺だね。何で光ってるんだろう。蛍光塗料でも塗られてるのかな」
その時、息子が二階から降りてきて玄関の方へ来た。
「おい。これ見て見ろ。光ってるんだよ。私の骨が入ってるんだろ?」
息子は一通り玄関を見て確認している。
「ふん。あ、そうだ。物が動かせるのなら・・・・・・」
私は自分の骨壺を動かそうと手で押してみた。しかし、やけに重い。
「ん?な、なんでこんなに重いんだい?入っているのは骨だけだよねぇ」
私は力いっぱい手で押してみたがびくともしない。
「ふぅ~。まあ。私は骨が丈夫だったから重いのかもしれないねぇ。よし!もう一度」
体中の力を込め足を踏ん張り、思い切り手で骨壺を押した。
ズズズ
「やった!動いた」
その時、二階に上がろうとしていた息子がこちらに来た。私は嬉しくなり
「動いたのがわかったのか?それにしてもこれ。重いんだよ」
息子は、怪訝そうに玄関を調べるとブツブツ言っている。すると、骨壺に気がついたようだ。
「ほら見てごらんよ。光ってるんだよ薄っすらとだけどね」
息子は不思議そうな顔をしたが、足で無造作に骨壺を動かすと二階に行ってしまった。
私は息子の後を追い、一緒に部屋に入る。
「少し位聞いてくれてもいいだろ?他人には聞こえなくても、お前は私の子なんだよ。全く!」
私は息子の足を蹴飛ばした。
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