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夢
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次の日の朝早く。息子は健太の家に行って声を聞くため待機している。私の方も、真理に事情を説明し、一緒に健太の家の庭に隠れながら健太が来るのを待った。
「来た来た!」
真理が興奮したように声を上げる。見ると、いつの間に来たのか門の所に健太は立っている。健太は普段と同じ様で変わった様子はない。家を見上げ、玄関の方へ歩いてきた。
その時だ。
こわい
聞こえた。女の声だ。その声を健太も聞いたのだろう、周りをキョロキョロと見まわす。
「健太君」
真理が出て行ってしまった。
「お姉ちゃん!」
健太は驚いていたが
「ごめんね。健太君が心配で来ちゃったの。聞こえたね。さっきの声でしょ?」
「うん。こわいって言ってるでしょ?」
「うん。言ってるね。どこから聞こえた?」
「わかんない」
二人が話をしている時だ。ガチャッと玄関が開き息子が顔を出した。真っ青になった顔で何かを探しているようにキョロキョロしている。数を数える声が聞こえたので慌てて出てきたのだろう。
「お袋!いるか!」
あのバカ・・・・・・健太に見つかっちまうだろ。
それを聞いた健太は
「え?おばさんも来てるの?」
もう仕方がない。私は隠れていたところから出て行くと
「見つかっちゃったよ」
「お姉ちゃん。言わないって言ったのに」
健太は真理を睨んでいる。
「健太。真理は健太を凄く心配したんだよ。許してやりな」
「本当ごめん」
真理は素直に健太に頭を下げた。
「・・・・・・許してあげる。でも、なんで僕のうちにおじさんがいるの?」
「おじさんも健太の事が心配で来たんだよ。後、お母さんの事もね」
私はそう言うと、持ってきたノートに
(ここにいるよ。健太もいる。取り敢えず中に入って話をしよかね)
と書いた。
家の中に入ると、玄関わきの部屋。あの健太のお祖母ちゃんの部屋は綺麗に片づけられており、仏壇もきちんと掃除されている。母親は自分が出来る事をちゃんとやっているようだ。茶の間に入り、私は健太と真理から聞いた声を説明する。健太の母親はあらかじめ息子から話は聞いていたのだろう。ノートを読むと
「今日は「む~っつ」って聞こえました。健太はいつも「こわい」って聞こえるのよね?」
「うん」
健太は母親と会話しているかのように答える。
「一体何だろうな。健太のお祖母ちゃんとの関係性は低いって事はわかった。とすると、別のものだろ?あの・・・・・・この家に越してきてから何かおかしなこととかなかったですか?」
「おかしなことですか?・・・・・・いえ。特にないです。家を建てる時、ここの土地を見つけて買ったのも主人ですが、特に何も言っていなかったし私も見に来ましたけど、更地で特におかしな事は・・・・・・」
「ご主人がここの土地を見つけたんですね?不動産はどこですか?」
「確か・・・・・・ちょっと待ってください。権利書とかの書類があるのでそこに書いてあると思います」
健太の母親は二階に行き、暫くすると何冊かのファイルを手に戻ってきた。
「このファイルにはこの家を建てた時の書類が全て入ってます。土地を買った時のも入っていると・・・・・・あ、あった。ありました。これです」
ガサガサとファイルから出した書類を息子は受け取ると
「高田不動産・・・・・・俺。一度この不動産に行ってみてもいいですか?」
「ええいいですけど・・・・・・何のために?」
「もしかしたら、この土地にまつわる事に関係してるのかもしれないからです」
「そんな・・・・・・あ、そう言えば、健太が生きている時お祖母ちゃんがいると言い出した後、女の子がいるとかおばさんがいるとか言ってましたが何か関係があるのでしょうか」
「多分ですけど・・・・・・健太のお祖母ちゃんの件がありましたよね?あれで何かが刺激されて出て来たとか・・・・・・」
「そんな事って・・・・・・」
「推測でしかないので間違ってるかもしれないですけど、何も分からない以上一つ一つ可能性を潰していくしかないですよ」
「・・・・・・そうですね」
疲れた顔でため息をついた。
「お母さん大丈夫?」
健太は母親の隣に行き、心配そうに顔を覗き込んでいる。私はその様子をノートに書いて母親に見せた。母親は、健太がいる方を向き手を差し伸べると
「健太。ここにいるのね。・・・・・・お母さんは大丈夫よ」
と弱弱しかったがにこりと笑った。健太は嬉しそうに母親の手を触る。
「え?」
そりゃあ驚くだろう。触られた感覚があったのだから。慌てて母親は健太の手を握り返す。(すり抜けてしまうが)目に涙を沢山ためながら、母親は無言で健太の手を愛おしそうに握っていた。
「じゃあ。俺仕事行きます。仕事が終わったらここの不動産に行ってみますね」
息子はそう言うと家を出て行った。私達もノートに帰る旨を書き母親に見せて家を出た。健太はもっと母親といたいのか、後で帰るという事なので真理と二人家を出る。
「ねえおばさん。あの声さ。女の人だよね」
「そうだね」
「何がこわいなんだろう?こわい・・・・・・こわい・・・・・・」
真理は呪文のように言いながら考えている。
家に着くと、お隣の内山の奥さんがニヤニヤしながら自分の家の庭からこちらを見ている。
「なに?あのおばさん何か気持ち悪!」
「・・・・・・気にするんじゃないよ」
私は無視して家の中に入ろうとした。すると
「今帰り?」
内山さんが声をかけてきた。真理は驚いた顔で内山さんを見る。
「お姉さん。そんなに驚いた顔しないでよ。そんなに珍しいことでもないわ。あの可愛い男の子はいないの?」
内山さんは得意げに話す。私は胸糞悪さ全開になったので
「行くよ」
真理を引っ張って行くと家の中に入り、ドアを荒々しく閉めた。ずかずかと家の中に入り、テレビをつける。ニュースがやっていたが全然頭に入ってこない。
真理は慌てて私の側に来ると
「ねねね!なにあのおばさん!私達の事が分かるの⁉どうして?」
私は点けたばかりのテレビを消し、真理の方を向くと
「実はね。この間の夜、弁当を探しに行った時あったろ?あの時にあの人、内山さんと会ったんだよ。私も本当驚いたね。会話ができるし、私の事も見えるんだから。そんな人間がいるんだね。それだけなら良かったんだけど、あの人私になんて言ったと思う?利用させてくれって言ったんだ」
「は?利用?どういう事?」
「実際にやってほしいことを言われてね。近所の嫌な奴の家に行ってゴミをばらまいてきてくれとか言うのさ」
「はぁ⁉頭おかしいんじゃない?なんでそんな事しなきゃいけないの?信じられない!」
真理は驚きとともに腹が立っているようだ。
「私も信じられなかったよ。あの人とは、生前余り付き合いはないにしても挨拶ぐらいは交わしてたんだ。そんな人には見えなかったけどね」
「ふ~ん。でも、よくニュースでも近所の人のインタビューで、「そんな風には見えなかった」なんて言うのはよくあるよね。そういうパターンの人なんじゃない?それにしても、そんなこと頼むなんて・・・・・・どうするの?」
「どうするのって。するわけないよ!そんな事!」
「そうだよね。でもまた来ると思うよおばさんの所に。どうする?」
「さあどうしようかね」
不安そうな顔をしている真理を見ながら
(あの事はとりあえず今は言わなくていいか)
と考えていた。あの時の事。
突然内山さんが血相変えて逃げて行った事。
それにまだ話してないことが・・・・・・健太のお祖母ちゃんの事だ。何となくだが、これを言ってしまったら真理との関係も終わるような気がする。
「もう、どうすることも出来ないから完璧無視だね。だって、こっちのいたずらも通用しないってこ・・・・・・っていう事は、あの時のいたずらはあの人分かっててあんなリアクションとったって事⁉何か超ムカつくんだけど‼」
「ああ。ポストの時のね。そうだろうね。何とも食えない人だよ」
私は怒りよりも呆れてしまっていた。半面、真理は頭から湯気が出そうなほど顔を赤くして怒っている。
「真理の言う通り完璧無視で行けば大丈夫でしょ。それより、健太の方に集中しよう」
「・・・・・・そうだね」
真理はまだ納得いかないような顔をしていたが、やはり健太が可愛いのだろう
「健太君遅いね」
と心配し始めた。
「お母さんと一緒にいるんだから大丈夫だよ」
「そうだね・・・・・・私もちょっとだけうちに帰ってみようかな・・・・・・」
健太たちを見て、里心がついたのかもしれない。
「帰ってあげな。きっと喜ぶと思うよ」
「うん。・・・・・・今からちょっとだけ行ってみる」
「行ってきな。思い立ったが吉日って言うじゃないか。行った方がいいよ」
「行ってくる!」
真理は先程とは違い、嬉しそうな顔で家から出て行った。
「ふぅ~」
私は、何だかやけに疲れてしまいその場にゴロンと横になった。
いつの間にか眠ってしまったのだろう。夢を見た。真っ暗な中にいる。明かり一つない場所だ。その中を私は当てもなく歩いていると突然何かにぶつかった。手で触るととても固いものだ。(壁?)手で触りながら形を探っていくが、終わりがない。手で触りながらずっと横に移動していく。何となくだが直線ではなく丸みを帯びている気がする。今度は、何かに躓いく。足元に何かがある。暗闇の中手探りでソレを触る。固くて少しだけ重い。いびつな形をしていて何であるか想像がつかない。すると、奥の方で何やらぼんやりと光るものがあるのを見つけた。また躓いて転んだらかなわないので、這いつくばりながら光の方へ近寄る。近寄っている間も、何かが足や手にあたりコロコロと転がっていたり、動かなかったりしている。一体ここはどこなのか。光に近づくと、いびつな形をした物が光っていた。何が光っているのか見ようとしたが、意外にも、光が強すぎてじっと見ることが出来ない。何となくだが、お地蔵さんの様な形に見えなくもない。手に取ろうと触った瞬間
「熱っ!」
自分の声で起きてしまった。ぼうっとする頭で今のは何だったんだろうと考えていた。
「ただいま!」
元気のいい声が聞こえた。真理と健太だ。一緒に帰ってきたらしい。私はのそのそと起き上がり二人を出迎える。
「おかえり。二人一緒に帰ってきたのかい?」
「そうなの!家に帰ったらお母さんがいてね。私の事分かるか心配だったけど、すぐに分かってくれて沢山話せたわ!あ、背中に文字を書いたの。フフフ面白かった!車でここまで送ってくれるって言うから来たんだけど、途中で健太君が歩いてたから一緒に帰ってきたんだよね!」
「うん!ねねおばさん。僕もね僕もね。お母さんと遊んだんだよ。い~っぱい遊んだの!」
夢中になって話す二人を見て、私は嬉しい気持ちになると同時に少しだけ寂しかった。
「そうかいそうかい。楽しかったのは良かった。あれ。もうこんな時間かい。夕飯の支度しないとね」
私はその少しだけの寂しさを紛らわせるために、夕飯の支度にとりかかった。
夕飯を作りながら考えた。「死」とは何か。病気や事故、自殺や事件。様々な形でこの世を去る人達。どんな形にせよ、人に必ず来るものは「死」だ。
では、死後はどうなのか。宗教の違いでそれぞれの考えはあるにせよ。本当の事は誰にも分からない。死んだ人のみが知る事だ。生きてる人間は死んだ人に聞くことは出来ない。だから想像でしかない。でも、今の私は違う。確かに死んでいる。あの事故で。
そしてここにいる。これが「死後」と言うものなのか。であれば、この世は死人で溢れている事になるが、今まで外に出かけたりして、私達と同じように死んでいる人に会っていないと思う。分からないだけだろうか。
「どうなんだろうねぇ」
「え?何か言った?」
真理が健太と遊びながらこちらに声をかける。
「何も言ってないよ」
思わず声に出してしまったようだ。
(考えても分からないね。ま、いいか)
私は夕飯づくりに集中した。
「来た来た!」
真理が興奮したように声を上げる。見ると、いつの間に来たのか門の所に健太は立っている。健太は普段と同じ様で変わった様子はない。家を見上げ、玄関の方へ歩いてきた。
その時だ。
こわい
聞こえた。女の声だ。その声を健太も聞いたのだろう、周りをキョロキョロと見まわす。
「健太君」
真理が出て行ってしまった。
「お姉ちゃん!」
健太は驚いていたが
「ごめんね。健太君が心配で来ちゃったの。聞こえたね。さっきの声でしょ?」
「うん。こわいって言ってるでしょ?」
「うん。言ってるね。どこから聞こえた?」
「わかんない」
二人が話をしている時だ。ガチャッと玄関が開き息子が顔を出した。真っ青になった顔で何かを探しているようにキョロキョロしている。数を数える声が聞こえたので慌てて出てきたのだろう。
「お袋!いるか!」
あのバカ・・・・・・健太に見つかっちまうだろ。
それを聞いた健太は
「え?おばさんも来てるの?」
もう仕方がない。私は隠れていたところから出て行くと
「見つかっちゃったよ」
「お姉ちゃん。言わないって言ったのに」
健太は真理を睨んでいる。
「健太。真理は健太を凄く心配したんだよ。許してやりな」
「本当ごめん」
真理は素直に健太に頭を下げた。
「・・・・・・許してあげる。でも、なんで僕のうちにおじさんがいるの?」
「おじさんも健太の事が心配で来たんだよ。後、お母さんの事もね」
私はそう言うと、持ってきたノートに
(ここにいるよ。健太もいる。取り敢えず中に入って話をしよかね)
と書いた。
家の中に入ると、玄関わきの部屋。あの健太のお祖母ちゃんの部屋は綺麗に片づけられており、仏壇もきちんと掃除されている。母親は自分が出来る事をちゃんとやっているようだ。茶の間に入り、私は健太と真理から聞いた声を説明する。健太の母親はあらかじめ息子から話は聞いていたのだろう。ノートを読むと
「今日は「む~っつ」って聞こえました。健太はいつも「こわい」って聞こえるのよね?」
「うん」
健太は母親と会話しているかのように答える。
「一体何だろうな。健太のお祖母ちゃんとの関係性は低いって事はわかった。とすると、別のものだろ?あの・・・・・・この家に越してきてから何かおかしなこととかなかったですか?」
「おかしなことですか?・・・・・・いえ。特にないです。家を建てる時、ここの土地を見つけて買ったのも主人ですが、特に何も言っていなかったし私も見に来ましたけど、更地で特におかしな事は・・・・・・」
「ご主人がここの土地を見つけたんですね?不動産はどこですか?」
「確か・・・・・・ちょっと待ってください。権利書とかの書類があるのでそこに書いてあると思います」
健太の母親は二階に行き、暫くすると何冊かのファイルを手に戻ってきた。
「このファイルにはこの家を建てた時の書類が全て入ってます。土地を買った時のも入っていると・・・・・・あ、あった。ありました。これです」
ガサガサとファイルから出した書類を息子は受け取ると
「高田不動産・・・・・・俺。一度この不動産に行ってみてもいいですか?」
「ええいいですけど・・・・・・何のために?」
「もしかしたら、この土地にまつわる事に関係してるのかもしれないからです」
「そんな・・・・・・あ、そう言えば、健太が生きている時お祖母ちゃんがいると言い出した後、女の子がいるとかおばさんがいるとか言ってましたが何か関係があるのでしょうか」
「多分ですけど・・・・・・健太のお祖母ちゃんの件がありましたよね?あれで何かが刺激されて出て来たとか・・・・・・」
「そんな事って・・・・・・」
「推測でしかないので間違ってるかもしれないですけど、何も分からない以上一つ一つ可能性を潰していくしかないですよ」
「・・・・・・そうですね」
疲れた顔でため息をついた。
「お母さん大丈夫?」
健太は母親の隣に行き、心配そうに顔を覗き込んでいる。私はその様子をノートに書いて母親に見せた。母親は、健太がいる方を向き手を差し伸べると
「健太。ここにいるのね。・・・・・・お母さんは大丈夫よ」
と弱弱しかったがにこりと笑った。健太は嬉しそうに母親の手を触る。
「え?」
そりゃあ驚くだろう。触られた感覚があったのだから。慌てて母親は健太の手を握り返す。(すり抜けてしまうが)目に涙を沢山ためながら、母親は無言で健太の手を愛おしそうに握っていた。
「じゃあ。俺仕事行きます。仕事が終わったらここの不動産に行ってみますね」
息子はそう言うと家を出て行った。私達もノートに帰る旨を書き母親に見せて家を出た。健太はもっと母親といたいのか、後で帰るという事なので真理と二人家を出る。
「ねえおばさん。あの声さ。女の人だよね」
「そうだね」
「何がこわいなんだろう?こわい・・・・・・こわい・・・・・・」
真理は呪文のように言いながら考えている。
家に着くと、お隣の内山の奥さんがニヤニヤしながら自分の家の庭からこちらを見ている。
「なに?あのおばさん何か気持ち悪!」
「・・・・・・気にするんじゃないよ」
私は無視して家の中に入ろうとした。すると
「今帰り?」
内山さんが声をかけてきた。真理は驚いた顔で内山さんを見る。
「お姉さん。そんなに驚いた顔しないでよ。そんなに珍しいことでもないわ。あの可愛い男の子はいないの?」
内山さんは得意げに話す。私は胸糞悪さ全開になったので
「行くよ」
真理を引っ張って行くと家の中に入り、ドアを荒々しく閉めた。ずかずかと家の中に入り、テレビをつける。ニュースがやっていたが全然頭に入ってこない。
真理は慌てて私の側に来ると
「ねねね!なにあのおばさん!私達の事が分かるの⁉どうして?」
私は点けたばかりのテレビを消し、真理の方を向くと
「実はね。この間の夜、弁当を探しに行った時あったろ?あの時にあの人、内山さんと会ったんだよ。私も本当驚いたね。会話ができるし、私の事も見えるんだから。そんな人間がいるんだね。それだけなら良かったんだけど、あの人私になんて言ったと思う?利用させてくれって言ったんだ」
「は?利用?どういう事?」
「実際にやってほしいことを言われてね。近所の嫌な奴の家に行ってゴミをばらまいてきてくれとか言うのさ」
「はぁ⁉頭おかしいんじゃない?なんでそんな事しなきゃいけないの?信じられない!」
真理は驚きとともに腹が立っているようだ。
「私も信じられなかったよ。あの人とは、生前余り付き合いはないにしても挨拶ぐらいは交わしてたんだ。そんな人には見えなかったけどね」
「ふ~ん。でも、よくニュースでも近所の人のインタビューで、「そんな風には見えなかった」なんて言うのはよくあるよね。そういうパターンの人なんじゃない?それにしても、そんなこと頼むなんて・・・・・・どうするの?」
「どうするのって。するわけないよ!そんな事!」
「そうだよね。でもまた来ると思うよおばさんの所に。どうする?」
「さあどうしようかね」
不安そうな顔をしている真理を見ながら
(あの事はとりあえず今は言わなくていいか)
と考えていた。あの時の事。
突然内山さんが血相変えて逃げて行った事。
それにまだ話してないことが・・・・・・健太のお祖母ちゃんの事だ。何となくだが、これを言ってしまったら真理との関係も終わるような気がする。
「もう、どうすることも出来ないから完璧無視だね。だって、こっちのいたずらも通用しないってこ・・・・・・っていう事は、あの時のいたずらはあの人分かっててあんなリアクションとったって事⁉何か超ムカつくんだけど‼」
「ああ。ポストの時のね。そうだろうね。何とも食えない人だよ」
私は怒りよりも呆れてしまっていた。半面、真理は頭から湯気が出そうなほど顔を赤くして怒っている。
「真理の言う通り完璧無視で行けば大丈夫でしょ。それより、健太の方に集中しよう」
「・・・・・・そうだね」
真理はまだ納得いかないような顔をしていたが、やはり健太が可愛いのだろう
「健太君遅いね」
と心配し始めた。
「お母さんと一緒にいるんだから大丈夫だよ」
「そうだね・・・・・・私もちょっとだけうちに帰ってみようかな・・・・・・」
健太たちを見て、里心がついたのかもしれない。
「帰ってあげな。きっと喜ぶと思うよ」
「うん。・・・・・・今からちょっとだけ行ってみる」
「行ってきな。思い立ったが吉日って言うじゃないか。行った方がいいよ」
「行ってくる!」
真理は先程とは違い、嬉しそうな顔で家から出て行った。
「ふぅ~」
私は、何だかやけに疲れてしまいその場にゴロンと横になった。
いつの間にか眠ってしまったのだろう。夢を見た。真っ暗な中にいる。明かり一つない場所だ。その中を私は当てもなく歩いていると突然何かにぶつかった。手で触るととても固いものだ。(壁?)手で触りながら形を探っていくが、終わりがない。手で触りながらずっと横に移動していく。何となくだが直線ではなく丸みを帯びている気がする。今度は、何かに躓いく。足元に何かがある。暗闇の中手探りでソレを触る。固くて少しだけ重い。いびつな形をしていて何であるか想像がつかない。すると、奥の方で何やらぼんやりと光るものがあるのを見つけた。また躓いて転んだらかなわないので、這いつくばりながら光の方へ近寄る。近寄っている間も、何かが足や手にあたりコロコロと転がっていたり、動かなかったりしている。一体ここはどこなのか。光に近づくと、いびつな形をした物が光っていた。何が光っているのか見ようとしたが、意外にも、光が強すぎてじっと見ることが出来ない。何となくだが、お地蔵さんの様な形に見えなくもない。手に取ろうと触った瞬間
「熱っ!」
自分の声で起きてしまった。ぼうっとする頭で今のは何だったんだろうと考えていた。
「ただいま!」
元気のいい声が聞こえた。真理と健太だ。一緒に帰ってきたらしい。私はのそのそと起き上がり二人を出迎える。
「おかえり。二人一緒に帰ってきたのかい?」
「そうなの!家に帰ったらお母さんがいてね。私の事分かるか心配だったけど、すぐに分かってくれて沢山話せたわ!あ、背中に文字を書いたの。フフフ面白かった!車でここまで送ってくれるって言うから来たんだけど、途中で健太君が歩いてたから一緒に帰ってきたんだよね!」
「うん!ねねおばさん。僕もね僕もね。お母さんと遊んだんだよ。い~っぱい遊んだの!」
夢中になって話す二人を見て、私は嬉しい気持ちになると同時に少しだけ寂しかった。
「そうかいそうかい。楽しかったのは良かった。あれ。もうこんな時間かい。夕飯の支度しないとね」
私はその少しだけの寂しさを紛らわせるために、夕飯の支度にとりかかった。
夕飯を作りながら考えた。「死」とは何か。病気や事故、自殺や事件。様々な形でこの世を去る人達。どんな形にせよ、人に必ず来るものは「死」だ。
では、死後はどうなのか。宗教の違いでそれぞれの考えはあるにせよ。本当の事は誰にも分からない。死んだ人のみが知る事だ。生きてる人間は死んだ人に聞くことは出来ない。だから想像でしかない。でも、今の私は違う。確かに死んでいる。あの事故で。
そしてここにいる。これが「死後」と言うものなのか。であれば、この世は死人で溢れている事になるが、今まで外に出かけたりして、私達と同じように死んでいる人に会っていないと思う。分からないだけだろうか。
「どうなんだろうねぇ」
「え?何か言った?」
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「何も言ってないよ」
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