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祈る少女と少年が語る、第六章
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羽澄美桜が右腕にギプスを嵌めてから、一週間が過ぎた。
ギプス姿に最初は驚いた海翔だったけれど、骨折のほどはそうひどくはなかったらしい。
七日ほどのちにはギプスははずれ、厚く巻いた包帯だけになった。不自由そうだった右手も、手の部分が自由になったことでノートが取りやすくなったようだ。
その、異様――圧倒されるほどの違和感を持つ彼女に、話しかけるのは勇気がいった。おまけに仔馬の咲希をはじめとした動物少女たちに、美桜の彼氏だなんだと冷やかされたのだ。
ギプス姿のときにはノートを取る手伝いをしてやろうとかバッグでも持ってやろうかと、気をまわしはしたのだ。しかし咲希たちによけいなことを言われること――なによりも咲希にからかわれる美桜がわななき震え、脅えているようだったことにどうしても手が出せず、結局隣の席でありながら怪我人を労ること、なにひとつできなかった。
「……あの、さぁ」
その日、朝のホームルームの始まるぎりぎり直前。海翔は、隣に話しかけた。その日は咲希が休みらしく、姿を見なかったからだ。ほかの動物少女たちは、咲希なしでは海翔を囲んでくることはなかった。
美桜は、初めて挨拶をしたときそうだったようにちらりと海翔を見て、しかしなにも言わなかった。
「あの……」
自分と話す気のない相手を前にするのは、緊張する。海翔はためらいながら、それでも懸命に口を開いた。
「手。……治ってきてるみたいで、よかったな」
「……うん」
短く、美桜はそう言った。とりあえずは反応があったことにほっとしながら、海翔は言葉を続ける。
「大変そうだったから。……あの、手伝おうとは、思ったんだけど」
「なら、昨日までのノート、貸して」
やはり素っ気なく、美桜は言った。そして海翔のほうを向く。
「字、きれいに書けなくて。読み直しても自分でなんて書いたか、どうしても思い出せないところがあるの」
「うん、ノートくらい貸す貸す」
海翔は勢いづいた。実のところ、美桜と言葉をかわすのは以前、咲希たちにからかわれたとき――海翔が美桜の彼氏だとか、なんとか言われたとき以来だ。もっともあのときも『話した』とは言いがたいから、実質的に美桜と話をするのは、これが最初かもしれない。もう、転校してきてから二週間以上が経っているのに。
「どれ? 英語と、数学……社会も?」
「全部。一気にでなくてもいいから、一冊ずつ。写して、返すから」
わかった、と海翔は請け負った。こういう機会があるのなら、今日授業のない教科のノートも持ってきていればよかった。
異様、異常、異体。最初、美桜を見たときの印象は、海翔に近づくことをためらわせた。しかし彼女は無感情、無表情なのではない、机の上に重ねた手を小刻みに震わせ咲希たちのからかいに耐える少女なのだとわかってからは、海翔にとっては誰よりも気になる存在だった。
どのノートを貸すか、言葉をかわす。こうしてみると、美桜は内面もとてもかわいらしい少女だった。小さな声も話しかたも、たとえば咲希たちのように、じゃれ合う仔犬のようなけたたましさはない。中学生らしくないといえばない落ち着き、しっとりと耳に届いてくる声音は、海翔にますますの好感を抱かせた。
蝉がうるさくなってきている季節なのに相変わらず長袖を着ているのでなければ、左腕のカフスから見える包帯がなければ。美桜は、本当に普通の少女だ。普通で、かわいらしくて。今なら自分が美桜の彼氏だという誤解を解くことなどないのに、と海翔は思った。
「……あのさぁ、羽澄さん」
そう、海翔が口ごもりながら言ったときだ。美桜はじっと海翔を見た。アーモンド型の、整った目が海翔を見つめる。黒目がちの、白目が澄んで美しい瞳に見据えられてどぎまぎして、それ以上言葉を口にできなかった。
同時に、担任の井賀島が教室のドアを開けた。めいめいに好きな場所で過ごしていた生徒たちが、彼女の元気のいい挨拶に応えながら席に戻る。美桜は教壇に視線をやってしまい、それ以上彼女の目を見ることは叶わなかった。
『あのさぁ、羽澄さん』
言おうとした言葉をさえぎられ、それでも海翔の胸は、美桜にしてみたい質問であふれかえっていた。
『腕の骨折、どうしてだったの?』
ともすればそのことを、美桜に問うた者がいたかもしれない。しかし海翔の耳には入ってこなかった。海翔と一番仲のいい慶太も知らなかったし、訊こうという気もなかったようだ。仲間になったほかの男子生徒たちもそうだった。当の海翔は、咲希に彼氏扱いされたことで気後れして尋ねることができなかったし、だから今が、そのチャンスだったのに。
『どうして、腕折ったの? なにが原因だったの?』
しかし、尋ねるのをためらったのはそれだけが理由ではなかった。海翔には、いやな予感がしていたのだ。
訊いてはいけない事情――人には誰しも、話したくないことがある。骨折の原因を訊くことは、美桜のそれ、彼女が触れてほしくない何かに触れるような気がしたのだ。
隣の席でありながら、今までろくに話しかけることもなかった美桜と話ができたのは、嬉しい。しかし肝心な、心に引っかかってどうしようもないことを訊くことができないことは、一回話をすることができただけに、もどかしかった。
『ねぇ、羽澄さん』
海翔にもう少し勇気があったなら――そして、もう少し無恥であったなら。尋ねていただろう。骨折の理由、そして。
『賀村さんと……仲、悪いの?』
担任の井賀村が、今日の予定を話している。ますます近づいた夏休みを前に、やや浮き足立っている生徒たちを戒め、それよりもなによりも、目下の大イベント――一学期の期末テストの話をした井賀村は、忘れていたかったのに、と文句を言う生徒たちに、物語に出てくるチェシャ猫のような笑いを浮かべている。
しかし海翔は、彼らに同調することができない。海翔の心はあることに占められていて、井賀村の言葉もろくに耳に入ってこない。
『賀村さんたちに……いじめられてる?』
それは、あまりにもデリケートな質問だ。肯定されれば、海翔は美桜のために精いっぱい働く気でいるけれど、けれども否定されれば? その質問は美桜への侮辱にもなろうし、咲希たちを見下げていることにもなりかねない。女子生徒の敵になることは、死に等しい――しかも、転校してきたばかりの男子生徒にとっては。
『俺は、あのときめっちゃ気分悪かったんだけど』
しかし、美桜の彼氏扱いされたことには悪い気はしなかった――そのようなことは、言えない。咲希にいじめられているのかという問い以上に、とてもではないけれどできない質問だと思った。
『羽澄さんは、どう思ってるの? あんなふうに賀村さんが言うこと……どう、思った?』
(わ、わわっ……!)
ひとりでそのようなことを考えて、赤くなった。隣の美桜に見られてはいないかとちらりと目をやるが、美桜はいつもの感情の窺えない表情で、教壇のほうを見やっている。
(なに、考えてるんだ……俺)
いじめのような冷やかしを受けたり、骨折したり、そうでなくても災難続きの美桜なのに。そんな彼女を思ってよからぬことを考えているなんて、不謹慎だ。美桜も迷惑だろう、単に席が隣になった転校生に、このようなことを思われているなんて。
ちらりと、美桜を見た。そして長袖のカフスから覗いている手首の包帯に、そのことは知っていたはずなのに、どきりと胸を掴まれた。
リストカットではないと言う美桜。ならば、いったいどういう怪我をしたのか。骨折のギプスは早々に取れたのに、左手首の包帯はいつまで経っても取れそうにない。それどころか、最初見たときよりも分厚く固く、その下にあるのであろう傷は、ますます深くなっているように感じられる。
(羽澄さん……、いったい、どういう子なんだろう……?)
改めての興味。『市松人形』という連想が思い浮かぶ、整った小さな顔。さらさらの黒髪。大きくてくっきりとした目。長い睫毛。小ぶりで上品な鼻。
赤いくちびる、そこから洩れる、低く淡い声。なにもかもが控え目なのに、それでいて圧倒的な印象を与える彼女の美貌。
しかし海翔の心を引き寄せるのは、その姿形ばかりではない。否、むしろ彼女自身が気づいていない、そのうちに秘めているなにかが海翔を惹きつけている。
そう、海翔は美桜に惹かれていた。気になって仕方がない、話しかけたくてどうしようもなくて、それでいて適当な話題が見つからずにがっかりする。ノートを見せるという口実を手に入れた以上、もっと彼女に話しかけて、親しくなって。
(彼女……)
咲希の、あのときは不愉快だったからかいが本当になる妄想に、海翔は今度こそ本当に顔を熱くした。とっさにうつむいて、美桜にも誰にも見られないようにする。それでも脳裏をよぎった考えにはどうしても照れてしまい、誰にも顔を見られないように反射的にうつむいた。
目だけを動かして美桜を見たけれど、彼女は先ほどと変わりない表情をしていた。海翔のことなど、眼中にないようだ。そのことに少しほっとしたような、それでいて残念なような、複雑な感情を胸に、海翔は懸命に雑念を追い払おうとした。
†
その日も、清め地蔵の前を通った。転校してきてからほぼ毎日、帰宅をともにしている慶太は本当にこの古めかしい地蔵が嫌いらしく、目を向けることもない。
しかし海翔は初めて見たときから、この地蔵が気になって仕方がなかった。傷をつけることで清めてもらうという、俗世にどっぷりと浸かっている海翔には理解できない心の広い地蔵の慈悲ゆえかもしれないし、傷だらけの地蔵という異様さが、海翔の興味をそそるのかもしれなかった。
「いっつもおまえ、ここの前通るとき凝視だな」
いかにもいやそうに、慶太が言った。
「あんまりじろじろ見るなよ」
「それはそうだけど……なんか気になるんだよ」
苦笑しながら、海翔は応える。
「こういうの、見たことないからさ。それに、清め地蔵って……なんか、面白い」
「まぁ、東京にはこんな、いきなり道に地蔵とかないかもな」
東京とそのことが関係あるのかどうかはわからないけれど、とにもかくにも、海翔の興味を惹くのは確かだ。慶太がいやがるので立ち止まることはせず、ただ目だけで地蔵を見やった。
「……あれ、なんなんだろうな」
それはいつも、そこにある。慶太はますますいやそうに目を背けるけれど、海翔は気になって、じっと凝視してしまう。
「なんか、べとべとしたもの、塗りつけてるみたいな」
「なんでもいいじゃん……」
慶太は、顔を歪める。興味があるといっても、それは海翔も気味が悪いと思う。どろりとしたものが、アスファルトに垂れ流れた痕。まるでコールタールでも流したような。どことなく腥いにおいもする。本能的に避けてしまいたくなる悪臭だ。
「なんなんだろうな、いったい……」
ふたりは、清め地蔵の前を通りすぎる。海翔はそれ以上清め地蔵のことを話題にはしなかったけれど、毎日の行き帰り、必ず見る地蔵、そしてその前に広がっている、コールタールのような奇妙な痕。
それは、海翔に忘れられない印象を与えるものだった。ふと夜中に目が覚めたとき、思い出してしまうような。それが『清め地蔵』という変わったものとともに見るものだからこそ、海翔の意識の中に鮮明に刻まれていた。
†
〈唐傘亭〉に、海翔はしばしば訪れる。
主人の歩は気さくな人物で、海翔は彼女の仕事である人形作りを見ているのも面白いし、なにしろそのハスキーヴォイスで語られるさまざまな話が、興味深いのだ。
歩曰く、人形たちも海翔の訪問を喜んでいるらしい。人形が喜ぶとはどういうことなのか、喜ばれることにどういった感想を持つべきなのか。海翔には今ひとつよくわからないのだけれど、歩がそう言って嬉しそうに低い声で笑うものだから、それはそれでいいかと思っている。
その日も、海翔は〈唐傘亭〉を訪れていた。歩はちょうど、黒髪の人形の髪を手入れしていたところだった。
その髪はまっすぐで、つややかで、質といいその長さといい、まるで美桜の髪のようだと海翔は思った。
人形のために使う櫛は、柘植でできているのだと聞いた。柘植の櫛といえば、人間用のものでもなかなかに高価なものだと母が言っていたことを思い出す。その中でも最高級のものを、歩は使っている。
「贅沢じゃありませんか? もったいない」
海翔は、そう言った。取り散らかっているようで、それでいてあるべきものがあるべきところにきちんと治まっているような、不思議な工房だ。
天井のあちらこちらから吊りさげられているのは、人形の手に、足に、胴体。髪や目の埋まっていない頭。それらは不気味なはずだと思うのに、そうは見えないのはこの工房が歩の城であるという言葉どおりの意欲に満ちている場所だからか。それとも人形のパーツがいずれ歩によって命を吹き込まれ、魅惑的な人形になるということがわかっているから。だから奇妙な感じがしないのかもしれない。
「贅沢なんてことはないさ」
人形の黒髪を梳きながら、歩は言った。丁寧に、まるで我が子にそうしてやっているかのような手つきだ。
「みんな、あたしのかわいい子だからね。どれだけ手をかけてやっても足りないよ」
「そんなものですか……?」
確かに歩が職業だというだけではない、並々ならぬ情熱を人形に注いでいるということはわかる。しかし海翔にとっては、人形はしょせん人形だ。高価な櫛まで使ってやることなのか、プラスチックの櫛とどう違うのか、などと考えてしまう。
「この髪も、人間の髪なんだよ」
歩の言葉に、ぎょっとした。しかしそういえば、高級な人形は本物の髪の毛を使っていると聞いたことがあった。いったいどこでのことだったか、思い出せないけれど。
「なんか……それは、ちょっと不気味」
人形の髪を繰り返し梳きながら、歩は、にやり、と笑った。
「まぁね。昔は髪は女の命、なんて言われていたからね。人形の髪は、切って売る人がいるんだよ。まぁ、たいていは女だよね。男でも髪の長い人はいるけど、売るのは、九割がたが女の人だろうから」
ちらり、と海翔を見やって歩は言った。
「今じゃそんなことはないけど、昔は女は髪が長いのが当たり前だからね。ということは生活に困って売っていたわけだから、命である髪を切って売るなんて、それって命を切り売りしてるようなもんだよね」
歩の口調は、明るい。それでいてその綴る言葉は不気味で、海翔は思わず眉をひそめてしまう。もちろん、その不気味さもあわせて彼女の話は面白いのだけれど。
「だからかな。人形が動いたり、しゃべったり、あの世に誘うとか。そういう怪談が昔も今も絶えないのは、そういう背景があるからなんだろうね」
確かに、人形を題材にした怪談は多い。海翔は進んでそういう話を聞くタイプではないけれど、小学校の修学旅行では夜中、百物語まがいをしたり、そうでなくても自ずと耳に入ってくるものだ。
「人形の、怪談……かぁ」
歩が優しく、丁寧に手をかけている人形には、そのような挿話はついてまわらなそうだけれど。しかし慶太なら――海翔は、清め地蔵をいやがる友人のことを思い出した――聞くのもいやがるかもしれない。
「あの、歩さん」
慶太のことを思い出したことで、海翔の口は自然に動いた。
「お地蔵さんも、人形の一種なんでしょうか」
手をとめて、きょとんと歩は海翔を見た。その表情に、おかしなことを尋ねてしまったかと焦ったのだけれど、歩は真面目な顔をしてうなずいた。
「ま、そうだろうね。人形は『ヒトのカタチ』。人を象った偶像であり、もとは宗教の偶像崇拝が転じて芸術品になり、愛玩用になり……そしてこうやって、あたしも飯食わしてもらってるわけだけれど」
いたずらっぽく、歩は笑った。
「地蔵って、清め地蔵? ここいらで地蔵っていったら、あれだよね。あれ、思い出した?」
「まぁ、そうです」
肩をすくめて、歩は言った。
「友達で、あれをめっちゃいやがってるやつがいて。なんか、人形と怪談って、あれのこと思い出して」
手もとを見ながら、独り言のように歩は答える。
「清め地蔵は、まさに人の形。人形は人の想いを受けとめる。プラスの念も、マイナスの面も」
うたうように、歩は話をする。
「あの地蔵はね、清め……つまり人が罪を背負うことによって得る苦痛を、地蔵に預けるということなんだよ。罪の苦しさに堪えきれない者が、傷という形でその苦痛を地蔵に肩代わりしてもらう」
歩の手は、人形の髪を梳く。清め地蔵には髪はないけれど、もしあったならばそのように優しく梳いてやるのだろう。そのような手つきとともに、歩は話す。
「そういう話は、なにもこの村の清め地蔵ばかりじゃない。日本中、いや世界中に、ごろごろしてる」
海翔は、目をしばたたかせた。
「キリストの受難なんか、まさしくそうじゃないか。キリストは人間の罪を背負って、ゴルゴダの丘を重い十字架を背負って登り、その十字架に磔になって、両手足を釘で打たれた。頭には棘だらけの茨の冠をかぶせられて、傷から血を流しているキリストの絵を、美術の本なんかで見たことがあるだろう?」
「あ、はい……」
「教会には、それこそ偶像として受難のキリストが掲げてあるしね。あれ、正直不気味じゃないか? あたしは、小さいころは恐かったね」
「え、伊江田村に、教会ってあるんですか?」
地蔵や小さな神社はあっても、教会は見たことがない。海翔はそう言って、すると歩はくすくすと笑った。
「ここにじゃないよ。あたしも、もとは東京の人間。生まれも育ちも江戸っ子ってやつだ。言ったことなかったっけ?」
「聞いてないです……」
言わば、同郷人ではないか。もっとも東京のようにさまざまな土地からの移住者で成り立っている都市で『同郷人』という言い方が正しいのかどうかは、わからないけれど。
「そうなんだよ。人形の仕事が軌道に乗り始めてから、伊江田村に引っ越してきたんだ」
「どうして、伊江田村?」
海翔は、母の故郷でなければ伊江田村など知らなかった。東京の人間だというけれど、歩も近しい者が伊江田村に縁のある人物だったのだろうか。そう問うと、歩は首を横に振った。
「知らなかったよ、移住してくるまで。知ったのは、本当にたまたま」
「たまたま、って……」
「人形のモチーフを捜してるときにね、いろいろなところ、うろうろしてて。たまたま、ここに行き当たった。で、見たんだよ」
なにを、と海翔は問うた。歩は、にやりと笑って言った。
「清め地蔵を、さ」
どきり、と心臓が跳ねた。今までその話をしていたのに、なぜここで清め地蔵のことが出てくることに、胸が鳴るのだろうか。
「ここの人にね、いろいろ聞いて。こういう『人形』もあるんだなぁ、って思って。あたしは愛玩用に人形を作ってるつもりだけど、もしかしてこういうために、人形を必要としている人もいるんじゃないかなぁ、って」
それが理由で、伊江田村に移住したのだという。歩は、話を続けた。
「最初は、羽澄旅館に泊まってて。このボロ屋が空いてて、持ち主は東京に引っ越して手放したがってるっていうからさ。二束三文で手に入れられて、ラッキーだったよ。持ち主と入れ違い、みたいな」
羽澄旅館。美桜の家だ。海翔の胸は、再び鳴った。
そんな海翔の胸のうちを知ってか否か、目を細めて歩は言う。
「あたしにこの伊江田村のこと、教えてくれたのは、美桜ちゃんの母親。東京モンと浮気して出ていった、羽澄旅館の女将なんだよ」
「ああ、だから……」
だから、美桜の母と知りあいなのだ。彼女の人となりを知るほどに親しかったのだ。
「余所者が珍しかったのか、いろいろ丁寧に教えてくれてね。まぁ、女将としての仕事でもあったんだろうけど。それで、清め地蔵に清めてもらう方法ってのも知った」
そこまで親しかったのなら、それは『友達』というのではないだろうか。しかし歩は美桜の母を、あくまでも『知りあい』だと言っていた。
ふぅ、と歩はため息をつく。
「あの子、伊江田村から出たことないって言ってたから。あの子に東京って場所を教えて、あっちから来た男についていっちゃうような行動に走らせたのは、あたしが原因のひとつだったんじゃないかって、こう見えても責任感じてるんだよ」
人形の髪から櫛をはずし、かたりとかたわらの台に置く。母ともいえる歩に丁寧に手をかけられて、人形はますます輝きを増したように見えた。自分の美しさを誇り、その目はほかの人形たちを睥睨しているようにも見える。
しかし、歩はまたため息をついた。癒しを求めるように、髪を梳いてやったばかりの人形の頭を撫でた。
「あの気持ちは、あたしにはわからないね。もちろん、夫婦仲とかいろいろあったんだろうけど、旅館の経営投げ出して出て行っちゃうなんて、あたしには理解できない」
「だから、友達じゃなくて、知りあい……?」
「薄情だと思う?」
いたずらめかした表情で、歩は海翔を見た。
「いろいろ教えてもらって、面倒見てもらって、すごく感謝はしてるけど。でも、友達って言うには……なんだか、壁みたいなものがあったんだよ」
「壁?」
海翔は、眉をひそめる。歩はうなずいた。
「そう。なんか、あたしを立ち入らせない感じというか、すっごく親切なんだけど、でも最後の一歩が踏み込めないというか、どこか遠い感じがするというか。だからあたし、どうしてもあの子のこと『友達』って言えないんだよね」
何度目かの、歩のため息。
その印象は、なんとなく美桜のそれにも重なった。人を立ち入らせない、壁があるような感覚。もちろん、海翔と美桜はほとんど話したことがない。だから壁もなにもないのだけれど、歩の話は、海翔をなるほどと納得させるものがあったのだ。
「……羽澄さんも、そんな感じです」
「そぉ?」
髪を梳き終わった人形を抱きあげ、丁寧に棚のうえに坐らせる。歩は、その隣に座っていた人形を手にした。それは栗色の髪の人形で、填め込まれている瞳は緑だった。
「俺がこう言うのも、勝手な話なんですけど……なんか、お母さんがそうだったって、わかる気がするんです」
仮に歩が美桜と話すことがあっても、このことは秘密だと海翔は念を押した。歩は請けあい、ふたりの間には沈黙が落ちた。
しゅ、しゅ、と、歩が人形の髪を梳く音が、部屋に響く。
「だから、よけいに心配なんだよね。ご主人が、美桜ちゃんに嫁さん重ねて、なにか……しでかしてないかって。でも、そんなこと聞けるわけもないし。心配してても、仕方がないんだけど」
ふと、海翔の脳裏によぎった美桜の姿。すでにはずれてはいたが、ギプスを嵌めていた彼女の姿。
美桜の骨折。あれが彼女の父が原因でなければいいのだけれど、と海翔は思った。
†
夏休みまで、あと二日。鳴きわめく蝉のうるさい夕方、〈唐傘亭〉の近く。海翔は、美桜と会った。
「あ……、ど、も」
「こんばんは」
無事に(というにはやや結果が好ましくないが)期末試験も終わり、なんの憂いもなく夏休みを迎えられるという、夕暮れどき。伊江田村は北陸に位置するとはいえ、暑い時期は律儀に暑い。海翔は額の汗を拭いながら、美桜に軽く頭を下げた。
教室でなら、毎日会っている。目が合えば挨拶くらいはするけれど、しかし挨拶の先の話題があるかといえば、まったくもって否である。海翔は、セーラー服の広い襟を夏風になびかせる美桜を見つめながら、焦燥した。
合い服の白い襟には、紺色のラインが入っている。両手に学校指定のバッグを持ち、艶やかな黒髪を風のもてあそぶがままにしている美桜は、そんな海翔の焦る心になど、気がついていないかのようだ。
茜の夕陽を背に受けて、襟がなびく、髪がなびく、スカートの裾がなびく。美桜は、スカートの丈を東京の女子生徒たちのように短くはしていない。膝くらいまでの丈のスカートは印象的な陰影を作って、海翔の目を惹いた。彼女の目は、どこか彼方を見つめているようだ――伊江田村ではない、どこか遠く。
美桜が、海翔を見た。じっと黒い瞳に見据えられ、彼女にそのように見つめられたことはなかったので、海翔は思わず胸を高鳴らせる。顔が赤くなったかもしれない。
それに気づかれないことを、夕焼けが誤魔化してくれることを願いながら、それでも海翔は美桜から目が離せない。
彼女は美しく、夏の風がその美しさをいや増していて、視線を逸らせることのできる者がいれば、お目にかかりたいと海翔は思った。
じっと海翔を見つめ、今まで海翔が訪ねていた場所を見透かすように、美桜は小さく、つぶやいた。
「この先、〈唐傘亭〉ね」
「え……、あ、知ってるんだ」
海翔は先ほどまで、〈唐傘亭〉にいた。海翔にとっては、慶太やほかの友達の部屋以上に馴染んだ場所になっていたけれど、そこに美桜が興味を示すのが不思議なように思った。
「……あ、そうか」
歩は、伊江田村のことを美桜の母から教えてもらったのだ。ならば美桜が歩のことを知っていても、なんの不思議もない。むしろ海翔よりも美桜のほうが、歩と話した機会は多いかもしれない。
海翔は振り返り、〈唐傘亭〉のほうを見た。ここからでは建物は見えないけれど、道は一本だ。この先にあるのは、〈唐傘亭〉だけだ。
「仲よくしてもらってるんだ。あの、〈唐傘亭〉の、あゆ、鶴目さん……」
「歩さんね」
なんの淀みもなく、美桜はそう言った。やはり歩とは親しいのだ。もちろん、歩があれだけ美桜のことを心配しているのだから、ふたりの仲は察するに足るけれど。
「いい人ね。わたし、好きだわ。あの人」
「俺も。気さくな人だよね。俺みたいによそから来たやつにも、よくしてくれるんだ。友達みたいな……年上の人に、友達なんて失礼かもしれないけど」
ええ、と美桜はうなずいた。
「そうね。いろいろな話を知ってるし。……最近は、あまりお話ししてないけれど」
ふわり、と風が吹く。海翔の目はたなびく美桜の髪を、セーラー服の襟を、裾を、スカートを見た。風はやや強く、彼女の長袖をも膨らませる。
紺色のカフス。覗く手首の、白い包帯。それは固く固く巻かれていて、その中にあるものを人目に触れさせない。しかしだからこそ、目を惹いた。美桜の隠しているものがなんなのか。美桜は、なにを潜めてそこに立っているのか――。
「いいわね、人形は。歩さんの作る人形は、とっても、いい」
美桜の声は、うたうようだ。風に乗って、涼やかに海翔の耳に届く。
「きれいで、かわいくて……上品で、でも少し、色っぽくもあって」
「そうそう……!」
そうだよな、と海翔は同調しようとした。しかし美桜は、海翔の言葉を聞いていなかった。彼女の目は〈唐傘亭〉の方向に注がれたまま、じっと、そこに立っている。
「……、れ、に……」
ざあっ、と風が吹いた。風は美桜の言葉を大気に紛らせてしまい、海翔の耳にまで届けてはくれなかった。
「え……?」
それでも、海翔は美桜の声を聞いた。はっきりとは聞こえなかった、それでも。
――そしてなにより、穢れていなくて。
そう聞こえたような気がしたのは、海翔の気のせいだっただろうか。
ギプス姿に最初は驚いた海翔だったけれど、骨折のほどはそうひどくはなかったらしい。
七日ほどのちにはギプスははずれ、厚く巻いた包帯だけになった。不自由そうだった右手も、手の部分が自由になったことでノートが取りやすくなったようだ。
その、異様――圧倒されるほどの違和感を持つ彼女に、話しかけるのは勇気がいった。おまけに仔馬の咲希をはじめとした動物少女たちに、美桜の彼氏だなんだと冷やかされたのだ。
ギプス姿のときにはノートを取る手伝いをしてやろうとかバッグでも持ってやろうかと、気をまわしはしたのだ。しかし咲希たちによけいなことを言われること――なによりも咲希にからかわれる美桜がわななき震え、脅えているようだったことにどうしても手が出せず、結局隣の席でありながら怪我人を労ること、なにひとつできなかった。
「……あの、さぁ」
その日、朝のホームルームの始まるぎりぎり直前。海翔は、隣に話しかけた。その日は咲希が休みらしく、姿を見なかったからだ。ほかの動物少女たちは、咲希なしでは海翔を囲んでくることはなかった。
美桜は、初めて挨拶をしたときそうだったようにちらりと海翔を見て、しかしなにも言わなかった。
「あの……」
自分と話す気のない相手を前にするのは、緊張する。海翔はためらいながら、それでも懸命に口を開いた。
「手。……治ってきてるみたいで、よかったな」
「……うん」
短く、美桜はそう言った。とりあえずは反応があったことにほっとしながら、海翔は言葉を続ける。
「大変そうだったから。……あの、手伝おうとは、思ったんだけど」
「なら、昨日までのノート、貸して」
やはり素っ気なく、美桜は言った。そして海翔のほうを向く。
「字、きれいに書けなくて。読み直しても自分でなんて書いたか、どうしても思い出せないところがあるの」
「うん、ノートくらい貸す貸す」
海翔は勢いづいた。実のところ、美桜と言葉をかわすのは以前、咲希たちにからかわれたとき――海翔が美桜の彼氏だとか、なんとか言われたとき以来だ。もっともあのときも『話した』とは言いがたいから、実質的に美桜と話をするのは、これが最初かもしれない。もう、転校してきてから二週間以上が経っているのに。
「どれ? 英語と、数学……社会も?」
「全部。一気にでなくてもいいから、一冊ずつ。写して、返すから」
わかった、と海翔は請け負った。こういう機会があるのなら、今日授業のない教科のノートも持ってきていればよかった。
異様、異常、異体。最初、美桜を見たときの印象は、海翔に近づくことをためらわせた。しかし彼女は無感情、無表情なのではない、机の上に重ねた手を小刻みに震わせ咲希たちのからかいに耐える少女なのだとわかってからは、海翔にとっては誰よりも気になる存在だった。
どのノートを貸すか、言葉をかわす。こうしてみると、美桜は内面もとてもかわいらしい少女だった。小さな声も話しかたも、たとえば咲希たちのように、じゃれ合う仔犬のようなけたたましさはない。中学生らしくないといえばない落ち着き、しっとりと耳に届いてくる声音は、海翔にますますの好感を抱かせた。
蝉がうるさくなってきている季節なのに相変わらず長袖を着ているのでなければ、左腕のカフスから見える包帯がなければ。美桜は、本当に普通の少女だ。普通で、かわいらしくて。今なら自分が美桜の彼氏だという誤解を解くことなどないのに、と海翔は思った。
「……あのさぁ、羽澄さん」
そう、海翔が口ごもりながら言ったときだ。美桜はじっと海翔を見た。アーモンド型の、整った目が海翔を見つめる。黒目がちの、白目が澄んで美しい瞳に見据えられてどぎまぎして、それ以上言葉を口にできなかった。
同時に、担任の井賀島が教室のドアを開けた。めいめいに好きな場所で過ごしていた生徒たちが、彼女の元気のいい挨拶に応えながら席に戻る。美桜は教壇に視線をやってしまい、それ以上彼女の目を見ることは叶わなかった。
『あのさぁ、羽澄さん』
言おうとした言葉をさえぎられ、それでも海翔の胸は、美桜にしてみたい質問であふれかえっていた。
『腕の骨折、どうしてだったの?』
ともすればそのことを、美桜に問うた者がいたかもしれない。しかし海翔の耳には入ってこなかった。海翔と一番仲のいい慶太も知らなかったし、訊こうという気もなかったようだ。仲間になったほかの男子生徒たちもそうだった。当の海翔は、咲希に彼氏扱いされたことで気後れして尋ねることができなかったし、だから今が、そのチャンスだったのに。
『どうして、腕折ったの? なにが原因だったの?』
しかし、尋ねるのをためらったのはそれだけが理由ではなかった。海翔には、いやな予感がしていたのだ。
訊いてはいけない事情――人には誰しも、話したくないことがある。骨折の原因を訊くことは、美桜のそれ、彼女が触れてほしくない何かに触れるような気がしたのだ。
隣の席でありながら、今までろくに話しかけることもなかった美桜と話ができたのは、嬉しい。しかし肝心な、心に引っかかってどうしようもないことを訊くことができないことは、一回話をすることができただけに、もどかしかった。
『ねぇ、羽澄さん』
海翔にもう少し勇気があったなら――そして、もう少し無恥であったなら。尋ねていただろう。骨折の理由、そして。
『賀村さんと……仲、悪いの?』
担任の井賀村が、今日の予定を話している。ますます近づいた夏休みを前に、やや浮き足立っている生徒たちを戒め、それよりもなによりも、目下の大イベント――一学期の期末テストの話をした井賀村は、忘れていたかったのに、と文句を言う生徒たちに、物語に出てくるチェシャ猫のような笑いを浮かべている。
しかし海翔は、彼らに同調することができない。海翔の心はあることに占められていて、井賀村の言葉もろくに耳に入ってこない。
『賀村さんたちに……いじめられてる?』
それは、あまりにもデリケートな質問だ。肯定されれば、海翔は美桜のために精いっぱい働く気でいるけれど、けれども否定されれば? その質問は美桜への侮辱にもなろうし、咲希たちを見下げていることにもなりかねない。女子生徒の敵になることは、死に等しい――しかも、転校してきたばかりの男子生徒にとっては。
『俺は、あのときめっちゃ気分悪かったんだけど』
しかし、美桜の彼氏扱いされたことには悪い気はしなかった――そのようなことは、言えない。咲希にいじめられているのかという問い以上に、とてもではないけれどできない質問だと思った。
『羽澄さんは、どう思ってるの? あんなふうに賀村さんが言うこと……どう、思った?』
(わ、わわっ……!)
ひとりでそのようなことを考えて、赤くなった。隣の美桜に見られてはいないかとちらりと目をやるが、美桜はいつもの感情の窺えない表情で、教壇のほうを見やっている。
(なに、考えてるんだ……俺)
いじめのような冷やかしを受けたり、骨折したり、そうでなくても災難続きの美桜なのに。そんな彼女を思ってよからぬことを考えているなんて、不謹慎だ。美桜も迷惑だろう、単に席が隣になった転校生に、このようなことを思われているなんて。
ちらりと、美桜を見た。そして長袖のカフスから覗いている手首の包帯に、そのことは知っていたはずなのに、どきりと胸を掴まれた。
リストカットではないと言う美桜。ならば、いったいどういう怪我をしたのか。骨折のギプスは早々に取れたのに、左手首の包帯はいつまで経っても取れそうにない。それどころか、最初見たときよりも分厚く固く、その下にあるのであろう傷は、ますます深くなっているように感じられる。
(羽澄さん……、いったい、どういう子なんだろう……?)
改めての興味。『市松人形』という連想が思い浮かぶ、整った小さな顔。さらさらの黒髪。大きくてくっきりとした目。長い睫毛。小ぶりで上品な鼻。
赤いくちびる、そこから洩れる、低く淡い声。なにもかもが控え目なのに、それでいて圧倒的な印象を与える彼女の美貌。
しかし海翔の心を引き寄せるのは、その姿形ばかりではない。否、むしろ彼女自身が気づいていない、そのうちに秘めているなにかが海翔を惹きつけている。
そう、海翔は美桜に惹かれていた。気になって仕方がない、話しかけたくてどうしようもなくて、それでいて適当な話題が見つからずにがっかりする。ノートを見せるという口実を手に入れた以上、もっと彼女に話しかけて、親しくなって。
(彼女……)
咲希の、あのときは不愉快だったからかいが本当になる妄想に、海翔は今度こそ本当に顔を熱くした。とっさにうつむいて、美桜にも誰にも見られないようにする。それでも脳裏をよぎった考えにはどうしても照れてしまい、誰にも顔を見られないように反射的にうつむいた。
目だけを動かして美桜を見たけれど、彼女は先ほどと変わりない表情をしていた。海翔のことなど、眼中にないようだ。そのことに少しほっとしたような、それでいて残念なような、複雑な感情を胸に、海翔は懸命に雑念を追い払おうとした。
†
その日も、清め地蔵の前を通った。転校してきてからほぼ毎日、帰宅をともにしている慶太は本当にこの古めかしい地蔵が嫌いらしく、目を向けることもない。
しかし海翔は初めて見たときから、この地蔵が気になって仕方がなかった。傷をつけることで清めてもらうという、俗世にどっぷりと浸かっている海翔には理解できない心の広い地蔵の慈悲ゆえかもしれないし、傷だらけの地蔵という異様さが、海翔の興味をそそるのかもしれなかった。
「いっつもおまえ、ここの前通るとき凝視だな」
いかにもいやそうに、慶太が言った。
「あんまりじろじろ見るなよ」
「それはそうだけど……なんか気になるんだよ」
苦笑しながら、海翔は応える。
「こういうの、見たことないからさ。それに、清め地蔵って……なんか、面白い」
「まぁ、東京にはこんな、いきなり道に地蔵とかないかもな」
東京とそのことが関係あるのかどうかはわからないけれど、とにもかくにも、海翔の興味を惹くのは確かだ。慶太がいやがるので立ち止まることはせず、ただ目だけで地蔵を見やった。
「……あれ、なんなんだろうな」
それはいつも、そこにある。慶太はますますいやそうに目を背けるけれど、海翔は気になって、じっと凝視してしまう。
「なんか、べとべとしたもの、塗りつけてるみたいな」
「なんでもいいじゃん……」
慶太は、顔を歪める。興味があるといっても、それは海翔も気味が悪いと思う。どろりとしたものが、アスファルトに垂れ流れた痕。まるでコールタールでも流したような。どことなく腥いにおいもする。本能的に避けてしまいたくなる悪臭だ。
「なんなんだろうな、いったい……」
ふたりは、清め地蔵の前を通りすぎる。海翔はそれ以上清め地蔵のことを話題にはしなかったけれど、毎日の行き帰り、必ず見る地蔵、そしてその前に広がっている、コールタールのような奇妙な痕。
それは、海翔に忘れられない印象を与えるものだった。ふと夜中に目が覚めたとき、思い出してしまうような。それが『清め地蔵』という変わったものとともに見るものだからこそ、海翔の意識の中に鮮明に刻まれていた。
†
〈唐傘亭〉に、海翔はしばしば訪れる。
主人の歩は気さくな人物で、海翔は彼女の仕事である人形作りを見ているのも面白いし、なにしろそのハスキーヴォイスで語られるさまざまな話が、興味深いのだ。
歩曰く、人形たちも海翔の訪問を喜んでいるらしい。人形が喜ぶとはどういうことなのか、喜ばれることにどういった感想を持つべきなのか。海翔には今ひとつよくわからないのだけれど、歩がそう言って嬉しそうに低い声で笑うものだから、それはそれでいいかと思っている。
その日も、海翔は〈唐傘亭〉を訪れていた。歩はちょうど、黒髪の人形の髪を手入れしていたところだった。
その髪はまっすぐで、つややかで、質といいその長さといい、まるで美桜の髪のようだと海翔は思った。
人形のために使う櫛は、柘植でできているのだと聞いた。柘植の櫛といえば、人間用のものでもなかなかに高価なものだと母が言っていたことを思い出す。その中でも最高級のものを、歩は使っている。
「贅沢じゃありませんか? もったいない」
海翔は、そう言った。取り散らかっているようで、それでいてあるべきものがあるべきところにきちんと治まっているような、不思議な工房だ。
天井のあちらこちらから吊りさげられているのは、人形の手に、足に、胴体。髪や目の埋まっていない頭。それらは不気味なはずだと思うのに、そうは見えないのはこの工房が歩の城であるという言葉どおりの意欲に満ちている場所だからか。それとも人形のパーツがいずれ歩によって命を吹き込まれ、魅惑的な人形になるということがわかっているから。だから奇妙な感じがしないのかもしれない。
「贅沢なんてことはないさ」
人形の黒髪を梳きながら、歩は言った。丁寧に、まるで我が子にそうしてやっているかのような手つきだ。
「みんな、あたしのかわいい子だからね。どれだけ手をかけてやっても足りないよ」
「そんなものですか……?」
確かに歩が職業だというだけではない、並々ならぬ情熱を人形に注いでいるということはわかる。しかし海翔にとっては、人形はしょせん人形だ。高価な櫛まで使ってやることなのか、プラスチックの櫛とどう違うのか、などと考えてしまう。
「この髪も、人間の髪なんだよ」
歩の言葉に、ぎょっとした。しかしそういえば、高級な人形は本物の髪の毛を使っていると聞いたことがあった。いったいどこでのことだったか、思い出せないけれど。
「なんか……それは、ちょっと不気味」
人形の髪を繰り返し梳きながら、歩は、にやり、と笑った。
「まぁね。昔は髪は女の命、なんて言われていたからね。人形の髪は、切って売る人がいるんだよ。まぁ、たいていは女だよね。男でも髪の長い人はいるけど、売るのは、九割がたが女の人だろうから」
ちらり、と海翔を見やって歩は言った。
「今じゃそんなことはないけど、昔は女は髪が長いのが当たり前だからね。ということは生活に困って売っていたわけだから、命である髪を切って売るなんて、それって命を切り売りしてるようなもんだよね」
歩の口調は、明るい。それでいてその綴る言葉は不気味で、海翔は思わず眉をひそめてしまう。もちろん、その不気味さもあわせて彼女の話は面白いのだけれど。
「だからかな。人形が動いたり、しゃべったり、あの世に誘うとか。そういう怪談が昔も今も絶えないのは、そういう背景があるからなんだろうね」
確かに、人形を題材にした怪談は多い。海翔は進んでそういう話を聞くタイプではないけれど、小学校の修学旅行では夜中、百物語まがいをしたり、そうでなくても自ずと耳に入ってくるものだ。
「人形の、怪談……かぁ」
歩が優しく、丁寧に手をかけている人形には、そのような挿話はついてまわらなそうだけれど。しかし慶太なら――海翔は、清め地蔵をいやがる友人のことを思い出した――聞くのもいやがるかもしれない。
「あの、歩さん」
慶太のことを思い出したことで、海翔の口は自然に動いた。
「お地蔵さんも、人形の一種なんでしょうか」
手をとめて、きょとんと歩は海翔を見た。その表情に、おかしなことを尋ねてしまったかと焦ったのだけれど、歩は真面目な顔をしてうなずいた。
「ま、そうだろうね。人形は『ヒトのカタチ』。人を象った偶像であり、もとは宗教の偶像崇拝が転じて芸術品になり、愛玩用になり……そしてこうやって、あたしも飯食わしてもらってるわけだけれど」
いたずらっぽく、歩は笑った。
「地蔵って、清め地蔵? ここいらで地蔵っていったら、あれだよね。あれ、思い出した?」
「まぁ、そうです」
肩をすくめて、歩は言った。
「友達で、あれをめっちゃいやがってるやつがいて。なんか、人形と怪談って、あれのこと思い出して」
手もとを見ながら、独り言のように歩は答える。
「清め地蔵は、まさに人の形。人形は人の想いを受けとめる。プラスの念も、マイナスの面も」
うたうように、歩は話をする。
「あの地蔵はね、清め……つまり人が罪を背負うことによって得る苦痛を、地蔵に預けるということなんだよ。罪の苦しさに堪えきれない者が、傷という形でその苦痛を地蔵に肩代わりしてもらう」
歩の手は、人形の髪を梳く。清め地蔵には髪はないけれど、もしあったならばそのように優しく梳いてやるのだろう。そのような手つきとともに、歩は話す。
「そういう話は、なにもこの村の清め地蔵ばかりじゃない。日本中、いや世界中に、ごろごろしてる」
海翔は、目をしばたたかせた。
「キリストの受難なんか、まさしくそうじゃないか。キリストは人間の罪を背負って、ゴルゴダの丘を重い十字架を背負って登り、その十字架に磔になって、両手足を釘で打たれた。頭には棘だらけの茨の冠をかぶせられて、傷から血を流しているキリストの絵を、美術の本なんかで見たことがあるだろう?」
「あ、はい……」
「教会には、それこそ偶像として受難のキリストが掲げてあるしね。あれ、正直不気味じゃないか? あたしは、小さいころは恐かったね」
「え、伊江田村に、教会ってあるんですか?」
地蔵や小さな神社はあっても、教会は見たことがない。海翔はそう言って、すると歩はくすくすと笑った。
「ここにじゃないよ。あたしも、もとは東京の人間。生まれも育ちも江戸っ子ってやつだ。言ったことなかったっけ?」
「聞いてないです……」
言わば、同郷人ではないか。もっとも東京のようにさまざまな土地からの移住者で成り立っている都市で『同郷人』という言い方が正しいのかどうかは、わからないけれど。
「そうなんだよ。人形の仕事が軌道に乗り始めてから、伊江田村に引っ越してきたんだ」
「どうして、伊江田村?」
海翔は、母の故郷でなければ伊江田村など知らなかった。東京の人間だというけれど、歩も近しい者が伊江田村に縁のある人物だったのだろうか。そう問うと、歩は首を横に振った。
「知らなかったよ、移住してくるまで。知ったのは、本当にたまたま」
「たまたま、って……」
「人形のモチーフを捜してるときにね、いろいろなところ、うろうろしてて。たまたま、ここに行き当たった。で、見たんだよ」
なにを、と海翔は問うた。歩は、にやりと笑って言った。
「清め地蔵を、さ」
どきり、と心臓が跳ねた。今までその話をしていたのに、なぜここで清め地蔵のことが出てくることに、胸が鳴るのだろうか。
「ここの人にね、いろいろ聞いて。こういう『人形』もあるんだなぁ、って思って。あたしは愛玩用に人形を作ってるつもりだけど、もしかしてこういうために、人形を必要としている人もいるんじゃないかなぁ、って」
それが理由で、伊江田村に移住したのだという。歩は、話を続けた。
「最初は、羽澄旅館に泊まってて。このボロ屋が空いてて、持ち主は東京に引っ越して手放したがってるっていうからさ。二束三文で手に入れられて、ラッキーだったよ。持ち主と入れ違い、みたいな」
羽澄旅館。美桜の家だ。海翔の胸は、再び鳴った。
そんな海翔の胸のうちを知ってか否か、目を細めて歩は言う。
「あたしにこの伊江田村のこと、教えてくれたのは、美桜ちゃんの母親。東京モンと浮気して出ていった、羽澄旅館の女将なんだよ」
「ああ、だから……」
だから、美桜の母と知りあいなのだ。彼女の人となりを知るほどに親しかったのだ。
「余所者が珍しかったのか、いろいろ丁寧に教えてくれてね。まぁ、女将としての仕事でもあったんだろうけど。それで、清め地蔵に清めてもらう方法ってのも知った」
そこまで親しかったのなら、それは『友達』というのではないだろうか。しかし歩は美桜の母を、あくまでも『知りあい』だと言っていた。
ふぅ、と歩はため息をつく。
「あの子、伊江田村から出たことないって言ってたから。あの子に東京って場所を教えて、あっちから来た男についていっちゃうような行動に走らせたのは、あたしが原因のひとつだったんじゃないかって、こう見えても責任感じてるんだよ」
人形の髪から櫛をはずし、かたりとかたわらの台に置く。母ともいえる歩に丁寧に手をかけられて、人形はますます輝きを増したように見えた。自分の美しさを誇り、その目はほかの人形たちを睥睨しているようにも見える。
しかし、歩はまたため息をついた。癒しを求めるように、髪を梳いてやったばかりの人形の頭を撫でた。
「あの気持ちは、あたしにはわからないね。もちろん、夫婦仲とかいろいろあったんだろうけど、旅館の経営投げ出して出て行っちゃうなんて、あたしには理解できない」
「だから、友達じゃなくて、知りあい……?」
「薄情だと思う?」
いたずらめかした表情で、歩は海翔を見た。
「いろいろ教えてもらって、面倒見てもらって、すごく感謝はしてるけど。でも、友達って言うには……なんだか、壁みたいなものがあったんだよ」
「壁?」
海翔は、眉をひそめる。歩はうなずいた。
「そう。なんか、あたしを立ち入らせない感じというか、すっごく親切なんだけど、でも最後の一歩が踏み込めないというか、どこか遠い感じがするというか。だからあたし、どうしてもあの子のこと『友達』って言えないんだよね」
何度目かの、歩のため息。
その印象は、なんとなく美桜のそれにも重なった。人を立ち入らせない、壁があるような感覚。もちろん、海翔と美桜はほとんど話したことがない。だから壁もなにもないのだけれど、歩の話は、海翔をなるほどと納得させるものがあったのだ。
「……羽澄さんも、そんな感じです」
「そぉ?」
髪を梳き終わった人形を抱きあげ、丁寧に棚のうえに坐らせる。歩は、その隣に座っていた人形を手にした。それは栗色の髪の人形で、填め込まれている瞳は緑だった。
「俺がこう言うのも、勝手な話なんですけど……なんか、お母さんがそうだったって、わかる気がするんです」
仮に歩が美桜と話すことがあっても、このことは秘密だと海翔は念を押した。歩は請けあい、ふたりの間には沈黙が落ちた。
しゅ、しゅ、と、歩が人形の髪を梳く音が、部屋に響く。
「だから、よけいに心配なんだよね。ご主人が、美桜ちゃんに嫁さん重ねて、なにか……しでかしてないかって。でも、そんなこと聞けるわけもないし。心配してても、仕方がないんだけど」
ふと、海翔の脳裏によぎった美桜の姿。すでにはずれてはいたが、ギプスを嵌めていた彼女の姿。
美桜の骨折。あれが彼女の父が原因でなければいいのだけれど、と海翔は思った。
†
夏休みまで、あと二日。鳴きわめく蝉のうるさい夕方、〈唐傘亭〉の近く。海翔は、美桜と会った。
「あ……、ど、も」
「こんばんは」
無事に(というにはやや結果が好ましくないが)期末試験も終わり、なんの憂いもなく夏休みを迎えられるという、夕暮れどき。伊江田村は北陸に位置するとはいえ、暑い時期は律儀に暑い。海翔は額の汗を拭いながら、美桜に軽く頭を下げた。
教室でなら、毎日会っている。目が合えば挨拶くらいはするけれど、しかし挨拶の先の話題があるかといえば、まったくもって否である。海翔は、セーラー服の広い襟を夏風になびかせる美桜を見つめながら、焦燥した。
合い服の白い襟には、紺色のラインが入っている。両手に学校指定のバッグを持ち、艶やかな黒髪を風のもてあそぶがままにしている美桜は、そんな海翔の焦る心になど、気がついていないかのようだ。
茜の夕陽を背に受けて、襟がなびく、髪がなびく、スカートの裾がなびく。美桜は、スカートの丈を東京の女子生徒たちのように短くはしていない。膝くらいまでの丈のスカートは印象的な陰影を作って、海翔の目を惹いた。彼女の目は、どこか彼方を見つめているようだ――伊江田村ではない、どこか遠く。
美桜が、海翔を見た。じっと黒い瞳に見据えられ、彼女にそのように見つめられたことはなかったので、海翔は思わず胸を高鳴らせる。顔が赤くなったかもしれない。
それに気づかれないことを、夕焼けが誤魔化してくれることを願いながら、それでも海翔は美桜から目が離せない。
彼女は美しく、夏の風がその美しさをいや増していて、視線を逸らせることのできる者がいれば、お目にかかりたいと海翔は思った。
じっと海翔を見つめ、今まで海翔が訪ねていた場所を見透かすように、美桜は小さく、つぶやいた。
「この先、〈唐傘亭〉ね」
「え……、あ、知ってるんだ」
海翔は先ほどまで、〈唐傘亭〉にいた。海翔にとっては、慶太やほかの友達の部屋以上に馴染んだ場所になっていたけれど、そこに美桜が興味を示すのが不思議なように思った。
「……あ、そうか」
歩は、伊江田村のことを美桜の母から教えてもらったのだ。ならば美桜が歩のことを知っていても、なんの不思議もない。むしろ海翔よりも美桜のほうが、歩と話した機会は多いかもしれない。
海翔は振り返り、〈唐傘亭〉のほうを見た。ここからでは建物は見えないけれど、道は一本だ。この先にあるのは、〈唐傘亭〉だけだ。
「仲よくしてもらってるんだ。あの、〈唐傘亭〉の、あゆ、鶴目さん……」
「歩さんね」
なんの淀みもなく、美桜はそう言った。やはり歩とは親しいのだ。もちろん、歩があれだけ美桜のことを心配しているのだから、ふたりの仲は察するに足るけれど。
「いい人ね。わたし、好きだわ。あの人」
「俺も。気さくな人だよね。俺みたいによそから来たやつにも、よくしてくれるんだ。友達みたいな……年上の人に、友達なんて失礼かもしれないけど」
ええ、と美桜はうなずいた。
「そうね。いろいろな話を知ってるし。……最近は、あまりお話ししてないけれど」
ふわり、と風が吹く。海翔の目はたなびく美桜の髪を、セーラー服の襟を、裾を、スカートを見た。風はやや強く、彼女の長袖をも膨らませる。
紺色のカフス。覗く手首の、白い包帯。それは固く固く巻かれていて、その中にあるものを人目に触れさせない。しかしだからこそ、目を惹いた。美桜の隠しているものがなんなのか。美桜は、なにを潜めてそこに立っているのか――。
「いいわね、人形は。歩さんの作る人形は、とっても、いい」
美桜の声は、うたうようだ。風に乗って、涼やかに海翔の耳に届く。
「きれいで、かわいくて……上品で、でも少し、色っぽくもあって」
「そうそう……!」
そうだよな、と海翔は同調しようとした。しかし美桜は、海翔の言葉を聞いていなかった。彼女の目は〈唐傘亭〉の方向に注がれたまま、じっと、そこに立っている。
「……、れ、に……」
ざあっ、と風が吹いた。風は美桜の言葉を大気に紛らせてしまい、海翔の耳にまで届けてはくれなかった。
「え……?」
それでも、海翔は美桜の声を聞いた。はっきりとは聞こえなかった、それでも。
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そう聞こえたような気がしたのは、海翔の気のせいだっただろうか。
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