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少女と来訪者を語る、第七章
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学生たちが夏休みに入ってすぐの時期から、羽澄旅館には大きな予約が入っていた。
旅館すべての部屋を使うという客は、東京のある中学校の野球部だという。総勢四十人以上もの野球部員たちが、伊江田村で合宿をするのだという。
わざわざ東京から、しかもこのような田舎で合宿をすることにどれだけの意味があるのか、美桜にはわからない。尋ねるべき相手もいないし、それに美桜にとっては、たいした問題ではなかった。
美桜に関係してくる事柄は、夏休みに入ったということで美桜もいつも以上に旅館の手伝いをしなければいけないということだった。普段は部屋のふたつ三つが埋まっていればいいほうだという羽澄旅館も、休暇の季節には忙しくなる。もちろん美桜も労働力に数えられていて、美桜もそのつもりでいる。
特に、女将のいない今では。
野球部の面々が到着したのは、七月二十八日の昼すぎのことだった。盆のはじまりまで滞在するという彼らは、顧問の男性教諭とともに、運動部らしい元気で少し威圧的な挨拶をした。
「よろしくお願いします!」
くりくりの坊主頭の男子生徒たちが、揃って帽子を取って深々と頭を下げる。酔えば乱暴に美桜に手を上げる父も、客を前にはにこやかだ。こうやって部活の合宿を受け入れることも初めてではない。主たる父は、鷹揚に彼らを迎えた。
「こんな田舎ですが、頑張ってトレーニングしていってくださいね」
「ありがとうございます!」
三年生はすでに引退し、一年生と二年生が揃っているという野球部の面々は再び頭を下げ、顔をあげると素早い動作で再び帽子をかぶる。
その中でももっとも背が高く、体格のいい生徒が歩み出た。すっと伸びた背が気持ちいい。坊主頭のせいで少々残念なところはあるが、それでもちらりと上目遣いに見ただけでも、彼が整った容貌をしているというのがわかる。彼は、声を張りあげた。
「自分、主将の平屋
ひらや
颯一
そういち
と申します!」
「そうか、平屋くん。よろしくね」
美桜は、父の少し後ろに立っていた。うつむきがちに客たちを迎えていたのだけれど、颯一の声のはっきりとした涼やかさに思わずぱっと、顔をあげた。
颯一と、目が合う。はっきりと視線が交差した。颯一は少し驚いたように美桜を見て、そしてにっこりと微笑んだのだ。
(あ、……)
それは、ほんの一瞬だった。颯一も、顧問の教諭や滞在先の主の前で少女に愛想を振りまくなどということは不謹慎だとわかっているだろう。それでも彼は、確かに笑った。彼は美桜を見て、それはかわいらしく咲く花を前に思わずこぼれた笑みのようだった。颯一自身、無意識だったのかもしれない。
彼の一瞬の笑顔を前に、美桜は怖じ気づいた。思わず一歩後ろに下がり、颯一から目を離してしまう。建物に入るように勧めている父の言葉を背に、そっと美桜はその場を離れた。
ひとり急いで中に入り、客たちを迎える準備に手抜かりがないか確かめるべく、部屋部屋を覗いていく。その間にも、湧きあがった恐怖が増幅していくのを感じていた。
(いやな、予感……)
悪寒がする。それは母の出ていく前日の夜に感じたもののようだ、と美桜は思った。
野球部の到着の、夜のことだった。
美桜は、ポーチを片手に表に出た。すでに日付は変わっている。たくさんの客で盛況の羽澄旅館も、今は静かだ。
野球部の部員たちは、昼食後はやばやと始まった練習のためにすぐいなくなり、戻ってきた誰もが池に飛び込んだのかと思うほどの汗をかいていた。彼らが夕食を終え、夜の練習ののち風呂も終えて、就寝したのは先ほどのことだった。
今日半日だけで、すべてが戦争のようだった。特に食事のとき、美桜の受け持ったのは主に米を炊く仕事だったけれど、ひとりあたり二合も食べるというのは尋常ではない。なんでも食べて体を作ることもトレーニングのひとつらしく、特に一年生の部員たちは今にも泣き出しそうな顔をして白米を口に運んでいた。
そのような顔をして食べられては食べもののほうも嬉しくないだろうし、作ったほうも甲斐がない。しかし客の行動に口出しできるはずもないし、大量に残されるよりは舐めたようになった食器が厨房に戻ってきたほうが、ましだ。
今までも、こういったスポーツの団体が合宿として羽澄旅館を使用したことがあった。しかし美桜の最後の記憶では、これほどに戦場めいた団体ではなかった。それにそのころはまだ母がいたし、美桜も小学生だったのでたいした仕事はなかった。実質、美桜が羽澄旅館の戦力として本格的に数えられるのは、これが初めてだといえる。
美桜は野球はよく知らないし、スポーツそのものにもあまり興味はない。しかし到着早々、向う山を駆け足で何往復もするというハードなトレーニングをこなすところといい、食べる量の半端なさといい、彼らは高校生になれば甲子園出場を目指すようなレベルの部員たちなのかもしれない。
明日も、羽澄旅館は戦場だろう。主に、厨房が。そのためにも、また家の手伝いばかりではなく夏休みの宿題を計画的にこなすためにも、美桜も表に出ている時間はないのだ。それでも。
美桜はポーチを握りしめ、一歩踏み出した先、聞こえた音に耳を澄ませた。
「……あ」
しゅっ、しゅっ、と音がする。規則正しく空気を切る音に、いったいなにかと耳をそばだてた。ひょいと庭に顔を覗かせると、ひとりで素振りをしている少年がいる。
(自主トレ……?)
野球部のひとりだろう。懸命に繰り返しバットを振っている後ろ姿は、スポーツに興味のない美桜にも、その懸命さを頼もしく思わせる。
よほど、野球が好きなのだろう。こうやって迎え入れた以上、もう美桜もまったく無関係ではない。この夏は少し、高校野球の中継でも観てみようか――そう思ってしまうほどの、熱心さだった。
「あ」
素振りをしていた少年が、バットをとめた。大きく息を吐きながら彼は振り返り、美桜と目があった。
「お世話になっています!」
夜のこと、最初に挨拶をされたときほどに大きな声ではないが、それでも充分あたりに響き渡る声で、少年は言った。暗がりの中、よく見ればそれは平屋颯一――野球部の、主将だった。
「すみません、うるさかったですか?」
「いいえ、そういうわけでは……」
夜中、ポーチを持って、ひとり。美桜がここにいるわけを、颯一はどう思っただろうか。美桜はとっさに、ポーチを背後に隠した。颯一の目は美桜の動きと一緒に動いたけれど、彼はそのことについてはなにも言わなかった。
「大勢で、すみません。でもここ、トレーニングにちょうどいいところですね」
「そうですか……? なにもない、田舎なのに」
颯一は少し驚いた顔をし、とんでもないと首を左右に振った。
「そんなことないです。向うの山は足腰の鍛錬に最適だし、グラウンドもあるし、庭も広いし。なんといっても、食事が美味いです」
「ありがとうございます……」
美桜も一応は、食事を作る一端に加わったひとりだ。頭を下げて、美桜は礼を言う。颯一も同じように頭を下げて、中学生ふたりはぺこぺこと会釈をしあった。
「ここでトレーニングさせてもらったら、秋の大会ではいい記録残せそうです」
「……そうなんですか」
『いい成績』というのが具体的にどういうものを指すのかよくわからなかったので、曖昧な調子で美桜は答えた。美桜の返事に少し残念そうな顔をしたものの、颯一はすぐに明るい笑顔を取り戻す。
(……あ)
彼らがここにやってきたとき、元気よく挨拶をした彼が見せた笑顔だ。あのとき、確かに美桜と目が合った。颯一は、かわいい人形でも見つけたような笑顔を見せて、微笑んだのだ。
あの笑みが、なぜかよくないものを感じさせて戸惑ったことを思い出す。なぜあのとき、母が出ていったことまで思い出したのだろうか。美桜は思わず一歩後ずさりをして、しかし颯一の声がそれをとめる。
「お出かけですか?」
「え、……い、え……」
出かけようとしたのは確かだけれど、それを颯一に知られるわけにはいかない。美桜は背後に隠したポーチを、ぎゅっと握りしめた。
「夜、遅いし。危ないことがあったらなんだから、ついていきましょうか?」
「いえ、いいえ! いいですっ!」
ぶんぶんと、美桜は大きく首を左右に振った。そんな美桜を、颯一は不思議そうに見やっている。訝しがられるようなことがあってはいけない。そう思えば思うほど、自分が挙動不審になっていることに美桜は気がついていた。
「いいんです、練習、続けてください」
「でも……」
颯一は、怪しむように美桜の隠したポーチを見やっている。後ろにまわした両手でぎゅっと、剃刀の入ったポーチを握りしめながら、美桜は力強く颯一を説得するように言う。
「もう、出かけませんから。気にしないでください、わたしのことは」
「俺、邪魔しました?」
申し訳なさそうに眉根を寄せてそう言う颯一を前に、また首を振る。
「……すみませんっ!」
美桜は、颯一を驚かせるような声でそう言って、ばさっと髪を揺らしながら頭を下げた。そしてポーチを握りしめたまま、もときた道を走り出す。
「あ、あのっ!」
呼び止める颯一を振り払い、旅館の裏口に走る。もう誰もいない厨房を抜けようとしたとき、流し台の前に立っている人影に気がついて、美桜は思わず声をあげかけた。
「なんだ、美桜」
きゅっ、ざぁ、と音がして、なにかを洗い始めたのは父だ。流し台の上の小さな電灯しか点けていないものだから、薄暗い中、のそりと立っている父の姿は美桜に恐怖を与えた。
父は、顔だけを向けて美桜を見た。さすがに今は酔っていないようだけれど、このような場所でふたりきり、顔をあわせるだけで美桜は脅えた。同時に父に与えられる暴力も清めなのだと思い起こし、脅えていてはいけないと自分を鼓舞する。
「なんて顔、してるんだ」
「なんでも、ない……」
ぎゅっと、ポーチを握りしめた。父はそんな美桜に訝しげな顔をしたものの、また洗いものに戻った。それ以上はなにも言われないことにほっとしながら、美桜はできるだけ足音を立てないように、父の後ろをすり抜けようとした。
「おい、美桜」
流し台に顔を向けたまま、父が言った。美桜はびくりとして足をとめ、父がなにを言うのかと全身を強ばらせて聞き耳を立てた。
「どこに行ってた」
「どこって……、別に」
ぎゅ、とポーチを掴む手に力を込めて、美桜は小さな声でつぶやく。愛想のない娘の返事に、父は洗いものの手をとめる。振り返り美桜を見て、その視線にどきりとした。
「別には、ないだろう。父親に向かって、その態度はなんだ」
「だって、本当になんでもないんだもん……」
父の目にポーチが映らないように、両手を固く後ろにまわしたまま、美桜は言った。
「こんな時間に、うろうろするな。早く寝ろ」
かちゃかちゃ、というのは何の音だろう。なにを洗っているのだろうと思ったけれど、今は酔っていないとはいえ父に近づく気は、毛頭なかった。
「今は、忙しいときだ。早く寝ろ。明日もまた、今日みたいに戦争だぞ」
「うん」
その言葉は確かにそのとおりだったので、美桜は素直にうなずいた。そして小さな声で「おやすみ」と言うと、父に背を向けた。
「……美桜」
父の声が、近づいた。美桜ははっとする。父は美桜に顔を向けていて、じっとこちらを見つめている。
「な、に……」
「おまえ」
手は濡れたまま、まるで探るように美桜を見やってくる。美桜は息を呑み、今にもその手が、口が、美桜の恐れる行為をなすのではないかと、恐れた。
「こんな時間に、外に出てるのか」
「あ、つい……か、ら……」
責める父の口調に、美桜は息を呑み下しながら掠れた声で言った。ポーチを掴む手に、力が入る。父はすべてを見抜いているのではないだろうか。そんな不安がよぎる。
――知られて……見られちゃ、だめなのに。だめなのに。
「暑いなら、その長袖を脱げばいいだろう?」
ぎくり、と美桜は震える。母が出て行ってから、酒を呑んで美桜を殴る以外はほとんど構ってこなかった。夏なのに長袖を着ていることにも、今までまったく見えていないかのように、言及してくることもなかった父なのに。
「どうして、長袖着てるんだ。おかしなやつだ」
「こ、れは……」
野球部の者たちがやってきて、旅館が忙しくなったことが父をもと通りの父にしたのだろうか。娘の異常に気づくだけの、普通の感覚を取り戻させたのだろうか。
それは皮肉なことだと思ったけれど、それよりも今、目の前にある父の視線に美桜は脅えた。知られることに、見られることに。
――清めの儀式は、決して人目に触れてはいけない。
「好きな恰好すればいいが、暑くて外に出るくらいなのに、長袖着てるなんて……わけのわからないことを、するな」
美桜は、息を詰めてうなずいた。無理やりにでも、着ている長袖のTシャツを脱がされてしまうことになればどうしよう――脅えて美桜は、氷の像のように固まってしまう。
「いくらここが田舎でも、おかしなやつがいないとも限らないんだぞ。こんな夜中に、うろうろするな。さっさと寝てしまえ」
「……はい」
無理に脱がされるようなことはないらしい。父親らしい心配をする父を前に、美桜は素直な気持ちになってうなずいた。そんな美桜を改めてじっと見て、その探るような視線に美桜はまた震える。
「まったく、年ごろの娘の考えは、わからん」
ふぅ、とため息をついた父は、再び洗い場に顔を向けた。流れる水の音にほっとしながら、美桜は就寝の挨拶を繰り返し、急いで厨房から離れる。
――清めなくちゃ、清めなくちゃ。
先ほど颯一と話したことが、目に見えない糸のようになって美桜に絡みついているような気がする。彼が東京から来たということが、その糸を美桜に穢らわしいものと感じさせた。
――お母さんみたいに、なっちゃだめ。
東京から来た男に走り、夫を捨て娘を捨てた、女のようになってはいけない。なりたくない、なってしまうのが恐ろしい――清めなくちゃ。清めなくちゃ。罪深い女の血を引く自分は、血を流し清め地蔵に縋ることで、清められなくてはいけない――。
「は、ぁ……」
部屋のドアを後ろ手に閉じ、美桜は大きく息をつく。握りしめたままのポーチの中の、剃刀の刃の輝きを思った。
開け放した窓の外からは、しゅっ、しゅっと音が続いている。颯一のバットの音だ。厨房からは微かな水の音。
――清めなくちゃ、清めなくちゃ。
美桜は、ゆっくりと手をあげた。ふわり、と床に座り込む。ひやりとした畳の感触が、体中を駆けのぼる。その冷たさに圧されるように、美桜はポーチを開けた。
取り出したのは、プラスチックのカバーの嵌められた剃刀。ゆっくりと息を吐きながら、カバーをはずす。月のきらめきを反射する刃を見つめながら、右手で左手首の包帯をはずす。
しゅるり、と包帯が畳のうえに渦巻きを描く。現われた、傷だらけの手首。
それを見つめ、刃を振りかざすと、美桜はいつもの儀式に身を委ねた。
†
颯一たちの一同が、羽澄旅館に居を構えて三日。
戦争のような食事の準備にも少しだけ、慣れた。ついで羽澄旅館に勤めている者だけではなく手伝いの女性たちも何人か増え、美桜の仕事も楽になった。
相変わらず一日二合の白米を食べる選手たち、掛ける四十人以上となれば研ぐ手間だけでも半端ではないが、何かに熱中していられるというのは意外と楽しいことであるということにも、美桜は気がついた。
客の世話の間に間に、宿題もしなくてはならない。客が帰るのは盆の前だと聞いているが、それまでこのような日が続くのだ。大変ではあるが、思いのほか楽しい日々。
選手たちが大量の朝食を摂り午後のトレーニングに向かった、昼下がり。厨房にひとり、昼食の後片づけをしていた美桜は、勝手口から聞こえた声に振り返った。
「羽澄さーん」
顔を覗かせているのは、クラスの同級生。四人はそれぞれ、好奇心を隠さない表情で羽澄旅館の厨房を覗きこんでいた。
賀村咲希、月野木咲良、寺瀬玲奈、そして後明優芽。それぞれ、ポニーテールにショートカット、ストレートロングにツインテールの髪型を評して、クラスの男子が彼女たちを動物に喩えていたことを思い出す。
「大変ね。東京の学校の、野球部が来てるんでしょ?」
「毎日、おっきな掛け声でランニングしていくんだもん。いやでもわかるよねぇ」
「羽澄さんも、お手伝いしてるの? あれだけの人数、ご飯だけでもすごそうだよね」
「何十人前とか、想像できないんだけど?」
美桜は彼女たちから目を逸らせ、とっさに包帯の巻かれた左手首を隠す。
それがリストカットの痕だと、転校生の城戸崎海翔の前であげつらわれた記憶は新しい。そうでなくても、あまり気のあうクラスメイトたちではないのだ。
そんな美桜の仕草を、にやにやしながら見ていた四人の中、くるり、と大きな瞳を美桜に向けている咲希が、言った。
「ねぇ、あたしたちに、バイトさせてくれない?」
「……え」
思わぬ申し出に、美桜は驚いて彼女たちを見やった。それを言うために来たのだろう、四人は口を揃える。
「バイト料なんて、そんなに多くなくてもいいからさ」
「手、多いほうがいいんじゃない?」
「あたし、お料理できるよ。お掃除だって」
「お布団干すだけだって、大変でしょう?」
用意してきたのであろう言葉を、一気に浴びせかけられた。美桜はぱちくりと目をしばたたかせるばかりだけど、咲希たちはまるで断わられることなどないと確信しているかのように、なおも美桜をにやにやと見つめている。
「バイト、させてよ。絶対、役に立つからさ」
「……お父さんに、聞いてみないと」
美桜の言葉に、四人は一様に落胆した顔をした。しかし美桜の反応は当然のことであるはずだ。中学生の美桜に、バイトを雇う約束などできるわけがない。羽澄旅館の主であり、旅館に関する権限を持つのは父なのだから。
「じゃあ、早くおじさんとこ、行ってきてよ」
急かす気持ちを隠しもせずに、咲希が追い立てる。ほかの三人も、視線で美桜を追いつめた。
「ねぇ、早く。おじさん、いるんでしょ?」
「さっき、駐車場のほうで音、してたよ」
美桜は怯んだ。彼女たちを雇う雇わないの問題ではない、その勢いにたじろいだのだ。同時に、美桜をリストカッターだと侮る彼女たちと、夏休みだというのに毎日顔をあわせることになってしまったらどうしよう。美桜のためらいは、そこにもあった。
左の手首に、ぎゅっと手を置く。指の間から、白い包帯が覗く。それを咲希たちが見ているかどうかはわからないけれど、彼女たちと一緒にいることになれば、隠しきることはできないだろう。
「羽澄さん」
ぐい、と咲希が身を乗り出した。じっと顔を見つめられ、美桜は息を呑む。
「あの人、カッコよくない?」
「え、っ……?」
彼女の言葉の意味が、わからない。目を見開いた美桜に、咲希はもどかしそうな顔をした。
「東京から、来た子たちよ。特に、あのキャプテンの人」
どきり、と美桜の胸が鳴った。颯一のことだ。彼は、毎晩ひとりでバットを振っている。しかも美桜を見かけるたびに、にこやかになにかと話しかけてくる。そのせいで美桜はなかなか夜中に外に出られずに、清め地蔵の前での儀式は中断したままだ。
ねぇ、と四人が唱和する。颯一は確かに整った顔をしているとは思うけれど、美桜はそれに対してどうこうと感じることはなかったので、咲希たちの言葉に驚いてしまったくらいだ。
「ほかにもカッコいい人、いるよ。あの、背の高い人。それとか、ちょっとだけ髪長い、あの人とか」
「そうそう、みんな丸坊主なのが残念だよねー」
同じ屋根の下にいる美桜もそこまでは覚えていないのに、次々と出てくる彼女たちの言葉に、目を白黒させてしまう。そんな美桜に、咲希はきっと視線を向けて言う。
「だから。早く、おじさんに聞いてきてよ。あたしたち、今からでも働くからさ」
「あ……、う、ん……」
父がどう言うかなど、まったく見当がつかないのだけれど。しかし毎日が戦争の中、中学生といえども手が増えるのは助かることなのかもしれない。
「じゃあ、ちょっと訊いてくる」
美桜は、踵を返した。同級生たちの期待の視線を受けて、それが何とも居心地が悪かった。
戻ってきた美桜を見て、咲希たちは目をつりあげた。
「だめだって。中学生は、いらないって」
どうしてよ、なんでよ、と四人は声を揃える。そのように言われても、と美桜は困惑した。しかしまるで美桜がそう仕向けたかのように、咲希たちは怒声をあげるのだ。
「忙しいんでしょう? わたしたちがいたほうが、いいじゃないの」
「中学生だからいらないってなに? ちゃんと働けるって、言ってるじゃない!」
怒りを向けられて、思わずうつむいてしまう。そのようなことを言われても、美桜の咎ではないのだ。しかしそんな美桜をなおも責めるように、咲希たちはまくし立てた。
「羽澄さん、ちゃんと頼んだの?」
「あたしたちのこと、本当に言ってくれたの? 適当なこと言ったんじゃないの?」
「せっかく来たのに、ひどいわ。どうしてよ!?」
四人に一気に責められて、美桜は体を小さくしてしまう。長袖に包まれた体が、じりじりと灼ける。炎天下の中、四人は揃って美桜を睨みつけた。
「独り占めする気?」
「……独り占め?」
美桜は、思わず顔をあげた。咲希たちは、裏切り者を見るような表情で美桜を見やっている。
「あの人たちと、ひとりで仲よくなる気なんじゃないの?」
「な、に……?」
咲希の言う意味がわからない。美桜は何度もまばたきをしながら咲希を見つめ、咲希はむっと眉をしかめている。ほかの三人も、同様だった。
「あの、カッコいいキャプテンとか。自分だけ仲よくなって、独り占めしようって魂胆じゃないの?」
「そんなこと……」
言われた言葉に、美桜は驚くばかりだ。しかしそんな美桜の魂胆とやらをすっかり信じ込んでいるかのような咲希は、咲良に玲奈に優芽は、見下すように睨みつけるのだ。
「東京から、来た人たちだもんね」
「独り占めして、彼女になって。着いていくつもりじゃないの?」
「おばさんみたいに、さ」
「そうそう、羽澄さんの、お母さんみたいに」
思わず、左の手首を押さえた。ずくり、と体の傷が疼くような気がした――美桜は息を呑み、自分を見下ろす少女たちを見つめる。彼女たちは目をすがめ、軽蔑するように美桜をじっと見やっている。
「そ、んなこと……、ない、わ」
わななく美桜の言葉を、咲希は一蹴する。
「わかんないわよ。あの、おばさんの娘なんだもん」
「同じようなこと、考えてるかもね」
「するんじゃないの? 同じようなこと」
美桜のくちびるが震える。少女たちの視線に晒されて、真夏の陽射しの中で美桜はわななく。それは恐怖と、嫌悪と――衝動、だった。
(清めなくちゃ……)
ぶるり、と震えながら、美桜は思った。
(清めなくちゃ、清めなくちゃ……早く、早く。わたしを、清めて……)
「だって、リスカするくらい、いやなんでしょ?」
「これ見よがしに、こんな包帯なんて巻いちゃってさ!」
いきなり手を伸ばしたのは、ショートカットの、咲良だ。スポーツで鍛えた力強い手が美桜の手首を掴む。美桜が眉をしかめたのは、突然のことに驚いたのと、強く掴まれて傷がずくりと痛んだからだ。
「自分を気にして、構って、って。いつもそんな顔しちゃって、いやな感じ!」
「同情してほしいんじゃないの? お母さんに捨てられたんだからってさ」
ぱくぱく、と美桜は口を動かした。違う、と言いたかった。しかし少女たちは残酷に、真実を綴り出す。
「お母さん、オトコ作って出ていったんだもんね」
「きっと、羽澄さんのことも嫌いだったんだよ」
「じゃないと、娘放っておいて東京に逃げたりしないよねぇ」
「東京のどこにいるかも、わかんないんでしょう? 連絡とかもないの?」
ひくり、と美桜はくちびるを震わせた。
母からは、電話のひとつ、メールの一本もない。彼女たちの言うとおり、東京から来た男と逃げたまま、生死さえも不明なのだ。
「おじさんのことはともかくさぁ……娘のことは、普通気にするよね」
「それでも、全然連絡ないってことはさ」
「嫌われてたんじゃないの? 娘のこと、嫌いだったんだよ」
美桜の腕を掴む、咲良の手に力が込められる。痛っ、と小さく叫んだけれど、咲良の手の力はゆるまない。それどころか、ますます強く握りしめられるのだ。
「そうそう、羽澄さんのこと嫌いで、だから出ていったんだ」
「だって、子供のことがあるから離婚したいのに我慢するって話は聞いたことあっても、娘捨てるなんて、ねぇ」
「そんな話、聞いたことない。おばさん、羽澄さんがいやで出ていったんだ」
「だって、こんなことする子なんだもん」
ぎりぎりと握られて、傷のうえを包む包帯にうっすらと血が滲みはじめる。清め地蔵のところには行けないから、自室でひとりでつけた傷。幾重にも重なった肉の盛りあがった痕に、新たに昨日切り裂いた傷。清めのための、神聖な儀式。
「リスカする娘なんて、いやだよね」
「気持ち悪い」
少女たちが、声を揃える。
「ウザ。キモ。すっごく変」
「羽澄さん、ちょっと……かなり、おかしいよね」
どくん、と美桜の胸が震える。涙がこぼれそうなくらい、瞠目する。きゃはは、と少女たちが笑う声がこだまする。
「おかしいおかしい。だから、お母さんも……」
目を大きく見開き、小刻みに震える美桜の背後、足音がした。少女たちは、はっとそちらを見る。美桜は、足音だけでわかった。羽澄旅館で働いている、母くらいの歳の女性だ。
「あら、美桜ちゃん。お友達が来てるの?」
「あ、こんにちはー」
ぱっと手を離されて、美桜はよろめいた。そんな美桜に構わず、まるで今まで楽しい話をしていたかのように咲希は言った。
「お邪魔してます。すみません、こんなところで」
咲良も玲奈も、優芽も明るく挨拶をする。掴まれていた美桜の左手は解放された。パートの女性は、それを見なかっただろうと思うくらいにさりげない動きだ。見咎められないことを計算してだということは、触れられていた美桜に一番はっきりと伝わってきた。
「まぁまぁ。感心ね。きちんとした挨拶だこと」
中学生相手にしては少々子供扱いの言葉だけれど、女性はにこやかにそう言った。咲希が一瞬だけ舌打ちをしたのを美桜は聞いたけれど、近くにいる者でなければ聞き取れないような、小さな小さな舌打ちだったので、女性はそれに気づかなかっただろう。
「あがって、麦茶でも飲む? 美桜ちゃんも、飲むでしょ?」
「いいえ、もう帰ります」
美桜が何をも言う前に、咲希がやはり明るい声でそう言った。
「また、遊びにきますから」
「失礼しますー」
咲希たちは声を揃え、ぺこりと礼をする。女性は少女たちの礼儀正しさに感嘆の声をあげ、また「まぁまぁ」と、にこやかな笑みを見せる。
咲希たちは、美桜のことなど忘れてしまったかのように立ち去った。それにほっとはしたものの、ぎりぎりと締めあげられた手首が痛い。薄く血の滲んだ包帯を長袖の端で隠しながら、美桜は厨房に入った。
「あんな暑いところで、なにしてたの」
パートの女性は、うっすらと汗をかいている美桜を訝しげに見た。しかし美桜は、彼女を見ずに首を横に振る。美桜があまり話さないのはいつものことなので、特に気にされた様子はない。厨房を出て自分の部屋に戻ろうとする美桜の背に、声がかかった。
「美桜ちゃん、麦茶、飲まないの?」
「……いらないです」
そう言って、美桜はひとりになった。ずく、ずく、と鼓動を刻みながら痛む手首を押さえる美桜の頭の中では、ただひとつの言葉だけが渦巻いていた。
旅館すべての部屋を使うという客は、東京のある中学校の野球部だという。総勢四十人以上もの野球部員たちが、伊江田村で合宿をするのだという。
わざわざ東京から、しかもこのような田舎で合宿をすることにどれだけの意味があるのか、美桜にはわからない。尋ねるべき相手もいないし、それに美桜にとっては、たいした問題ではなかった。
美桜に関係してくる事柄は、夏休みに入ったということで美桜もいつも以上に旅館の手伝いをしなければいけないということだった。普段は部屋のふたつ三つが埋まっていればいいほうだという羽澄旅館も、休暇の季節には忙しくなる。もちろん美桜も労働力に数えられていて、美桜もそのつもりでいる。
特に、女将のいない今では。
野球部の面々が到着したのは、七月二十八日の昼すぎのことだった。盆のはじまりまで滞在するという彼らは、顧問の男性教諭とともに、運動部らしい元気で少し威圧的な挨拶をした。
「よろしくお願いします!」
くりくりの坊主頭の男子生徒たちが、揃って帽子を取って深々と頭を下げる。酔えば乱暴に美桜に手を上げる父も、客を前にはにこやかだ。こうやって部活の合宿を受け入れることも初めてではない。主たる父は、鷹揚に彼らを迎えた。
「こんな田舎ですが、頑張ってトレーニングしていってくださいね」
「ありがとうございます!」
三年生はすでに引退し、一年生と二年生が揃っているという野球部の面々は再び頭を下げ、顔をあげると素早い動作で再び帽子をかぶる。
その中でももっとも背が高く、体格のいい生徒が歩み出た。すっと伸びた背が気持ちいい。坊主頭のせいで少々残念なところはあるが、それでもちらりと上目遣いに見ただけでも、彼が整った容貌をしているというのがわかる。彼は、声を張りあげた。
「自分、主将の平屋
ひらや
颯一
そういち
と申します!」
「そうか、平屋くん。よろしくね」
美桜は、父の少し後ろに立っていた。うつむきがちに客たちを迎えていたのだけれど、颯一の声のはっきりとした涼やかさに思わずぱっと、顔をあげた。
颯一と、目が合う。はっきりと視線が交差した。颯一は少し驚いたように美桜を見て、そしてにっこりと微笑んだのだ。
(あ、……)
それは、ほんの一瞬だった。颯一も、顧問の教諭や滞在先の主の前で少女に愛想を振りまくなどということは不謹慎だとわかっているだろう。それでも彼は、確かに笑った。彼は美桜を見て、それはかわいらしく咲く花を前に思わずこぼれた笑みのようだった。颯一自身、無意識だったのかもしれない。
彼の一瞬の笑顔を前に、美桜は怖じ気づいた。思わず一歩後ろに下がり、颯一から目を離してしまう。建物に入るように勧めている父の言葉を背に、そっと美桜はその場を離れた。
ひとり急いで中に入り、客たちを迎える準備に手抜かりがないか確かめるべく、部屋部屋を覗いていく。その間にも、湧きあがった恐怖が増幅していくのを感じていた。
(いやな、予感……)
悪寒がする。それは母の出ていく前日の夜に感じたもののようだ、と美桜は思った。
野球部の到着の、夜のことだった。
美桜は、ポーチを片手に表に出た。すでに日付は変わっている。たくさんの客で盛況の羽澄旅館も、今は静かだ。
野球部の部員たちは、昼食後はやばやと始まった練習のためにすぐいなくなり、戻ってきた誰もが池に飛び込んだのかと思うほどの汗をかいていた。彼らが夕食を終え、夜の練習ののち風呂も終えて、就寝したのは先ほどのことだった。
今日半日だけで、すべてが戦争のようだった。特に食事のとき、美桜の受け持ったのは主に米を炊く仕事だったけれど、ひとりあたり二合も食べるというのは尋常ではない。なんでも食べて体を作ることもトレーニングのひとつらしく、特に一年生の部員たちは今にも泣き出しそうな顔をして白米を口に運んでいた。
そのような顔をして食べられては食べもののほうも嬉しくないだろうし、作ったほうも甲斐がない。しかし客の行動に口出しできるはずもないし、大量に残されるよりは舐めたようになった食器が厨房に戻ってきたほうが、ましだ。
今までも、こういったスポーツの団体が合宿として羽澄旅館を使用したことがあった。しかし美桜の最後の記憶では、これほどに戦場めいた団体ではなかった。それにそのころはまだ母がいたし、美桜も小学生だったのでたいした仕事はなかった。実質、美桜が羽澄旅館の戦力として本格的に数えられるのは、これが初めてだといえる。
美桜は野球はよく知らないし、スポーツそのものにもあまり興味はない。しかし到着早々、向う山を駆け足で何往復もするというハードなトレーニングをこなすところといい、食べる量の半端なさといい、彼らは高校生になれば甲子園出場を目指すようなレベルの部員たちなのかもしれない。
明日も、羽澄旅館は戦場だろう。主に、厨房が。そのためにも、また家の手伝いばかりではなく夏休みの宿題を計画的にこなすためにも、美桜も表に出ている時間はないのだ。それでも。
美桜はポーチを握りしめ、一歩踏み出した先、聞こえた音に耳を澄ませた。
「……あ」
しゅっ、しゅっ、と音がする。規則正しく空気を切る音に、いったいなにかと耳をそばだてた。ひょいと庭に顔を覗かせると、ひとりで素振りをしている少年がいる。
(自主トレ……?)
野球部のひとりだろう。懸命に繰り返しバットを振っている後ろ姿は、スポーツに興味のない美桜にも、その懸命さを頼もしく思わせる。
よほど、野球が好きなのだろう。こうやって迎え入れた以上、もう美桜もまったく無関係ではない。この夏は少し、高校野球の中継でも観てみようか――そう思ってしまうほどの、熱心さだった。
「あ」
素振りをしていた少年が、バットをとめた。大きく息を吐きながら彼は振り返り、美桜と目があった。
「お世話になっています!」
夜のこと、最初に挨拶をされたときほどに大きな声ではないが、それでも充分あたりに響き渡る声で、少年は言った。暗がりの中、よく見ればそれは平屋颯一――野球部の、主将だった。
「すみません、うるさかったですか?」
「いいえ、そういうわけでは……」
夜中、ポーチを持って、ひとり。美桜がここにいるわけを、颯一はどう思っただろうか。美桜はとっさに、ポーチを背後に隠した。颯一の目は美桜の動きと一緒に動いたけれど、彼はそのことについてはなにも言わなかった。
「大勢で、すみません。でもここ、トレーニングにちょうどいいところですね」
「そうですか……? なにもない、田舎なのに」
颯一は少し驚いた顔をし、とんでもないと首を左右に振った。
「そんなことないです。向うの山は足腰の鍛錬に最適だし、グラウンドもあるし、庭も広いし。なんといっても、食事が美味いです」
「ありがとうございます……」
美桜も一応は、食事を作る一端に加わったひとりだ。頭を下げて、美桜は礼を言う。颯一も同じように頭を下げて、中学生ふたりはぺこぺこと会釈をしあった。
「ここでトレーニングさせてもらったら、秋の大会ではいい記録残せそうです」
「……そうなんですか」
『いい成績』というのが具体的にどういうものを指すのかよくわからなかったので、曖昧な調子で美桜は答えた。美桜の返事に少し残念そうな顔をしたものの、颯一はすぐに明るい笑顔を取り戻す。
(……あ)
彼らがここにやってきたとき、元気よく挨拶をした彼が見せた笑顔だ。あのとき、確かに美桜と目が合った。颯一は、かわいい人形でも見つけたような笑顔を見せて、微笑んだのだ。
あの笑みが、なぜかよくないものを感じさせて戸惑ったことを思い出す。なぜあのとき、母が出ていったことまで思い出したのだろうか。美桜は思わず一歩後ずさりをして、しかし颯一の声がそれをとめる。
「お出かけですか?」
「え、……い、え……」
出かけようとしたのは確かだけれど、それを颯一に知られるわけにはいかない。美桜は背後に隠したポーチを、ぎゅっと握りしめた。
「夜、遅いし。危ないことがあったらなんだから、ついていきましょうか?」
「いえ、いいえ! いいですっ!」
ぶんぶんと、美桜は大きく首を左右に振った。そんな美桜を、颯一は不思議そうに見やっている。訝しがられるようなことがあってはいけない。そう思えば思うほど、自分が挙動不審になっていることに美桜は気がついていた。
「いいんです、練習、続けてください」
「でも……」
颯一は、怪しむように美桜の隠したポーチを見やっている。後ろにまわした両手でぎゅっと、剃刀の入ったポーチを握りしめながら、美桜は力強く颯一を説得するように言う。
「もう、出かけませんから。気にしないでください、わたしのことは」
「俺、邪魔しました?」
申し訳なさそうに眉根を寄せてそう言う颯一を前に、また首を振る。
「……すみませんっ!」
美桜は、颯一を驚かせるような声でそう言って、ばさっと髪を揺らしながら頭を下げた。そしてポーチを握りしめたまま、もときた道を走り出す。
「あ、あのっ!」
呼び止める颯一を振り払い、旅館の裏口に走る。もう誰もいない厨房を抜けようとしたとき、流し台の前に立っている人影に気がついて、美桜は思わず声をあげかけた。
「なんだ、美桜」
きゅっ、ざぁ、と音がして、なにかを洗い始めたのは父だ。流し台の上の小さな電灯しか点けていないものだから、薄暗い中、のそりと立っている父の姿は美桜に恐怖を与えた。
父は、顔だけを向けて美桜を見た。さすがに今は酔っていないようだけれど、このような場所でふたりきり、顔をあわせるだけで美桜は脅えた。同時に父に与えられる暴力も清めなのだと思い起こし、脅えていてはいけないと自分を鼓舞する。
「なんて顔、してるんだ」
「なんでも、ない……」
ぎゅっと、ポーチを握りしめた。父はそんな美桜に訝しげな顔をしたものの、また洗いものに戻った。それ以上はなにも言われないことにほっとしながら、美桜はできるだけ足音を立てないように、父の後ろをすり抜けようとした。
「おい、美桜」
流し台に顔を向けたまま、父が言った。美桜はびくりとして足をとめ、父がなにを言うのかと全身を強ばらせて聞き耳を立てた。
「どこに行ってた」
「どこって……、別に」
ぎゅ、とポーチを掴む手に力を込めて、美桜は小さな声でつぶやく。愛想のない娘の返事に、父は洗いものの手をとめる。振り返り美桜を見て、その視線にどきりとした。
「別には、ないだろう。父親に向かって、その態度はなんだ」
「だって、本当になんでもないんだもん……」
父の目にポーチが映らないように、両手を固く後ろにまわしたまま、美桜は言った。
「こんな時間に、うろうろするな。早く寝ろ」
かちゃかちゃ、というのは何の音だろう。なにを洗っているのだろうと思ったけれど、今は酔っていないとはいえ父に近づく気は、毛頭なかった。
「今は、忙しいときだ。早く寝ろ。明日もまた、今日みたいに戦争だぞ」
「うん」
その言葉は確かにそのとおりだったので、美桜は素直にうなずいた。そして小さな声で「おやすみ」と言うと、父に背を向けた。
「……美桜」
父の声が、近づいた。美桜ははっとする。父は美桜に顔を向けていて、じっとこちらを見つめている。
「な、に……」
「おまえ」
手は濡れたまま、まるで探るように美桜を見やってくる。美桜は息を呑み、今にもその手が、口が、美桜の恐れる行為をなすのではないかと、恐れた。
「こんな時間に、外に出てるのか」
「あ、つい……か、ら……」
責める父の口調に、美桜は息を呑み下しながら掠れた声で言った。ポーチを掴む手に、力が入る。父はすべてを見抜いているのではないだろうか。そんな不安がよぎる。
――知られて……見られちゃ、だめなのに。だめなのに。
「暑いなら、その長袖を脱げばいいだろう?」
ぎくり、と美桜は震える。母が出て行ってから、酒を呑んで美桜を殴る以外はほとんど構ってこなかった。夏なのに長袖を着ていることにも、今までまったく見えていないかのように、言及してくることもなかった父なのに。
「どうして、長袖着てるんだ。おかしなやつだ」
「こ、れは……」
野球部の者たちがやってきて、旅館が忙しくなったことが父をもと通りの父にしたのだろうか。娘の異常に気づくだけの、普通の感覚を取り戻させたのだろうか。
それは皮肉なことだと思ったけれど、それよりも今、目の前にある父の視線に美桜は脅えた。知られることに、見られることに。
――清めの儀式は、決して人目に触れてはいけない。
「好きな恰好すればいいが、暑くて外に出るくらいなのに、長袖着てるなんて……わけのわからないことを、するな」
美桜は、息を詰めてうなずいた。無理やりにでも、着ている長袖のTシャツを脱がされてしまうことになればどうしよう――脅えて美桜は、氷の像のように固まってしまう。
「いくらここが田舎でも、おかしなやつがいないとも限らないんだぞ。こんな夜中に、うろうろするな。さっさと寝てしまえ」
「……はい」
無理に脱がされるようなことはないらしい。父親らしい心配をする父を前に、美桜は素直な気持ちになってうなずいた。そんな美桜を改めてじっと見て、その探るような視線に美桜はまた震える。
「まったく、年ごろの娘の考えは、わからん」
ふぅ、とため息をついた父は、再び洗い場に顔を向けた。流れる水の音にほっとしながら、美桜は就寝の挨拶を繰り返し、急いで厨房から離れる。
――清めなくちゃ、清めなくちゃ。
先ほど颯一と話したことが、目に見えない糸のようになって美桜に絡みついているような気がする。彼が東京から来たということが、その糸を美桜に穢らわしいものと感じさせた。
――お母さんみたいに、なっちゃだめ。
東京から来た男に走り、夫を捨て娘を捨てた、女のようになってはいけない。なりたくない、なってしまうのが恐ろしい――清めなくちゃ。清めなくちゃ。罪深い女の血を引く自分は、血を流し清め地蔵に縋ることで、清められなくてはいけない――。
「は、ぁ……」
部屋のドアを後ろ手に閉じ、美桜は大きく息をつく。握りしめたままのポーチの中の、剃刀の刃の輝きを思った。
開け放した窓の外からは、しゅっ、しゅっと音が続いている。颯一のバットの音だ。厨房からは微かな水の音。
――清めなくちゃ、清めなくちゃ。
美桜は、ゆっくりと手をあげた。ふわり、と床に座り込む。ひやりとした畳の感触が、体中を駆けのぼる。その冷たさに圧されるように、美桜はポーチを開けた。
取り出したのは、プラスチックのカバーの嵌められた剃刀。ゆっくりと息を吐きながら、カバーをはずす。月のきらめきを反射する刃を見つめながら、右手で左手首の包帯をはずす。
しゅるり、と包帯が畳のうえに渦巻きを描く。現われた、傷だらけの手首。
それを見つめ、刃を振りかざすと、美桜はいつもの儀式に身を委ねた。
†
颯一たちの一同が、羽澄旅館に居を構えて三日。
戦争のような食事の準備にも少しだけ、慣れた。ついで羽澄旅館に勤めている者だけではなく手伝いの女性たちも何人か増え、美桜の仕事も楽になった。
相変わらず一日二合の白米を食べる選手たち、掛ける四十人以上となれば研ぐ手間だけでも半端ではないが、何かに熱中していられるというのは意外と楽しいことであるということにも、美桜は気がついた。
客の世話の間に間に、宿題もしなくてはならない。客が帰るのは盆の前だと聞いているが、それまでこのような日が続くのだ。大変ではあるが、思いのほか楽しい日々。
選手たちが大量の朝食を摂り午後のトレーニングに向かった、昼下がり。厨房にひとり、昼食の後片づけをしていた美桜は、勝手口から聞こえた声に振り返った。
「羽澄さーん」
顔を覗かせているのは、クラスの同級生。四人はそれぞれ、好奇心を隠さない表情で羽澄旅館の厨房を覗きこんでいた。
賀村咲希、月野木咲良、寺瀬玲奈、そして後明優芽。それぞれ、ポニーテールにショートカット、ストレートロングにツインテールの髪型を評して、クラスの男子が彼女たちを動物に喩えていたことを思い出す。
「大変ね。東京の学校の、野球部が来てるんでしょ?」
「毎日、おっきな掛け声でランニングしていくんだもん。いやでもわかるよねぇ」
「羽澄さんも、お手伝いしてるの? あれだけの人数、ご飯だけでもすごそうだよね」
「何十人前とか、想像できないんだけど?」
美桜は彼女たちから目を逸らせ、とっさに包帯の巻かれた左手首を隠す。
それがリストカットの痕だと、転校生の城戸崎海翔の前であげつらわれた記憶は新しい。そうでなくても、あまり気のあうクラスメイトたちではないのだ。
そんな美桜の仕草を、にやにやしながら見ていた四人の中、くるり、と大きな瞳を美桜に向けている咲希が、言った。
「ねぇ、あたしたちに、バイトさせてくれない?」
「……え」
思わぬ申し出に、美桜は驚いて彼女たちを見やった。それを言うために来たのだろう、四人は口を揃える。
「バイト料なんて、そんなに多くなくてもいいからさ」
「手、多いほうがいいんじゃない?」
「あたし、お料理できるよ。お掃除だって」
「お布団干すだけだって、大変でしょう?」
用意してきたのであろう言葉を、一気に浴びせかけられた。美桜はぱちくりと目をしばたたかせるばかりだけど、咲希たちはまるで断わられることなどないと確信しているかのように、なおも美桜をにやにやと見つめている。
「バイト、させてよ。絶対、役に立つからさ」
「……お父さんに、聞いてみないと」
美桜の言葉に、四人は一様に落胆した顔をした。しかし美桜の反応は当然のことであるはずだ。中学生の美桜に、バイトを雇う約束などできるわけがない。羽澄旅館の主であり、旅館に関する権限を持つのは父なのだから。
「じゃあ、早くおじさんとこ、行ってきてよ」
急かす気持ちを隠しもせずに、咲希が追い立てる。ほかの三人も、視線で美桜を追いつめた。
「ねぇ、早く。おじさん、いるんでしょ?」
「さっき、駐車場のほうで音、してたよ」
美桜は怯んだ。彼女たちを雇う雇わないの問題ではない、その勢いにたじろいだのだ。同時に、美桜をリストカッターだと侮る彼女たちと、夏休みだというのに毎日顔をあわせることになってしまったらどうしよう。美桜のためらいは、そこにもあった。
左の手首に、ぎゅっと手を置く。指の間から、白い包帯が覗く。それを咲希たちが見ているかどうかはわからないけれど、彼女たちと一緒にいることになれば、隠しきることはできないだろう。
「羽澄さん」
ぐい、と咲希が身を乗り出した。じっと顔を見つめられ、美桜は息を呑む。
「あの人、カッコよくない?」
「え、っ……?」
彼女の言葉の意味が、わからない。目を見開いた美桜に、咲希はもどかしそうな顔をした。
「東京から、来た子たちよ。特に、あのキャプテンの人」
どきり、と美桜の胸が鳴った。颯一のことだ。彼は、毎晩ひとりでバットを振っている。しかも美桜を見かけるたびに、にこやかになにかと話しかけてくる。そのせいで美桜はなかなか夜中に外に出られずに、清め地蔵の前での儀式は中断したままだ。
ねぇ、と四人が唱和する。颯一は確かに整った顔をしているとは思うけれど、美桜はそれに対してどうこうと感じることはなかったので、咲希たちの言葉に驚いてしまったくらいだ。
「ほかにもカッコいい人、いるよ。あの、背の高い人。それとか、ちょっとだけ髪長い、あの人とか」
「そうそう、みんな丸坊主なのが残念だよねー」
同じ屋根の下にいる美桜もそこまでは覚えていないのに、次々と出てくる彼女たちの言葉に、目を白黒させてしまう。そんな美桜に、咲希はきっと視線を向けて言う。
「だから。早く、おじさんに聞いてきてよ。あたしたち、今からでも働くからさ」
「あ……、う、ん……」
父がどう言うかなど、まったく見当がつかないのだけれど。しかし毎日が戦争の中、中学生といえども手が増えるのは助かることなのかもしれない。
「じゃあ、ちょっと訊いてくる」
美桜は、踵を返した。同級生たちの期待の視線を受けて、それが何とも居心地が悪かった。
戻ってきた美桜を見て、咲希たちは目をつりあげた。
「だめだって。中学生は、いらないって」
どうしてよ、なんでよ、と四人は声を揃える。そのように言われても、と美桜は困惑した。しかしまるで美桜がそう仕向けたかのように、咲希たちは怒声をあげるのだ。
「忙しいんでしょう? わたしたちがいたほうが、いいじゃないの」
「中学生だからいらないってなに? ちゃんと働けるって、言ってるじゃない!」
怒りを向けられて、思わずうつむいてしまう。そのようなことを言われても、美桜の咎ではないのだ。しかしそんな美桜をなおも責めるように、咲希たちはまくし立てた。
「羽澄さん、ちゃんと頼んだの?」
「あたしたちのこと、本当に言ってくれたの? 適当なこと言ったんじゃないの?」
「せっかく来たのに、ひどいわ。どうしてよ!?」
四人に一気に責められて、美桜は体を小さくしてしまう。長袖に包まれた体が、じりじりと灼ける。炎天下の中、四人は揃って美桜を睨みつけた。
「独り占めする気?」
「……独り占め?」
美桜は、思わず顔をあげた。咲希たちは、裏切り者を見るような表情で美桜を見やっている。
「あの人たちと、ひとりで仲よくなる気なんじゃないの?」
「な、に……?」
咲希の言う意味がわからない。美桜は何度もまばたきをしながら咲希を見つめ、咲希はむっと眉をしかめている。ほかの三人も、同様だった。
「あの、カッコいいキャプテンとか。自分だけ仲よくなって、独り占めしようって魂胆じゃないの?」
「そんなこと……」
言われた言葉に、美桜は驚くばかりだ。しかしそんな美桜の魂胆とやらをすっかり信じ込んでいるかのような咲希は、咲良に玲奈に優芽は、見下すように睨みつけるのだ。
「東京から、来た人たちだもんね」
「独り占めして、彼女になって。着いていくつもりじゃないの?」
「おばさんみたいに、さ」
「そうそう、羽澄さんの、お母さんみたいに」
思わず、左の手首を押さえた。ずくり、と体の傷が疼くような気がした――美桜は息を呑み、自分を見下ろす少女たちを見つめる。彼女たちは目をすがめ、軽蔑するように美桜をじっと見やっている。
「そ、んなこと……、ない、わ」
わななく美桜の言葉を、咲希は一蹴する。
「わかんないわよ。あの、おばさんの娘なんだもん」
「同じようなこと、考えてるかもね」
「するんじゃないの? 同じようなこと」
美桜のくちびるが震える。少女たちの視線に晒されて、真夏の陽射しの中で美桜はわななく。それは恐怖と、嫌悪と――衝動、だった。
(清めなくちゃ……)
ぶるり、と震えながら、美桜は思った。
(清めなくちゃ、清めなくちゃ……早く、早く。わたしを、清めて……)
「だって、リスカするくらい、いやなんでしょ?」
「これ見よがしに、こんな包帯なんて巻いちゃってさ!」
いきなり手を伸ばしたのは、ショートカットの、咲良だ。スポーツで鍛えた力強い手が美桜の手首を掴む。美桜が眉をしかめたのは、突然のことに驚いたのと、強く掴まれて傷がずくりと痛んだからだ。
「自分を気にして、構って、って。いつもそんな顔しちゃって、いやな感じ!」
「同情してほしいんじゃないの? お母さんに捨てられたんだからってさ」
ぱくぱく、と美桜は口を動かした。違う、と言いたかった。しかし少女たちは残酷に、真実を綴り出す。
「お母さん、オトコ作って出ていったんだもんね」
「きっと、羽澄さんのことも嫌いだったんだよ」
「じゃないと、娘放っておいて東京に逃げたりしないよねぇ」
「東京のどこにいるかも、わかんないんでしょう? 連絡とかもないの?」
ひくり、と美桜はくちびるを震わせた。
母からは、電話のひとつ、メールの一本もない。彼女たちの言うとおり、東京から来た男と逃げたまま、生死さえも不明なのだ。
「おじさんのことはともかくさぁ……娘のことは、普通気にするよね」
「それでも、全然連絡ないってことはさ」
「嫌われてたんじゃないの? 娘のこと、嫌いだったんだよ」
美桜の腕を掴む、咲良の手に力が込められる。痛っ、と小さく叫んだけれど、咲良の手の力はゆるまない。それどころか、ますます強く握りしめられるのだ。
「そうそう、羽澄さんのこと嫌いで、だから出ていったんだ」
「だって、子供のことがあるから離婚したいのに我慢するって話は聞いたことあっても、娘捨てるなんて、ねぇ」
「そんな話、聞いたことない。おばさん、羽澄さんがいやで出ていったんだ」
「だって、こんなことする子なんだもん」
ぎりぎりと握られて、傷のうえを包む包帯にうっすらと血が滲みはじめる。清め地蔵のところには行けないから、自室でひとりでつけた傷。幾重にも重なった肉の盛りあがった痕に、新たに昨日切り裂いた傷。清めのための、神聖な儀式。
「リスカする娘なんて、いやだよね」
「気持ち悪い」
少女たちが、声を揃える。
「ウザ。キモ。すっごく変」
「羽澄さん、ちょっと……かなり、おかしいよね」
どくん、と美桜の胸が震える。涙がこぼれそうなくらい、瞠目する。きゃはは、と少女たちが笑う声がこだまする。
「おかしいおかしい。だから、お母さんも……」
目を大きく見開き、小刻みに震える美桜の背後、足音がした。少女たちは、はっとそちらを見る。美桜は、足音だけでわかった。羽澄旅館で働いている、母くらいの歳の女性だ。
「あら、美桜ちゃん。お友達が来てるの?」
「あ、こんにちはー」
ぱっと手を離されて、美桜はよろめいた。そんな美桜に構わず、まるで今まで楽しい話をしていたかのように咲希は言った。
「お邪魔してます。すみません、こんなところで」
咲良も玲奈も、優芽も明るく挨拶をする。掴まれていた美桜の左手は解放された。パートの女性は、それを見なかっただろうと思うくらいにさりげない動きだ。見咎められないことを計算してだということは、触れられていた美桜に一番はっきりと伝わってきた。
「まぁまぁ。感心ね。きちんとした挨拶だこと」
中学生相手にしては少々子供扱いの言葉だけれど、女性はにこやかにそう言った。咲希が一瞬だけ舌打ちをしたのを美桜は聞いたけれど、近くにいる者でなければ聞き取れないような、小さな小さな舌打ちだったので、女性はそれに気づかなかっただろう。
「あがって、麦茶でも飲む? 美桜ちゃんも、飲むでしょ?」
「いいえ、もう帰ります」
美桜が何をも言う前に、咲希がやはり明るい声でそう言った。
「また、遊びにきますから」
「失礼しますー」
咲希たちは声を揃え、ぺこりと礼をする。女性は少女たちの礼儀正しさに感嘆の声をあげ、また「まぁまぁ」と、にこやかな笑みを見せる。
咲希たちは、美桜のことなど忘れてしまったかのように立ち去った。それにほっとはしたものの、ぎりぎりと締めあげられた手首が痛い。薄く血の滲んだ包帯を長袖の端で隠しながら、美桜は厨房に入った。
「あんな暑いところで、なにしてたの」
パートの女性は、うっすらと汗をかいている美桜を訝しげに見た。しかし美桜は、彼女を見ずに首を横に振る。美桜があまり話さないのはいつものことなので、特に気にされた様子はない。厨房を出て自分の部屋に戻ろうとする美桜の背に、声がかかった。
「美桜ちゃん、麦茶、飲まないの?」
「……いらないです」
そう言って、美桜はひとりになった。ずく、ずく、と鼓動を刻みながら痛む手首を押さえる美桜の頭の中では、ただひとつの言葉だけが渦巻いていた。
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