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◆◇第十五章 自覚め◇◆
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「エクス・ヴィトっ!」
クレアは上ずった声のまま、夜風に吹かれる彼の背後から話しかけた。
「どういうことなの、あんな、急に……」
そこは、広間から一歩出た、広いバルコニーだった。夜風が多少冷たいこともあって、人影はまばらだった。そして、ふたりの周りには誰もいない。
「何で、そんなに驚くのです?」
バルコニーの手すりに腕をかけて、エクス・ヴィトは月を見上げながら言った。
「私が、姫さまに求婚したからって、何でそんなに驚かれなくてはならないのですか?」
「だって……」
振り返ったエクス・ヴィトの瞳に、クレアは心臓を射ぬかれて肩をすくめた。
「私が姫さまのことをお慕いしていてはいけないのですか?」
エクス・ヴィトの、おおよそ恋を語るには不似合いな口が、そんな言葉をさらりと吐いた。
「そんな、信じられないわ」
クレアは頬を膨らませて言った。
「何故なの」
「何故、ってねぇ」
エクス・ヴィトは手すりから離れ、クレアの方に顔を寄せた。
「男が女を好きになるのに、何故も何もないと思いますが。私は、姫さまが好きで、結婚したい。それだけ」
「嘘です」
間近に迫った琥珀色の瞳に、クレアは睨みつけることで逆らった。
「信じないわ」
そう言ったとき、エクス・ヴィトは少し眉を下げた。それに、胸を突かれてクレアが首をかしげたとき、エクス・ヴィトの唇から、小さく笑いが洩れた。
「お見通し、ってわけですか」
やがてエクス・ヴィトは大きく笑いだし、クレアはぎょっとして体をすくめた。
「エクス・ヴィトっ……」
クレアに近づけた顔を離し、エクス・ヴィトはまた先ほどと同じ体勢を取った。クレアに背中を向け、そしてクレアにも側に寄るように手招きする。
「あなたたちのことを、見ていられないので」
「何のこと?」
とぼけてみても、エクス・ヴィトは何もかもわかっているのだろう。しかし、クレアは自らの口でそれを肯定することは避けた。
「殿下と、あなたです」
それを、エクス・ヴィトははばかりなく言った。クレアの方が驚いて周りを気にしたほどだった。
「見ていられない、あなたたちは。ふたりとも、責任感が強すぎて、王家の血を引きすぎていて、自分のことを考えなさすぎる」
クレアはそっとうつむいた。
「私はね、殿下に幸せになってもらいたいんですよ」
クレアは空を仰ぎながら言った。
「幸福になるにはあんまりにも険しい道を選ばれてしまった。でも、私には何となくわかるんです、あなたたちのきずながね」
「……」
クレアには、答えられない、ただ、唇を噛んでエクス・ヴィトの言葉を聞くだけ。
「あなたたちは、ひとりがふたりになって生まれてきたようなふたりだから。表向きの性格は随分違うだろうけどな、中身は、そっくりだ」
エクス・ヴィトは、ため息ともなんとも付かぬ息を吐いた。
「あなたたちが、いつかはこうなることも、何となくわかっていました」
続く言葉が核心に迫る。
「そして、決して結ばれることもないことも」
「エクス・ヴィト……っ……」
痛い言葉だった。そう、決して結ばれることはない。ふたりは、互いに手を取りあいながらその道を放棄したのだ。罪を恐れ、生まれ持った責務を投げ出すことを良しとせず。それなのに、互いを想う気持ちだけは日々募り、そしてそれゆえに苦しみ抜く。
「面倒ですね、ふたりとも」
エクス・ヴィトはあきれたように笑った。
「矩とか、理性とか、捨ててしまえれば楽になれるのに」
首をすくめて、エクス・ヴィトは小さく言う。
「まぁ、それが捨てられないあなたたちだから、殿下だから、私はここにいるんですけどね」
外の景色に背を向けて、エクス・ヴィトはクレアに向きあった。その、真剣な瞳がクレアを射ぬく。
「私は、探してみたいんです。すべての者が幸せになれる方法を。それは、どこにあるかはわかりません。けれど、私ができる唯一のこと」
クレアはまっすぐに見つめられた。それは、見る者が見れば愛する女性に向けた、真摯な瞳とも取れないことはなかった。
「姫さま、乗り越えてごらんなさい」
きらりとその瞳が光った。
「あなたの覚悟が見たい。どこまで、あなたが真剣に殿下のことを想っているか。どこまで王女として生きられるのか。一度選んでしまった道です、後戻りはさせません」
夜風よりも冷たく、それはクレアを包み込む。
「私は、あなたと結婚します。殿下が選んだ女性だ、うっかりよその男に触れさせたりしません。殿下がそうできないなら、私が、あなたを守ります」
「そんな……」
クレアは小さく震える自分の体を知った。
「そんな、理由で。どうしてなの? 一生の問題なのよ、どうして、そんな理由で私と結婚するなんて言えるの?」
「姫さま」
エクス・ヴィトはクレアに背中を向ける。
「あなたが、一番よくわかっておられるのではないですか。あなたの兄上の、絶対的なカリスマを」
「……」
「この私が、性に合わない窮屈な宮仕えなんかに甘んじてるのはどうしてだと思うのです」
試すようにエクス・ヴィトは微笑んだ。
「すべては、殿下です。あの方がどうやって成長して、どうやって国を治めていくのか、どんな王になるのか。それを、私は見たい。私が満足するまで、それを見せてもらいたいのです」
エクス・ヴィトはその場から離れた。クレアの横を滑り抜け、すれ違いざまに彼女の瞳をとらえ、言った。
「あなたが殿下の障害になるのか、支えになるのか。あなた次第です」
小さなささやきのあと、クレアはひとり残された。
「障害になるようなら。殿下の前からは消えていただきます。それは、誰が何と言っても、ね」
淡い紫に染まった衣装の中、よぎる考えは夜露より冷たくクレアを濡らす。
「障害……ですって……?」
つぶやきは空にかき消える。エクス・ヴィトの去ったあとを見れば、さききほど自分を取り囲んでいた男たちが、こちらへやって来ているのが見えた。エクス・ヴィトが保護者である王太子の許しを得たとはいえ、それはあくまでも求婚の許可。クレアの心を射止めさえすれば、まだまだ自分たちにも望みはある、と必死なのだ。
「姫」
セレスティアのレジナウドがいた。その表情に、焦燥が見えるのはあながち気のせいでもないのだろう。
「そのようなところにおられれば、お体に良くありません。さぁ、こちらへ」
差し出された手を、クレアはとらなかった。代わりに、こう言った。
「マリエルは、どこかしら?」
レジナウドは手の行き場を失って、きょとんと瞳を丸くした。
「え、侍女殿ですか……?」
あたりを見回し、侍女の姿を見つけたクレアは、男たちをかき分けてまっすぐにそちらへ歩いてゆく。
「私、戻るわ」
その言葉に、侍女は驚いたように顔を上げた。
「そうですの?」
そこには、舞踏会への出席を促したときのあの必死な表情はなかった。にっこりと微笑み、そしてクレアに手を差し出す。
「そうでございますか、まだ、お体が本調子ではいらしゃいませんものね。では、殿下に退出のご挨拶を……」
クレアはうなずいて、そして先ほどの賑わいは失われた広間の中央に目をやった。衣擦れの音も重く、そちらへ足を向ける。
「お兄様」
やはり、そこにはあのラクシュ神族がいた。
「私、退出させていただきます。お先に、失礼いたします」
「そうか」
セラフィスの表情は変わらない。
「ご苦労だったね。ゆっくり休むといい」
「ありがとうございます」
するりと背を向けた向こうには、エクス・ヴィトがいた。クレアはその視線を避けた。エクス・ヴィトの浮かべる表情は、いつものそれと変わらなかったがクレアにはそれがなによりも痛く感じられた。
「では、また」
短くそう言って、クレアは華やかな場に背を向ける。
「ようございましたわ」
侍女がささやきかける。
「今まで、姫さまはどんな殿方にも興味をお示しにならなくて。不安に思っておりましたのよ、いくら、引く手あまたとは言っても肝心の姫さまがその気におなりにならなければ」
幾人かの従者たちが控えているのを除けば、廊下には誰もいなかった。賑わいはすべて広間の方へ吸い込まれてる。
「エクス・ヴィト様なら名門ラグール家のお方。姫さまのご身分にはなんら不足はないところでいらっしゃるし、魔道師の頭領としての腕も、殿下のご信頼も厚い方でおいでになりますもの。考えれば、これ以上のご縁はありませんわ」
クレアは、それに返事はしなかった。ただ、自室へ足を向けながら、渦巻くのはエクス・ヴィトの言葉。
クレアの、覚悟。
セラフィスの障害になるか、支えになるか、クレア次第でそれが決まってしまうのだとしたら。セラフィスは、王になる。この国を統べる重責をその肩に受ける。それは、クレアも望んでいることだった。そして、クレア次第でその成功の如何がわかれてしまうのだとしたら。
クレアは、唇を噛んだ。セラフィスがふと洩らした言葉、自分をさらってどこかに行ってしまおうと。それは、甘い夢に過ぎなかった。それも、セラフィスもわかっているはずだった。だからこそ、戯れのようにそっと口にしたのだ。かなわぬと、許されぬとわかっているからこそ。
逃げ道は、エクス・ヴィトが与えてくれた。エクス・ヴィトは、セラフィスの先行きだけを考えている。その障害に、クレアがなるなら、それを肩代わりすると言っているのだ。それほどにエクス・ヴィトはセラフィスに入れ込んでいて、セラフィスはそれだけの器がある人間で。
それに甘んじるか否かは、クレア次第。
「姫さま」
促されて、衣を脱いだ。するりとそれを取り去るように、すべての煩わしさを脱ぎされたら、と、クレアは栓ない想像に身を任せた。
クレアは上ずった声のまま、夜風に吹かれる彼の背後から話しかけた。
「どういうことなの、あんな、急に……」
そこは、広間から一歩出た、広いバルコニーだった。夜風が多少冷たいこともあって、人影はまばらだった。そして、ふたりの周りには誰もいない。
「何で、そんなに驚くのです?」
バルコニーの手すりに腕をかけて、エクス・ヴィトは月を見上げながら言った。
「私が、姫さまに求婚したからって、何でそんなに驚かれなくてはならないのですか?」
「だって……」
振り返ったエクス・ヴィトの瞳に、クレアは心臓を射ぬかれて肩をすくめた。
「私が姫さまのことをお慕いしていてはいけないのですか?」
エクス・ヴィトの、おおよそ恋を語るには不似合いな口が、そんな言葉をさらりと吐いた。
「そんな、信じられないわ」
クレアは頬を膨らませて言った。
「何故なの」
「何故、ってねぇ」
エクス・ヴィトは手すりから離れ、クレアの方に顔を寄せた。
「男が女を好きになるのに、何故も何もないと思いますが。私は、姫さまが好きで、結婚したい。それだけ」
「嘘です」
間近に迫った琥珀色の瞳に、クレアは睨みつけることで逆らった。
「信じないわ」
そう言ったとき、エクス・ヴィトは少し眉を下げた。それに、胸を突かれてクレアが首をかしげたとき、エクス・ヴィトの唇から、小さく笑いが洩れた。
「お見通し、ってわけですか」
やがてエクス・ヴィトは大きく笑いだし、クレアはぎょっとして体をすくめた。
「エクス・ヴィトっ……」
クレアに近づけた顔を離し、エクス・ヴィトはまた先ほどと同じ体勢を取った。クレアに背中を向け、そしてクレアにも側に寄るように手招きする。
「あなたたちのことを、見ていられないので」
「何のこと?」
とぼけてみても、エクス・ヴィトは何もかもわかっているのだろう。しかし、クレアは自らの口でそれを肯定することは避けた。
「殿下と、あなたです」
それを、エクス・ヴィトははばかりなく言った。クレアの方が驚いて周りを気にしたほどだった。
「見ていられない、あなたたちは。ふたりとも、責任感が強すぎて、王家の血を引きすぎていて、自分のことを考えなさすぎる」
クレアはそっとうつむいた。
「私はね、殿下に幸せになってもらいたいんですよ」
クレアは空を仰ぎながら言った。
「幸福になるにはあんまりにも険しい道を選ばれてしまった。でも、私には何となくわかるんです、あなたたちのきずながね」
「……」
クレアには、答えられない、ただ、唇を噛んでエクス・ヴィトの言葉を聞くだけ。
「あなたたちは、ひとりがふたりになって生まれてきたようなふたりだから。表向きの性格は随分違うだろうけどな、中身は、そっくりだ」
エクス・ヴィトは、ため息ともなんとも付かぬ息を吐いた。
「あなたたちが、いつかはこうなることも、何となくわかっていました」
続く言葉が核心に迫る。
「そして、決して結ばれることもないことも」
「エクス・ヴィト……っ……」
痛い言葉だった。そう、決して結ばれることはない。ふたりは、互いに手を取りあいながらその道を放棄したのだ。罪を恐れ、生まれ持った責務を投げ出すことを良しとせず。それなのに、互いを想う気持ちだけは日々募り、そしてそれゆえに苦しみ抜く。
「面倒ですね、ふたりとも」
エクス・ヴィトはあきれたように笑った。
「矩とか、理性とか、捨ててしまえれば楽になれるのに」
首をすくめて、エクス・ヴィトは小さく言う。
「まぁ、それが捨てられないあなたたちだから、殿下だから、私はここにいるんですけどね」
外の景色に背を向けて、エクス・ヴィトはクレアに向きあった。その、真剣な瞳がクレアを射ぬく。
「私は、探してみたいんです。すべての者が幸せになれる方法を。それは、どこにあるかはわかりません。けれど、私ができる唯一のこと」
クレアはまっすぐに見つめられた。それは、見る者が見れば愛する女性に向けた、真摯な瞳とも取れないことはなかった。
「姫さま、乗り越えてごらんなさい」
きらりとその瞳が光った。
「あなたの覚悟が見たい。どこまで、あなたが真剣に殿下のことを想っているか。どこまで王女として生きられるのか。一度選んでしまった道です、後戻りはさせません」
夜風よりも冷たく、それはクレアを包み込む。
「私は、あなたと結婚します。殿下が選んだ女性だ、うっかりよその男に触れさせたりしません。殿下がそうできないなら、私が、あなたを守ります」
「そんな……」
クレアは小さく震える自分の体を知った。
「そんな、理由で。どうしてなの? 一生の問題なのよ、どうして、そんな理由で私と結婚するなんて言えるの?」
「姫さま」
エクス・ヴィトはクレアに背中を向ける。
「あなたが、一番よくわかっておられるのではないですか。あなたの兄上の、絶対的なカリスマを」
「……」
「この私が、性に合わない窮屈な宮仕えなんかに甘んじてるのはどうしてだと思うのです」
試すようにエクス・ヴィトは微笑んだ。
「すべては、殿下です。あの方がどうやって成長して、どうやって国を治めていくのか、どんな王になるのか。それを、私は見たい。私が満足するまで、それを見せてもらいたいのです」
エクス・ヴィトはその場から離れた。クレアの横を滑り抜け、すれ違いざまに彼女の瞳をとらえ、言った。
「あなたが殿下の障害になるのか、支えになるのか。あなた次第です」
小さなささやきのあと、クレアはひとり残された。
「障害になるようなら。殿下の前からは消えていただきます。それは、誰が何と言っても、ね」
淡い紫に染まった衣装の中、よぎる考えは夜露より冷たくクレアを濡らす。
「障害……ですって……?」
つぶやきは空にかき消える。エクス・ヴィトの去ったあとを見れば、さききほど自分を取り囲んでいた男たちが、こちらへやって来ているのが見えた。エクス・ヴィトが保護者である王太子の許しを得たとはいえ、それはあくまでも求婚の許可。クレアの心を射止めさえすれば、まだまだ自分たちにも望みはある、と必死なのだ。
「姫」
セレスティアのレジナウドがいた。その表情に、焦燥が見えるのはあながち気のせいでもないのだろう。
「そのようなところにおられれば、お体に良くありません。さぁ、こちらへ」
差し出された手を、クレアはとらなかった。代わりに、こう言った。
「マリエルは、どこかしら?」
レジナウドは手の行き場を失って、きょとんと瞳を丸くした。
「え、侍女殿ですか……?」
あたりを見回し、侍女の姿を見つけたクレアは、男たちをかき分けてまっすぐにそちらへ歩いてゆく。
「私、戻るわ」
その言葉に、侍女は驚いたように顔を上げた。
「そうですの?」
そこには、舞踏会への出席を促したときのあの必死な表情はなかった。にっこりと微笑み、そしてクレアに手を差し出す。
「そうでございますか、まだ、お体が本調子ではいらしゃいませんものね。では、殿下に退出のご挨拶を……」
クレアはうなずいて、そして先ほどの賑わいは失われた広間の中央に目をやった。衣擦れの音も重く、そちらへ足を向ける。
「お兄様」
やはり、そこにはあのラクシュ神族がいた。
「私、退出させていただきます。お先に、失礼いたします」
「そうか」
セラフィスの表情は変わらない。
「ご苦労だったね。ゆっくり休むといい」
「ありがとうございます」
するりと背を向けた向こうには、エクス・ヴィトがいた。クレアはその視線を避けた。エクス・ヴィトの浮かべる表情は、いつものそれと変わらなかったがクレアにはそれがなによりも痛く感じられた。
「では、また」
短くそう言って、クレアは華やかな場に背を向ける。
「ようございましたわ」
侍女がささやきかける。
「今まで、姫さまはどんな殿方にも興味をお示しにならなくて。不安に思っておりましたのよ、いくら、引く手あまたとは言っても肝心の姫さまがその気におなりにならなければ」
幾人かの従者たちが控えているのを除けば、廊下には誰もいなかった。賑わいはすべて広間の方へ吸い込まれてる。
「エクス・ヴィト様なら名門ラグール家のお方。姫さまのご身分にはなんら不足はないところでいらっしゃるし、魔道師の頭領としての腕も、殿下のご信頼も厚い方でおいでになりますもの。考えれば、これ以上のご縁はありませんわ」
クレアは、それに返事はしなかった。ただ、自室へ足を向けながら、渦巻くのはエクス・ヴィトの言葉。
クレアの、覚悟。
セラフィスの障害になるか、支えになるか、クレア次第でそれが決まってしまうのだとしたら。セラフィスは、王になる。この国を統べる重責をその肩に受ける。それは、クレアも望んでいることだった。そして、クレア次第でその成功の如何がわかれてしまうのだとしたら。
クレアは、唇を噛んだ。セラフィスがふと洩らした言葉、自分をさらってどこかに行ってしまおうと。それは、甘い夢に過ぎなかった。それも、セラフィスもわかっているはずだった。だからこそ、戯れのようにそっと口にしたのだ。かなわぬと、許されぬとわかっているからこそ。
逃げ道は、エクス・ヴィトが与えてくれた。エクス・ヴィトは、セラフィスの先行きだけを考えている。その障害に、クレアがなるなら、それを肩代わりすると言っているのだ。それほどにエクス・ヴィトはセラフィスに入れ込んでいて、セラフィスはそれだけの器がある人間で。
それに甘んじるか否かは、クレア次第。
「姫さま」
促されて、衣を脱いだ。するりとそれを取り去るように、すべての煩わしさを脱ぎされたら、と、クレアは栓ない想像に身を任せた。
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