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◆◇第十六章 覚悟◇◆
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朝一番の仕事は、現在政務の総責任を負う王太子の執務室を訪れることだった。そこは、本人がいるいないに関わらず政務の中枢の場であったし、そこで重臣たちが頭をそろえて国を動かすための仕事を行う。そして、クレアはそのほんの少しの一端を担うことを許されていた。主な仕事は、外交だった。外国からの使者のもてなしに、陳情に訪れる者たちの、担当者への取り次ぎ。それは、直接内部の執務に関わるものではなかったが、クレアにはもっとも適した仕事であったし、それをクレアは責務として毎日を過ごしていた。
その日、クレアが執務室に足を踏み入れると、そこにはいつもの重臣たちの姿はなかった。彼らがクレアに、その日の執務の内容を伝えてくれるのだ。クレアは、訝しみながらもその中に足を踏み入れる。
そこには、三人の人影があった。
ひとりは、大きな机の向こうに席を占めるセラフィス。いつもと変わらぬ様子でそこにいる彼の前にいるのは、ひとりはエクス・ヴィト。そして、後ろ姿のまま立つのは長い金の髪をした女性だった。
「クレア」
セラフィスはクレアに気づいて声をかけた。それに、エクス・ヴィトが振り向き、そしてもうひとりもこちらを向いた。
「あ」
クレア、その姿に思わず声を洩らした。それは、先日の舞踏会の折りセラフィスのそばにいた、あのラクシュ神族だった。
「おはよう。早くからご苦労だね」
そうクレアをねぎらって、セラフィスは彼女に近くに寄るように手招きをした。セラフィスとエクス・ヴィト、ふたりになんの変わったこともないのに、ラクシュ神族の彼女の存在が見慣れた執務室を違うもののように見せた。
「そこに、お座り」
机の傍らにある椅子に、セラフィスはクレアを促した。言われるがまま、そこに腰を下ろすと彼女が目の前に立つ形となった。
彼は、青い衣装を身に着けていた。それは、なんの飾りもない、普段にまとうための質素なものだったが、その飾り気のなさがかえってその美しさを引き立たせていた。
白い肌はどこまでも抜けるように白く、それを縁取る金の髪は細く長く輝いて、さらりと膝のあたりまで垂れている。小さな顔には大きな緑の瞳。鮮やかな赤い唇。それ自体がまるで彼を飾る宝石のように美しくそこにあった。
見とれるクレアの視線に、彼女はにっこりと微笑み返してきた。クレアは戸惑って慌てて目を伏せる。
「図らずとも、婚約者同士がそろったってことですか」
エクス・ヴィトがにやりと意地の悪い笑みを浮かべた。クレアがその言葉に抗議して、きりっと視線を向けると片目を瞑って笑顔を作って見せる。
「クレア、会うのは初めてではなかろうが、紹介してはいなかったね。こちらは、シルヴィア・ケレル。見ての通り、ラクシュ神族だ」
「初めまして、姫さま」
にこりと笑って会釈をしてきた彼女の名を、クレアは小さく反芻した。舞踏会の折り、エクス・ヴィトから聞いたのはそのような名だっただろうか。違ったような気がする。
「私が、妃にと考えている」
そのはっきりした言葉をセラフィスの口から聞いて、そのまま椅子に腰掛けていられたのは不思議なくらいだった。セラフィスは、表情を崩しもせず、さぞ当たり前のことのように言ってのけたのだ
「殿下……」
その言葉に、シルヴィアの方が戸惑ったようだった。そっとうつむいて頬を染めたのに、クレアは視線が釘付けになった。
「今日の議題は、主にこのことになるだろうね」
セラフィスはため息を隠さずに言った。
「ラクシュ神族を妃にすることに、重臣たちがいい顔をしない。特定の種に対する肩入れだとか、そのことで政務に支障が出るとか、そんなことを言ってね」
「殿下のお好きにしたらいいと、私は思いますけれどね」
エクス・ヴィトの言葉にセラフィスは微笑んだ。
「そう、みんなが思っていればいいんだが。早々に妃を選定しろ、と言っておきながら、いざ選ぶとなると種族がどうの、家柄がどうの、と文句ばかりつけてくる。まったく、どうしろというのだ」
「殿下が無理難題ばかりふっかけるからでしょう。あの頭の堅い方々を、混乱に巻き込むようなことばかりおっしゃって」
シルヴィアがこらえ切れないというように笑って、その場は和やかであるように見えた。ただひとり、硬直したまま動けない者を除いて。
「クレアは、無事に嫁すことができそうだがね」
セラフィスがエクス・ヴィトを見、エクス・ヴィトはそれに唇の端を持ち上げることで応えた。
「そんな、私……!」
クレアのあげた抗議の声はセラフィスの立ち上がる、椅子の音でかき消された。
「クレアもおいで。会議が始まる」
エクス・ヴィトも腰を上げた。それにしたがってシルヴィアもふたりを見送るように立ち上がり、クレアの方を向いて手を差し出した。
「姫さま、どうぞ」
クレアは立ち上がった。そして、その目を惹かずにはいない美しい容貌と、その中に宿る優しい表情に戸惑いの目を向けた。
「いってらっしゃいませ」
その声は、低く落ち着いた声だった。エクス・ヴィトは、舞踏会の折り彼女の名を違うふうにクレアに紹介した。先ほど告げられた名は違うものだった。あの時いた者とは別人なのだろうか。目を凝らしてその顔を見、舞踏会での記憶をたぐり寄せてみても、同じ人物であると言われれば同じだし、違うのかも知れないと言われれば違うような気もする。異種族の顔とは、見分けがつきにくいものだ。
しかしそれを詮索するのは憚られた。クレアにはそうする勇気はなかった。そして、そうしてはいけない雰囲気があった。何かが、クレアの知らないところで行われている。
「行こうか」
セラフィスの声に立ち上がり、シルヴィアに手をとられた。シルヴィアはクレアにうなずきかけ、そしてにっこりと優しい笑みを作ってくる。
ふたりに促され、クレアはその場を去る。ふいと振り向いてみると、シルヴィアは同じ笑みをたたえたままそこにいた。
◆◇
その日、執務室に重臣たちがいなかったのは、このためだったのだ。彼らは、すでに会議の場に集まっていた。彼らが朝、王太子の執務室に行ってみれば、そこには例のラクシュの娘がいた。その時、いやおうもなく未来の妃だと紹介されて憤慨した彼らが言い出した会議だった。セラフィスとエクス・ヴィト、そしてクレアがそこに足を踏み入れるとすでに頭数はそろっていた。
話は、セラフィスの選ぶ王妃のことに終始した。
「私が選んだ者に、なんの憚りがあるというのだ」
セラフィスは臣下たちの責めに、憮然として言った。
「しかし……!」
言葉を重ねるのは、娘をセラフィスの目に留まらせようと躍起になっていた大臣だった。彼が、娘のことを話すのをクレアも何度か聞いたことがある。年は、十六だと言っていた。
「しかし、ラクシュ神族など……。彼らは、マインラードの土地に住みながらも、マインラードの民ではない。我々とは一線を画し、それを好んで辺境に住まう孤立した種族をこの王宮に入れるなど、後々の厄介事の種とならないとも限りません」
セラフィスは、にやりと笑った。
「ラクシュ神族はすでにそのこだわりを捨てている。知っているだろう、騎士団にいるラクシュ神族のこと」
ああ、と、別の者が声をあげた。
「先だっての暴動の折り、目覚ましい働きをしたと聞いております」
「あの者は、ラクシュの首長自ら王都によこした者だ。自ら有望な若者を手放すなど、孤立を好む種族がすることではないと思わないか」
先ほどの男が、言葉を飲んだ。
「ラクシュ神族の方は、とうにそのようなしがらみを取り払っている。こだわっているのは、我々の方ではないのか」
「……」
セラフィスの言葉には隙がない。すべての反論に対して、言葉を用意してきたのであろうその流暢さに、彼の行為を止めさせることのできる者は誰もいない。
「それ以上に、あの者は私が選んだ。私の意志が一番大切だ、と言ったのはお前たちではなかったのか」
このような場にふさわしくない表情を、セラフィスは浮かべていた。挑戦的とも言える、皮肉を乗せた笑みだった。
「お前たちがいろいろ画策しているのは知っているよ。しかし、私は私の意志を貫く。さもなくば」
セラフィスは、もう終わりだと手を振って、立ち上がった。
「慣習を破る」
「殿下っ……!」
セラフィスはもうそこにはとどまってはいなかった。立ち上がり、臣下たちの間を抜けて涼しい顔で通り抜けた。
「姫!」
臣下のひとりが、セラフィスが閉じた扉を背に、クレアにすがりついてきた。
「どうにか、殿下を説得していただけないでしょうか。殿下のお申し出はあまりに突拍子がなさ過ぎます」
「ラクシュ神族の血を王家に引き入れるなどと、ご父祖の魂にも申し訳の立たぬこととは思われませんか」
クレアは、衣装の上で震える手を握りしめながら、声が震えないようにこう言うしかなかった。
「お兄様がお決めになったこと」
息を吸って、声を落ち着けようと肩に力を入れる。
「私が、何故どうこう申せますか? 私は、別に反対いたしません」
「そんな、姫のお言葉ならば殿下も……」
クレアはすがりつかんばかりにすり寄る彼らを払うように立ち上がった。
「私は、何も申しません。お兄様のご意志がご不満なら、あなたがたで説得なさい。私などを頼りになさらぬよう」
「姫……」
なおもあきらめの悪い者が彼女の後を追ったが、それを遮ったのはエクス・ヴィトだった。彼に睨みつけられて、最後のひとりが引き下がる。
エクス・ヴィトは何も言いはしなかったが、その瞳の色を敏感に感じ取ったらしい。重臣の中では最年少ではあったが、王太子の腹心であるのは誰の目にも明らかだったし、今や、正式ではないものの王女の婚約者同然の彼に逆らおうという者はない。
扉が閉じられた。エクス・ヴィトの視線に守られて、クレアは無事にそこを抜ける。
「お兄様は」
エクス・ヴィトを見上げてクレアは小さな声で言った。
「シルヴィアを、お妃になさるおつもりなのね?」
「さぁ」
エクス・ヴィトはつれなく言った。
「否定はしませんが、肯定もしません。姫さまもおっしゃっていたでしょう、殿下の意志だって」
クレアはきっと瞳を引きつらせた。エクス・ヴィトをその、濃い曙色の瞳で見つめ、できうるかぎりの強い口調で言った。
「わからないわ、そんなこと」
そして、ひらりと衣装の裾を翻す。
「失礼します」
信じない。クレアは、独りごちた。信じない、自分を愛してくれていると言った兄が、そんな。
舞踏会での光景が頭をよぎり、それはクレアの心臓を掴みあげた。美しいラクシュの娘。その美貌には、逆立ちしても勝てる者はいないだろう。しなやかな腰と、すらりとした体。
それが、彼女だからなのだろうか。それとも、どんな女性であってもクレアの心はここまで揺らぐのだろうか。それを問うても、答えはない。ただ、刺を刺したように心が彼女をさいなむ。体の芯まで縛り上げて、動けなくしてしまう。
妃、と言う言葉を口にしたことはあった。それが現実のものでない間はそれをたやすく言うことができた。しかし、今、ここでそれが形になったのを見せつけられては、クレアに耐える術はなかった。ただ、体中の皮膚がはがれ落ちてしまうような痛みが走る。むき出しになった心に、さいなむ痛みが傷をつける。
痛い。
痛みが彼女をさいなむ。そして、罪の畏れに隠していた本心が殻を破るのを知った。それは、クレアの心を隅々までつつき、そして血を流させる。苦痛に頬をゆがませる。
心が、むき出しになってゆく。
視線を上げれば、そこにはふたつの人影があった。それを見て、クレアの足は凍る。いかにも、愛おしい兄と、その婚約者の姿。にこやかに笑い交わすその姿は、今のクレアには堪え難い光景だった。
「姫さま」
真っ先にシルヴィアが気づき、会釈をしてくる。その傍らに立つセラフィスは、その言葉で初めて気がついたかのようにクレアを見た。
「どうした。席を外してきたのか」
彼らが歩けば、距離は近づく。クレアはそこに立ち尽くし、言葉もなくふたりとの間の境界が縮まるのを見つめていた。
「あの者たちは、まだ部屋に控えているのか?」
セラフィスの声が、熱くクレアの胸を揺るがす。響く音が、彼女の心を揺さぶる。
「ひ、姫……」
シルヴィアの慌てた声が聞こえた。その声が、緩く薄まって耳に届いた。セラフィスは、何も言いはしなかったが、歩みを止め、そしてクレアの顔を凝視している。
「クレア」
小さくささやかれた名前。クレアは、その姿がかすんでゆくのを知った。
「存じません……」
声が震える。視界が曇って、ふたりの姿が霧の向こうにあるようにぼんやりとしか見えない。
何かが、クレアの胸を突いた。それは、彼女にもどうすることもできない衝動。クレアはそれに身を任せた。
伝う涙が声をくぐもらせる。言葉にならない声を、それでも必死に搾り出して、クレアはうめいた。
「いや、です……」
それはあまりに小さな声だったので、セラフィスが聞き返した。
「嫌です、私は。お兄様が、お妃を娶られるなんて、嫌です」
小さく息を飲んだのは、シルヴィアの方だった。それが耳にかすめるのと、クレアがセラフィスの胸に飛び込んだのは同時だった。
「いやです、お兄様は、私だけのものでいてくださらないといやです……!」
目の前のそれに、クレアはしがみついた。もう、そこにいるシルヴィアの姿は見えない。彼女の目に入るのは彼女の求める彼かの人の姿だけ。そして、セラフィスはそんなクレアの背にそっと手を添え、かすかな声で耳もとに小さくささやくのだ。
「私は、お前のものだよ」
しゃくり上げる声に、温もりが伝わった。それは、いつでもクレアに安堵を伝える温もりだった。そう、ラグラールから戻ったときも、この暖かさがクレアを包んだ。
「私を、お見捨てにならないで……」
クレアの声はかすかにそう言った。
あの時、セラフィスの手を拒まなければよかったのだろうか。罪を恐れて、それから逃げた結果。逃げなければ、拒まなければ、このようなことにはならなかったのだろうか。
「私には、お兄様しかおりません……」
クレアは、顔をうずめたまま栓ない後悔に身を委ねた。そうすれば、このような痛みを感じることもなかったのだろうか。細い針で心臓を刺し貫かれるような、うずくような痛み。それから逃れるように、クレアはセラフィスの体を抱きしめた。
「私を、置いて行かないでください」
手が、背をなでた。たとえ傍らにシルヴィアがいるのも構わずに、こうやって変わらぬ思いを伝えてくれるのが嬉しかった。そして、そんなセラフィスを理由はどうあれ、拒んだ自分を責めた。
「わたくしを、許して下さい……」
「クレア」
驚いたようにセラフィスが言う。
「何を許すというのだ。お前に、許されねばならないような罪はない」
「お兄様、私……っ!」
クレアは震えるままの声で言った。後悔が背中を駆け抜ける今、言っておかねばならないことがあると思った。
「罪は、まだ恐ろしいのです」
その言葉に、セラフィスは小さく唇を噛んだ。
「けれど、お兄様のお心を失うことの方が、私にはもっと恐ろしい」
何故、それが今になるまでわからなかったのだろう。もう、すべては遅いのに。いくらクレアがすがっても、すべては動き出している。ラクシュの娘と、そして、エクス・ヴィトと。
「私が、愚かだったのです」
「……クレア」
抱きしめたままのセラフィスが、小さく言った。
「お許しください……」
糸が切れるように、クレアはその場に崩れ落ちた。体に力が入らない。セラフィスの体を伝った手が、床に落ちて、そしてクレアはがっくりとうなだれた。
「クレア?」
今まで聞こえるか聞こえないかというほどに小さかったセラフィスの声が、鋭く響いた。
「姫!」
シルヴィアの声も聞こえた。クレアは、そのまま身を冷たい床に預けた。何故なのだろうか、頭が痛む。体が怠い。指先から流れ出すように力が抜けてゆく。
がくんと首が後ろに反った。床にあった体が抱き上げられ、誰かの腕が、自分を運んでいる。暖かい腕、懐かしい匂い。セラフィス以外ではあり得ないそれ。クレアは、薄れてゆく意識の中で、それを確かに感じ取って微笑んだ。
体を支える柱が折れてしまったようだ。罪の意識が、セラフィスへの罪悪感と後悔になって体中を駆け巡る。
このまま。
このまま、どこかに行ってしまえればよかったのに。
その日、クレアが執務室に足を踏み入れると、そこにはいつもの重臣たちの姿はなかった。彼らがクレアに、その日の執務の内容を伝えてくれるのだ。クレアは、訝しみながらもその中に足を踏み入れる。
そこには、三人の人影があった。
ひとりは、大きな机の向こうに席を占めるセラフィス。いつもと変わらぬ様子でそこにいる彼の前にいるのは、ひとりはエクス・ヴィト。そして、後ろ姿のまま立つのは長い金の髪をした女性だった。
「クレア」
セラフィスはクレアに気づいて声をかけた。それに、エクス・ヴィトが振り向き、そしてもうひとりもこちらを向いた。
「あ」
クレア、その姿に思わず声を洩らした。それは、先日の舞踏会の折りセラフィスのそばにいた、あのラクシュ神族だった。
「おはよう。早くからご苦労だね」
そうクレアをねぎらって、セラフィスは彼女に近くに寄るように手招きをした。セラフィスとエクス・ヴィト、ふたりになんの変わったこともないのに、ラクシュ神族の彼女の存在が見慣れた執務室を違うもののように見せた。
「そこに、お座り」
机の傍らにある椅子に、セラフィスはクレアを促した。言われるがまま、そこに腰を下ろすと彼女が目の前に立つ形となった。
彼は、青い衣装を身に着けていた。それは、なんの飾りもない、普段にまとうための質素なものだったが、その飾り気のなさがかえってその美しさを引き立たせていた。
白い肌はどこまでも抜けるように白く、それを縁取る金の髪は細く長く輝いて、さらりと膝のあたりまで垂れている。小さな顔には大きな緑の瞳。鮮やかな赤い唇。それ自体がまるで彼を飾る宝石のように美しくそこにあった。
見とれるクレアの視線に、彼女はにっこりと微笑み返してきた。クレアは戸惑って慌てて目を伏せる。
「図らずとも、婚約者同士がそろったってことですか」
エクス・ヴィトがにやりと意地の悪い笑みを浮かべた。クレアがその言葉に抗議して、きりっと視線を向けると片目を瞑って笑顔を作って見せる。
「クレア、会うのは初めてではなかろうが、紹介してはいなかったね。こちらは、シルヴィア・ケレル。見ての通り、ラクシュ神族だ」
「初めまして、姫さま」
にこりと笑って会釈をしてきた彼女の名を、クレアは小さく反芻した。舞踏会の折り、エクス・ヴィトから聞いたのはそのような名だっただろうか。違ったような気がする。
「私が、妃にと考えている」
そのはっきりした言葉をセラフィスの口から聞いて、そのまま椅子に腰掛けていられたのは不思議なくらいだった。セラフィスは、表情を崩しもせず、さぞ当たり前のことのように言ってのけたのだ
「殿下……」
その言葉に、シルヴィアの方が戸惑ったようだった。そっとうつむいて頬を染めたのに、クレアは視線が釘付けになった。
「今日の議題は、主にこのことになるだろうね」
セラフィスはため息を隠さずに言った。
「ラクシュ神族を妃にすることに、重臣たちがいい顔をしない。特定の種に対する肩入れだとか、そのことで政務に支障が出るとか、そんなことを言ってね」
「殿下のお好きにしたらいいと、私は思いますけれどね」
エクス・ヴィトの言葉にセラフィスは微笑んだ。
「そう、みんなが思っていればいいんだが。早々に妃を選定しろ、と言っておきながら、いざ選ぶとなると種族がどうの、家柄がどうの、と文句ばかりつけてくる。まったく、どうしろというのだ」
「殿下が無理難題ばかりふっかけるからでしょう。あの頭の堅い方々を、混乱に巻き込むようなことばかりおっしゃって」
シルヴィアがこらえ切れないというように笑って、その場は和やかであるように見えた。ただひとり、硬直したまま動けない者を除いて。
「クレアは、無事に嫁すことができそうだがね」
セラフィスがエクス・ヴィトを見、エクス・ヴィトはそれに唇の端を持ち上げることで応えた。
「そんな、私……!」
クレアのあげた抗議の声はセラフィスの立ち上がる、椅子の音でかき消された。
「クレアもおいで。会議が始まる」
エクス・ヴィトも腰を上げた。それにしたがってシルヴィアもふたりを見送るように立ち上がり、クレアの方を向いて手を差し出した。
「姫さま、どうぞ」
クレアは立ち上がった。そして、その目を惹かずにはいない美しい容貌と、その中に宿る優しい表情に戸惑いの目を向けた。
「いってらっしゃいませ」
その声は、低く落ち着いた声だった。エクス・ヴィトは、舞踏会の折り彼女の名を違うふうにクレアに紹介した。先ほど告げられた名は違うものだった。あの時いた者とは別人なのだろうか。目を凝らしてその顔を見、舞踏会での記憶をたぐり寄せてみても、同じ人物であると言われれば同じだし、違うのかも知れないと言われれば違うような気もする。異種族の顔とは、見分けがつきにくいものだ。
しかしそれを詮索するのは憚られた。クレアにはそうする勇気はなかった。そして、そうしてはいけない雰囲気があった。何かが、クレアの知らないところで行われている。
「行こうか」
セラフィスの声に立ち上がり、シルヴィアに手をとられた。シルヴィアはクレアにうなずきかけ、そしてにっこりと優しい笑みを作ってくる。
ふたりに促され、クレアはその場を去る。ふいと振り向いてみると、シルヴィアは同じ笑みをたたえたままそこにいた。
◆◇
その日、執務室に重臣たちがいなかったのは、このためだったのだ。彼らは、すでに会議の場に集まっていた。彼らが朝、王太子の執務室に行ってみれば、そこには例のラクシュの娘がいた。その時、いやおうもなく未来の妃だと紹介されて憤慨した彼らが言い出した会議だった。セラフィスとエクス・ヴィト、そしてクレアがそこに足を踏み入れるとすでに頭数はそろっていた。
話は、セラフィスの選ぶ王妃のことに終始した。
「私が選んだ者に、なんの憚りがあるというのだ」
セラフィスは臣下たちの責めに、憮然として言った。
「しかし……!」
言葉を重ねるのは、娘をセラフィスの目に留まらせようと躍起になっていた大臣だった。彼が、娘のことを話すのをクレアも何度か聞いたことがある。年は、十六だと言っていた。
「しかし、ラクシュ神族など……。彼らは、マインラードの土地に住みながらも、マインラードの民ではない。我々とは一線を画し、それを好んで辺境に住まう孤立した種族をこの王宮に入れるなど、後々の厄介事の種とならないとも限りません」
セラフィスは、にやりと笑った。
「ラクシュ神族はすでにそのこだわりを捨てている。知っているだろう、騎士団にいるラクシュ神族のこと」
ああ、と、別の者が声をあげた。
「先だっての暴動の折り、目覚ましい働きをしたと聞いております」
「あの者は、ラクシュの首長自ら王都によこした者だ。自ら有望な若者を手放すなど、孤立を好む種族がすることではないと思わないか」
先ほどの男が、言葉を飲んだ。
「ラクシュ神族の方は、とうにそのようなしがらみを取り払っている。こだわっているのは、我々の方ではないのか」
「……」
セラフィスの言葉には隙がない。すべての反論に対して、言葉を用意してきたのであろうその流暢さに、彼の行為を止めさせることのできる者は誰もいない。
「それ以上に、あの者は私が選んだ。私の意志が一番大切だ、と言ったのはお前たちではなかったのか」
このような場にふさわしくない表情を、セラフィスは浮かべていた。挑戦的とも言える、皮肉を乗せた笑みだった。
「お前たちがいろいろ画策しているのは知っているよ。しかし、私は私の意志を貫く。さもなくば」
セラフィスは、もう終わりだと手を振って、立ち上がった。
「慣習を破る」
「殿下っ……!」
セラフィスはもうそこにはとどまってはいなかった。立ち上がり、臣下たちの間を抜けて涼しい顔で通り抜けた。
「姫!」
臣下のひとりが、セラフィスが閉じた扉を背に、クレアにすがりついてきた。
「どうにか、殿下を説得していただけないでしょうか。殿下のお申し出はあまりに突拍子がなさ過ぎます」
「ラクシュ神族の血を王家に引き入れるなどと、ご父祖の魂にも申し訳の立たぬこととは思われませんか」
クレアは、衣装の上で震える手を握りしめながら、声が震えないようにこう言うしかなかった。
「お兄様がお決めになったこと」
息を吸って、声を落ち着けようと肩に力を入れる。
「私が、何故どうこう申せますか? 私は、別に反対いたしません」
「そんな、姫のお言葉ならば殿下も……」
クレアはすがりつかんばかりにすり寄る彼らを払うように立ち上がった。
「私は、何も申しません。お兄様のご意志がご不満なら、あなたがたで説得なさい。私などを頼りになさらぬよう」
「姫……」
なおもあきらめの悪い者が彼女の後を追ったが、それを遮ったのはエクス・ヴィトだった。彼に睨みつけられて、最後のひとりが引き下がる。
エクス・ヴィトは何も言いはしなかったが、その瞳の色を敏感に感じ取ったらしい。重臣の中では最年少ではあったが、王太子の腹心であるのは誰の目にも明らかだったし、今や、正式ではないものの王女の婚約者同然の彼に逆らおうという者はない。
扉が閉じられた。エクス・ヴィトの視線に守られて、クレアは無事にそこを抜ける。
「お兄様は」
エクス・ヴィトを見上げてクレアは小さな声で言った。
「シルヴィアを、お妃になさるおつもりなのね?」
「さぁ」
エクス・ヴィトはつれなく言った。
「否定はしませんが、肯定もしません。姫さまもおっしゃっていたでしょう、殿下の意志だって」
クレアはきっと瞳を引きつらせた。エクス・ヴィトをその、濃い曙色の瞳で見つめ、できうるかぎりの強い口調で言った。
「わからないわ、そんなこと」
そして、ひらりと衣装の裾を翻す。
「失礼します」
信じない。クレアは、独りごちた。信じない、自分を愛してくれていると言った兄が、そんな。
舞踏会での光景が頭をよぎり、それはクレアの心臓を掴みあげた。美しいラクシュの娘。その美貌には、逆立ちしても勝てる者はいないだろう。しなやかな腰と、すらりとした体。
それが、彼女だからなのだろうか。それとも、どんな女性であってもクレアの心はここまで揺らぐのだろうか。それを問うても、答えはない。ただ、刺を刺したように心が彼女をさいなむ。体の芯まで縛り上げて、動けなくしてしまう。
妃、と言う言葉を口にしたことはあった。それが現実のものでない間はそれをたやすく言うことができた。しかし、今、ここでそれが形になったのを見せつけられては、クレアに耐える術はなかった。ただ、体中の皮膚がはがれ落ちてしまうような痛みが走る。むき出しになった心に、さいなむ痛みが傷をつける。
痛い。
痛みが彼女をさいなむ。そして、罪の畏れに隠していた本心が殻を破るのを知った。それは、クレアの心を隅々までつつき、そして血を流させる。苦痛に頬をゆがませる。
心が、むき出しになってゆく。
視線を上げれば、そこにはふたつの人影があった。それを見て、クレアの足は凍る。いかにも、愛おしい兄と、その婚約者の姿。にこやかに笑い交わすその姿は、今のクレアには堪え難い光景だった。
「姫さま」
真っ先にシルヴィアが気づき、会釈をしてくる。その傍らに立つセラフィスは、その言葉で初めて気がついたかのようにクレアを見た。
「どうした。席を外してきたのか」
彼らが歩けば、距離は近づく。クレアはそこに立ち尽くし、言葉もなくふたりとの間の境界が縮まるのを見つめていた。
「あの者たちは、まだ部屋に控えているのか?」
セラフィスの声が、熱くクレアの胸を揺るがす。響く音が、彼女の心を揺さぶる。
「ひ、姫……」
シルヴィアの慌てた声が聞こえた。その声が、緩く薄まって耳に届いた。セラフィスは、何も言いはしなかったが、歩みを止め、そしてクレアの顔を凝視している。
「クレア」
小さくささやかれた名前。クレアは、その姿がかすんでゆくのを知った。
「存じません……」
声が震える。視界が曇って、ふたりの姿が霧の向こうにあるようにぼんやりとしか見えない。
何かが、クレアの胸を突いた。それは、彼女にもどうすることもできない衝動。クレアはそれに身を任せた。
伝う涙が声をくぐもらせる。言葉にならない声を、それでも必死に搾り出して、クレアはうめいた。
「いや、です……」
それはあまりに小さな声だったので、セラフィスが聞き返した。
「嫌です、私は。お兄様が、お妃を娶られるなんて、嫌です」
小さく息を飲んだのは、シルヴィアの方だった。それが耳にかすめるのと、クレアがセラフィスの胸に飛び込んだのは同時だった。
「いやです、お兄様は、私だけのものでいてくださらないといやです……!」
目の前のそれに、クレアはしがみついた。もう、そこにいるシルヴィアの姿は見えない。彼女の目に入るのは彼女の求める彼かの人の姿だけ。そして、セラフィスはそんなクレアの背にそっと手を添え、かすかな声で耳もとに小さくささやくのだ。
「私は、お前のものだよ」
しゃくり上げる声に、温もりが伝わった。それは、いつでもクレアに安堵を伝える温もりだった。そう、ラグラールから戻ったときも、この暖かさがクレアを包んだ。
「私を、お見捨てにならないで……」
クレアの声はかすかにそう言った。
あの時、セラフィスの手を拒まなければよかったのだろうか。罪を恐れて、それから逃げた結果。逃げなければ、拒まなければ、このようなことにはならなかったのだろうか。
「私には、お兄様しかおりません……」
クレアは、顔をうずめたまま栓ない後悔に身を委ねた。そうすれば、このような痛みを感じることもなかったのだろうか。細い針で心臓を刺し貫かれるような、うずくような痛み。それから逃れるように、クレアはセラフィスの体を抱きしめた。
「私を、置いて行かないでください」
手が、背をなでた。たとえ傍らにシルヴィアがいるのも構わずに、こうやって変わらぬ思いを伝えてくれるのが嬉しかった。そして、そんなセラフィスを理由はどうあれ、拒んだ自分を責めた。
「わたくしを、許して下さい……」
「クレア」
驚いたようにセラフィスが言う。
「何を許すというのだ。お前に、許されねばならないような罪はない」
「お兄様、私……っ!」
クレアは震えるままの声で言った。後悔が背中を駆け抜ける今、言っておかねばならないことがあると思った。
「罪は、まだ恐ろしいのです」
その言葉に、セラフィスは小さく唇を噛んだ。
「けれど、お兄様のお心を失うことの方が、私にはもっと恐ろしい」
何故、それが今になるまでわからなかったのだろう。もう、すべては遅いのに。いくらクレアがすがっても、すべては動き出している。ラクシュの娘と、そして、エクス・ヴィトと。
「私が、愚かだったのです」
「……クレア」
抱きしめたままのセラフィスが、小さく言った。
「お許しください……」
糸が切れるように、クレアはその場に崩れ落ちた。体に力が入らない。セラフィスの体を伝った手が、床に落ちて、そしてクレアはがっくりとうなだれた。
「クレア?」
今まで聞こえるか聞こえないかというほどに小さかったセラフィスの声が、鋭く響いた。
「姫!」
シルヴィアの声も聞こえた。クレアは、そのまま身を冷たい床に預けた。何故なのだろうか、頭が痛む。体が怠い。指先から流れ出すように力が抜けてゆく。
がくんと首が後ろに反った。床にあった体が抱き上げられ、誰かの腕が、自分を運んでいる。暖かい腕、懐かしい匂い。セラフィス以外ではあり得ないそれ。クレアは、薄れてゆく意識の中で、それを確かに感じ取って微笑んだ。
体を支える柱が折れてしまったようだ。罪の意識が、セラフィスへの罪悪感と後悔になって体中を駆け巡る。
このまま。
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