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第一章 予想外の婚約破棄
第7話 魔術が好き
しおりを挟むリヴィアは魔術が好きだ。優秀な魔術師・魔道士も心の底から尊敬しているし、驚きと感嘆の発見の日々に毎日充実して過ごしている。
ここミククラーネ魔術院は、いち早く魔術の一般化に着目した事から、他国に比べて質の良い設備や人材を取り揃えている。そして何より魔術の素養を持つ者も多く集まっている。
魔術の素養は、古の魔術師が施した魔術が体内に残る遺伝子のようなものだ。そして魔力の流れを感覚的に掴み、陣を発動出来る事。その二つを持つ者が魔道士となれる。
陣とは、魔術を構成する術式の事で、円状の緻密な文様である。そこから構成内容を読み取る事。更に魔道具に組み入れ制作する事までを、一括りで研究と読んでいる。
因みに魔術は遺伝するが、持ち主が術を施す事で他人にも受け継ぐ事ができ、そこからまた遺伝してゆく。だが今は国際法が制度として整い、血族以外への継承には精査が入り記録が残る。これは陣の不正売買取引に事に対する施策であり、重要な陣が行方知れずにならない為の保護対策にもなる。
無生物に対して陣を施した場合、血を絶やさなければ陣は続く。昔は空飛ぶ箒や階段を使わずに階層を移動できる乗り物が陣により起動していたのだとか。いずれも破壊行為によって失われてしまったが……
リヴィアには僅かに魔術の素養があった。母から受け継いだものだ。母は優秀な魔道士だった。だから貴重な古文書や聖書に記載された陣の解読と、管轄外である国宝の文献に携わる業務にも特例として拝命していたそうだ。
リヴィアも母の信頼と実績、また自身の研究成果からそれらの資料に少しずつ触れる事を許されている。正直言って嬉しくて仕方がない。
なので、とにかくひたすら努力をした。最初は貴族令嬢風情がという視線が、リヴィアのがむしゃらな姿勢に少しずつ周囲の態度は軟化してきた。
今ではエリート集団と言われる医療を納める白亜の塔や、軍直下の紅玉の塔にも手紙で研究についてやりとりのできる者が出来た程だ。
直接親しくするのは機密要項に関わるので出来ないが、それでも我ながらすごい事だと思う。
だが合格当時、魔術院に通う事を知った父はすぐさま辞めるようにリヴィアに言った。
院のトップは侯爵家筆頭のフェルジェス家だ。リヴィアはその名前の入った合格通知を掲げ、侯爵家の取り決めに異を唱えるのかと父に楯突いた。ついでに合格しましたこれからよろしくお願いします。と、侯爵家に手紙も既に送ってあると伝えたところ、苦虫を噛み潰したような顔をして黙ってくれた。リヴィアはそれをただ凪いだ目で見つめるばかりだ。
母が優秀な魔道士だったと教えてくれたのは魔術院の古参の職員たちで、リヴィアはそれまで母の事など一切知らなかったのだから。
それでも食い下がる父はいくつか条件を出してきた。魔術院に泊まる事だけは許さない。伯爵令嬢が魔術院通いの上、外泊までして何をしているか分からないなど外聞が悪いにも程がある。
……その実は屋敷に閉じ込め、大事な想い人に繋ぐ縁に、万が一にも傷でもつかない為の配慮。今なら父の考えが透けて見える。
けれどいつも以上に冷たい目に、更に険をのせて話す父に、リヴィアは大人しく従った。
リヴィアは女性の成人年齢である18歳に自立し、もう貴族令嬢に戻る予定は無い。ただそれまではここまで育てて貰った恩と考え、父に従うと決めていた。そしてその後は今までの自分の養育費も払うつもりでいる。例えふっかけられようとも何とかするつもりだ。
そして条件なんてそんなものかと、リヴィアはほっと肩の力を抜いたものだった────が、勿論それ程父は甘くは無かった。そもそもリヴィアが父の望む貴族令嬢の条件を覆すような所業をしでかしたのだから、当然と言ったらそうかもしれないが……
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