【完結】暴君王子は執愛魔王の転生者〜何故か魔族たちに勇者と呼ばれ、彼の機嫌を取る役割を期待されています〜

藍生蕗

文字の大きさ
39 / 51

38. 魔王と勇者

しおりを挟む
 ナタナエルはするりとシーラの腰に手を回す。
 当たり前のようなこの仕草にも大分慣れ、この状態でも余裕の笑顔で立っていられるようになりました。ふふん。

「僕という婚約者がありながら、他の男に笑いかけるなんてさ、ありえないよね。なんなのあいつ、ちょっと殺して来ていいかな?」

 げふん。

 ここで駄目って言うと、「へえ、あいつを庇うんだ。誰だったっけ、家ごと潰しておこうか」などと言い出しかねないので、出来るだけ笑顔で躱す。

「何の事ですか? 先程は昨日のナタナエル様とのお買い物を思い出しておりましたの。こんな場で上の空だっただなんて恥ずかしいですから、あまり大きな声を出さないで下さいね」

 にっこり笑えば、ナタナエルの背後に大輪の花が咲いた。うん分かりやすい現像をありがとう。何とかごまかせたようで、ほっと息をつく。頭の上に口付けはいらないので、少し落ち着いて下さい。

 ぎろりと睨みつけてくる、妙齢のご令嬢からの視線が面倒臭い。
 元々美少年だったナタナエルは、毎日順調に美青年への階段を登っている。いつの間にやら身長を追い抜かれ、身体も少しずつ大きくなっていった。

 魔力が無いからと日々身体を鍛えて余念が無いのだが……魔力、無いようであるよねと言うのが私の見解だ。
 人目に触れないように気をつけているみだいだけど。

 まあ、僕は男だからと、君を守る力をつけたいと一生懸命剣を振るナタナエルは好きなので、そんな姿をみれば嬉しいとしか言えない。



「ナタナエル様ぁ。今日も素敵ですわぁ、ね、あちらに今日の主役のラダーヴェス侯爵がおりましてよ。わたくしあの方とは懇意にしておりまして……」

 意を決した令嬢の集団がナタナエルを取り囲んだ。それとなくシーラを押しのけ割り込もうとしているので、がっちり掴み抵抗するナタナエルの手が食い込んで痛い……

「そう……様子を見て挨拶に行く事にするよ。お気遣いをどうも、セユーバ侯爵令嬢」

「あらん、遠慮なさらないで下さいませ。わたくしの事はどうぞミアフィルとお呼び下さいな」

 そう言ってナタナエルの腕に自らのものを絡め擦り寄る令嬢に、シーラは内心むっと唇を尖らせた。

「は……?」

「え?」

 ナタナエルが呟いた一音と下がった温度に、ミアフィルは笑顔のまま固まる。

「何故僕が君の名を呼ぶと? 正直覚えるのも面倒臭いと思うんだが?」

「え? え?」

「僕はね、婚約者に貞節を求めるし、自分もそうするべきだと思っているんだ。というかこの人しか考えられない。この台詞は公式の場でも何度も口にしているけれど、皆聴覚をしっしてしるのか、さっぱり浸透しないんだ。それに君は婚約者がいるだろう。恥ずかしいとは思わないのか? 人前で別の男の腕にしがみついて」

 その言葉にミアフィルは慌てて離れ、顔を俯けた。

「あ、あの殿下、わたしは婚約者がいなくてですね。別に……」

「だから?」

「……っ!」

 別の令嬢が呟いた一言に、吹雪のような冷風が一陣通り過ぎた。

「君のことなんてどうでもいいよ。それよりさっきからシーラを押しのけようとしてるよね。やめてくれ、邪魔なのは君だよ」

 ばっきばきに凍りついた令嬢を一瞥し、そのまま視線を群がる令嬢に滑らせる。
 真冬の風雪よりも凍える瞳で睨まれた令嬢たちは、顔を赤らめその場にくずおれた。

 ……胸にぐっさりくるこれに、実は病みつきになっている令嬢たちがいる事を、シーラは知っている。

 今も足元から、冷たい視線イイ……あの侮蔑の眼差しが堪らない……罵って下さい……という台詞が漏れ聞こえてくる。皆重症だ。

 勿論本気で王子妃を狙っている人たちもいるけれど、そんな目的の方々も随分増えた。やっぱりナタナエルの色気が半減すればいいのに。と、シーラは少しだけむくれてみせた。


 ◇ ◇ ◇


 来月私たちは結婚する。
 何だかんだで早かったな。妃教育大変だったからせいかな。あ、思い出したく無い事思い出した。

 指先に絡まる大きな手に気づく。今は手袋をしているけれど、その中身が昔のように王子様然としていない事を私は知っている。その手を握り返して、思う。

「ナタル、私を見つけてくれてありがとう」

 ナタナエルは一瞬だけ目を見開いてから、シーラに口付けた。

「どういたしまして。僕の勇者様」

 握り合う手を、強く繋ぎ直した。







読んで頂いた方ありがとうございました(^^)
反省点の多い作品になってしまいました。次回に活かせる様に頑張ります(-_-;)

おまけ1本
番外編1本用意しました

もう少し付き合ってもいいよー、と言う方は是非(*'▽'*)
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

【完結】裏切られ婚約破棄した聖女ですが、騎士団長様に求婚されすぎそれどころではありません!

綺咲 潔
恋愛
クリスタ・ウィルキンスは魔導士として、魔塔で働いている。そんなある日、彼女は8000年前に聖女・オフィーリア様のみが成功した、生贄の試練を受けないかと打診される。 本来なら受けようと思わない。しかし、クリスタは身分差を理由に反対されていた魔導士であり婚約者のレアードとの結婚を認めてもらうため、試練を受けることを決意する。 しかし、この試練の裏で、レアードはクリスタの血の繋がっていない妹のアイラととんでもないことを画策していて……。 試練に出発する直前、クリスタは見送りに来てくれた騎士団長の1人から、とあるお守りをもらう。そして、このお守りと試練が後のクリスタの運命を大きく変えることになる。 ◇   ◇   ◇ 「ずっとお慕いしておりました。どうか私と結婚してください」 「お断りいたします」 恋愛なんてもう懲り懲り……! そう思っている私が、なぜプロポーズされているの!? 果たして、クリスタの恋の行方は……!?

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。

ラム猫
恋愛
 異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。  『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。  しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。  彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。 ※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

愛を知らない「頭巾被り」の令嬢は最強の騎士、「氷の辺境伯」に溺愛される

守次 奏
恋愛
「わたしは、このお方に出会えて、初めてこの世に産まれることができた」  貴族の間では忌み子の象徴である赤銅色の髪を持って生まれてきた少女、リリアーヌは常に家族から、妹であるマリアンヌからすらも蔑まれ、その髪を隠すように頭巾を被って生きてきた。  そんなリリアーヌは十五歳を迎えた折に、辺境領を収める「氷の辺境伯」「血まみれ辺境伯」の二つ名で呼ばれる、スターク・フォン・ピースレイヤーの元に嫁がされてしまう。  厄介払いのような結婚だったが、それは幸せという言葉を知らない、「頭巾被り」のリリアーヌの運命を変える、そして世界の運命をも揺るがしていく出会いの始まりに過ぎなかった。  これは、一人の少女が生まれた意味を探すために駆け抜けた日々の記録であり、とある幸せな夫婦の物語である。 ※この作品は「小説家になろう」「カクヨム」様にも短編という形で掲載しています。

冷酷騎士団長に『出来損ない』と捨てられましたが、どうやら私の力が覚醒したらしく、ヤンデレ化した彼に執着されています

放浪人
恋愛
平凡な毎日を送っていたはずの私、橘 莉奈(たちばな りな)は、突然、眩い光に包まれ異世界『エルドラ』に召喚されてしまう。 伝説の『聖女』として迎えられたのも束の間、魔力測定で「魔力ゼロ」と判定され、『出来損ない』の烙印を押されてしまった。 希望を失った私を引き取ったのは、氷のように冷たい瞳を持つ、この国の騎士団長カイン・アシュフォード。 「お前はここで、俺の命令だけを聞いていればいい」 物置のような部屋に押し込められ、彼から向けられるのは侮蔑の視線と冷たい言葉だけ。 元の世界に帰ることもできず、絶望的な日々が続くと思っていた。 ──しかし、ある出来事をきっかけに、私の中に眠っていた〝本当の力〟が目覚め始める。 その瞬間から、私を見るカインの目が変わり始めた。 「リリア、お前は俺だけのものだ」 「どこへも行かせない。永遠に、俺のそばにいろ」 かつての冷酷さはどこへやら、彼は私に異常なまでの執着を見せ、甘く、そして狂気的な愛情で私を束縛しようとしてくる。 これは本当に愛情なの? それともただの執着? 優しい第二王子エリアスは私に手を差し伸べてくれるけれど、カインの嫉妬の炎は燃え盛るばかり。 逃げ場のない城の中、歪んだ愛の檻に、私は囚われていく──。

【完結】追放された大聖女は黒狼王子の『運命の番』だったようです

星名柚花
恋愛
聖女アンジェリカは平民ながら聖王国の王妃候補に選ばれた。 しかし他の王妃候補の妨害工作に遭い、冤罪で国外追放されてしまう。 契約精霊と共に向かった亜人の国で、過去に自分を助けてくれたシャノンと再会を果たすアンジェリカ。 亜人は人間に迫害されているためアンジェリカを快く思わない者もいたが、アンジェリカは少しずつ彼らの心を開いていく。 たとえ問題が起きても解決します! だって私、四大精霊を従える大聖女なので! 気づけばアンジェリカは亜人たちに愛され始める。 そしてアンジェリカはシャノンの『運命の番』であることが発覚し――?

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

処理中です...