【完結】暴君王子は執愛魔王の転生者〜何故か魔族たちに勇者と呼ばれ、彼の機嫌を取る役割を期待されています〜

藍生蕗

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番外編 異類婚姻譚 ー魔族と人ー 3. 居住

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 レイの祖父は貴族だ。
 父はその家の次男だったが、所謂いわゆる貴族の駆け引きが苦手な輩で大して優秀でも無かった。それでどこかの家に婿に収まる事も、文官や騎士を目指す事も出来なかった。
 それ故、平民である母と結婚した。

 豪商と呼ばれる程でも無く、庶民と言うには少しばかり裕福な環境。
 普通貴族であれならば、屈辱と捉え、こんな不遇に甘んじる事は出来ないだろう。
 だが、父は気にしていないようだった。
 そして祖父や伯父は優秀であったし、一族に一人出来の悪いのがいたところで痛くも痒くも無かった。
 つまり父の存在など取るに足らないものだったのだ。

 レイは何故か伯父に良く似ていた。
 だから目を付けられたのだと思う。
 ある日、第一騎士団に所属する騎士に声を掛けられた。

 君はアンソレオ侯爵家の者かと。
 レイは否定した。
 すると騎士は急にレイを見る目を変え、直ぐに踵を返した。
 成る程、父が嫌がる理由が少しだけ分かった。

 第一騎士団は王族の近衛の準部隊だ。
 高位の貴族が多くいる。
 外交官を務める伯父の顔を知る者がいてもおかしくはない。
 

 それからしばらくして、同じように声を掛けられたのだ。
 
 
「あら、ロイーズ様?」

 振り返ったのは、それが従兄と同じ名前だったから。
 子どもの頃は良く遊び、共に過ごした。
 昔は双子のように良く似ていると言われたものだった。

 振り返った先の令嬢は一瞬驚き、口元に手を置き目を丸くしている。
 
「申し訳ありませんが……人違いかと……」

 レイの瞳は青かった。
 けれどその虹彩は金に瞬き、それこそがアンソレオ侯爵家である伯父と同じものであった。まるで美しい宝石のようなそれ。
 若い頃伯父はその瞳で意中の女性を射止めたのだと聞いた事がある。

 けれど、レイ自身はこの瞳に何かしらの恩恵を受けた覚えが無かった。今も……

 目の前の相手は貴族のようだった。
 関わる事は得策では無いだろう。

 レイは登城する事は滅多に無い。
 貴族というものが面倒臭いと何となく察していた為だ。
 自分の容姿も血筋も、その面倒事に巻き込まれてもおかしくないと思っていた。

 けれど令嬢はレイに歩み寄り、興味深そうに眺めた。



 そうした事があって暫くした後、伯父から連絡があったのだ。
 縁談を持って来たと。


 ◇


 一つ息を吐いて、事務室から足を踏み出した。
 そこで廊下で不思議そうに張り紙を眺めるセラが目に留まり、つい口元が綻んだ。

「セラ、部屋を見つけるまで宿屋で暮らすんだ」

 その言葉にセラは目を丸くする。
 そして逡巡してから申し訳無さそうに口を開いた。

「お金……無い」

 レイは苦笑した。

「心配しなくても、住み込みで働いて貰う」

 その言葉にセラはきょとんと首を傾げた。
 レイは思わず出そうになる手を、腕を組んで誤魔化し、苦笑した。

「この国に慣れて、一人で生きていけるようにならないとな。お前、当分人間の振りをして生きていかないといけないんだろう」

 最後の方は声を顰め真面目な顔で告げる。
 セラもまた真剣な顔で一つ頷いた。

 レイは思わず手を伸ばし、セラの頭をわしわしと撫でた。


 ◇


「人間の振りをするんだぞ」

 そう言ってセラは宿屋に連れていかれ、宿屋の女将に紹介された。一通り挨拶を済ますと、レイは仕事があるからとセラに別れを告げた。
 立ち去るレイのその背を見送るのが何故か酷く悲しくて、セラの眉は自然と下がる。

 ずっと追いかけて歩いた背中……
 ドアを開き外に出ようと足を踏み出す瞬間に、レイは躊躇いがちに振り返り、また来るからと告げた。
 その言葉にセラはホッと息を吐き、一つ頷いた。
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