また出会えたらその時は

華月

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令嬢の恋編

67.漸く気づきました。

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 アルマが城に推参しなくなって数日。至って今日も平和である。ある意味彼女は、そんな日常のスパイスだったのでは? なんて呑気なことを考えられるのも、彼女とレオの関係が氷解したからに他ならない。

 そうやって暇を持て余していた俺の元に、一通の招待状が届いた。差出人を見てみると、予想通りそれはアルマからのものだった。中身を確認し、綺麗な文字で綴られた手紙を封筒におさめると机にそっと置く。

(お茶会かぁ……。)

 今までそういったものは全部断ってきたから、外部のものは今回が初めての出席。他に誰か来るのかな。マナーに関してはたぶん大丈夫……だと思うけど……。
 根掘り葉掘り聞かれないといいな……と思っていると、コンコンとノックの音が聞こえる。部屋の扉が開かれると、いつもこの時間には見ない顔があった。

「あれ、レオどうした? まだ昼前だぞ。」

 何かあったのかと歩み寄ると、突然ぎゅっと抱きしめられた。

「わっ」
「婚約の書類が受理された!」
「え? じゃあ……」
「うん、今日からカイは俺の婚約者だよ。」

 ぱっとレオの顔を見上げると、綺麗な翡翠の瞳を細めて微笑んでいた。あれ、少しだけ息が上がっている。知らせたくて、急いで来たのかな。

「嬉しい……!」
「ふふ、うん、嬉しいね」

 どちらからともなく引き寄せあって、キスをした。レオの首に腕を回して、唇を食む。

「ッは、……んむ…」

 柔らかな、でも熱い唇でちゅっちゅっとついばんで、時折食んで……。ああ、気持ちいい……すき。もう何度も何度もしているのに、やっぱりこのキスはたまらなく好きだ。

 唇を離すと、まだ離れ難い気持ちになってしまって縋りつきたくなる。キスで煽られたのか、劣情が身体を駆け巡っているのに気づいてしまった。

(うぁ……まいった、こんな真昼間なのに今すごくシたい……。ああでも、まだ仕事があるよな。夜まで待てるかな……)

「カ、カイ?」

 名前を呼ばれて、ハッとした。レオを見つめたままだった。ふいっと視線をそらして、取り繕うように言葉を並べる。

「な、なんでもない! 受理のこと、わざわざ教えに来てくれてありがと。まだ仕事あるんだろ? 頑張ってな。」

 暗に、仕事に戻れという意味を含めると、レオから予想外の返事が返ってきた。

「今日はもうおしまい。カイと過ごそうと思って、午後は休みにしたんだ。」
「え」
「びっくりした?」

 にこにこといたずらっ子のような笑みを浮かべるレオだけれど、俺の意識はそちらには向いていない。

 今日はもう、部屋にいる。ということは。誘ってもいいかな……恥ずかしいけど……

 ごくりと唾を飲み込んで、俺は意を決した。

「あ、のさ、レオ。」
「? なに?」
「えと…………休みなら、時間、たくさんあるから、その、……だ、抱いて欲しい……んだけど……。」

 こんな普通に誘ったのなんて初めてだし、本当に恥ずかしすぎて目も見れない。多分顔は真っ赤だ。どきどきし過ぎて心臓が口から出そう……。いつもスマートに誘ってくるレオってすごい。俺はそんな所も、いつも任せ切りなんだなと痛感した。

「………………。」
「……だめ?」

 なんでなんも言ってくれないんだよ! 頑張って言ったのに……。ちら、とレオを見やると片手で口を抑えて真っ赤になっていた。

「……どうしよう…………めちゃくちゃ嬉しくて魔法ぶっぱなしそう……。」
「それはだめだろ。」

 俺から言われると、嬉しいんだ……そっか。確かに俺も、いつも嬉しいなぁ。

 …………。

 ……俺、自分からキスするようになったし、態度で示せてるはずだから、恥ずかしいし気持ちとか言葉にしなくてもいいと思ってたけど、それ……だめじゃないか?
 はっ、そういえば、この間俺にして欲しいこと考えておいてって言った時も、

『俺のこと想ってくれてたら……、愛してる、って言って欲しい。』

 って! 言われた!!!! 言って欲しいって思ってるんじゃん! うわ、俺バカ! なんでその時に気づかなかったんだよ。いつもレオはたくさん言葉をくれていたのに、俺はほとんど……。
 突然気づいてしまった俺の言葉の足りなさに、切ない思いをさせたんじゃないか、とか考えてしまってなんかもう泣きそう……。いや、泣くのはお前じゃないだろってかんじなんだけど……。

「嬉しいなぁ……もっともっと俺を求めてほしい。いくらでもあげるよ、愛しい愛しい婚約者殿。」

 そう言って俺のタイをするりと抜くと、シャツのボタンを2・3個ぷつぷつと外していく。露になった首筋にぢゅっと吸いつかれ、痕を残された。一気に意識をそっちへ持っていかれる。

「んっ」
「っはぁ……俺の印、いっぱい付けても良い?」
「ん、いいよ、好きなだけ付けて。」

 ゴリッと、陰茎に押し当てられる感覚。服の上からでも分かるほど、レオのそれは勃起していた。同じように質量を増している俺の陰茎に擦り付けてくる。

「んぁっ、染みになっちゃうよ……ベッド行こ?」
「カイ、すぐとろとろになっちゃうもんね。」

 言うや否や、俺の体はふわりと宙に浮き、キスをたっぷりとされながら寝室へと運ばれて行った。
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