今宵、君と、月を

槇村焔

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2話

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相良先生の家の最寄駅。
先生に会社のお中元を届けに行く途中で、先生の娘・花蓮ちゃんとそのお友達とバッタリ出くわした。
僕の姿を見つけるや否や、娘の花蓮ちゃんだけじゃなくて、連れのお友達3人も僕に向かって挨拶をしてくれる。
下校中の花蓮ちゃんに会うのもこれが一度や二度じゃなく、花蓮ちゃんのお友達ともすっかり顔見知りになっていた。


「やぁ、花蓮ちゃん…!お友達も一緒?」
「宮沢さん…こんにちは」
「あ、うん。こんにちは…!
みんなこんなところで何しているの?」
「ああ、これから何処に行こうか悩んでて…。
ねぇ、宮沢さん、これから暇?」

先生の家に出版社からのお歳暮を渡すのが、本日の僕の役目であった。
厳密に言えば、それくらいしかなくて、仕事も午前中で切り上げているから今日はほとんど用事という用事はない。
午後休を貰っていた。
つまりはいたって、暇であった。


「とくにこれといって用事はないけど…」
「ほんと?じゃあ、ちょっとお願い聞いてくれないかな?」
「お願い?」
「うん。
もうすぐテストがあってテスト勉強しなきゃなんだけどね、勉強教えてくれる先生がいたらなぁ…って」


僕にそうおねだりするのは、花蓮ちゃんの友達の木陰ちゃん。
木陰ちゃんはツインテールな垂れ目がちの可愛い女の子である。
ぽややん、と相良先生のようにおっとりとした印象を受ける子なのだけれど、とても頭がいいらしい。
ふわふわとつかみどころのない性格をしているが、実際とんでもない秀才のようだった。




「僕なんかがテスト勉強、教えることがあるかな?」と問うと、「この子が邪魔しないように監視が必要なの!」と思ってもない返答が返ってきた。


「監視?」
「すぐに集中力切れるんだよね、木陰。
木陰は勉強しなくっても頭いいんだけど、私たち3人で勉強していると、すぐ邪魔してくるの。
じゃあ教えてもらおうとすると、難解な説明でまったくわからないし…。
だから、私たちの勉強を見るのと、木陰の相手を含めてお願いしたいの。もちろん、奢るわよ」

お小遣い出たばかりだから…と太っ腹なことをいう花蓮ちゃん。
さすがに高校生に奢られるのは社会人として…いや男として複雑である。

「…いやいや、学生さんに奢られる身分じゃないからね。気持ちはありがたいけど。
でも、奢りとか関係なく僕で良いんだったら、手伝うよ」
「ありがとう~、宮沢ちゃん!
さっすが、気のいい乙女系親父だね!素敵!」

豪快に笑いながら、僕の背を遠慮なくバンバン叩くのは、花蓮ちゃんの友達の宗方夕日ちゃん。
花蓮ちゃんいわく、腐女子さんらしい。

夕日ちゃんは、男の人で色々と妄想するのが好きなんだそうだ。特に僕みたいな冴えない親父が好きらしい。
一体、こんな冴えない僕なんかで、どんな妄想をするんだろうか。
尋ねてみたけれどニヤニヤと笑うだけで、応えてはくれなかった。


「今日は、例の彼氏いないの?
この間一緒にデートしてたじゃない」
「彼氏…?」
「ほらほら、例のイ・ケ・メ・ン!黒髪の爽やかイケメンよ!
ちょっと腹黒っぽいダークな感じがする好青年!」
「宮沢さん、この子はこの間駅でお見かけした人のことをいっているみたいです。
…夏目さんでしたっけ?」

丁寧に答えてくれたのは、走流響ちゃん。
花蓮ちゃんのお友達の中でも、しっかりもののお姉さん的存在である。
落ち着きのある響ちゃんは、4人の中で一番大人っぽい。

花蓮ちゃんはこの夕日ちゃん、響ちゃん、木陰ちゃんと仲がいいようでよく放課後は駅近くで遊んでいるようだった。
性格は全然似ていない4人だけれど、なんでも話せる親友らしくよく4人一緒にいる。


「か、彼氏って…!」
「ほら、変なこと言ってないで、いくよ。
宮沢さんもついてきて」

花蓮ちゃんは強引に会話を断ち切ると先頭に立って、僕らを誘導する。

花蓮ちゃんに連れられた先は、駅前のマックであった。
なるほど、これならば学生さんでも奢ることはできる範囲の金額である。
だが、流石にこの歳で中学生に奢られるのはなんだか申し訳ない気がして、結局みんなの分の食事代は僕が出すことになった。


「すみません…、お誘いした上、奢ってもらうなんて…」
「いやいや、これくらい。
僕のお給料なんて相良先生が書く作品で成り立っているからね。それに花蓮ちゃんにはお世話になっているし…。遠慮しないでよ」
「えへへ…ありがと~。宮沢さん。
花蓮のお父さんはこんな担当さんに世話して貰えて幸せだねぇ。いっそ、嫁になっちゃうのありだと思うなぁ」
「嫁…?なに…嫁って…!」

私は別に宮沢さんのことなんて思ってないし…!と真っ赤な顔で花蓮ちゃんは反論する。
そんな、はっきり言わなくても。


「ああ、ごめん。花蓮のお父さんもお嫁さんタイプだったね~。両方受けじゃ、やれるものもやれないよね。
ネコ×ネコじゃダメだよね」
「なんの話?」
「花蓮のお父さんの嫁に、、宮沢さんをって話だけど?

花蓮のパパはちょっと天然入っているから、宮沢さんみたいな優しい人が絶対、いいと思うし。
それに身近に妄想できる素材がいて、私も妄想が滾って凄くハッピーになれてみんな幸せなルートに」
「夕日、これ以上言うと首絞めるよ…」
「…はい…」

空いていた窓際の席につくと、各々教科書とノートを出して、みんなそれぞれ勉強を始めた。
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