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5章
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「月が綺麗ですね…か」
夜も20時を回った頃。
疲れ目をほぐしながら、パソコンから目を離す。
今月までに仕上げなければいけない仕事を抱えており、今日で連続残業5日目。今が頑張りどころである。
だが、頑張りすぎて倒れてしまっては元も子もない。
一息つかないと明日もたないな…、と、息抜きがてら5Fの休憩室に向かった。
昼の間は賑やかな休憩室も、この時間ともなれば誰もいない。
昼の間は誰かしら座っている僕がお気に入りの窓際の席も、今は空席だった。
自販機で珈琲を買い、お気に入りの席に腰を下ろす。
お気に入りの、遊園地が見渡せる窓辺。
夜の闇に、遊園地のイルミネーション。
空を見上げれば、月や星々が煌々と輝いている。
ゆっくりと動く観覧車の影を見て思い出すのは夏目くんのこと。
いつの間にか、休憩室から観覧車を見ても、昔付き合っていた人の思い出が蘇る頻度は凄く少なくなっていた。
知らぬ間に元カレを思う気持ちは小さくなって、夏目くんが僕の中で大きくなっていた。
月が綺麗ですね。
こんな綺麗な月を見ていると思い出す。
君が僕に微笑んでくれたこと。
僕がトラウマに思っていた観覧車のことも、悩んでいた時も、いつもいつも側にいてくれたこと。
ずっと、僕を優しく見守ってくれたこと。
月が綺麗ですね。
君は、どんな想いで僕にそう告げていたんだろう。
「…君と見る月は、1人で見る月と違ってみえたな…。
凄く輝いて見えた。
月が綺麗ですね、ってそういう気持ちなのかな…。人に心奪われると、すべてが綺麗に見える。会いたくて会いたくてたまらないのに、会えば上手く言葉にならない…そんな感情…ーー。
ただ静かに胸が震えるようなーーぎゅっと胸が締め付けられるような…」
僕は夏目くんが好きだ。
うまく言葉にできないほどに、自分じゃ制御できないほど。
また恋が始まっていたんだ。
どうしようもない、恋が。
「夏目くんは、あの人とは違う。
あの人とはぜんぜん違う人なのに…。ずっと、あの人の影を重ねて、勝手に壁を作ってた。好きだ、って、そんな言葉が切り出せなくて、逃げてばかりで…。でも…」
夏目くんに、会いたい。会って、話がしたい。
先生のこと、僕が思っていること、すべて。
全て聞いてほしい。
きっと上手く言えないだろうけれど、それでも聞いて欲しい。
そうすれば、今の現状から変えられる気がする。
恋のロングバケーションを終わらせることができる。
この曖昧な気持からも、成長することができる。
しかし、気持ちだけが空回りし、ここ数日夏目くんの姿を見ることはなかった。
僕が担当作家さんに原稿を貰いに行っている時、夏目くんは社内にいて、僕が社内で仕事している時は夏目くんは外で仕事をしているようだった。
一体いつになったら、このすれ違いが終わるんだろう。
いつになったら、僕は彼に告げることができるのだろうか。
ようやく決意したのに。
早く伝えないと、またいつもの自分に戻ってしまいそうなのに。
焦れば焦るほど、夏目くんに会えず…思いだけが膨らんでいった。
「はぁ…」
「やぁ。どうしたのこんな時間まで」
手元に影が落ちる。
顔をあげると、椎名先生が紙コップ片手に立っていた。
一応、ここは会社の休憩室なんだけど…、社員証も持っていない先生がどうやって入ってきたんだろう。
この間みたいに、社内の誰かに呼び出されたんだろうか?
「先生こそ、こんな時間にうちの会社に何かようですか…?
また会議でも?」
尋ねた僕に、先生は「あー、まぁちょっとね…」と言葉を濁した。
「僕のことは、まぁ、どうだっていいじゃない。
ちょっと用があって立ち寄っただけだよ。そうしたら浮かない顔をした宮沢さんを見つけたってわけ。なに、そんなくらい顔して。なにか悩み事?」
「わかりますか?僕ってそんなにわかりやすいかな…。」
花蓮ちゃんといい、満といい椎名先生といい…。
僕って顔にでるタイプですかね?と尋ねれば椎名先生は「そこが君のいいところだよ」と微笑した。
「いいところって?」
「素直で可愛いってことさ。」
「馬鹿っぽいと?」
「捻くれない捻くれない。正直ってことさ」
先生はウィンクしながら答えると、僕が座っている前の席に座った。
片肘を机につきながら、「んで、君をそんな顔にしている原因は?」と、僕に問う。
まるで、満のようにズカズカと僕の悩みを尋問してくる先生に、苦笑する。
満も椎名先生も、よく他人に対し臆することなく、すんなりと聞けるものだ。
見習いたいところである。
「実は、夏目くんに逢いたいのに、逢えないから落ち込んでいたんです」
「そーじくんに?どうして、また…」
「それは…ー
夏目くんに、言いたいことがあるから…言わなくてはいけないことがあるから、会いたいんです」
「へぇ…」
先生は僕の表情に、面白がるように目を細めた。
「言いたいこと、か。ふふ…。どんな話だろう?」
「あの、つかぬことお伺いしますけど、夏目くんと先生の関係って、どんな関係なんでしょう?」
ずっと聞きたかったことを、口に出せば先生はあっけらかんと「ただの作家と担当だけど?」と答える。
「それだけ、ですか…」
「それだけ、だけど…」
「でも、ホテルに行ったって…」
「ホテル?」
「写真が…」
夕日ちゃんから送られたラインの画面を見せると先生は、ああ!と手をたたいた。
「月が綺麗ですね…か」
夜も20時を回った頃。
疲れ目をほぐしながら、パソコンから目を離す。
今月までに仕上げなければいけない仕事を抱えており、今日で連続残業5日目。今が頑張りどころである。
だが、頑張りすぎて倒れてしまっては元も子もない。
一息つかないと明日もたないな…、と、息抜きがてら5Fの休憩室に向かった。
昼の間は賑やかな休憩室も、この時間ともなれば誰もいない。
昼の間は誰かしら座っている僕がお気に入りの窓際の席も、今は空席だった。
自販機で珈琲を買い、お気に入りの席に腰を下ろす。
お気に入りの、遊園地が見渡せる窓辺。
夜の闇に、遊園地のイルミネーション。
空を見上げれば、月や星々が煌々と輝いている。
ゆっくりと動く観覧車の影を見て思い出すのは夏目くんのこと。
いつの間にか、休憩室から観覧車を見ても、昔付き合っていた人の思い出が蘇る頻度は凄く少なくなっていた。
知らぬ間に元カレを思う気持ちは小さくなって、夏目くんが僕の中で大きくなっていた。
月が綺麗ですね。
こんな綺麗な月を見ていると思い出す。
君が僕に微笑んでくれたこと。
僕がトラウマに思っていた観覧車のことも、悩んでいた時も、いつもいつも側にいてくれたこと。
ずっと、僕を優しく見守ってくれたこと。
月が綺麗ですね。
君は、どんな想いで僕にそう告げていたんだろう。
「…君と見る月は、1人で見る月と違ってみえたな…。
凄く輝いて見えた。
月が綺麗ですね、ってそういう気持ちなのかな…。人に心奪われると、すべてが綺麗に見える。会いたくて会いたくてたまらないのに、会えば上手く言葉にならない…そんな感情…ーー。
ただ静かに胸が震えるようなーーぎゅっと胸が締め付けられるような…」
僕は夏目くんが好きだ。
うまく言葉にできないほどに、自分じゃ制御できないほど。
また恋が始まっていたんだ。
どうしようもない、恋が。
「夏目くんは、あの人とは違う。
あの人とはぜんぜん違う人なのに…。ずっと、あの人の影を重ねて、勝手に壁を作ってた。好きだ、って、そんな言葉が切り出せなくて、逃げてばかりで…。でも…」
夏目くんに、会いたい。会って、話がしたい。
先生のこと、僕が思っていること、すべて。
全て聞いてほしい。
きっと上手く言えないだろうけれど、それでも聞いて欲しい。
そうすれば、今の現状から変えられる気がする。
恋のロングバケーションを終わらせることができる。
この曖昧な気持からも、成長することができる。
しかし、気持ちだけが空回りし、ここ数日夏目くんの姿を見ることはなかった。
僕が担当作家さんに原稿を貰いに行っている時、夏目くんは社内にいて、僕が社内で仕事している時は夏目くんは外で仕事をしているようだった。
一体いつになったら、このすれ違いが終わるんだろう。
いつになったら、僕は彼に告げることができるのだろうか。
ようやく決意したのに。
早く伝えないと、またいつもの自分に戻ってしまいそうなのに。
焦れば焦るほど、夏目くんに会えず…思いだけが膨らんでいった。
「はぁ…」
「やぁ。どうしたのこんな時間まで」
手元に影が落ちる。
顔をあげると、椎名先生が紙コップ片手に立っていた。
一応、ここは会社の休憩室なんだけど…、社員証も持っていない先生がどうやって入ってきたんだろう。
この間みたいに、社内の誰かに呼び出されたんだろうか?
「先生こそ、こんな時間にうちの会社に何かようですか…?
また会議でも?」
尋ねた僕に、先生は「あー、まぁちょっとね…」と言葉を濁した。
「僕のことは、まぁ、どうだっていいじゃない。
ちょっと用があって立ち寄っただけだよ。そうしたら浮かない顔をした宮沢さんを見つけたってわけ。なに、そんなくらい顔して。なにか悩み事?」
「わかりますか?僕ってそんなにわかりやすいかな…。」
花蓮ちゃんといい、満といい椎名先生といい…。
僕って顔にでるタイプですかね?と尋ねれば椎名先生は「そこが君のいいところだよ」と微笑した。
「いいところって?」
「素直で可愛いってことさ。」
「馬鹿っぽいと?」
「捻くれない捻くれない。正直ってことさ」
先生はウィンクしながら答えると、僕が座っている前の席に座った。
片肘を机につきながら、「んで、君をそんな顔にしている原因は?」と、僕に問う。
まるで、満のようにズカズカと僕の悩みを尋問してくる先生に、苦笑する。
満も椎名先生も、よく他人に対し臆することなく、すんなりと聞けるものだ。
見習いたいところである。
「実は、夏目くんに逢いたいのに、逢えないから落ち込んでいたんです」
「そーじくんに?どうして、また…」
「それは…ー
夏目くんに、言いたいことがあるから…言わなくてはいけないことがあるから、会いたいんです」
「へぇ…」
先生は僕の表情に、面白がるように目を細めた。
「言いたいこと、か。ふふ…。どんな話だろう?」
「あの、つかぬことお伺いしますけど、夏目くんと先生の関係って、どんな関係なんでしょう?」
ずっと聞きたかったことを、口に出せば先生はあっけらかんと「ただの作家と担当だけど?」と答える。
「それだけ、ですか…」
「それだけ、だけど…」
「でも、ホテルに行ったって…」
「ホテル?」
「写真が…」
夕日ちゃんから送られたラインの画面を見せると先生は、ああ!と手をたたいた。
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