洗脳・パラセクト=狂王誕生=

槇村焔

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あの華を排除する。
だけど、その前に。
ナトルシュカにはやらなくてはいけないことがあった。
ナトルシュカが、意識を取り戻してから7日経った日。
絶対安静だとサティウィンにキツく言われていたのだが、ナトルシュカはサティウィンがいない時を見計らい、ララールの元を訪れていた。
華を排除する前に、ララールに、一言あの華について話しておくためだった。

サティウィンにも話すべきか悩んだが、いらぬ心配をかけるだけだと辞めた。
サティウィンに華のことを話せば、危険なことをしようとするナトルシュカを止めるだろうし、サティウィンの性格ならば自分がどうにかすると言い出しかねない。
それだけは避けたかった。

 サティウィンを危険に晒すくらいなら、何も告げない方がいい。
ララールに華のことを告げるのは、ゾルフが言っていた『青き目災いになりて』の言葉に該当するララールの身を案じてのことだった。それに、最悪、ナトルシュカが華を駆除することができなかったとしても、ララールに話しておけばナトルシュカが死んでしまっても、サティウィンに協力を仰ぐことはできる。


 突然のナトルシュカの来訪に、ララールは「兄様の部屋を借りているけど、僕は兄様じゃないよ…?」と戸惑いの言葉を口にした。


「大事な話があるのです」
「大事な…?」

ナトルシュカの真剣な表情を前に、ララールも何かを察したようだった。

「…兄様、呼ばなくていいのかな…?僕だけでいいの?もう兄様には話したお話?」
「ええ。サティウィン様には…ちょっと言えなくて…」
「兄様に言えないお話…?」

頼りがいのある兄を差し置いて自分に何のようだろう?
ララールは不思議に思いながらも、ナトルシュカを部屋に招き入れた。
ナトルシュカは部屋にララールの他に誰もいないことを確認すると、独房であった男の話と、自由と一緒に与えられた華、そして自分が戦った子供のことを告げた。

「人の心を支配する華…そんなものが、この国に…?」

ララールもナトルシュカと同様、最初はナトルシュカの言葉が信じることができず動揺していた。
だがナトルシュカの必死になって話す姿に、考えを改め信じたようだった。
ララールがいつか見た夢。それも、信じる原因になったのかもしれない。

二人でしらばく話した結果、第一王子の側近・ゾルフは華を通じて何か良からぬことを企んでいる。
華の成長だけが彼の目的だとは到底思えないという結論に至った。


「ナトルシュカが敗れた子供の化物っていうのは…僕がいつかみた夢の化物と一緒だったりするのかな…」
「夢…。
化物に王やサティウィン様が食べられてしまう夢…でしたか」
「そう。ナトルシュカの話を聞いていたら、あれはただの夢ではなく、予知夢だったんじゃないか…って。
この国の危険を教えてくれた夢じゃないかって思うんだ」

この国に近いうちに起きるだろう未来。
国の崩壊だけでは済まされないだろう最悪の結末。

「ねぇ、ナトルシュカ。変なこと考えてないよね…」
「…へんなこと」
「そう。兄様も、ナトルシュカもいつも自分の身なんて考えず、他人のため…自分のことは二の次って思っているんだから。だから、今回も…」

何も言わぬナトルシュカに、ララールは焦ったように言う。

「駄目だよ。
変なことを考えちゃ。ナトルシュカの身になにかあったら…」
「俺は、ただ、サティウィン様に立派な王になってほしいだけです。其のためには、どれだけ自分が犠牲になろうが構わない。どれだけララール様が止めても、俺は俺のやりたいようにやります」

貴方でも邪魔したら許さない。
ナトルシュカの声は、そう言っているようだ。
ナトルシュカはそのまま、部屋を出ていく。
が、部屋を出る直前、何かを思い出したようにララールの方へ振り返ると

「もしも、俺が自我をなくしたら、其の時は俺をサティウィン様に殺してくださるよう言ってくれませんか?」と告げた。

「兄様に…?でも…」
「お願いします。もし、俺がどうしても死ぬような時があった場合は…あの方に殺してほしい」
「ナトルシュカは…、愛しているんだね…」

誰を、とはララールは言わない。
口に出して告げてはならぬ相手だからだ。
ララールの言葉に
「愛してますよ。誰よりも」

そう告げて、ナトルシュカは部屋を後にした。
物陰から2人の様子を見ていたサティウィンのことなど知りもせずに。
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