口先だけで

うみすけ

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口先だけで

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「別れよっか。」


俺の口からでる言葉。それは、とても辛い重い選択だが、覚悟は出来ている。


「な、なんで………?急に、どうしたの?」

「君ね、浮気してるじゃん。」

「そんな事………。」

「あんまり、俺の事馬鹿にすんなよ。見ててわかるわ。」


そう。彼女は浮気をしたのだ。ハッキリ言って有り得ない。気持ち悪い。消えて欲しい。こんな人と過ごした時間、返して欲しい。


「バレバレだよ。隠しても無駄。だから、別れようって言ってんの。気持ち悪いからね。」

「………。」


何も喋らない彼女は、何故か辛そうにしていて、何故か涙を流す。


「どうして、君が辛そうにするの?どうして、君が泣くの?」

「わ、わかれ、たくないから………!」

「なら、浮気すんなよ。」


俺の心では、彼女の事を未だに好きで仕方がない。しかし、一度こうなった奴は無理だ。何度だって何度だって、言い訳並べて、都合の良い解釈で、誰にでも会う。誰にでもキスをする。


「ごめん、なさい………。」

「謝っても無駄。頭を下げても無駄。泣いても無駄。」


手で顔を抑えて泣く彼女は何度も謝る。意味無いのに。


「あのね、なんで浮気したの?理由によっては考えてあげるよ。」

「………。」

「何もないの?」

「さ、寂しかった………。」


これはよく聞くセリフ。嘘をつくな。ナンパされたとかならまだわかるが、自ら会いに行って、その気が無いなんて都合が良すぎる。


「なるほどね。」

「だから………私、浮気なんてしないって………自分で思ってたのに………。」


これもよく言う。浮気してる奴が、しないはもはやお笑い番組。自分を正当化する事に必死。彼氏の事なんてなんも考えてない。我が身良ければ全て良し。


「そうね、口先からペラペラと良くもそんな訳のわからない事を言えるね。君の事信じてた俺の気持ちはどうしよっか。」


彼女はもう、何も喋らなくなって、床に座り込んでいる。


「小学生でもわかる問題があるんだ。自分がされたら嫌な事を人にしてもいいですか?」

「………。」

「早く答えてくんない?」

「だめ、です………。」

「そう。駄目です。君はしたけどね。」


俺から伝えるこの言葉は、きっと彼女を傷つける。でも、それでいい。俺はもっと心が病んだんだから。


「でもね、おかしな話だよね。浮気した方が今後は幸せになるんだもん。君は浮気相手とこの後すぐに仲良くするんだから。」

「貴方しか………見れないよ………。」

「はいはい。俺はそんな事聞きたくない。浮気された方は辛くて、浮気した方が幸せになる。世の中腐ってる。」


だから、お前はもう、死んだ方が良いと思う。

口先だけの愛なんて無いなら、永遠にお前は不幸になるべきだよ。だから最後にお前に送る言葉。


「さようなら。」








俺は、元彼女だった、その人を見つめる。


ピクリとも動かないその表情は、世界で1番苦しそうな顔で倒れていた。


「世の中腐ってるけど、今のお前はまだ、腐りかけだね。」
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