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朝食の後、僕は町に新しい取引相手を探しに行くことにした。
ヘンリーさんから聞いた話が頭から離れない。
でも、考えても僕にはどうしようもないことばかりだ。
それに……聖女に似てたからなんだっていうんだ。
ヘンリーさんも言ってたじゃないか、当時を知ってる人なんてもういない。
本当に聖女様が銀髪だったかどうかも確かじゃないんだし……。
御者台で揺られながら、僕は緩やかに蛇行しながら続く街道と、その先の街並みに目を細めた。
僕の視界を遮るものは何もない。この世界の広がりを肌で感じる。
遠くに連なる山稜の境界線、美しい草原の緑の集積、迫るような入道雲。
それらと自分との対比が、この世界の中における自分の大きさを教えてくれているような気がした。
そうだ、そんな不確かなことよりも、現実を見よう。
僕はもう、独りじゃないんだから――。
吹き抜ける風が、僕のもやもやした気持ちも一緒に拭い去っていく。
冬に備えて色々と蓄えも必要だし、マイカ用の防寒着も買わないと。
今年はいつもより色々と物入りになるから、新しい取引相手はぜひ見つけておきたい。
やることは山ほどある。
そう考えると、自然と手綱を握る手に力が入った。
町に着き、荷馬車を停めてから、モーレスさんの店に挨拶に行った。
「こんにちは」
「おぅ、シチリか。どうした、仕事以外で来るなんて珍しいな?」
カウンターの椅子に座り、咥え煙草のままモーレスさんが言った。
「はい、ちょっとご相談があって……」
「相談?」
僕は背嚢から薬のサンプルを取り出してカウンターの上に並べた。
「これは……」
「父のレシピを参考に、自分で調合してみた薬です。今までの薬だと、高価で普通は簡単に買えないと思うんです。でも、ここにある薬は、材料も多年草や多く採れる素材を使ってますから、安価で販売ができるんです」
「それが本当なら間違いなく売れると思うが……なんで俺のところに持って来たんだ?」
片眉を上げるモーレスさんに、僕は正直に打ち明けた。
「実は、新しい取引相手を探しています。できれば、モーレスさんに紹介していただけないと思いまして……」
僕が考えた最適解だった。
モーレスさんを通して新しい取引相手を紹介してもらえれば、モーレスさんに紹介料が入り、商売人としての顔も立つだろうと考えたのだ。
だが、そんな僕の考えを見透かしたように、モーレスさんはため息をついた。
「シチリ、俺に義理立てなんかしなくていい。お前から紹介料を抜くほど俺は困っちゃいねぇよ」
「え……」
モーレスさんは、ガシガシと僕の頭を撫でた。
「ついこの間まで、ロクに挨拶もできなかったチビがよ……いつの間にか、変な気を回すようになりやがって……ったく」
「モーレスさん……」
ぐっと胸が熱くなる。
やっぱり、モーレスさんには敵わないなと思った。
「で、こいつらの効能は?」
モーレスさんが薬を指さす。
「あ、はい、これが腹痛、こっちは発熱やだるさに、これは傷や火傷に効きます」
こめかみをトントンと指で叩きながら、薬をじっと睨んでいる。
咥えた煙草の灰がカウンターの上にポトリと落ちた。
モーレスさんは落ちた灰を手の平で払いのけ、
「ふむ……なるほどな。よし、ステラママの食堂はわかるよな?」と僕に尋ねた。
「はい、この間、ミレイさんと一緒にお邪魔しました」
「なんでミレイと……いや、言わなくていい。そこのテラスの一番奥の席にマーカスって奴がいる。そいつに傷薬をくれてやれ」
「え? あげろってことですか?」
「そうだ。理由は何でもいい」
「は、はい……」
薬をあげたら何かの合図になるのだろうか?
うーん、良くわからないけど……。
「俺にできるのはここまでだ。あとはシチリ、自分で頑張ってみな」
「はい、ありがとうございます!」
――とにかく、やってみるしかない。
モーレスさんに礼を言って、僕は早速、ステラママの食堂へ行ってみることにした。
ヘンリーさんから聞いた話が頭から離れない。
でも、考えても僕にはどうしようもないことばかりだ。
それに……聖女に似てたからなんだっていうんだ。
ヘンリーさんも言ってたじゃないか、当時を知ってる人なんてもういない。
本当に聖女様が銀髪だったかどうかも確かじゃないんだし……。
御者台で揺られながら、僕は緩やかに蛇行しながら続く街道と、その先の街並みに目を細めた。
僕の視界を遮るものは何もない。この世界の広がりを肌で感じる。
遠くに連なる山稜の境界線、美しい草原の緑の集積、迫るような入道雲。
それらと自分との対比が、この世界の中における自分の大きさを教えてくれているような気がした。
そうだ、そんな不確かなことよりも、現実を見よう。
僕はもう、独りじゃないんだから――。
吹き抜ける風が、僕のもやもやした気持ちも一緒に拭い去っていく。
冬に備えて色々と蓄えも必要だし、マイカ用の防寒着も買わないと。
今年はいつもより色々と物入りになるから、新しい取引相手はぜひ見つけておきたい。
やることは山ほどある。
そう考えると、自然と手綱を握る手に力が入った。
町に着き、荷馬車を停めてから、モーレスさんの店に挨拶に行った。
「こんにちは」
「おぅ、シチリか。どうした、仕事以外で来るなんて珍しいな?」
カウンターの椅子に座り、咥え煙草のままモーレスさんが言った。
「はい、ちょっとご相談があって……」
「相談?」
僕は背嚢から薬のサンプルを取り出してカウンターの上に並べた。
「これは……」
「父のレシピを参考に、自分で調合してみた薬です。今までの薬だと、高価で普通は簡単に買えないと思うんです。でも、ここにある薬は、材料も多年草や多く採れる素材を使ってますから、安価で販売ができるんです」
「それが本当なら間違いなく売れると思うが……なんで俺のところに持って来たんだ?」
片眉を上げるモーレスさんに、僕は正直に打ち明けた。
「実は、新しい取引相手を探しています。できれば、モーレスさんに紹介していただけないと思いまして……」
僕が考えた最適解だった。
モーレスさんを通して新しい取引相手を紹介してもらえれば、モーレスさんに紹介料が入り、商売人としての顔も立つだろうと考えたのだ。
だが、そんな僕の考えを見透かしたように、モーレスさんはため息をついた。
「シチリ、俺に義理立てなんかしなくていい。お前から紹介料を抜くほど俺は困っちゃいねぇよ」
「え……」
モーレスさんは、ガシガシと僕の頭を撫でた。
「ついこの間まで、ロクに挨拶もできなかったチビがよ……いつの間にか、変な気を回すようになりやがって……ったく」
「モーレスさん……」
ぐっと胸が熱くなる。
やっぱり、モーレスさんには敵わないなと思った。
「で、こいつらの効能は?」
モーレスさんが薬を指さす。
「あ、はい、これが腹痛、こっちは発熱やだるさに、これは傷や火傷に効きます」
こめかみをトントンと指で叩きながら、薬をじっと睨んでいる。
咥えた煙草の灰がカウンターの上にポトリと落ちた。
モーレスさんは落ちた灰を手の平で払いのけ、
「ふむ……なるほどな。よし、ステラママの食堂はわかるよな?」と僕に尋ねた。
「はい、この間、ミレイさんと一緒にお邪魔しました」
「なんでミレイと……いや、言わなくていい。そこのテラスの一番奥の席にマーカスって奴がいる。そいつに傷薬をくれてやれ」
「え? あげろってことですか?」
「そうだ。理由は何でもいい」
「は、はい……」
薬をあげたら何かの合図になるのだろうか?
うーん、良くわからないけど……。
「俺にできるのはここまでだ。あとはシチリ、自分で頑張ってみな」
「はい、ありがとうございます!」
――とにかく、やってみるしかない。
モーレスさんに礼を言って、僕は早速、ステラママの食堂へ行ってみることにした。
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