異世界ツアーしませんか?

ゑゐる

文字の大きさ
192 / 243

192 王都 4(別視点)

しおりを挟む
* 別視点 ポール side *

 夕刻になった。

 私と妻のクレアは晩餐会の会場前にいる。
 子供は晩餐会に入れないので娘のリリーは屋敷に帰らせた。
 宮廷料理より、街の料理の方が美味しいと言ったら、納得して帰ってくれた。

 私と妻は職員の案内で席に着いた。私たちは職員からテーブルマナーの説明を受けた。
 宮廷料理のテーブルマナーは、基本的に手で食べる。スプーンを使うのはスープだけだ。
 今回はアンナスプーンが用意されているので、それを使ってもいいし、手で食べてもいいそうだ。
 そのため、フィンガーボウルとナプキンも用意されている。

     *

 まずは、銅製のカップにワインが注がれた。だが、まだ飲んではいけない。
 全員のカップにワインが注がれた。

職員「国王陛下、おきさき様、ご入場」

 私たち貴族は起立する。そして右手を胸に当て、こうべを垂れる。

国王「座ってくれ」

 貴族が着席した。

国王「今宵の晩餐は、新しい直轄領サンローラを知ってもらうためにもよおした。
   レシピはサンローラに登録してあり、特産品も使っている。斬新な料理ばかりだ。
   歓談しながら味わってほしい」

 陛下がワインカップを手にした。
 そして貴族もワインカップを手にする。

国王「サンローラとタマイサ王国の発展を願い、乾杯」
貴族「乾杯」

 ワインを飲む。高級なワインだ。うまい。
 乾杯のあとは、料理が運ばれてくる。最初の料理はピザだ。
 チーズは少量出回っているが、好んで食べる人は少ない。
 調理法が斬新で、しかもうまい。そう驚いている貴族が多い。

     *

 次はミネストローネとパンが運ばれてきた。
 野菜のスープは珍しくないが、ブイヨンを使ったコクのあるスープだ。パスタも入っている。
 パスタは、今までにない新しい食材だ。スープなのに食べごたえがある。
 パンはバゲット、ソバ粉のパン、ライ麦を使ったパンの三種類。保存性を考慮した固いパンではない。
 スープにつけなくても食べられる美味しいパンだ。 

     *

 次はオムレツ。中に刻んだ野菜とベーコンが入っていて、デミグラスソースがかかっている。
 高級食材の卵、手の込んだ美味しいソース、貴族達が驚いている。

     *

 次はコトレッタ。牛肉に衣をつけて、揚げ焼きにしたものだ。
 食べやすいように切ってあり、トマトソースがかかっている。衣はサックリ、肉は柔らかい。

     *

 次はパスタ、ジェノベーゼ。香草でソースを作りパスタにからめて食べる。
 パスタは様々な調理法があり、乾燥させれば保存ができる。今後、注目の食材になるだろう。

     *

 次はスコッチエッグ。輪切りにしてある。二品目の卵料理だ。
 卵を包んでいる挽肉はくず肉とも呼ばれ、貴族が食べることはない。
 しかし斬新で、うまい料理だ。挽肉に対する認識が変わることだろう。

     *

 次はカレーライス。鼻をくすぐる香辛料の香りが食欲をそそられる。
 今回初めて米を見た貴族が多いだろう。
 カレーはパンと一緒に食べても美味しいが、米との相性がとても良い。
 今後、米を使った料理は注目されるに違いない。

     *

 次はデザートのアイスクリーム。器の盛られて、焼き菓子が添えられている。
 王都にもアイスキャンディーがある。しかし牛乳を使った冷たい菓子はない。
 多くの貴族が驚いている。私も街で最初に食べたときは衝撃だった。

     *

 最後に出て来たのは、カフェオレとチョコレート。
 通常、料理の最後に出す飲み物は紅茶である。王都ではコーヒーがまだ普及していない。
 チョコレートは幻の菓子と呼ばれている。王都では入手困難である。
 カフェオレとチョコレート、どちらも初めて口にする貴族が多いはずだ。

     *

 今回の料理は、今までにない革新的なものばかりだ。
 貴族はもちろん、陛下とお妃様も満足した表情をしておられた。

     *

職員「「国王陛下、お妃様、ご退場」

 私たち貴族は起立、右手を胸に当て、こうべを垂れる。

 こうして晩餐会は終了した。


*    *    *    *    *


* 別視点 マギー side *

 私は王都に到着したその日に国王様に拝謁した。
 そろばんなどの説明が終わり、肩の荷が下りてほっとした。

 私には翌日からは別の仕事がある。それは、そろばんの指導を数日間行うこと。
 午前中は王城、午後はギルドでそろばんの使い方を指導する。
 私は、あらかじめ説明書を用意しておいた。
 足し算引き算はすぐに理解してもらえたが、大変だったのはかけ算と割り算。
 これは九九くくを理解していないと出来ない。
 やはり九九の早見表を用意しておいてよかった。
 教えるのは数日あれば充分。あとは練習あるのみ。
 そろばんを習得すれば、計算業務が大幅に改善するので、皆さんのやる気がすごい。

     *

 私の仕事は、そろばんの指導以外にもう一つある。それは王城で作る料理の味見と助言。
 午前中に王城でそろばんを教えたあと、厨房で料理の助言をする。
 私は調理をせず、味見をするだけ。完成した料理が次々運ばれてくる。
 少量ずつだけど品数が多いのでお腹いっぱいになる。
 しかもデザートの味見もしなければならない。太りそうで怖い。
 でも美味しい。どれも街で食べる料理と同じ味。さすが、王城の料理人ね。

     *

 晩餐会の翌日、朝食のときにお代官様から二つのことを告げられた。
 一つは街の名前がサンローラになったこと。素敵な名前ね。
 もう一つは、お代官様が叙爵して子爵になったこと。
 男爵を飛び越えて、子爵に任命されることは滅多にないらしい。
 おめでとうございます。
 しかし、叙爵の功績はすべてアンナさんによるものだとおっしゃっていた。
 お代官様は嬉しいと言うより、戸惑っている感じでした。

     *

 そして翌日、私たちはサンローラの街に帰ることになりました。
 数日でしたが、王都での生活はとても有意義でした。

ポール「サンローラに向けて、出立」



 私たちは馬車でサンローラの街に帰ります。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。 彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。 最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。 一種の童話感覚で物語は語られます。 童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

【改訂版】槍使いのドラゴンテイマー ~邪竜をテイムしたのでついでに魔王も倒しておこうと思う~

こげ丸
ファンタジー
『偶然テイムしたドラゴンは神をも凌駕する邪竜だった』 公開サイト累計1000万pv突破の人気作が改訂版として全編リニューアル! 書籍化作業なみにすべての文章を見直したうえで大幅加筆。 旧版をお読み頂いた方もぜひ改訂版をお楽しみください! ===あらすじ=== 異世界にて前世の記憶を取り戻した主人公は、今まで誰も手にしたことのない【ギフト:竜を従えし者】を授かった。 しかしドラゴンをテイムし従えるのは簡単ではなく、たゆまぬ鍛錬を続けていたにもかかわらず、その命を失いかける。 だが……九死に一生を得たそのすぐあと、偶然が重なり、念願のドラゴンテイマーに! 神をも凌駕する力を持つ最強で最凶のドラゴンに、 双子の猫耳獣人や常識を知らないハイエルフの美幼女。 トラブルメーカーの美少女受付嬢までもが加わって、主人公の波乱万丈の物語が始まる! ※以前公開していた旧版とは一部設定や物語の展開などが異なっておりますので改訂版の続きは更新をお待ち下さい ※改訂版の公開方法、ファンタジーカップのエントリーについては運営様に確認し、問題ないであろう方法で公開しております ※小説家になろう様とカクヨム様でも公開しております

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?

たまご
ファンタジー
 アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。  最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。  だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。  女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。  猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!! 「私はスローライフ希望なんですけど……」  この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。  表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

『辺境伯一家の領地繁栄記』スキル育成記~最強双子、成長中~

鈴白理人
ファンタジー
ラザナキア王国の国民は【スキルツリー】という女神の加護を持つ。 そんな国の北に住むアクアオッジ辺境伯一家も例外ではなく、父は【掴みスキル】母は【育成スキル】の持ち主。 母のスキルのせいか、一家の子供たちは生まれたころから、派生スキルがポコポコ枝分かれし、スキルレベルもぐんぐん上がっていった。 双子で生まれた末っ子、兄のウィルフレッドの【精霊スキル】、妹のメリルの【魔法スキル】も例外なくレベルアップし、十五歳となった今、学園入学の秒読み段階を迎えていた── 前作→『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合

処理中です...