暒晴-はればれ-

kamatoshi

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3章 里奈と理佐

高坂理佐

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「理佐ちゃんってどうしてそんなに頭いいの?」
中学の頃いきなりそんなことを聞いてくる同級生がいた。
事実、成績はいい方だったが、それは勉強をするしか無かったからだ。
正しくは自分の将来の為に勉強をしてないといけないと思ったから。
中学の頃、私の両親は毎日のように喧嘩をしていた。毎日夜になると父親の怒号を聞きながら勉強をしている。
父親はいわゆる酒乱で、酒を飲んで帰ってくると態度が大きくなり暴れることがあった。
私が大きくなるにつれ、それが当たり前になってきた。
いわゆるDVモラハラ夫。シラフの時でも父は母を怒鳴りつけるようになっていった。その矛先は私にも。
仕事先でトラブルがあった日はそのストレスを私たち2人で発散しているんだろうとわかっていた。
自分で言うのはなんだが成績優秀な娘のことが気に食わなかったのだろう。父はずっと私のことを浮気相手の子供だと罵ってきた。母は常に否定する。私には母が浮気したのかどうかは知らないが、こんなクズな男の子供だと思いたくなかったのは事実だ。
こんなやつの娘ならいるかもわからない浮気相手との子供の方が嬉しいとさえ思っていた。
小学校の頃はそんな父にも愛想良く接していた。父の望む通りいい顔をして機嫌取りをしてた。
だがそれも意味のないことだと次第に思ってきた。いくらいい顔をして機嫌取りをしても父は母に暴力を振るう。いくら私が頑張っても。何も意味のないことだった。

それに気づいた頃から父のことをいないものだとみなして生活するようにした。
私が母を支えるんだと。結局父の稼ぎがないと私たちは生活ができない。それを武器に父は母に暴言をはく。その父の肉体、精神攻撃によって母は疲弊していき、日中仕事をすることすらできなくなっていた。そんな父も私が成長すると共に仕事も出席していき、責任のいる仕事を任されるようになっていったようだ。それに比例してストレスも増え、暴力も増えた。
「結局、お前らは俺の稼ぎがなければ生活できないんだよ。俺の言う通りにしていればいいんだ」
それが父の口癖だった。そうやって家で大口を叩くことで仕事の時の情けない自分を隠しているのだろうということが私にはわかっていた。
中3の受験の時、担任との三者面談は何故か父が同行した。父が俺が行くときかなかったのだ。母を表に出す訳にはいかない。
その言葉の意味は暴力を振るわれている傷だらけの母を担任に見られる訳にはいかないっていう意味なのだろうということはすぐにわかった。
担任は私の成績なら県内トップの偏差値の高校にも余裕で受験でき、県外のもっと偏差値の高い高校でもいけると言っていた。
しかし、父はそんな担任に絶対に県内の言えば市内の高校じゃないとダメだと言った。
その時その言葉の真意はわからなかったが、今思えば私も母も自分の目の届くところに置いておきたいということだったのではないだろうかと思う。
結局私が選択したのは県内で一番偏差値の高い女子校だった。
それには父も文句は言わなかった。いい所の高校を卒業することと、男がいない高校に行くことで浮ついたことがないだろうということだったのだと思う。そのつもりでその女子高を選択した。
正直高校なんてどこでもよかった。
中学を卒業する頃には父の暴力はエスカレートしてきた。たまにその手は私にも飛んでくる。成長することで母の若い頃に似てきているからと言われた。自分に似てないということが気に食わないのかもしれない。
酒を飲んだ父に私の目が気に食わないと言われて持っていた箸で目を抉ろうと襲い掛かられそうになったこともある。とっさに母が私に覆い被さって庇う。
振り下ろされた箸が母に刺さり折れる。
そんな母の腕の中で私は父を睨む。その目を見て父は折れた箸をもう一度私に向けて振り下ろそうとする。
そのとき初めて母が初めて大きな声をあげた。
「もうやめて下さい!これ以上は警察を呼びますよ!」
滅多に口答えしない母に父は怯み、舌打ちをして箸を床に投げて家を出て行った。
外でエンジンがして車でどこかに行ったことがわかった。そのまま飲酒運転で捕まってしまえばいいのに。母の腕の中でそんなことを思ったのを覚えている。
母は箸が刺さった腕を押さえて怪我をした方の腕で私の頭を撫でる。
「ごめんね、理佐ちゃん。こんな情けないお母さんで」
その言葉に私は何も言えなかった。
私はその頃からどうやったら母が幸せになるかということを考えていた。

高校に入学してからは家にあまりにいたくないということもあり、放課後にバイトをするようになった。少しでも経済的に母を支えたいということもあり、自分の生活する分のお金ぐらいは自分で稼ぎたいと思っていた。
そんなある日の夜。バイトを終えて家に帰った時、両親の会話を聞いてしまった。
その日は父は母に暴力を振るう訳ではなく、淡々と母に何かを言っていた。
「お前はどうしようもない人間だ。お前は1人では何にもできないんだ。あいつは俺が1人で育てた」
父はそんなことを言いながら母の心を抉っていた。あいつというのは私のことなのだろう。
その言葉の中に、
「あいつがいるうちは、お前は俺と離婚はできない。どうせ親権は俺にないだろうから、お前1人であいつを育てることなんてできないだろう」
父のその言葉に私ははっとした。
その時に思いついた。母を幸せにする方法を。
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