心の交差。

ゆーり。

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結人の誕生日とクリアリーブル事件2。

結人の誕生日とクリアリーブル事件2㉝

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数分前 路上


また走る。 彼らは一つの目的地へと、全力で走って向かっていた。
「そういやさぁ! 君たちは伊達の友達なんでしょ?」
「はい!」
未来が危険だと聞いた椎野たちは、彼のいる路地裏へと走りながら会話を続ける。
「もしかして、伊達と同い年だったりする?」
「そうっすよ!」
「え、マジで!? じゃあ俺たちタメじゃん!」
「え、椎野さんは高1ですか?」
「そうだよ」
友達の問いに、椎野は笑って答えた。 
「マジですか・・・。 てっきり、ユイよりは年上かと・・・」
「は!? おいおい、俺がユイより年上なわけ・・・って、そんなに俺老けて見えるか!?」
「いや違います! しっかりしていてお兄さんみたいな感じがしたから、そうかなーと」
鋭い突っ込みに、友達は苦笑しながら訂正の言葉を並べる。 そんな彼を見て、椎野もまた苦笑を返した。
「何だよそれ。 まぁ、俺たちはタメなんだから君たち二人もタメでいいよ。 俺も最初からタメ口だったし」
「「分かった!」」

緊張が解れ3人が打ち解け合った頃、丁度お姉さんに言われた路地裏へと辿り着いた。 角を曲がり未来の姿を発見した直後、3人は慌てて後ろへ下がりその場に身をかがめる。
―――あの人が言っていたこと、本当だったんだ。
―――信じてよかったぜ。
そして――――椎野は自分よりも少し後ろにいる少年たちを放っておいて、未来たちのことを観察し始めた。
―――相手は・・・一人?
―――なら、未来でも余裕じゃねぇか。

その頃伊達の友達らは、未来が相手をしている者を見た途端、一瞬にして恐怖に包まれていたということは――――この時の椎野は、まだ知らない。 

そこで椎野は、彼らの光景を見ていて一つの疑問を抱いた。
―――あれ・・・未来は攻撃をし続けているのに、どうして相手はやり返さないんだ?
まるで未来が相手をしている男は人の形をした置物といってもいいように、ビクとも動かない。 そんな異様な光景に、椎野は徐々に懸念を抱き始める。
―――アイツは、一体・・・。
喧嘩の結果よりも男のことが気になり始め、後ろにいる友達らに聞こうとする。
「なぁ、アイツは一体誰・・・ん? どうした?」
後ろを向きながら尋ねると、少年たちが顔を青くして固まっていることにやっと気が付く椎野。 どうしたのかと尋ねようと、彼らの顔を覗き込むが――――
「おい・・・? どうしたんだ」

~♪

椎野の言葉を途中で遮るように、突然この場に鳴り響く携帯電話。 彼らに問うことをいったん止め、一度電話に出ることにした。
『椎野! 今どこにいる?』
「おお、伊達か? 今はー・・・」
そこで簡単に、今いる場所を伊達に伝えた。
『それで未来は?』
「未来は今のところ大丈夫だよ。 今確かに未来は喧嘩しているけど、被害は受けていない。 それに相手も一人だ」
しばらく未来たちの光景を遠くから見据えていると、突然彼らの動きが止まった。 どうやら二人は何かを話しているようだ。

―――何してんだ・・・? 
―――アイツら。

『え? 未来は被害を受けていないのか?』
「あぁ。 未来は何も攻撃を食らっていないし、無傷だぜ」
『そんなこと、あり得んのか・・・』
「いや、今相手にしている男が未来にやり返さないんだよ」
『相手は一人なんだろ? なら、すぐ無力化して終わりそうなのに』
「そうなんだよなぁ・・・」
『その相手は椎野の知らない人? 誰か分からないか?』
―――いや、誰って言われても・・・。
椎野はその男に見覚えがなかったため、後ろにいる伊達の友達らにもう一度尋ねてみた。
「なぁ、アイツって誰だか分かるか?」
その問いに対し彼らは驚きを隠せない表情をしたまま、小さな声で男の名を吐き出した。

「清水・・・海翔・・・」

―――シミズ・・・?
―――どこかで聞いたことがあるような・・・。
そして友達らから今もなお何かを話し合っている未来たちの方へ視線を戻し、電話越しにいる伊達に向かって口を開く。
「未来と今喧嘩をしている奴の名前は、清水海翔だって」
『ッ、は!? 清水海翔!?』
「何だよ、伊達も知って・・・マズい」
『え?』
清水海翔がどんな人物なのかを聞き出そうとすると、椎野の目の前の光景はまたもや動き出した。 それは――――男が、先刻とは違って未来に殴りかかっているのだ。
―――やべぇよ、このままだと未来が!
仲間の身に危険を感じ、電話越しにいる伊達に向かって慌てて言葉を放った。
「悪い切る!」
『え? ちょ』
彼の返事も聞かずに電話を切り、今度は後ろにいる友達らに向かって続けて言葉を発する。
「二人はここにいて。 俺は未来を助けに行ってくる」
「いや、でもアイツは」
「俺なら大丈夫だから」
優しい表情で口にした後、椎野は地面に置いていた鉄パイプを手に取り――――仲間である未来のところへ向かって、勢いよく駆け出した。


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