心の交差。

ゆーり。

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結人の誕生日とクリアリーブル事件2。

結人の誕生日とクリアリーブル事件2㊹

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結人は藍梨のいる隣に何も言わずに腰を下ろし、俯いたまま考える。 夜月がクリアリーブルへ入ってしまった今、これから先どうしようかと。
「ユイ・・・」
副リーダーである真宮は、他の仲間が結人の目の前で各々地べたに座っていく中、結人の隣に立ちリーダーの命令を待つ。
「真宮」
なおも顔を下にしたまま、彼を近くに来るよう呼び寄せた。 
「怪我をしている奴らに、手当てをするよう命令してくれ」
今複雑な感情を持ち合わせているからか、大きな声が出せないため小声で言い渡す。 彼は素直に命令に従い、怪我をしている仲間に声をかけ始めた。
彼らが手当てをしている中、結人は一人考える。

―――夜月を、どうやって取り戻そう。
―――まだ俺から離れていくなんて決まってはいない。
―――でも、どうしたら・・・。
―――それにまだクリーブルに入っただけで、結黄賊を辞めたわけでは・・・ないんだよな。

そんなことを考えていると、手当てを終えた者たちは元いた場所へと戻り座っていく。 そして全員手当てを終え、みんなが集合したところで結人は顔を上げた。
今この場には、病院にいる悠斗と優、そしてクリアリーブルに入ってしまった夜月以外の仲間たちがいる。 
そんな彼らの顔を一通り見渡した後、結人はその場に立ち上がり仲間の方へと足を進めた。 そして意を決し、彼らに向かって口を開く。
「夜月とは・・・昔、色々あって。 今詳しく話しても、時間の無駄だから話さない。 でもとりあえず、夜月は俺のことを偽善者だと思っている。 それは・・・本当のことだ」
結人はこの時、唯一この中で事情を知っている未来のことを直視できずにいた。 どんな顔をして彼のことを見たらいいのか、分からなかったからだ。
「俺と夜月は、出会った頃仲よくはなかった。 俺が偽善者っていうことが原因で、気まずい生活をずっと送っていた。 でも、今では一応解決して落ち着いたんだ。
 それで俺は、夜月と仲よくなった。 だけど・・・また夜月は、過去のことを思い出しちまったのかもな」
「それって」
「あぁ、分かっている」
椎野が小さな声で口を挟むのに対し、結人もその言葉に更に上から被せた。

「これは・・・誰のせいでもない、俺のせいだ。 ・・・だから俺が、夜月のことは何とかする」

「「「・・・」」」

将軍のその発言に、ここにいる結黄賊らは皆一様に黙り込んだ。 そんな中、結人はこれからのことを考える。
―――でもまずは、夜月に会わないと駄目だよな・・・。
―――今更会っても、口を利いてくれないかもしれないけど。

~♪

そんな弱気なことを思っていると、突如鳴り響く結人の携帯電話。 結人は携帯を取り出し、電話相手を確認した刹那――――身体全体が凍り付いた。
携帯に表示された“八代夜月”という文字。 つい先程まで夜月と話さなければならないと思っていたが、いざ彼の名を見ると身動きが取れずにいた。

―――どうして、夜月から・・・。
―――ッ、まさか・・・結黄賊を辞めたいという話か・・・?

突然そのような嫌な予想が頭を過り、息を呑んでより電話に出ることができなくなる。 
そんな結人を見かねたのか、いつの間にかリーダーのいる壇上に登っていた未来が手に持っている携帯を取り上げた。
「あ、おい!」
そして表示された名を見るや否や、彼は躊躇いもせずに電話に出る。
「おい夜月! お前今どこにいる!」
そう口にしてから数秒後、未来の表情が一瞬にして変わった。
「ッ、お前・・・夜月じゃないな? 夜月はどうした」
静かな口調で電話相手に尋ねる。 そんな彼の様子を、ここにいる結黄賊らは静かに見据えていた。
「リーダー? 俺はリーダーじゃねぇ。 ・・・あぁ。 分かった、待ってろ」
そう言うと一度未来は耳から携帯を遠ざけ、画面を見た。 そしてスピーカーモードに切り替え、結人の方へ携帯を差し出す。 
だが結人はそれを手に取ることができず、黙って相手の言葉を待った。
「結黄賊のリーダーか? そこにいるんだろ?」
いきなり放たれた男の発言に思わず言葉を詰まらせるが、静かな口調で尋ねかける。
「俺に何の用だ?」
顔も見えない相手に強張った表情をしながら口にすると、電話越しから返事がきた。

「明日の13時。 俺たちはお前らの基地へ行く」
「は・・・?」
「今言った時間に、お前らはそこへ来い」

―ツー、ツー。

一方的に言葉を放たれた後、強制的に切られる電話。 そこで結人はやっと未来から携帯を受け取り、画面を見た。 再び夜月の名を見て、心が動き出す。
「・・・どうする?」
未来のその一言に、結人は覚悟を決めた。
―――こんなところで、俺がうじうじしていても仕方ねぇんだよな。
自分を嘲笑うように心の中でそう思った後、結人は仲間に向かって大きな声で言葉を発した。
「春馬たちは、今日先輩たちの家に泊めてもらえ」
後輩たちに命令を下した後、続けてみんなに言い渡す。
「明日13時、正彩公園に集合だ。 おそらく明日、夜月もあの公園に来るだろう。 だから・・・明日が、夜月を取り返すチャンスだ」
最後の言葉は仲間に向かってではなく、自分に向けた言葉でもあった。
「夜月は明日、俺たちに対して本気で攻めてくるのかもしれない。 だからお前ら、油断はすんなよ」
当然この言葉も、仲間ではなく自分に言い聞かせるように。 この時の結人は、夜月に対する恐怖心を通り越し――――焦りしか、感じていなかった。
本当は夜月に会いたくないと思いつつも、今は彼を取り戻すことしか頭にない。 夜月の気が変わってしまううちに、取り戻すことが第一だった。
だからこの時の結人は、いい戦略を考えず――――ただ今自分にできることを、やっていくしかなかったのだ。

―――夜月・・・待っていろよ。
―――お前は俺たちの仲間なんだ。
―――だから・・・夜月を、簡単に手放すわけにはいかねぇ!


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