心の交差。

ゆーり。

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御子柴のヤキモチ勉強会。

御子柴のヤキモチ勉強会⑧

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放課後 北野の家


今日も放課後は北野の家へ集まり、勉強会を始めていた。 
「コウからOK貰えてよかったね」
昼休みにコウに勉強を教えてもらうよう頼み込んだところ、彼はあっさりとOKする。 このことをすぐ北野たちに報告すると、彼らは自分のことのように素直に喜んでくれた。
今頃コウは、優に明日のことを伝えているのだろうか。 そんなことを思いながら、御子紫もどこか安心した表情を彼らに見せた。
「本当によかったよ。 いや、コウなら必ずOKしてくれるとは思っていたけど、あんなに早くOKしてくれるなんてな」
「だから言ったろ? コウは絶対にOKしてくれるって」
それはコウが優しいからなのか、それとも自己犠牲を発揮してその頼みを渋々OKしてくれたのかは分からない。 
どちらにしろ、御子紫は勉強を教えてもらえればそれでよかった。
「それで、明日はコウの家で勉強すんの?」
「あぁ。 一応そういうことにはなっているかな」
椎野の問いに、昼休みに話したコウの会話を思い出しながら返していく。
「何時から行くの?」
北野のその問いにも、御子紫は即答した。
「8時にコウの家に行くってことになっているよ」
「8時!? 早くね?」
「そうか?」
「明日は折角の休日だし、朝はのんびり起きたいからなぁ。 俺は」
その答えを聞いて、椎野は勉強に疲れたのか伸びをしながらそう答える。

「でも8時は早いな。 確かコウは、朝が苦手だったはずなのに」

夜月がさり気なく発したその言葉に、御子紫はすぐさま食い付いた。
「!? え、コウって苦手なものあんの!?」
「何だよその言い方。 まるでコウは苦手なものがないみたいな」
呆れたように口を挟むそんな椎野に、自分の思いを綴っていく。
「そうだよ。 コウは苦手なものがない。 俺はそう思っているのに」
「御子紫は、コウが人間じゃないとでも思っているのかー」
またもや呆れた表情をして、彼はペンを器用に回しながらそう返事をした。
「まぁ実際、朝が苦手かどうかは分からねぇけどな。 噂だ噂」
「噂?」
教科書に目を通しながら、夜月はそう付け足す。 “噂”という単語に首を傾げていると、隣にいる北野が御子紫に向かって言葉を発した。
「コウから勉強を教えてもらえる許可を得たし、やる気も少しは出てきたでしょ? じゃあ、早速勉強しようよ」
その言葉を聞いて、机に肘をつくのを止め後ろにある北野のベッドに寄りかかる。
「んー、勉強してもいいんだけど、明日は一日中コウに勉強を教えてもらうから今日はいいかな」
「そんなに余裕ぶっこいていると、明日痛い目見るぞー」
手を頭の後ろに回し軽く目を瞑っているそんな呑気な御子紫に対し、椎野は目を細めながらペンで御子紫を指し棒読みでそう返した。 
その様子を見て、夜月も二人の会話に口を挟む。
「一教科だけでもやっておけよ。 明日楽になるぞ」
「えー」
「じゃあせめて、国語だけでも」
勉強する教科では一番簡単であろうものを選んだのか、彼はそう言って国語セットを御子紫の目の前にドスッと置いた。

「え、マジで俺にやらせる気かよ!?」

「全てをコウに任せるな」

「・・・」

その言葉を聞いて、反論せずに渋々教科書を開く。 だが数秒向き合うと、すぐに目をそらし小さな声で呟いた。
「・・・国語の勉強のやり方なんて、分かんねぇ」
それを聞き取った夜月は、軽く溜め息をつき御子紫に向かって口を開く。
「国語は内容をある程度憶えていたらそれでいい。 一度本文を全て読み返して、内容を把握するだけで十分さ。 
 それと、他でも点数を稼ぎたいなら本文に出てくる漢字を全て憶えるんだな」
淡々とした口調で国語の勉強のやり方を教えてくれたが、大きな声で反論の言葉を述べた。
「は!? 本文の漢字全部憶えんの!? そんなの無理!」
「全部っつったって、ほとんどは知っている漢字だろ? だから本文を読みながら、自分が読めない漢字や書けない漢字を一通り紙に書き出してみな。 
 それを全憶えればいいだけだから」
「・・・」
「・・・何だよ」
小さな声でそう尋ねてきた彼に、あることを静かな口調で尋ね返した。

「夜月は国語の勉強、もう終わった?」

「まぁ・・・。 一通りは」

「ということは、夜月は漢字ばっちりってことだよな?」

そう言って少しだけ口元を緩ませた御子紫に、夜月はこの次に発せられる言葉を推測し声を張り上げる。
「御子紫! 俺は見せないぞ!」
「え、何!? 夜月は国語の勉強もう終わったの!? その漢字、俺にも見せて!」
先刻から彼らの話を黙ってきいていた椎野が、突然二人の会話に遠慮せずに割って入ってきた。
「椎野。 お前も自分でやれ」
「いいじゃんか! 折角の勉強会だし、ここは互いに協力し合わないと!」
「互いに協力って、俺は得すること何もねぇじゃねぇか」
「でももし夜月が漢字を見せてくれたら、俺は今から国語の勉強を一生懸命するぜ?」
「・・・」
椎野に続いて御子紫がそう口にすると――――数秒後、夜月は諦めたかのように大きな溜め息をついた。
「よっしゃ! ありがとな夜月!」
「いつか夜月が困ったら、協力してやるから」
夜月が国語の勉強で使った、本文に載っている難しい漢字を書き出した紙。 それを受け取った御子紫と椎野は、早速自分のノートに書き写していく。
「見せたんだから、ちゃんと国語ではいい点を取れよ、二人共」
「「はーい!」」
肘を付き彼らを見ながらそう口にした夜月。 彼はクールで一見冷たそうに見えるが、やはり結黄賊たちにとってお兄さん的存在だった。
いつもみんなのことを、後ろから温かく見守ってくれる。 そんな夜月に、結黄賊のみんなは安心できていた。 この後御子紫は宣言通り、国語の勉強に集中し漢字を全て憶えた。
久々に勉強に集中ができ満足する。 そして――――明日も頑張ろうと、自分に喝を入れた。


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