【完結】※セーブポイントに入って一汁三菜の夕飯を頂いた勇者くんは体力が全回復します。

きのこいもむし

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7、麻痺が残っている日のお豆腐ロールキャベツ

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 昼間予約してた歯医者に行って、ついに長年気になっていた親知らずを抜いてもらってきた。
 噂通り、親知らず抜くのってヤバいね。 もはや治療通り越して工事だよあんなの。
 まだ麻酔が効いてるからものすごい痛みとかはないけど、顎の感覚がなくて何食べてもちっともものの味がわかんない。
 昼飯は菓子パンで簡単に済ませちゃったけど、外食行くのもめんどいし、もう今日は夜も菓子パンでいっかな。
 ……いや! でももしかしたら勇者くんが来るかもしんないから、やっぱり晩飯は作っとこう! 
 別に菓子パンが絶対悪みたいに思ってるわけじゃないけどさ、ただでさえ勇者くんは二、三日ほぼ飲まず食わず眠らずでダンジョン攻略を頑張ってるんだ。
 せめてここに来た時だけは、栄養のあるものをしっかり食べて欲しいんだよ俺は。
 それに、菓子パンだけってすぐお腹空いちゃうしな、うん。

「そうと決まれば何か、俺も一緒に食べられそうな柔らかい献立がいいな」

 確か、冷凍庫に鶏挽き肉があったと思うから、今日はロールキャベツにするか。
 まずは豆腐半丁をレンチンしてよく水切りしておく。
 次に大きめのたまねぎ1個、にんじん4分の1個をみじん切りにして、これも火が通る程度までレンチン。
 レンジが空いたら次はキャベツを洗って外葉を剥がし、少量の水を張った皿に丸ごと乗せて、ふんわりラップでレンチン。
 その間にパン粉大匙3を水切りした木綿豆腐でふやかして、ビニール袋の中に入れる。
 とり挽き肉300g、ケチャップ大匙1、マヨネーズ大匙1、小麦粉大匙1、塩少々、黒胡椒少々を入れて、モミモミしながらよく混ぜる。
 しんなりしたキャベツの大きめの葉と内側のちんまりした葉に分けて、先にちんまりした葉で肉だねを巻いて……真ん中にチーズ埋め込んじゃうか。 それを大きな葉で包み巻き、その上から更にベーコンで巻いて、折ったパスタで裾を縫い止める。
 こうすると加工肉の旨味で良い出汁が出るんだよな。
 ウインナーがあったらもっと良かったけど、今日はないからこれだけで。
 全部巻き終えたら圧力鍋の中に並べて、ロールキャベツが浸るくらいの水、顆粒コンソメ大匙1、醤油大匙1入れて中火でコトコト煮込む。
 俺はロールキャベツを作る時、トマトベースでもクリームベースでもなく、コンソメ醤油味一択なのである。
 副菜一品目はアンチョビポテト。
 大きめのジャガイモ3個の皮を剥いて水にさらし、耐熱容器に入れてふんわりラップでレンチン。
 このあと炒めるから、ちょっと芯が残ってるかも程度でOKだ。
 フライパンににんにくチューブ、アンチョビペーストをそれぞれ2センチくらい出して、オリーブオイルで香りが立つまで熱したらジャガイモを投入。
表面がこんがりするまで焼き炒めたら、軽く黒胡椒を振って完成。
 もう一品は、白身魚のバター焼きだ。
 中火で熱したフライパンにバターを入れて溶かし、冷凍のパンガシウスをそのまま焼くだけ。
 いい焼き色がついたらひっくり返して反対側を焼き、こんがりっとしてきたら塩胡椒で味付けして完成だ。
 一応勇者くん用にご飯も炊いてあるけど、俺は今日は食パンにしとこうかな。
 コンソメスープに浸して柔らかくしながら食べたらそんなに一生懸命噛まなくてもいいだろうし。
 えーと、汁物はそのままコンソメ醤油のスープを出すとして、と。
 香の物はらっきょうがあるから、勇者くんにだけ小皿で出してあげたらいいか。
 あとはロールキャベツが煮えたら出来上がりなんだけど……もしや今日のおかず、素材ほぼそのままっていうか、ちょっと手ェ抜きすぎか?
 や、でもロールキャベツってこれだけで野菜もたんぱく質もたくさん摂れる献立だし、特に問題ないよな?
 と、そんなことを考えていたら、クローゼットがガチャリと開いた。

「おかえり、勇者くん」

「ふぁふぁいふぁふぇふ」

「なんて?」

 どうしちゃったの勇者くん、そんな入れ歯の抜けたおじいちゃんみたいなしゃべり方しちゃって。
 勇者くんは、一生懸命身振り手振りで敬意を説明してくれる。

「えーと、何々? 『痺れキノコ』ってモンスターの麻痺胞子を食らった? 麻痺がまだ抜けてなくて、呂律が回ってないだけ? じゃあそのうち治るんだな?」

「ふぁひ」

「ご飯食べれそう?」

「ふぁふぇふぁひふぇふ」

 麻痺以外は、勇者くんは外傷もなく元気だそうだ。
 でも固いものは一応やめといた方がいいかもな。
 らっきょうはブレンダーで滑らかに潰して、寒天で寄せたソフト漬け物にしてあげよう。
 一緒に梅干しも叩いてこれも寒天で固めて、紅白の二層にしたら、お、オードブルの前菜っぽくて綺麗なんじゃない?
 ロボットのようなカクカクした動きで脱衣所に向かう勇者くんを見送りながら、俺はロールキャベツの仕上げに塩胡椒で味を整える。
 ……うーん、こんなもんか? やっぱ今日、麻酔のせいで味がぼやけてよくわかんないな。



◆◆◆



 シャワーで胞子を洗い流したおかげか、風呂から上がってくる頃には勇者くんの呂律はかなりマシになっていた。
 今日もギュゴギュゴと元気な腹の虫の声を聞きながら、俺は食卓に出来上がった晩飯を並べる。

「さ、食べよっか。 いただきます」

「イタダキマス」

 ロールキャベツはよく煮たからキャベツも箸で破れるくらいにとろとろだ。
 半分に割ると豆腐でかさ増しした肉の中からチーズが溶け出す、これが嫌いな男子はいないでしょう!
 勇者くんは目をキラキラと輝かせながら、半分にしたロールキャベツを一気にひとくちで頬張る。

「どうかな? 今日ちょっと顎が痺れてて、味がわかりにくくてさ。 味濃すぎたりしてない?」

「はふっ、じゅるっ、ン、お、おいひぃれふ! やしゃいの中にふっわふわの肉とチーズが入ってて、噛まなくても舌で潰せるくらいに柔らかいから、野菜と肉とチーズとスープの旨味が全部いっぺんに口の中に雪崩れ込んできます!」

 良かった、今日も勇者くん好みの味付けにできたみたいだ。

「こっちの付け合わせの魚は淡白で優しい味で、塩とバターのシンプルな風味がいいですね。 初めて食べる魚だけど、これなんていう魚なんですか?」

「パンガシウス。 ナマズの仲間だって」

「ナマズ!? ナマズって、あのナマズ?!」

 どうやら勇者くんの世界にもナマズって存在してるみたいだ。

「ダンジョンの水場のあるフロアで、『お化けナマズ』というモンスターが出てくることがあるんです。 あのモンスターも、食べたらこんな味がするのかな……」

「や、野生種は寄生虫がすごいんでしょ? もし食べるなら充分に気を付けてね」

 勇者くんの世界って普通に火に強いモンスターとかウジャウジャいるみたいだし、加熱した程度じゃ死なない寄生虫もいっぱいいそうだな……。

「! ジャガイモがカリカリホクホクしてる! 味も、ただの塩味じゃなくてスパイシーな味がします! イモでコメが食べられてしまう!」

 ロールキャベツって、煮込んでるうちにキャベツの甘味でスープが甘めになっちゃってご飯に合わない派も結構いるらしいからおかずはどっちもしょっぱい系にしたんだけど……、勇者くんは全く問題なさそうだ。
 いつも思ってるけど、これだけ好き嫌いせずなんでもバクバク食べてくれるのマジで作り甲斐がある。
 ……あ゛ーー! もう歯痛とかどうでもいいや!
 俺は一旦席を立ち、台所のシンク下に隠していたとっておきの純米焼酎を取り出した。
 キャップを開けて、そのままお行儀悪くロールキャベツの入ったスープの器にドバっと投入!
 米焼酎のコンソメ割りじゃい! 
 っっ、かーーッ!! 勇者くんの食べっぷりを肴に飲む米焼酎うまーーッ!!

「んっ!? あれ?! これお菓子だと思ったらラッキョとウメボシだ! 柔らかいのに、なんで!?」

 初めてのソフト漬け物に驚いている勇者くんに、俺はすかさず「勇者くん、ご飯のおかわりいる?」と確認するのだった。


◆◆◆


「……やっぱりだ」

 食後、潰しバナナとマスカルポーネチーズを混ぜてインスタントコーヒーに浸したカステラに乗っけ、上からココアパウダーをかけた即席ティラミスを食べながら、勇者くんは神妙な顔で自分の顎をさすっている。

「やっぱりって何が?」

「麻痺がすっかり良くなっています。 通常は痺れキノコの麻痺胞子を吸うと、どんなに処置しても丸一日は痺れが取れないのに」

 言われてみれば、勇者くんの呂律はすっかり元通りだ。

「セーブポイントの中にいるから回復も早いんじゃないの?」

「いえ、それだけじゃない気がします。 確かにここに滞在している間にダンジョン内で受けたダメージの殆どは少しずつ回復していきますが、その回復のスピードって本当はもっとゆっくりな筈なんです。 それこそ完全に治りきるまでには、タイムリミットである早朝5時ギリギリまでかかる筈で」

 ん? それはおかしくないか? 
 だって勇者くん、いつも大抵晩飯を食べ終わる頃くらいには元気になってるじゃん。
 寝る前まで勇者くんが痛がったり苦しがってるところ、俺見たことないよ?
 全回復までに日を跨ぐくらい時間かかったのって、前に眠気が我慢できなくて晩飯食べっぱぐれた時くらいじゃない?

「そうなんです。 骨が折れてようが腹を貫かれてようが、毎回ここでご飯を食べ終わる頃には全部綺麗に完治してるんです。 ……前から薄々感じていたんですが、羽佳さんの作った料理を食べると回復が早まるのでは?」

「まさか! だって普通の家メシだぞ? そんな魔法みたいな効果ないって」

「でも、それ以外に回復が早まる原因は考えられないんです。 少なくとも別の世界から来た俺にとっては、羽佳さんの作る料理で特別な効果を得られるんじゃないかなって」

 うーん、そうかなぁ? そりゃ勇者くんが早く元気になるようにって、いつもなるべくバランスのいい献立を用意するよう心掛けてはいるけど……。
 「絶対そうですよ!」と拳を握って力説する勇者くんを見ていると、なんだかなぁって。
 あんまり俺のこと神聖視しすぎるのはよくないよ勇者くん。

「それじゃあまた検証してみる? 次回は晩飯抜きで一晩過ごして、全快までどのくらいで回復するのか時間を計ってみるんだ。
そうしたら料理にそんな効果があるのかどうかハッキリするんじゃない?」

 俺のこの提案に、「え゛っ!」と勇者くんの顔が分かりやすく強張った。

「そ、それは、ちょっと……」

 晩飯抜きがよっぽど嫌なのか、勇者くんはこの世の終わりみたいな顔でゴニョゴニョと歯切れ悪く言い訳を繕おうとしている。

「ふっ、冗談だよ。 晩飯抜きとか、お腹すかしてる勇者くんにそんな酷なことさせられないって」

 テーブルに頬杖をつきながらニヤニヤする俺に、勇者くんはあからさまにほっとしてから「いじわる!」と頬を膨らませた。
 ……しかし、もしその回復スピード云々が本当なら、結構責任重大だな。
 勇者くんにとって食事が回復の作業みたいにならないよう、もっと色々調べてレパートリー増やして美味しく楽しく食べてもらえるようになんないと。


 翌朝、5合のおにぎりと昨日のロールキャベツの残りを食べてから、勇者くんは元気に出発していった。
 因みに俺は、塩分とアルコールをしこたま浴びた抜歯痕のおかげでとんでもない思いをしていた。



【本日のおしながき】
ご飯
チーズ入りベーコン巻きロールキャベツコンソメ醤油味
アンチョビポテト
白身魚のバタームニエル
叩き梅とらっきょうペーストの二層寒天寄せソフト漬け物
潰しバナナのティラミス風
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