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18、やる気が1%しかない日のレンチン牛肉のしぐれ煮
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腰が……痛い!
あと主に腹と背中と股関節あたりも痛い!
運動不足のアラサーにもなると、大抵筋肉痛は一日か二日遅れでやってくるものだ。
ましてや普段使わない筋肉を酷似したとなれば、その痛みは絶大……!
例に漏れず俺も生まれたての子鹿のような歩き方しか出来ず、超申し訳ないんだけど同僚に電話してシフトを変わってもらった。
アルバイトって安定は望めないけど、どうしても体調悪いときに休ませてもらえるからめちゃ助かるよね。
「うーん、イタタ……」
駄目だ、立つのもキツイけどずっと寝て同じ姿勢してんのはもっとキツイ。
ちょっと晩飯の支度でもして気晴らししよう。
と言っても、今日はあんまり台所に長く立ってるのもしんどいから、可能な限り手抜きをさせてもらう。
とりあえず0.5%の力で無洗米を炊飯器にセットしてっと……。
残りの力で豆もやしを1袋をザルにあけ、流水でざっと洗って水気を切る。
豆もやしは耐熱性のビニール袋に入れ、水分を逃がさないように材料を覆い、なおかつ袋が完全に閉じきらないようにして耐熱容器に乗っけてレンチン。
火が通ったら袋の中の水を捨てて、めんつゆ、ラー油、胡麻油、顆粒中華だしを適当に入れて豆もやしに馴染ませ冷蔵庫で冷ましたら中華風サラダの完成だ。
何? 味付けが適当過ぎる?
いいんだよ適当で。 てかいつも大匙がどれくらいとか言ってるけど、あれも別にいちいち計ってるわけじゃなくて、大体こんなもんだろって目分量で俺好みに味付けしてるだけだからね。
次にシンクで牛こま切れ肉500gのパックを開けて、余分な脂を落とすために電気ケトルで沸かした湯をかけて霜振りする。
水道水で軽く洗って水気を切った牛肉を耐熱性のビニール袋に移し入れて、酒、醤油、みりん、砂糖、生姜チューブを適当に入れて味付けする。気持ち醤油と砂糖は多めな感じで。
あとは、味噌汁の具用に買い置きしてる乾燥たまねぎを、1袋全部いっちゃうか。
ビニール袋の中で肉とたまねぎと調味料をよく揉み揉みして、もやし同様材料を覆い、なおかつ袋が完全に閉じきらないようにして耐熱容器に乗っけて肉に火が通るまでレンチン。
なんとこれだけで牛肉のしぐれ煮の出来上がりだ。
もう一品の副菜は茄子のムサカっぽいやつ。
耐熱容器に耐熱性のビニール袋を設置して、茄子を包丁……今日はもうキッチンばさみでいいや。
ウテナをジョキンと切り落として縦半分にカット。
ビニール袋の中に切断面を上にして茄子を並べて、ふんわりラップでレンチン。
茄子が柔らかくなったら袋の中の水分を捨てて、上からレトルトのミートソースとチーズを適当にぶっかけてグツグツになるまでもう一回ラップかけてレンチンする。 ベシャメルソース?いらんいらん。
余力があったらちゃんとグラタン皿に移して魚焼きグリルで焼いて表面にこんがり焼き色をつけるんだけど、今日はもういいっしょ。 見た目が気になるなら乾燥パセリとかかけとけ。
汁物もレンチンで作るぞ。
耐熱性のビニール袋を設置して、冷凍かぼちゃを入れてふんわりラップでレンチン。
その間にしめじを手でちぎって石づきを剥がして解しておく。
かぼちゃが解凍したらしめじを入れて、ひとつまみくらいの塩を振ってもっかいラップしてレンチンだ。
今日は食べたあとに洗い物するのすらだるいので、普段防災用にストックしてる紙皿と紙コップ使っちゃうか。
紙コップに味噌、練りごま、顆粒中華だし、ラー油を適当にセットしておく。
食べる直前になったらかぼちゃとしめじの入った容器に豆乳を適当に注いでレンチンで沸騰しない程度に温め、この坦々風の調味料を入れた紙コップに注ぐだけだ。
やっべぇもう3品+汁物が出来たわ。全部で20分もかかんなかったからまだ米炊けてないんだけど。
火も包丁もまな板も使ってなくて、洗い物もザルとキッチンばさみだけだから爆速で終わっちゃったな。
如何せん文明の利器電子レンジと、この120度の加熱に耐え得る丈夫なビニールが優秀すぎんのよ。 ありがとう、ありがとう、IWAがTANIするマテリアルな企業……!
俺が台所で手持ち無沙汰に立ち往生していると、ギッとクローゼットが開いて勇者くんが入ってきた。
ぱちりと宝石みたいな碧の目と目が合い、途端、ブワッと先日の夜の記憶が一気に頭の中に甦る。
「あ、た、ただいま」
「えっ? ぁ、お、おかえり」
向こうも一線を越えた時のことを思い出しているのか、耳まで真っ赤になっていた。
俺たちはもじもじと向かい合い、お互いの足の爪先を見ながらぎこちないやり取りを交わす。
「は、羽佳さん、その後身体の具合はどうですか?」
「う、うん、大丈夫。ちょっと筋肉痛なだけ」
「そうですか、良かった。 …………あのっ」
「な、何?」
「えっと、その……、今日も、触れてもいいですか?」
「えっ!? ……きょ、今日は、事前準備とかしてないから……」
「あっ、そッ、そうですかっ」
「…………だから、今日は最後まではナシね。 今日は後片付けはそんなにしなくていいようにしてるから、勇者くんが嫌じゃなければだけど、先にご飯食べてから一緒に、お、お風呂とか、……入っちゃう?」
「……!! 入るッ!! 入りたいです!!」
「あぅ、そ、そっか」
「……」
「……」
むず痒いような、生暖かいような空気が満ちる1LDK。
このなんとも言えない沈黙を破るように、「ピーーッ!」と米の炊けた音が鳴り響く。
そして、それに呼応するように、「ぐうううぅ~~」と勇者くんの腹の虫が鳴いた。
そこで俺たちはようやく顔を見合せ、ふっと笑い合う。
「お腹減ったね。 食べよっか」
「はいっ!」
勇者くんが鎧を脱いでる間、俺はレンチンしただけの晩飯を紙の容器に移して食卓に並べる。
当然お箸も今日は割り箸だ。
「いただきます」
「イタダキマス」
んん、坦々風の豆乳スープうまっ! 肉味噌作り置きした時によくこのスープと中華麺と青菜を使って担々麺にするんだけど、練りごまのコクと味噌がマッチしててスープ単体でも全然美味いな。
実のかぼちゃがホクホクで甘いから、ラー油多めに入れてもそんなに辛みが気にならない。
「んんん、このショーガの利いた甘辛な味付けの肉……っ! この肉ちょっと美味しすぎませんか!?」
「わかる、牛肉美味いよね……。 たまたまスーパーで国産牛の牛こまが安かったから衝動買いしちゃってさ。 うう、久々に食べたから美味すぎて涙出てきた」
乾燥たまねぎがタレと牛脂をしっかり吸って、これまた絶品だ。
「あ、そうだ。 これもあるんだった。 夏前に漬けた自家製紅生姜。 今日の香の物はこれね」
そう言って、俺は瓶ごと食卓に出してた紅生姜の残りを全部紙皿の上に出す。
「この牛肉のしぐれ煮をね、ご飯の上に乗せてですね、この紅生姜を乗っけてですね……」
「ああっ! そ、そんなことしたら……!」
「そんでもってここに溶いた生卵をちょっと垂らすとですねぇ……!」
「うわーっ!! 魔剤だこれ!!」
勇者くんはわっしわっしと掻き込むように肉と米を口に詰め込んでいく。
俺も牛丼の魔力に抗えなくて、あー、炭水化物はサラダのあとに食べなきゃ駄目なのにー!
……牛丼なんかリーマンの頃に食べ飽きたと思ってたっていうか、あの頃はほぼ毎日カレー牛丼コンビニ飯牛丼牛丼コンビニ飯牛丼のローテーションだったから、食事とかほぼエサ食ってるみたいな感覚だったんだよ。
家メシの牛丼なんか、それこそ大手チェーン店で食うのと大差ない味の筈なのに、……あの頃と違うのは、やっぱりこうして勇者くんが向かいに座って、一緒に食べてくれるからなんだろうなぁ……。
「このトマト味のナスも、チーズがとろっとろだぁ……! おかずがどっちもこってり系だから、このシャキシャキぷちぷちした食感のサラダも箸休めにちょうどいいです!」
……あ゛ーー! もう我慢できん!
俺は一旦席を立ち、冷蔵庫からキンキンに冷えた緑色のボトルと『魔物』みたいな名前の缶のエナドリを取り出した。
この緑の酒は驚安の殿堂店で仕入れてきたコカレロね。
スープを飲み切ったあとの紙コップを水道水で軽く濯いで、この中にコカレロとエナドリを注げば魔物を割材にしたパリピ御用達コカボムの完成ってわけよ。
っっ、かーーッ!! 勇者くんの食べっぷりを肴に飲む魔剤うまーーッ!!
牛丼とのダブル魔剤で身体はヘトヘトでも頭ん中はアドレナリン全開のお祭り状態になれるね!
あ、でも酒のエナドリ割りは医者からはあんま推奨されてない飲み方だから、良い子は真似しないでね!
「羽佳さんって、すっごく美味しそうにお酒飲みますよね。 お酒飲んでる時の羽佳さんの顔を見てると、美味しいご飯がもっと美味しいなって感じます」
うわっ、見られてた! は、はずかしぃ……!
◆◆◆
「勇者くん、最近毒とか麻痺とか大きい怪我しなくなってきたね」
冷蔵庫の底の底の底に備蓄してたとっておきの缶プリンをデザートに食べたあと、俺たちは一緒に脱衣所に来ていた。
インナーを脱いだ勇者くんの身体には、古傷の痕は残っているものの、新しい外傷や血の痕は殆んど見当たらない。
「羽佳さんのメモを参考に装備を整えたり、書き出してもらった罠がありそうなマップのフロアにはなるべく注意していますから。あとは単純に、僕自身のレベルが上がってきてるからですかね」
そっか、ダンジョンの最下層が近付くにつれ、勇者くんも成長してるんだな。
満身創痍でセーブポイントに駆け込まなくなったのはいいことなんだけど、それはそれでちょっと寂しいような気も……
って、ダメダメ! 勇者くんが痛い思いをしないのが一番大事なんだから! あっぶねー完全に悪い思考だったわ今!
……終わりが近付いてるだなんて思っちゃ駄目だ。
最後の日が来るまでは、なるべく勇者くんには笑った顔を覚えててもらうんだから。
「……じゃあ、お風呂入ろっか?」
「は、はいッ!」
その後、俺たちはお風呂で、その、色々いっぱいイチャイチャした。
洗いっこだとか、勇者くんのマツタケを太ももで挟んで頑張ったりだとか、色々ね。
【本日のおしながき】
ご飯
レンチン牛肉のしぐれ煮
レンチン茄子のムサカっぽいやつ
レンチン豆もやしの中華サラダ
自家製紅生姜
かぼちゃとしめじの坦々風豆乳スープ
とっておきの缶プリン
※次が最終回です。
あと主に腹と背中と股関節あたりも痛い!
運動不足のアラサーにもなると、大抵筋肉痛は一日か二日遅れでやってくるものだ。
ましてや普段使わない筋肉を酷似したとなれば、その痛みは絶大……!
例に漏れず俺も生まれたての子鹿のような歩き方しか出来ず、超申し訳ないんだけど同僚に電話してシフトを変わってもらった。
アルバイトって安定は望めないけど、どうしても体調悪いときに休ませてもらえるからめちゃ助かるよね。
「うーん、イタタ……」
駄目だ、立つのもキツイけどずっと寝て同じ姿勢してんのはもっとキツイ。
ちょっと晩飯の支度でもして気晴らししよう。
と言っても、今日はあんまり台所に長く立ってるのもしんどいから、可能な限り手抜きをさせてもらう。
とりあえず0.5%の力で無洗米を炊飯器にセットしてっと……。
残りの力で豆もやしを1袋をザルにあけ、流水でざっと洗って水気を切る。
豆もやしは耐熱性のビニール袋に入れ、水分を逃がさないように材料を覆い、なおかつ袋が完全に閉じきらないようにして耐熱容器に乗っけてレンチン。
火が通ったら袋の中の水を捨てて、めんつゆ、ラー油、胡麻油、顆粒中華だしを適当に入れて豆もやしに馴染ませ冷蔵庫で冷ましたら中華風サラダの完成だ。
何? 味付けが適当過ぎる?
いいんだよ適当で。 てかいつも大匙がどれくらいとか言ってるけど、あれも別にいちいち計ってるわけじゃなくて、大体こんなもんだろって目分量で俺好みに味付けしてるだけだからね。
次にシンクで牛こま切れ肉500gのパックを開けて、余分な脂を落とすために電気ケトルで沸かした湯をかけて霜振りする。
水道水で軽く洗って水気を切った牛肉を耐熱性のビニール袋に移し入れて、酒、醤油、みりん、砂糖、生姜チューブを適当に入れて味付けする。気持ち醤油と砂糖は多めな感じで。
あとは、味噌汁の具用に買い置きしてる乾燥たまねぎを、1袋全部いっちゃうか。
ビニール袋の中で肉とたまねぎと調味料をよく揉み揉みして、もやし同様材料を覆い、なおかつ袋が完全に閉じきらないようにして耐熱容器に乗っけて肉に火が通るまでレンチン。
なんとこれだけで牛肉のしぐれ煮の出来上がりだ。
もう一品の副菜は茄子のムサカっぽいやつ。
耐熱容器に耐熱性のビニール袋を設置して、茄子を包丁……今日はもうキッチンばさみでいいや。
ウテナをジョキンと切り落として縦半分にカット。
ビニール袋の中に切断面を上にして茄子を並べて、ふんわりラップでレンチン。
茄子が柔らかくなったら袋の中の水分を捨てて、上からレトルトのミートソースとチーズを適当にぶっかけてグツグツになるまでもう一回ラップかけてレンチンする。 ベシャメルソース?いらんいらん。
余力があったらちゃんとグラタン皿に移して魚焼きグリルで焼いて表面にこんがり焼き色をつけるんだけど、今日はもういいっしょ。 見た目が気になるなら乾燥パセリとかかけとけ。
汁物もレンチンで作るぞ。
耐熱性のビニール袋を設置して、冷凍かぼちゃを入れてふんわりラップでレンチン。
その間にしめじを手でちぎって石づきを剥がして解しておく。
かぼちゃが解凍したらしめじを入れて、ひとつまみくらいの塩を振ってもっかいラップしてレンチンだ。
今日は食べたあとに洗い物するのすらだるいので、普段防災用にストックしてる紙皿と紙コップ使っちゃうか。
紙コップに味噌、練りごま、顆粒中華だし、ラー油を適当にセットしておく。
食べる直前になったらかぼちゃとしめじの入った容器に豆乳を適当に注いでレンチンで沸騰しない程度に温め、この坦々風の調味料を入れた紙コップに注ぐだけだ。
やっべぇもう3品+汁物が出来たわ。全部で20分もかかんなかったからまだ米炊けてないんだけど。
火も包丁もまな板も使ってなくて、洗い物もザルとキッチンばさみだけだから爆速で終わっちゃったな。
如何せん文明の利器電子レンジと、この120度の加熱に耐え得る丈夫なビニールが優秀すぎんのよ。 ありがとう、ありがとう、IWAがTANIするマテリアルな企業……!
俺が台所で手持ち無沙汰に立ち往生していると、ギッとクローゼットが開いて勇者くんが入ってきた。
ぱちりと宝石みたいな碧の目と目が合い、途端、ブワッと先日の夜の記憶が一気に頭の中に甦る。
「あ、た、ただいま」
「えっ? ぁ、お、おかえり」
向こうも一線を越えた時のことを思い出しているのか、耳まで真っ赤になっていた。
俺たちはもじもじと向かい合い、お互いの足の爪先を見ながらぎこちないやり取りを交わす。
「は、羽佳さん、その後身体の具合はどうですか?」
「う、うん、大丈夫。ちょっと筋肉痛なだけ」
「そうですか、良かった。 …………あのっ」
「な、何?」
「えっと、その……、今日も、触れてもいいですか?」
「えっ!? ……きょ、今日は、事前準備とかしてないから……」
「あっ、そッ、そうですかっ」
「…………だから、今日は最後まではナシね。 今日は後片付けはそんなにしなくていいようにしてるから、勇者くんが嫌じゃなければだけど、先にご飯食べてから一緒に、お、お風呂とか、……入っちゃう?」
「……!! 入るッ!! 入りたいです!!」
「あぅ、そ、そっか」
「……」
「……」
むず痒いような、生暖かいような空気が満ちる1LDK。
このなんとも言えない沈黙を破るように、「ピーーッ!」と米の炊けた音が鳴り響く。
そして、それに呼応するように、「ぐうううぅ~~」と勇者くんの腹の虫が鳴いた。
そこで俺たちはようやく顔を見合せ、ふっと笑い合う。
「お腹減ったね。 食べよっか」
「はいっ!」
勇者くんが鎧を脱いでる間、俺はレンチンしただけの晩飯を紙の容器に移して食卓に並べる。
当然お箸も今日は割り箸だ。
「いただきます」
「イタダキマス」
んん、坦々風の豆乳スープうまっ! 肉味噌作り置きした時によくこのスープと中華麺と青菜を使って担々麺にするんだけど、練りごまのコクと味噌がマッチしててスープ単体でも全然美味いな。
実のかぼちゃがホクホクで甘いから、ラー油多めに入れてもそんなに辛みが気にならない。
「んんん、このショーガの利いた甘辛な味付けの肉……っ! この肉ちょっと美味しすぎませんか!?」
「わかる、牛肉美味いよね……。 たまたまスーパーで国産牛の牛こまが安かったから衝動買いしちゃってさ。 うう、久々に食べたから美味すぎて涙出てきた」
乾燥たまねぎがタレと牛脂をしっかり吸って、これまた絶品だ。
「あ、そうだ。 これもあるんだった。 夏前に漬けた自家製紅生姜。 今日の香の物はこれね」
そう言って、俺は瓶ごと食卓に出してた紅生姜の残りを全部紙皿の上に出す。
「この牛肉のしぐれ煮をね、ご飯の上に乗せてですね、この紅生姜を乗っけてですね……」
「ああっ! そ、そんなことしたら……!」
「そんでもってここに溶いた生卵をちょっと垂らすとですねぇ……!」
「うわーっ!! 魔剤だこれ!!」
勇者くんはわっしわっしと掻き込むように肉と米を口に詰め込んでいく。
俺も牛丼の魔力に抗えなくて、あー、炭水化物はサラダのあとに食べなきゃ駄目なのにー!
……牛丼なんかリーマンの頃に食べ飽きたと思ってたっていうか、あの頃はほぼ毎日カレー牛丼コンビニ飯牛丼牛丼コンビニ飯牛丼のローテーションだったから、食事とかほぼエサ食ってるみたいな感覚だったんだよ。
家メシの牛丼なんか、それこそ大手チェーン店で食うのと大差ない味の筈なのに、……あの頃と違うのは、やっぱりこうして勇者くんが向かいに座って、一緒に食べてくれるからなんだろうなぁ……。
「このトマト味のナスも、チーズがとろっとろだぁ……! おかずがどっちもこってり系だから、このシャキシャキぷちぷちした食感のサラダも箸休めにちょうどいいです!」
……あ゛ーー! もう我慢できん!
俺は一旦席を立ち、冷蔵庫からキンキンに冷えた緑色のボトルと『魔物』みたいな名前の缶のエナドリを取り出した。
この緑の酒は驚安の殿堂店で仕入れてきたコカレロね。
スープを飲み切ったあとの紙コップを水道水で軽く濯いで、この中にコカレロとエナドリを注げば魔物を割材にしたパリピ御用達コカボムの完成ってわけよ。
っっ、かーーッ!! 勇者くんの食べっぷりを肴に飲む魔剤うまーーッ!!
牛丼とのダブル魔剤で身体はヘトヘトでも頭ん中はアドレナリン全開のお祭り状態になれるね!
あ、でも酒のエナドリ割りは医者からはあんま推奨されてない飲み方だから、良い子は真似しないでね!
「羽佳さんって、すっごく美味しそうにお酒飲みますよね。 お酒飲んでる時の羽佳さんの顔を見てると、美味しいご飯がもっと美味しいなって感じます」
うわっ、見られてた! は、はずかしぃ……!
◆◆◆
「勇者くん、最近毒とか麻痺とか大きい怪我しなくなってきたね」
冷蔵庫の底の底の底に備蓄してたとっておきの缶プリンをデザートに食べたあと、俺たちは一緒に脱衣所に来ていた。
インナーを脱いだ勇者くんの身体には、古傷の痕は残っているものの、新しい外傷や血の痕は殆んど見当たらない。
「羽佳さんのメモを参考に装備を整えたり、書き出してもらった罠がありそうなマップのフロアにはなるべく注意していますから。あとは単純に、僕自身のレベルが上がってきてるからですかね」
そっか、ダンジョンの最下層が近付くにつれ、勇者くんも成長してるんだな。
満身創痍でセーブポイントに駆け込まなくなったのはいいことなんだけど、それはそれでちょっと寂しいような気も……
って、ダメダメ! 勇者くんが痛い思いをしないのが一番大事なんだから! あっぶねー完全に悪い思考だったわ今!
……終わりが近付いてるだなんて思っちゃ駄目だ。
最後の日が来るまでは、なるべく勇者くんには笑った顔を覚えててもらうんだから。
「……じゃあ、お風呂入ろっか?」
「は、はいッ!」
その後、俺たちはお風呂で、その、色々いっぱいイチャイチャした。
洗いっこだとか、勇者くんのマツタケを太ももで挟んで頑張ったりだとか、色々ね。
【本日のおしながき】
ご飯
レンチン牛肉のしぐれ煮
レンチン茄子のムサカっぽいやつ
レンチン豆もやしの中華サラダ
自家製紅生姜
かぼちゃとしめじの坦々風豆乳スープ
とっておきの缶プリン
※次が最終回です。
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