【完結】都市伝説嘘談

きのこいもむし

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本編

case1 異次元車両



「先輩、異次元車両って知ってます?」

 終電のがらんどうになった電車の中で、隣に座る後輩が突然こんなことを言い出した。

「なんだ、またオカルトか?お前そういう話好きだよな」

 参加したくもなかった飲み会の帰りに酒の入ったリーマンがふたり並んでオカルト話だなんて、なかなかに滑稽だ。
 思考の鈍くなった頭で端から見た俺たちの構図を思い浮かべると、そのシュールさにだらしない笑い声が出る。

「あ、その顔は全く信じてない感じっすね。これは結構マジな話なんすから」

「悪い悪い、で?どういう話なんだ?」

「先輩、興味ゼロじゃないっすか」

「ははは、んなことねえって。話してみろよ」

 うちの部の女子社員からイケメンだのカワイイだのキャーキャー言われてる後輩は、小学生の甥っ子が拗ねた時と同じような顔でぶすくれた後、こほんとひとつ咳払いをしてから語りはじめた。

「──AVの電車痴漢モノあるじゃないっすか。あれ、どう見ても音とかで周りの人間が気付くだろ、とか次の駅に着くの遅すぎだろ、とか思いません?俺はそういう部分が引っ掛かっちゃってあんまり抜けないんすけど、先輩はどうっすか?」

「電車痴漢モノかあ」

 満員電車の中で制服の女の子が下衆な男に良いように身体をまさぐられる。
 女の子は周囲にバレることを恐れ声を出すことを必死で我慢する。
 しかし男の行為は更にエスカレートしていき──……。
 よくあるシチュエーションだが、俺はどちらかというと豊満なナースのお姉さんに上に乗っかられる方が好みかな。
 コスプレみたいなミニのナース服じゃなくて、かっちり着込んだズボンタイプの方が妄想を掻き立てられてむらむらする。

「先輩の好みはどうでもいいんで一旦横に置いときますね。で、ああいう時、なんでバレないのか分かります?」

「フィクションだからだろ」

「違いますよ!異次元車両だからです!」

 後輩の異様に強い語気に、おお……!と圧されながらも続きを促す。

「異次元車両はこの世の人類の全痴漢欲によって産み出された痴漢が痴漢するためのだけの痴漢空間なんす。異次元車両の中の様子は周囲から防音マジックミラーばりに見えなくなってるし、時間が経つのも遅くなるから途中で駅に到着して行為を中断することもありません!彼らは電車の中でいかがわしいことを始める内に、知らず知らずの内に異次元車両に入り込んでしまうんすよ!まさに痴漢たちの欲望が具現化した悪霊と言っても過言ではない!!」

「さてはお前酔ってんな」

「酔ってないっす!」

 酔っぱらいはみんなそう言うんだ。
 そもそも痴漢欲ってなんだ、お前やっぱり電車痴漢もの好きなんじゃねえか。
 そんなクソしょうもない下ネタで駄弁っていると、もうじき俺の降りる駅に到着するアナウンスが車両内に響いた。

「あ、俺次降りるから車両移動するわ」

「あ、はい、お疲れさまっす」

「おう、また明日なー」

 後輩と別れてぐらぐらと揺れる車両の中を歩き出す。
 見た感じ後輩のやつは随分酔ってたみたいだが、実は俺も酒にはあんま強くない。
 電車の揺れも相まって足が縺れそうになりながら、誰もいない車両を壁伝いに移動していく。
 ようやく目的の改札前に一番近い車両までやって来て、車両ドアの手すりに捕まりなんとか一息つく。
 その時だった。
 不意に後ろから脇腹を撫でられたのだ。

「──ッ!?」

 驚いてばっと後ろを向くと、なんとトドのように幅広の、スーツ姿の見知らぬおっさんが俺の身体にへばりつき如何にも汚ならしい満面の笑みを見せてくるではないか。

「な、なんだあんた!!どちらさん!?」

 さっきまで車両には誰もいなかった筈なのにいつの間に後ろに回り込まれたのか。
 焦って思わず大声で叫んでしまったが、おっさんは怯んだ様子もなくニチャアと黄ばんだ歯を口から覗かせ俺の身体をまさぐりはじめる。

「や、やめろ!!おいふざけんな!!」

 身を捩っておっさんを突き飛ばそうとするが、ぴったりと身体を密着させられなかなか思うように振りほどけない。
 尻の間に執拗に擦り付けられる硬いものの正体などおぞましくて知りたくもなかった。
 もあ、とおっさんのどぶのような臭いの息が顔に向かって吐きかけられる。

「ゲホッ、ゲホッ」

 口を押さえて咳き込む俺の隙をついて、おっさんは太い指を器用に動かし俺のベルトを抜き取った。
 そのままズボンのジッパーを下ろされ下着ごとズボンをずらされてしまう。

「ひぃっ」

 あまりの早業に戦く俺の肩に脂ぎった顎を乗せ、おっさんは鼻息荒く囁いた。

「恥ずかしいねえ、電車の中でおちんちん丸出しにしちゃって、誰かに見られちゃったら恥ずかしいねえ」

 粘着質なおっさんの声にぞわぞわと鳥肌が立つ。
 終電で他の乗車客は見当たらないが、人が全くいないとは限らない。
 もし大声を上げてこんな屈辱的な姿を見られてしまったらと思うと一気に酔いが覚めて身体が震える。
 そんなことはお構いなしに、おっさんは俺のうなじをべろべろと舐め回しながら太股を撫で擦る。

「はあ……っ♡若い子のうなじ♡汗の味がしておいしぃ♡」

「や、やめろ!キモいんだよこの変態野郎!!」

「あ~~ッ♡なじって♡もっとなじってぇ♡……ヴッ!!」

「ぎゃあ!?」

 びゅるびゅると生暖かい液体が尻に掛けられ、思わず手すりにすがりつく。
 おっさんに尻コキで射精されたというおぞましい事実にすっかり気が動転してしまい、相手が油断したところを蹴り飛ばし損ねてしまった。
 おっさんは息を荒げながらねとねとした白濁液を俺のチンコに擦り付け出した。
裏筋を親指の腹で扱きながらぐりぐりとカリ首をほじくるように指先を差し入れられ、否応なしに性的な刺激を感じてしまう。
 なんとも言えない感触に声を上げそうになったが、酒が入っているせいか勃ちが悪い。

「はあ♡はあ♡おちんちんシコシコ、気持ちよくない?」

「き、キモいっつってんだろ……!!早く離せ!!」

「そ、そうかぁ。おちんちんは気持ちよくないかぁ」

 おっさんの手がチンコから離れて思わずほっとする。
 しかし、直ぐ様その指が尻の孔に突き立てられ、俺はおかしな声を上げてしまった。

「ひぃいんっ!!」

「おちんちんシコシコ気持ちよくないなら、おまんこズポズポしようね♡」

 おっさんはうっとりとそんな事を言って俺の尻の孔で指を抜き差しをはじめる。
 用を足す以外に使用したことのない場所を知らないおっさんに容赦なくなぶられてしまい、俺は立っているのもままならず必死で電車の手すりにしがみついた。

「ひぃ♡やめ、やめろぉ♡」

「ふひひ♡おまんこズポズポ気持ちいいね。気持ちいいね」

 底抜けにキモいおっさんの責めに、とうとう恥も外聞もなく俺は叫んだ。
 しかし誰かが現れる様子はなく、電車はただ揺れ続けている。
 いくらなんでもおかしい。
 アナウンスが聞こえてから、既に駅に着いていたっていいくらいの時間は経っている。
 それなのに、車両ドアは一向に開かず、電車は走り続けている。
 分厚い窓ガラスは外が見えないくらいに真っ黒く、みっともなくよだれを垂らした俺の顔が映るだけだ。
 俺は一体今どこにいるんだ?
 いつになったら電車は駅に到着するんだ?
 そもそもこのおっさんはどこから湧いて出た?
 ぐるぐると思考に耽っている最中に、おっさんの芋虫のような指が、ぐりと強く膀胱の裏をえぐった瞬間、俺は頭の中が真っ白になった。

「あ゛ぁああああッ♡♡♡」

 半分も勃ってないようなチンコからぷしゃっと薄い精液が漏れて車両ドアを濡らしてしまった。
 おっさんはますます興奮したようにどぶ臭い息を吐きながら俺の腹をまさぐった。
 シャツのボタンを外し、平たい胸を揉みしだく。
 腸液が泡立つくらいに激しく指を出し入れされ内側の弱い部分を何度も何度も擂り潰され、俺はおっさんへの嫌悪感を忘れて無様に喘ぐことしか出来ないでいた。

「やぁ、そこはぁッ♡」

「乳首コリコリ、はふ♡気持ちいいねぇ、はふ♡」

 おっさんは俺の乳首をつまんだり引っ張ったりしながら耳の後ろに舌を這わせた。
 もう抵抗らしい抵抗もできずに、俺はおっさんから与えられる刺激に身体をくねらせながら耐えるだけで精一杯だった。
 その内、またあの硬い棒がむくむくと質量を増して背中に擦り付けられる。
 ちゅぽんと指を抜かれ、おっさんの吐く深い息を顎の下で感じてしまうと、一気に恐怖で身がすくんでしまった。
 尻のあわいで熱い肉の棒がその存在を主張する。
 誰か、誰か助けてくれ──!!

「あれ?先輩まだ降りてなかったんすか?」

 その声と共に、まるで煙のようにおっさんの姿は消えてしまった。
 何事もないように車両の貫通扉を開けて現れたのは後輩だった。
 俺は手すりに掴まったまま糸が切れたようにその場に膝をつく。
 俺の格好はシャツのボタン全開の下半身丸出しというとんでもない姿だったが、今はそれよりも助かったという安堵感で目頭が熱くなった。

「せ、先輩!?」

 驚いた後輩が目を白黒させながら駆け寄ってくる。
 先程までの行為の余韻をなんとかやり過ごし、はあはあと肩で息をしながら俺は後輩の顔を見上げた。


◆◆◆


「やぁああああッ♡♡♡なんでぇっ♡なんで挿れちゃうのぉっ♡♡♡」

「なんではないでしょ!!こんなにケツぐちゃぐちゃにしといて何言ってるんですか先輩!!これじゃあ『僕のこと痴漢してください♡』って言ってるようなもんじゃないですか!!」

「そんなっ♡そんなことないぃ♡俺、ただのスーツ着たサラリーマンなのにぃっ♡」

「普通に考えてただのリーマンが電車の中であんなドスケベなカッコしてるわけないだろ!!どこもかしこもモロ出しさせて、俺がハメなかったらその辺のチーマーでも引っ掛けてパコる気だったのかよ畜生!!」

「やぁああっ♡違うのぉ♡俺はパコる気なんかなかったのぉ♡後輩が勝手にぃ♡」

「はああ?!こんだけ旨そうにケツでチンコしゃぶっといて何俺のせいにしようとしてんすか!?だらしないアヘ顔晒しやがってどの口で言ってんだ!!このッ!!このッ!!」

「あッ♡あッ♡あッ♡激しいよぉ♡後輩のチンコ激しいッ♡壊れるッ♡俺のケツ壊れるッ♡」

「オラ!!嬉しそうにケツの孔でチン媚びしやがって!!お望み通り腹ん中俺のザーメンでパンパンに膨らませてやる!!──~~ぐッ!!」

「いやあぁあああッ♡♡♡なんか出てるぅ♡♡♡」

 この後俺は終点まで獣みたいなセックスをして、そのまま駅の便所で二発抜いてから後輩のアパートにお持ち帰りされてしまった。
 結局、あのおっさんはなんだったのだろうか、今でも俺には分からない。
 もしかしたら酔いのせいで幻覚を見てしまったのかもしれない。
 でも、そんなことよりも重大な問題がある。
 電車の車両ドアの前で思いっきりアレな体液をぶちまけてしまったことだ。
 いくら酒が入っていたとは言え、駅員さん、清掃の人には本当にすまないことをしてしまったと後輩共々深く反省している。
 ごめんなさい、もうしません。
 俺たちは、電車の中で二度といかがわしい行為はしてはいけないと強く心に戒めた。



簡易登場人物紹介

俺(20代後半)
面倒見の良いまっとうな先輩。
オカルトはあまり信じていない。
よくAVみたいなエロ被害に遭う。

後輩(20代前半)
オカルトが好きなクソ後輩。
ちょっとSっ気あり。
最近先輩のことが気になっている。

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