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『蝶』
8、三日目
しおりを挟む※友達式セックス(輪姦)です。
誰かが怒鳴るたびにきんきんと、耳の奥で不快な耳鳴りが反響していた。
耳障りなわめき声はひとつではなく、ふたつがお互いぶつかり合いながら次第に近づいてくる。
「あんた何考えてんのよ!」
ヒステリックな女の悲鳴に、泥の中にいた俺の意識が叩き起こされた。
「クボを監禁なんかしたら、蜂宿スガレが黙ってないわよ!ただでさえ父さんの容態が悪くて目が離せないのに、これ以上揉め事抱え込んでどうすんの!」
クボ?
違う、俺は蝶野だ。
一体なんの話をしてるんだろう。
「蜂宿に任せていたから大紫麻がこんなに衰退しちゃったんだろ?これ以上あいつらのいいなりにはなれないよ。母さんだって、もうこの件に関しては了承してくれてる」
続け様に聞こえてきたのは、斑さんの声だ。
おのずともうひとりは揚羽さんだとわかった。
「大紫麻立羽の血液と引き換えに、今の僕らは辛うじてこの村での人間としての生活を許されている。でも父さんの命が尽きればそこでおしまいだ。最後の大紫麻が絶えれば僕らは大紫麻の姓を剥奪される。僕も姉さんも母さんも不信心者に格下げされて、姓なしどもと一緒に毎日ビニールハウスで奴隷労働だ。そうなっても本当にいいの?」
「~~ッ、じょッ、冗談じゃないわ!何のために毎日死に物狂いで学歴積んで医者になったと思ってるのよ!」
「だったら僕らがやるべきことはひとつだ。蜂宿よりも先にクボを確保して、新しい大紫麻を産ませる。その子を養子として迎え入れれば、少なくとも僕らの代は安泰だ」
目の前が真っ暗だ。
布みたいなもので目隠しをされていて、それに両の手首が座っている椅子のひじ掛けにそれぞれ縛られてる。
そんなことよりも、頭がガンガンして吐きそう。
喉がカラカラで、それにやけに寒い。
インフルエンザに罹った時でもここまで酷い状態になったことがない。
「……その子、本当にクボなんでしょうね?父さんに引き合わせたときにあまり反応が良くなかったみたいだけど」
「さっき蜂宿たちに確認してもらったけど、間違いないそうだよ。昨日は消毒液臭すぎて食べ物には見えなかったんだって」
「ならいいわ。父さんはあたしと母さんで看てるから、あんたはさっさとやるべきことを済ませてよね」
「りょーかい」
カツカツと、ハイヒールのかかとを鳴らす音が遠ざかっていったあと、乱暴な扉の開閉音が響いた。
俺はぐらぐらとはっきりしない意識をなんとか奮い起たせる。
「う゛ぅ……」
「あ、起きた?おはよう蝶野くん。っていってもまだ日付変わったばっかりだけど」
斑さんの声は気を失う前の親しみのある調子と全く変わっていなかった。
……そうだ、俺、ビニールハウスで首に何か注射みたいなの打たれて、それで……
「全く、姉さんの身勝手さにはほとほと呆れたもんだよ。女ってのはなんでこういつも責任逃ればっかしたがるのか。これだから女は嫌いなんだよな」
斑さんの声が背後に回ったと思ったら、急に俺の身体は勝手に水平に動き始めた。
どうやら車椅子のようなものに乗せられて移動させられているらしい。
「あ、ェ」
一体何がどうなっているのか、問い質そうにも舌が痺れて上手く喋れなかった。
俺の意図を汲んだのか、斑さんは淡々と聞きたかったことを教えてくれる。
「ここは大紫麻邸の裏にある離れの屋敷だよ。何代か前に村の診療所として使ってたのをリノベしたんだ。山側を拓いて建ててるから、ちょっとぐらい大声で騒いでも近所迷惑にはならないよ」
なんでそんなところに俺を連れてきたんだ。
斑さんは一体俺に何をさせるつもりなんだ。
「そんなに身構えないでよ。別に殺そうだとか考えてないから。痛いことは何もしないよ」
ひとを目隠しして拘束しておいて、何もしないだなんて信用できるわけがない。
途中から、斑さんの声に反響がかかったように聞こえた。
湯気が顔に当たる感じからして、どうやらお風呂場に入ったらしい。
ほんのり消毒液の臭いが香ったかと思えば、ゴム手袋を嵌めた斑さんの手が俺の服の襟元に触れる。
上から順番にシャツのボタンを外されていく。
身を固くしている俺の傍ら、斑さんは「あ、」と思い出したように手を止めた。
「大事なこと聞くの忘れてた。蝶野くんて童貞?」
……このひとが何を考えているのか、俺にはさっぱり理解できない。
俺が反応を返さないでいると、向こうは勝手に都合の良いように受け取ったのか、ほうっと感嘆の息を洩らした。
「あー、よかったぁ。そうだとは思ってたけど、蝶野くんの初めてがどこぞの馬の骨の女に穢されてたらなんかちょっと生理的に嫌だなって思ってたから。実は僕もそうなんだ。友達同士、お揃いで嬉しいね」
下着を含めた着ていた服をすべて脱がされる。
リクライニング式の車椅子なのか、身を委ねていた背凭れがゆっくり後ろ向きに倒されて、そのまま俺は歯医者さんに診察してもらう時の体勢にさせられた。
斑さんは有無を言わせず俺の脚を割り開き、腰の下に折り畳んだタオルかなにかをかませる。
そうして持ち上がった尻にぬるりとした感触の液体を垂らしてきた。
「はぁい、ちょっとヒヤッとしますよー」
「っ、」
とろみのあるそれを馴染ませるように、ゴム手袋をつけた手が他人に触れられたくない場所の周りを揉み始めた。
人差し指を突き入れられてナカにも粘液を塗り込まれ、強張ったふちを解される。
不快感のあまり、いやだ、という形の空気を発するも、斑さんは気にせず俺の脚の間を陣取って何度も指をくの字に曲げてきた。
抵抗しようと必死でいうことの聞かない身体を動かすから、背中ばかりが上によじ登っていく。
「逃げないで。今から腸内洗浄するんだから」
その宣言のとおり指はすんなりと抜けていき、代わりに細い管を捩じ込まれた。
「ぃ……っ!」
何かがナカで拡がっていく、気持ち悪い感覚。
仕上げに「このまま十五分くらい我慢ね?」と管を奥まで押し込まれて蓋をされる。
それからまもなく、温かいシャワーが振ってきた。
斑さんは鼻唄を口ずさみながら、俺の髪やら身体を全身くまなく洗い始めた。
顔だけは、目隠しを濡らさないためかお湯で搾ったタオルで拭かれただけだった。
しばらくすると、ぎゅるる、と腹が鳴り猛烈な便意に襲われる。
「うっ、ぉ、ぉ、ィえ……!」
「ん?ここでしちゃって大丈夫だよ。ここそういう設備だから」
嫌だ!絶対に嫌!ひ、人前で排泄だなんて……!
「そんなに気にしなくったって、僕しか見てないって」
っお前に見られるのが何より嫌なんだ!
まともに力の入らない歯をギリッと噛み締めて耐えんとするも、斑さんはそんな俺の些細な抵抗を嘲笑うかのごとく出口を栓する管をグリグリと動かしてきた。
「ふっ、く……!や、ぇ゛ッ……!」
込み上げる性急な衝動に、大事な筋肉が唸りをあげる。
おなか、痛い……!
下腹が膨張して苦しくて、もう限界だと思ったところで、斑さんは無慈悲に管を引き抜く。
まずいと思ったけど、もう自力ではどうしようもできなくて、
「あ゛あ゛あ゛あ゛……!」
酷い水音と臭気が浴室内に響き渡る。
俺の尊厳だとか、プライドだとか、そういったものが決壊して、生温かい汚穢と一緒に股を伝って流れ出していく。
「うっわ、いっぱい出たねぇ。偉い偉い。我慢せずに全部出しきっちゃおうね」
悔しくて、覆われた目に涙が込み上げてきて、犬が喘ぐように呼吸しながら、腹の痛みが和らぐまで俺は今この世で一番嫌いな相手に痴態を晒し続けた。
……。
…………。
……斑は糸が切れたように呆然としている俺にあともう二度薬液を注入した。
腹の中を灌がれたあと、最後に湯を入れて洗い流し終えてからようやくシャワーで身体を清められ、柔軟剤の匂いのするタオルで身体を拭かれる。
保湿液?を身体に塗られて、ドライヤーのかけ方なんか美容院みたいに丁寧だった。
柔らかな素材の、多分バスローブみたいな服を簡易的に着せられて、背凭れの位置を元に戻した車椅子でまた別のどこかへと運ばれていく。
ガチャリ。バタン。
どこかの部屋に入ったらしい。
どうでもいい。
あれ以上酷いことをされるなんてもうそうそうないだろうから、とにかく今をやり過ごして早く解放されたかった。
でも、そんな俺の些細な望みは更なる悪意によって簡単に踏みにじられることになる。
「みんなお待たせー。綺麗にしてきたよ」
は?みんな?……っ!
「うわ、本当にクボだ……!」
「しかも十八歳の大学生だって?随分若いなあ、珠沙人さんより若いじゃないか」
「顔が小宵にそっくりだ。俺双子って初めて見たかも」
だ、誰!?周りに知らないひとがいる!しかも複数人!
「でも大紫麻さん、本当にヤッちゃっていいんですか?スガレさんに黙ってこんなこと」
「蜂宿さんたちだって、あのひとのやり方にはもうついていけないって思ったから僕の誘いに乗ったんでしょ?今更やっぱり止めますってのはナシですよ」
震える俺を差し置いて、斑は勝手に誰かと話を進めていく。
「大丈夫、くれぐれも痛くしないでねってよく頼んであるから。でも最初は怖いだろうから、目隠しはこのまましておいてあげるね」
何の合図もなく手首の拘束が解かれて、俺の身体は複数の男の手によって宙に拐われた。
山奥の田舎に似つかわしくない弾力のあるベッドに落とされて、足首を掴まれた姿で、俺は──男のモノに貫かれていた。
ガツガツと腰骨が当たるような律動で揺さぶられて、最後は奥で熱いものが果てる。
これだけでも吐き気を催すほど充分な陵辱だったというのに、地獄の先にはもっと酷い地獄が待ち受けていた。
「あ゛ああァッッ……!?」
男の浮桿とは明らかに違う、ギザギザとした細長いものが狭道を遡り、文字通り肉を抉るように突き刺さってきたのだ。
どくどくとおぞましく脈打ちながら、それは実が弾けるような勢いで俺の身体の深い場所に何かを植え付けた。
気持ち悪い!気持ち悪い!気持ち悪い!!
ふたつ、みっつと植え付けると、満足したのか凶器は引き抜かれ、出すものを出して腑抜けた男ごと離れていく。
「……っはッ、はぁっ、はあっ、はァっ、」
いやだいやだいやだつらいつらいくるしいきもちわるい、なんだこれ、今何をされた?もういやだかえりたい。
両手で腹を庇うように抱えて、少しでも加害者から距離を取ろうと俺は身を丸める。
揺さぶられている時に逃げようともがいたからか、目隠しは片方側だけ捲れていた。
シミひとつない真っ白な天井と、見知らぬ四人の男たち。
そして、
「疲れちゃった?大丈夫?」
昨日と同じように俺の両頬に手を添えて、真上からまじまじと覗き込んでくる斑。
「本当に君はクボなんだねぇ。双子の弟は不信心者なのに」
お腹、気持ち悪い……!ナカのやつ、掻き出してぇ……!
「蝶野くんはさ、『死への羽ばたき実験』って知ってる?ひとつの蛹の身体をふたつに切り分けてからそれぞれの断面にプラスチックを被せた場合成虫への変態が可能かどうかってやつ」
なんで俺がこんな目に。
どうして村に来たばっかりの俺が、一方的にこんなことされなきゃなんないんだ。
どうして、
「あれね、結果は片方だけが変態して、後半部は蛹のままだったんだって。なんだか君たち双子みたいで面白いよね」
「っ、ァ」
「あと三人いるから、もうちょっとだけ頑張ろっか」
輪郭の整った顔が薄ら笑いを浮かべながら近付いてきたと思ったら、そのまま唇を重ねられた。
熱い舌が入ってきて、俺の呂律の回っていないそれにちゅくりと絡みつく。
「んぅンっ……!」
口の中に、とろりと蜜のような液体が流し込まれた。
拒否するよりも先に、味蕾が舌触りを享受する。
甘くて芳醇で、唾液腺を伝って脳から一気に快楽物質を引き出させるような、そんな強烈な味わいだった。
初めての味覚経験だ。
これほどまでに美味しいもの、今まで食べたことがない。
これが嫌いな男の舌であることも忘れて、俺は夢中になって蜜の味を貪る。
「んっ、ふ、ン、っふはっ、ちょっとがっつきすぎ」
唾液の糸を引きながら離れていく舌を惜しんで、気づけば俺はみっともなく真上に舌を突き出していた。
そうせざるを得ないほど、この甘露には抗えない中毒性があった。
「美味しかったでしょ?今のはね、大紫麻立羽の血の原液。貴重なものだから普段蜂宿に囲われてるクボには水に混ぜて薄めたものしか飲ませないんだけど、クボの蝶野くんには大紫麻の子を孕んでもらわないといけないから特別だよ?」
あたまがおかしい。
俺のあたま、おかしくなってる。
人間の血だって聞かされたってのに、今のやつをもっと食べたい欲求が止まらない。
だってすごく、ものすごくおいしかった!
今のやつをもっとほしい、もっと、もっと、もっと!
「あっ、勃ってきたね。キスが気持ちよかったの?可愛い。いい子にできたら、お代わりあげるね」
汗で前髪の張り付いた額を整えられてから、また男が覆い被さってきた。
男に揺さぶられて、植え付けられて、おいしくて。
またゆさぶられてうえられて、おいしくて。
「その子のこと、随分気に入ってらっしゃるんですね。その、大紫麻さんはヤんなくていいんスか?……なんて、ハハッ」
「僕?僕がクボを抱いたところで意味ないでしょ。だって僕は蜂宿どころか大紫麻ですらないんだから」
「そ、そうですよねっ。失礼しました」
「それに、蝶野くんは友達だから。友達とはセックスしないでしょ普通。ねっ、そうだよね?蝶野くん」
一瞬、室内がしんと静まり返る。
普通友達をこんな目に遭わせるか?と、小声で呟いたのは誰だったか。
大紫麻立羽の血への渇望で理性の箍が外れてしまった今の俺には、もはやそんなことをいちいち確認する余力なんかどこにもなかった。
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