常世に捧ぐゲニタリア

きのこいもむし

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『蝶』

9、■日目

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「友達っていうのはさ、困ったときにお互い助け合える存在なんだって」

 連日続く陵辱の束の間。
 眠りの浅瀬を漂っている時間、斑はよく髪をすくように俺の頭を撫でてきた。

「女はずるいよな。だってクボじゃなくても子どもが産める。元々は翠蛾の不信心者だったうちの母さんは、大紫麻の父さんと結婚してうまいこと奴隷労働から逃げたんだ。姉さんだって、いざとなれば翠蛾家の男に嫁げばいい。後々の責任のことを考えるのはいつも最後に取り残される僕ばっかりだ」

「これまで僕のことを助けてくれるようなひとなんてひとりもいなかった。大紫麻の権力に集る蛾は大勢いたけど、誰も困ってる僕に手を差し伸べてくれる人間はいなかった。誰も僕の友達にはなってくれなかった」

「昔からこの村が大嫌いだった。大紫麻の家系に産まれたってだけで、最初から僕は何も選べなかったしどこにも行けなかった」

「……だから、君という特別な存在がこの村に来てくれたのだと知った時は、とても嬉しかった」

「君ならきっと僕をこの村のしがらみから解放してくれるって、そう確信してる。君となら、僕は真の意味での友達になれると思うんだ」

 断片的に聞かされる歪んだ独白には辟易していた。
 何が真の友達だ、馬鹿馬鹿しい。
 友達ってのはそんな損得のためになるもんじゃないだろ。
 一緒にいて楽しいだとか元気そうだったら嬉しいだとか、それだけでいいんだって、そこにいてくれるだけでいいんだって。
 友達ってそういう存在のことだ。
 こいつは自己憐憫の塊でしかない。
 友達って言葉を可哀想な自分に都合よくねじ曲げてるだけだ。
 何を罷り間違おうが、俺をこんな目に遭わせたやつを友達だと思う日は未来永劫やってこない。
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