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二章
ちょっと懐かしいです
しおりを挟む本当にただの疲労での発熱みたいで、あまり風邪の症状はなかった。ただ体が怠くて動けない。あと、異様に眠い。
ひと眠りてから起きると、階段を上って来る足音が聞こえた。お母さんかな?
「―――リア」
「え……」
ノックの後、部屋に入ってきたのはルフス様だった。
なんで……。
「なんでここいいるのかって顔してるな」
「は、い……」
寝起きだからか、上手く声が出なかった。
「今日はアルフ殿の挙動がやけにおかしくてな。仕事のミスはしないが挙動がおかしいというか、絶対に何か気がかりなことがあるんだろうなという感じだったんだ。それで、聞き出したらリアが発熱して寝込んでいるというから
昼休みに慌てて飛んできた」
お父さん……。
お母さんが伝えてくれたのか、ルフス様には言わないようにしてくれてたんだろうけど、態度でバレバレだったんですね……。
「あの、ルフス様……」
「リア、昨日のお出かけは楽しかったか?」
「? はい、とっても楽しかったです」
「そうか、また一緒にお出かけしような」
「??」
もう二度とお出かけはしないくらいのことを言われるかと思ってたので、予想外の展開です。熱で意識が少しボーっとしているのもあって思考が追い付かない。
そんな私の思考はルフス様にバレバレだったようだ。
「俺が責任を感じて、もう二度とリアを出掛けさせないとか言い出すかと思ったか?」
「……はい」
まさにその通りなのでコクリと頷く。
「もちろん反省はしてる。だけど、それでもう二度と出かけないなんてことになったらリアが熱を出してしまった自分を責めるんじゃないかと思ってな」
ルフス様にそっと頬を撫でられる。
「もう二度と出かけないなんて言わないよ。今度はもっとリアが疲れないような場所に出かけよう。だから、リアも俺に体調が悪いのを隠さないでくれ。リアの具合が悪くなったらちゃんと心配したいんだ」
「……はい、もうかくしません」
そう言うと、私は顔まで布団の中に潜った。だって、そんな真摯に心配したいなんて言われたら照れちゃいます。
「どうしたリア。頭でも痛くなったか?」
「いえ、あたまは痛くないです」
頭は痛くないけど、ちょっと寒くなってきた。熱が上がってきたのかな……。
布団の下で足を擦り合わせていると、おでこにピタッと大きな手が触れてきた。
「熱いな。リア、熱いか?」
「いえ……」
「じゃあ寒い?」
私はコクリと頷いた。
「熱が上がってきてるんだろうな。待っててくれ。もう一枚上に掛けるものをもらってくる」
「ありがとうございます」
そう言って私の頭を一撫ですると、ルフス様は一旦部屋を出て行った。
せっかくルフス様が来てくれたんだから起きていたいのに、一気に目蓋が重くなる。
少し抵抗するもあっけなく、私の意識は再び眠りに落ちていった。
***ヴォルフスside***
オリビアさんに毛布をもらってから戻ってくると、リアがすぴすぴと寝ていた。寝息までかわいい。
リアの掛布団の上から毛布を掛けてやり、ベッドの端に腰かける。そしてリアの小さな頭を撫でる。すると、リアの表情が少し穏やかなものに変化した。
このままよく寝て、すぐに熱が下がってくれるといいんだが……。
そのまま暫く頭を撫で続けていると、リアがもぞもぞと動き始めた。
「お? おお?」
寝返りを打つだけかと思えば、結構大胆に動く。結構寝相が悪い方なのか?
うつ伏せになったリアは、目を瞑ったままもぞりもぞりとこちらに向かってきた。そして俺の膝の上にリアの上半身が乗り上げる。
「なんだ? 抱っこか?」
無意識に熱源を求めてるんだろうか。
ベッドに今よりも深く腰掛け、布団ごとリアを抱っこしてやるとリアは落ち着いたようで、再びすぴすぴと穏やかな寝息を立て始める。
なんだこの生物。かわいすぎるだろ。
そろそろ昼休みが終わるんだが、このままだと仕事に戻れないな。ずっと抱っこしていてやりたいところなんだが、まだ仕事が残ってる。
とりあえずギリギリまで粘ろう。
リアを抱っこしたまま、休憩時間が終わるまであと数分というところまできた。
流石にそろそろ下ろさないとなと思った時、微かに音を立てて部屋の扉が開かれた。オリビアさんだろうか……。
「きゅ」
「え」
部屋に入ってきたのは、黄緑色の子竜―――リューンだった。
その後からカノンとノヴァもテコテコと歩いて入って来る。
「お前達、もしかしてリアのお見舞いにきたのか?」
「きゅ!」
そうだよ! というようにリューンが鳴き、三頭がベッドの上に上がってきた。リューンはリアの上にもぞもぞと上ると、その頬をぺちぺちと触る。
「きゅ~」
「ん……」
リアは少しむずがった後、子竜の姿に変化した。体が小さくなったことで俺の膝からも自然と落ち、リアは布団の上で丸まる。
リューン達はそんなリアの上に布団を被せると、自分達も布団の中に入ってリアの周りにくっついて丸まった。布団を少し捲って中を確かめると、「きゅっ!」と叱りつけるような鳴き声が飛んできた。リアが冷えると思ったんだろう。
どうやら、俺の役目は子竜達が変わってくれたようなので俺は仕事に戻ることにしよう。少し寂しいような、なんとも言えない気分だな……。
オリビアさんに挨拶をして外に出る。そして、そこに広がっていた光景に目を見張った。
オリビアさんが後ろから声を掛けてくる。
「さっきみんなで来たのよ」
「……そっか、そういえばこいつら、みんなリアには過保護だったな」
俺の視線の先にあったのは、色とりどりの竜達がこの家を囲むようにして集まっている光景だった。
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