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ミィに邪魔されず仕事をする方法 sideオルフェ
しおりを挟む魔王家の職場は魔王城、つまり自宅だ。
自宅が職場だといいこともあるが、不都合なこともある。
ミィは自分で思っているよりも甘えん坊だ。母親が傍にいないし、年齢から言っても仕方がないことなのだが。
そんなミィは、俺達が仕事をしている時も偶に人恋しくなるのか構ってもらいに来ることがある。嬉しいのだが仕事中に来られると少し困る。ミィにかまけて仕事をする手が止まってしまうからな。
まあそれもモフ丸がきてからは頻度が減ったのだが。それはそれで少し寂しい……。
だが俺達兄弟は最近、遊びにきたミィに邪魔されずに仕事をする方法を編み出した。
ひょこっとミィが扉の影から顔を出す。目がイタズラな光を宿してるな。口角もにゅっと上がっている。
構ってもらう気満々だな。可愛すぎる。
ミィがてててっと駆け寄ってきて座っている俺の横まできた。そのまま俺の膝にポンと手を置き、構ってほしいと目で訴えてくる。
爛々と輝く目に逆らえず、おれはミィの頭を撫でた。ミィは気持ちよさそうに頭を俺の手に押し付けてくる。ああ可愛い。
「モフ丸はどうしたんだ?」
「モフ丸はどっかに行っちゃったのです。メイドさんに構ってもらってるかお昼寝ですね」
「そうか」
ぬんぬんと左右に揺れるミィ。ご機嫌だな。
可愛いおめめが「遊ぼ―、遊ぼー」と訴えてくるが、あいにく俺は仕事中だ。ミィを養うためなのだ。遊んでやれない兄を許してくれ。
俺は引き出しから用意していた物を取り出して床に置いた。
ソレを見たミィの瞳がパッと見開かれる。
「にゅん!?これは!ミィ愛用の箱店の最新作!!」
ミィはフラフラと俺が置いた箱に近付いていき、吸い寄せられるように箱の中でクルンと丸まった。うむ、サイズはピッタリのようだな。
箱の中には最高級のクッションが備え付けられているから寝心地もいいだろう。
「ふわわわわ……!このふぃっと感!敷き詰められたクッションの弾力……!……完璧なのです!!」
どうやら気に入ってくれたようだ。
嬉しそうなミィの首から下に用意していたブランケットを掛けてやる。
「?」
ミィがキョトンとした顔で俺を見上げる。
俺は無言でミィの頭を撫でた。
一撫でするごとにミィはトロンとした顔になっていき、暫くすると本格的な眠りに入ってしまった。お昼寝だな。
……にしても、効果は抜群だったな。主人の仕事の邪魔をする猫への対処法を真似してみただけだったのだが。
さて、そろそろ仕事に戻るか。妹の寝顔を見たらやる気も湧いてきたしな。
俺は一度軽く肩をストレッチすると、集中して仕事にあたった。
早く仕事を終えてミィと遊んでやろう。
***
後日聞いたところ、リーフェや父上の所でもこの箱作戦は上手くいったそうだ。
そして、俺達の執務室にはいい寝床があるとミィが訪ねてくる頻度が上がった。
まあ、仕事の邪魔はされないのでいいだろう……?
可愛い妹の寝顔は仕事中の癒しだ。
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