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天使くん
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ぐったりです。
「……つかれました」
ミィは今ソファーの上にぐったりと寝そべっています。モフ丸がわたしを労うように尻尾で足を撫でてくれる。
「うふふ、どれもよく似合ってたわ」
母さまもソファーに座り、自分の太ももにわたしの頭を置く。お膝枕です。
ミィの着せ替えショーは最後に母さまの一押し衣装を着せられて終了しました。
ミィの頭を撫でながら、母さまが口を開きます。
「―――そういえばミィ」
「なんですか?」
「天界でミィに会いたいという子がいるのだけど、会ってくれるかしら」
「ミィに会いたい天使さんです?」
ミィは天界には行ったことないのですが、本当にミィに会いたい子なんているんでしょうか。
「ええ、前からずっと会いたいと言っているのだけどいいかしら。別にミィが嫌ならお断りもできるわよ?」
「いいのですよ」
「そう、じゃあ呼ぶわね」
「にゃ?」
呼ぶ?
そう言うと母さま天を仰いだ。
「コウく~ん、いらっしゃ~い」
え、会うって今です?
すると突如、パリーンと食堂の窓が割れた。
「!」
「ぴえ」
ガラスの破片が当たらないように、モフ丸が九本の尻尾でわたしを覆ってくれる。
「天使ってやつは大人しく玄関から入ってこれんのかのう……」
モフ丸がぼやく。
モフ丸の尻尾の隙間から覗き見ると、そこには一人の少年がいた。少年の背中からは真っ白い翼が生えている。
少年の年頃はミィよりちょっとだけ年上くらいに見えます。
「……ん?」
少年の気配になんだか違和感です。違和感というより、どこか既視感です。
「コウ君、窓は破壊せずに入ってきなさい」
母さまがそれを言いますか。
「まあ早くミィに会いたかった気持ちは分かるけれどね。ミィこの子、ずっとミィに会いたいって言ってたのよ」
「そうなのですか」
しゅるりとモフ丸がわたしを覆っていた尻尾を解く。
すると、パチッと少年と目が合いました。
「うっ、あ……」
「お兄ちゃん、コウってお名前なのですか?」
「あ、ああ……」
お兄ちゃん、なんか急にもじもじし始めました。登場はかっこよかったのに。
あんまりお兄ちゃん感はないので呼び方はコウ君でいいですね。母さまとおそろいです。
「コウ君はミィに会いたかったのですか?」
「あ……う……」
「なに急に怖気づいてんのよ」
母さまがコウ君に呆れた視線を向ける。
「ずっとミィに会いたい会いたいうるさいから合わせてあげたのに」
「なっ……!」
コウ君のお耳がほんのり赤く染まりました。恥ずかしがってますね。
……なんかこの反応、覚えがありますよ……?
脳裏に浮かぶのは真っ白な毛並み。
「…………もしかして、ノアールです?」
そう言うと、コウ君の瞳がパァっと輝いた。
「みー!!」
「ぐえっ!」
勢いよくコウ君が抱き着いてきました。突進といった方が正しいかもしれません。
手加減なしでむぎゅむぎゅ抱き締められる。
く、くるしいのです……。
「コウ君、そんなに力を込めていたらミィがぺしゃんこになってしまうわ」
「あ、ごめんミィ」
コウ君にぱっとミィから手を放しました。やっと息ができます。ぷはぁ。
「コウ君はノアールで合ってるんです?」
「うん」
コウ君がコクンと頷く。
ノアールとは、真っ白い犬です。前世のお友達でした。うん、ノアールは前世からこんな感じでしたね。ノアールは照れ屋さんなのです。
どうやらコウ君も前世からあんまり性格が変わってないみたいです。
ミィは今世で知りましたよ。コウ君の性格は「ツンデレ」ってやつなのです。
「……つかれました」
ミィは今ソファーの上にぐったりと寝そべっています。モフ丸がわたしを労うように尻尾で足を撫でてくれる。
「うふふ、どれもよく似合ってたわ」
母さまもソファーに座り、自分の太ももにわたしの頭を置く。お膝枕です。
ミィの着せ替えショーは最後に母さまの一押し衣装を着せられて終了しました。
ミィの頭を撫でながら、母さまが口を開きます。
「―――そういえばミィ」
「なんですか?」
「天界でミィに会いたいという子がいるのだけど、会ってくれるかしら」
「ミィに会いたい天使さんです?」
ミィは天界には行ったことないのですが、本当にミィに会いたい子なんているんでしょうか。
「ええ、前からずっと会いたいと言っているのだけどいいかしら。別にミィが嫌ならお断りもできるわよ?」
「いいのですよ」
「そう、じゃあ呼ぶわね」
「にゃ?」
呼ぶ?
そう言うと母さま天を仰いだ。
「コウく~ん、いらっしゃ~い」
え、会うって今です?
すると突如、パリーンと食堂の窓が割れた。
「!」
「ぴえ」
ガラスの破片が当たらないように、モフ丸が九本の尻尾でわたしを覆ってくれる。
「天使ってやつは大人しく玄関から入ってこれんのかのう……」
モフ丸がぼやく。
モフ丸の尻尾の隙間から覗き見ると、そこには一人の少年がいた。少年の背中からは真っ白い翼が生えている。
少年の年頃はミィよりちょっとだけ年上くらいに見えます。
「……ん?」
少年の気配になんだか違和感です。違和感というより、どこか既視感です。
「コウ君、窓は破壊せずに入ってきなさい」
母さまがそれを言いますか。
「まあ早くミィに会いたかった気持ちは分かるけれどね。ミィこの子、ずっとミィに会いたいって言ってたのよ」
「そうなのですか」
しゅるりとモフ丸がわたしを覆っていた尻尾を解く。
すると、パチッと少年と目が合いました。
「うっ、あ……」
「お兄ちゃん、コウってお名前なのですか?」
「あ、ああ……」
お兄ちゃん、なんか急にもじもじし始めました。登場はかっこよかったのに。
あんまりお兄ちゃん感はないので呼び方はコウ君でいいですね。母さまとおそろいです。
「コウ君はミィに会いたかったのですか?」
「あ……う……」
「なに急に怖気づいてんのよ」
母さまがコウ君に呆れた視線を向ける。
「ずっとミィに会いたい会いたいうるさいから合わせてあげたのに」
「なっ……!」
コウ君のお耳がほんのり赤く染まりました。恥ずかしがってますね。
……なんかこの反応、覚えがありますよ……?
脳裏に浮かぶのは真っ白な毛並み。
「…………もしかして、ノアールです?」
そう言うと、コウ君の瞳がパァっと輝いた。
「みー!!」
「ぐえっ!」
勢いよくコウ君が抱き着いてきました。突進といった方が正しいかもしれません。
手加減なしでむぎゅむぎゅ抱き締められる。
く、くるしいのです……。
「コウ君、そんなに力を込めていたらミィがぺしゃんこになってしまうわ」
「あ、ごめんミィ」
コウ君にぱっとミィから手を放しました。やっと息ができます。ぷはぁ。
「コウ君はノアールで合ってるんです?」
「うん」
コウ君がコクンと頷く。
ノアールとは、真っ白い犬です。前世のお友達でした。うん、ノアールは前世からこんな感じでしたね。ノアールは照れ屋さんなのです。
どうやらコウ君も前世からあんまり性格が変わってないみたいです。
ミィは今世で知りましたよ。コウ君の性格は「ツンデレ」ってやつなのです。
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