前世は猫、今世は(文字通り)魔王の箱入り娘です!

雪野ゆきの

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コウ君とデート④

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 コウ君と手を繋いでお店を出る。

「いい買い物ができたのです」
「よかったな」
「はい!」

 今日買ったものは魔王城うちに届けてもらうので荷物は増えてません。コウ君にお小遣いでなにかプレゼントしようかと思ったのですが、断られちゃいました。自分が入る用の箱はいらないみたいです。

「コウ君お暇でしたか?」

 一人で夢中になっちゃって悪いことをしたのです。

「いや、別に退屈はしなかった」
「そうです?」

 箱には全く興味なさそうだったけど、モフ丸とお話してたからでしょうか。とにかく退屈させちゃったのでなければよかったです。

「次はどこに行きたい?」
「う~ん、ちょっと疲れちゃったので休憩したいです」
「そうだな、結構な時間立ってたしな」
「近くの公園にベンチがあるのでそこに行きましょう!」
「ああ」

 そうしてミィ達は近くにある公園に移動しました。
 これが結構大きな公園で、真ん中に噴水があるのです。噴水にはいつでも清潔な水がちょろちょろと流れている。
 噴水って不思議ですよね。ついつい近付いて水に手を浸したくなっちゃうのです。水なんて蛇口からいつでも出るのに。

「えへへ」

 やっぱり今日もお水を触っちゃうのです。
 お家に帰ってからの手洗いはちょっとめんどくさいのに、噴水なら進んで手を水に浸けちゃいます。うちの蛇口も噴水型になればミィは喜んで手を洗うのに。



「―――もういいのか?」
「はい」

 しばらくお水をちゃぷちゃぷして満足したので手を水から出す。するとコウ君がミィの濡れた手をハンカチで拭いてくれた。これが紳士ってやつです?
 ミィとコウ君は噴水の縁に隣同士で座っている。ちなみにモフ丸は地面で伏せをしてるのです。なんだか眠そうですね。
 にしても、今日は珍しく人が少ないのです。いつもならもうちょっと賑わってるのに。
 ここに来る途中で買ったジュースを飲んでると、隣にいるコウ君がソワソワし始めたのです。どうしたんでしょう。お腹でも痛いのでしょうか。

「コウ君どうしたのです?」
「……えっと、俺、ミィに渡したいものがあるんだ」
「渡したいもの?」

 コウ君の誕生日なのにミィがプレゼントをもらうんです?
 ちょっと違和感を覚えたものの、ミィはもらえるものは貰う主義です。くれるというならありがたくもらいましょう。
 するとコウ君は荷物の中から小さなケースを取り出した。ミイのちっちゃな拳くらいのケースです。

「これはなんです?」
「開けてみてくれ」

 コウ君に促され、ミィはケースのフタを開いた。
 これは―――。

「指輪?」

 中には綺麗なシルバーの指輪が入ってました。でもサイズがミィには大きすぎるのです。親指なら入るでしょうか。

「大きくなったら、俺と結婚してほしいんだ!」
「……にゅ?」

「すとおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっぷ!!!」
「!?」

 物凄い勢いでリーフェ兄さまが走ってきてミィを抱き上げた。兄さまにむぎゅううと抱き締められる。

「ミィにプロポーズなんて百年早いんだよ!!」
「リーフェ兄さま、どこから湧いてきたのですか?」
「うっ!」
「……もしかして、後をつけてきたんです?」

 ジト目でリーフェ兄さまを見ると、兄さまは目を逸らした。こっそりついてきてたんですね。ぷぅ。

「俺だけじゃないから! あそこに兄上と父上もいるから!! ついでに天王様も!」

 そう言ってリーフェ兄さまは公園を囲ってる植物を指さした。あそこに隠れてたんですね。

「おいバラすんじゃねぇよ!」

 そう言って草影から出てきた兄さま達は父さまを羽交い絞めにしていた。

「……なにしてるんです?」
「父上がそのガキのプロポーズを聞いて飛び出しそうになったから止めてたんだよ。そしたらリーフェが飛び出しちまったんだけどな」

  イルフェ兄さまがリーフェ兄さまを睨みながら父さまから手を放す。その瞬間父さまは飛び出し、リーフェ兄さまからミィを奪い取った。今度は父さまに強く抱き締められる。

「我は許さぬぞ!!!」
「まあ落ち着け魔王よ。まだ子どもの言うことではないか」
「ミィはまだ子どもだから結婚の話などまだ早い」
「頑なだな」

 兄さま達と同じように草影から出てきた天王さまが父さまにツッコむ。

「とにかく! 我は認めぬからな~!!!」

 そう父さまが咆えた。


 この出来事がまさかあんな大事になるとは、この時は思ってなかったのです。











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