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二章
甘えん坊の日
しおりを挟む「ひとはだが恋しい!!」
なんだか急激に人肌が恋しくなった。
「パパ抱っこ!」
「ほいきた」
ひょいっとパパに抱きあげられた。ギュウウウと首に腕を回して抱き着く。
食堂に行く時も、ごはんを食べるときもずっとくっつく。
「シロごはん食べないのか?」
「あーんして! あーん!!」
パパから離れたくなくて、パパの腕に抱き着いたままあーんをせびる。
「あーん! あーん!」
「俺の娘はかわいいなぁ~」
そう言ってパパはあーんでご飯を運んでくれる。間違いなく親バカだ。
ごはんを口まで運ばれ、口元を拭われ、至れり尽くせりで朝食を終えた。
「ほらシロ、ごちそうさましような?」
「ごちそうさま」
食器を片付けた後、わたしはパパのシャツの中に潜り込んだ。そしてパパのお腹にギュッと抱き着く。
「シロ? しぃ~ろ~、パパにかわいいお顔は見せてくれないのか?」
「……」
わたしはパパのお腹辺りのシャツのボタンを二つだけ開け、そこから顔を出した。
「うひゃあ~暴力的なかわいさ。シロちゃんかわい~かわいいねぇ」
アニが腰をかがめて覗き込んでくる。
「……」
「ん? どうしたのシロちゃん。そんなに俺を見つめて」
「ん」
わたしはパパのシャツの中で両手を広げた。ハグしてという意味だ。
「えぇ、し、シロちゃん、お誘いは嬉しいけど、今ハグしたら俺必然的に隊長にも抱き着くことになるんだけど……」
「ん!」
珍しくアニが本気で困惑してるけどそんなことはお構いなしだ。
暫く見つめ合うとアニの方が折れた。
「ほらアニ、来いよ」
「グッ……」
パパがニヤニヤしてる。いじめっ子だね。
「……もうどうにでもなれっ!」
アニが勢いよく抱き着いてきた。
パパとアニに挟まれたサンドイッチだ。それにしては具がちょっと小さめだけど。
前と後ろからギュウウウと抱きしめられる。
「えへへ」
「~~~っ!! シロちゃんかわいい!!」
満たされた気持ちになって思わず笑いがこぼれた。
「なにしてんだアニ」
「お~エルヴィス。今日はシロが甘えん坊な日でな、人とくっついてたいらしいんだ」
「へ~、てっきり僕はアニの方が甘えん坊の日なのかと思ったよ」
シリルがニヤニヤしながらアニをからかう。
「うっせーな……」
「ん!」
わたしはシリルに向けて両手を開いた。
「……えっと、シロ、その手はなに?」
「シリルもだっこ!」
まさか自分にも言われるとは思ってなかったのか、シリルが微かに動揺する。
パパとアニがニヤニヤしだした。
「ほら~、シロちゃんのお願いだぞ? シリルもこっちこいよ」
「うちの姫の言うことが聞けないわけないよな?」
シリルが躊躇ってる隙にクロがスルリと抱きついてきた。
クロがチラリとシリルを見てハッと鼻で笑う。
「むっか~! ギュウギュウに押しつぶしてあげるよ!! エルヴィスも!」
「はいはい」
シリルとエルヴィスがぎゅむっとクロの上に抱きつく。
「はははっ! よし、全員こいっ! 俺達の甘えん坊な娘を抱き締めてやろう!!」
パパの呼びかけでノリのいい特殊部隊隊員達は次々に人間団子の外側にくっついてくる。
「ウイリアムとセバスもこい」
参加しようかどうしようか迷ってる風だった二人にパパが声を掛けた。すると二人も少し恥ずかしそうに外側に抱きつく。
みんなの笑い声で食堂は大変騒がしいことになっている。
「シロ、気分はどうだ?」
「ん~、だいまんぞくっ!!!」
パパの問い掛けに笑顔で答える。
その時ふと、頭の中で声がした気がした。
『ねえシロ、今シロは幸せ?』
―――うん、シロはとっても幸せだよ。
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