天才になるはずだった幼女は最強パパに溺愛される

雪野ゆきの

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二章

少女漫画を読もう!

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「しぃーろーちゃーん! 前にクロに絵本読んでもらってたよね。だから今日は俺が少女漫画を読んであげるね!」
「ありがとうアニ、遠慮しとくね」

 私は殿下の真似をしてニッコリと笑った。相手に有無を言わせないビジネススマイルだ。

「遠慮しないで!? 俺にもお兄ちゃんっぽいことさせてよおおおおおおおおおおお!!」
「む~。しょうがないなぁ……」

 アニが泣いて縋ってくるので、仕方なく少女漫画とやらを読み聞かせされてあげることにした。

 今はお昼休み中なので特殊部隊隊員の大半はここ、食堂にいる。なので若干の騒がしさはご愛嬌だ。
 私は椅子に座ったアニの膝に乗り、可愛らしい絵が紙いっぱいに描かれている少女漫画を覗き込んだ。アニがデレデレするのはいつものことだから気にしない。

「じゃあ読むね。『私キラリーン。ごくごく普通のノーマルで平凡な十六歳☆』」
「なんて?」

 しょっぱなから意味が分からな過ぎた。というか、なんとなくメロリを彷彿とさせるテンションと名前だね……。

「『あ、おはようタロウくん』『おはようキラリーン。今日も星屑みたいでかわいいね』」
「一体どういう会話なの?」

 星屑みたいって褒め言葉なのかな……。シロ的にはセンス悪いと思うけど。あとヒロインに比べてヒーローの名前が普通。

「『ありがとうタロウくん、でも私が可愛いのは自明だよ☆ あ、そうだあのね、昨日メガネ屋さんにいったんだけど、私の目が大きすぎてサイズの合うメガネがなかったの!』」
「目が顔の七割を占めてたらそうでしょうよ」

 ヒロインの瞳は頭蓋骨の中身がほとんど眼球なんじゃないかと思うくらい大きく描かれていた。というか手と目がほぼ同じ大きさだ。
 美少女って目が大きいイメージがあるから作者は目が大きければ大きい程かわいいと思ってこうしちゃったのかな。にしても極端だけど。だって不細工って言われてるモブはのっぺらぼうだよ。目が小さいどころの話じゃないよね。何事も限度があるよ。
 で少女漫画ではお決まりだという超絶美少女なライバルは眼球だけなんじゃないかと思って内心ちょっとワクワクしてる。
 少女漫画、結構面白いかも。
 このヒロインがちょっと頭が悪めなのは眼球に場所を取られて脳みそがミニマムになってるからだね。


 いつの間にか、食堂にいるみんなも初めて聞いたであろう少女漫画の内容に耳を傾けていた。というか大人数で一つの漫画を夢中で覗き込んでいる。
 辺りは静まりかえり、ページをめくる音とアニの声しか聞こえてこない。

 物語の終盤になるとアニの朗読も様になってきて、声に熱が入っていた。
 そしてアニが最後の一文字まで読み終えた。

「――――おしまい」
「……」
「……」

 暫く誰も声を発さなかった。
 すごい……少女漫画すごい……。
 最初の方はネタ的に面白いのかと思ってたけど、後半の怒涛の展開がすごかった。キラリーンが実は宇宙人で、タロウの住む地球を救うために地球にぶつかる予定だった隕石と相打ちになり、本当に星屑になっちゃった所で涙がこぼれた。そして来世で二人が再会する所では涙腺が崩壊した。
 あんな会話で始まる話で泣いちゃうなんてちょっと悔しい……。
 私の目からぽろぽろと落ちる涙をアニがハンカチで拭ってくれた。アニは自分が使うハンカチとは別に「シロちゃん専用ハンカチ」とやらをいつも持ち歩いているらしい。出番があってよかったね。

「―――どう? シロちゃんキュンキュンした?」
「……別にキュンキュンはしなかったかな」

 日常恋愛パートはシロにはよく分からなかった。なんで会話が成立してるのかも分からなかった。

「そんなぁ! でもほら、最後にキラリーンがタロウを庇ったシーンとか!」
「感動はしたけどキュンキュンはしない」
「え~、じゃあその前のタロウがキラリーンを庇ってナイフで刺されたシーンとかは? 自分がピンチの時にイケメンが颯爽と助けに来てきれたら好感度爆上がりじゃない!? 日頃から細々としたことで気を遣える男も俺的にはポイント高いと思う!!」
「う、うん、たしかにシロがもうちょっと大人だったらドキドキするかも……?」

 シロはアニの気迫に負けました。
 思ってもないことを口にすると、アニがパアッと表情を明るくする。



 まさか、この会話をみんなが耳を澄ませて聞いていたなんて、私は思ってもみなかった。





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