月夜の森のクマ

みもりあふぇんて

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月夜の森のクマ

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 ウオーン!ウオーン!ウオーン!

満月の明かりが照らす静寂の夜の森の中、
一頭の熊が悲しげに鳴いている…

その熊は図体こそ大きいものの、まだ子供であった。ここ二日間餌にありつけず、空腹でぐずっていたのだった。

ウオーン!ウオーン!ウオーン!
「お腹が空いたよー!ママー!サーモン食べたいよー!」

虚しい子熊の咆哮は、闇夜の静けさを切り裂く…

その時だった…

子熊がふと黒い木々に目を向けると、見慣れない人間が一人ぬーっと立っていた。

白くて長い顎髭の、どこか仙人みたいな、サンタクロースみたいな感じの年老いた男が、こちらを見ている…

突然の出来事に微動だに出来ず固まっている子熊の方へ、その老人は近付いて来た。

右手にランタン、左手に大きな新巻鮭を持ちながら、不意に言う。

「腹が減ってるんだろう?食べな……」

老人は子熊の前にぶっきらぼうに大きな鮭を
放ると、元来た道にきびすを返した。

「あの人間、僕が恐くないのかなぁ?まぁいいや」

そう思いながらも、空腹に耐えかねた熊は夢中で新鮮な新巻鮭を貪った。ムシャムシャモグモグ…

お腹が満たされた子熊は、今度は眠気を催したので、ノソノソと森の中へと分け入った。

深い木々の間の開けた場所に、大樹の切り株があったので、そこに寄りかかって休む事にした。

するとほどなくして、熊は眠りに落ち夢を見始めたのだった。

夢の中で、何故か子熊は人間になっていた。
そして深い夜の森の中をランタンと新巻鮭を持って歩いているのだった…

しばらくして、森を抜けると一頭の腹を空かせた子熊と遭遇した。

「あれれ?変なの。でもあの熊は僕だろう。」

直感的に眼前の子熊は自分だと認識したので、
持っていた鮭を放り投げた。

元来た道を帰る途中、記憶が飛んだ。

しばしの空白の後、ふと目覚める……

ゆっくりと目を見開くと、脇に大きな鏡があった。

そこにはベッドに横たわる、立派な白い顎髭の老人が映っていたのだった…………。
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