失語オメガと4人のアルファ

Aki

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第四話

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ガシャン、と重厚な鉄扉が閉ざされ、外の光が完全に遮断された。
巨大な防音シートに覆われた建設現場の内部は、むき出しの鉄骨とコンクリート、そして埃っぽい建材の匂いが立ち込める殺伐とした空間だった。
しかし今、その冷たい空気は、勝也から放たれる暴力的で甘い『アルファ』のフェロモンによって、ドロドロに侵食されている。

「んっ……、……っ!」


幸広は勝也の太い腕に抱え上げられたまま、必死で身を捩った。
しかし、鳶職で鍛え抜かれた勝也の腕力は凄まじく、幸広の抵抗など児戯に等しい。勝也は薄暗い現場の奥、ブルーシートが敷かれた断熱材の山の上に、幸広の体を乱暴に投げ出した。


「っん……!」


背中を打ちつけ、呻き声を上げる。
すぐさま跳ね起き、柔道の受け身の要領で距離を取ろうとしたが、それよりも早く勝也の巨大な体躯が上にのしかかってきた。


「無駄だ、佐藤。お前の動きなんか、全部お見通しなんだよ。……俺がお前に柔道を教えたんだぞ?」
「……っ!!」


幸広は下から勝也の胸ぐらを掴み、渾身の力で巴投げを打とうと踏み込んだ。だが、勝也は幸広の重心の移動を完璧に読み切り、逆に幸広の右脚を太い腕で絡め取ると、そのまま体重をかけて押さえ込んだ。


ただ大きいだけでなく、極限の環境で命綱一つで働く男の、圧倒的な『密度』と『質量』。
幸広がこの数ヶ月、ジムのウエイトトレーニングで必死に手に入れた見せかけの筋肉など、本物の獣の前では小枝のように脆かった。

「……ん……!ふ……ん……」
(ふざけるな……っ! 離せ、触るな!!)


声が出ない幸広は、真っ赤に充血した目で勝也を激しく睨みつけ、口をパクパクと動かして抗議した。
しかし、勝也はその必死の抵抗すらも愛おしいとでも言うように、歪んだ笑みを浮かべて幸広の両手首を片手で軽々と拘束し、頭上に押さえつけた。


「怒った顔も、綺麗だ。……この三週間、お前を遠くから見てるだけで、俺の頭はおかしくなりそうだった。体が少し大きくなって、男らしくなったな。でも、違うんだよ佐藤。お前は、アルファに抱かれるために生まれてきた『オメガ』なんだ」


(違うっ……俺は、男だ!!)


首を激しく横に振り、拒絶の意思を示す。
しかし、勝也の空いたもう片方の手が、幸広のスポーツTシャツの裾から侵入し、トレーニングで汗ばんだ腹筋を、生々しい手つきで撫で上げた。


「ひっ……!」
「ビクビク震えて……可愛いな。俺が怖いか? それとも、自分の体が疼いてるのがわかるか?」


勝也の顔がゆっくりと近づいてくる。
逃げ場のない密室。充満する致死量のフェロモン。
そして――勝也の唇が、幸広の唇を強引に塞いだ。


「――んっ!? んんんっ!!」


喰いちぎられるような、暴力的な口づけ。
幸広は固く歯を食いしばって侵入を拒んだが、勝也の太い指が幸広の顎の関節を容赦なく押し入り、強制的に口をこじ開けられた。


(あ、が……っ、やめ……!)


口内に、勝也の熱い舌が侵入してくる。
そして、オメガにとって最悪の劇薬――アルファの唾液に含まれる特殊な酵素、『アルファソース』が、幸広の口の奥へと強引に流し込まれた。


「ん、ぐ、ちゅ……っ、ぁ、あ……!」


喉の奥でアルファソースを飲み下してしまった瞬間、幸広の体に決定的な『バグ』が生じた。


――ドクンッ!!


心臓が跳ね上がり、全身の血液が一気に沸騰したような猛烈な熱が下腹部に集中する。


(なんだ、これ……っ、あつい、お腹の奥が……っ)


男性である幸広の直腸の奥に存在する、使われるはずのない器官――『男子宮(だんしきゅう)』。


アルファソースの強烈な刺激を受けた男子宮が、オメガとしての本能を強制的に覚醒させ、子宮口から粘り気のある甘い愛液をどろりと分泌し始めたのだ。


「は、……! ぁ、はぁ……っ」


声にならない甘い吐息が漏れる。
嫌だ。こんなの、俺の意思じゃない。
俺は強くなりたかった。かっこいい男になりたかったんだ。
頭の中では勝也を殺したいほど憎んでいるのに、アルファソースのせいで脳の奥が痺れ、筋肉からガクガクと力が抜け落ちていく。


「ははっ……すげぇ。アルファソースを飲ませただけで、もうこんなに甘い匂いを撒き散らして」


唇を離した勝也が、幸広の顔にかかった前髪を優しく撫でながら、酷薄に囁いた。


(ちがう……ちがうっ、俺じゃない……っ!)


幸広の目から、屈辱と絶望の涙がボロボロと溢れ落ちた。
勝也の手が、幸広のトレーニングパンツのゴムに掛けられ、下着ごと一気に膝下まで引きずり下ろされる。
あらわになった幸広の秘部は、自分でも信じられないほど、発情の熱でいやらしく愛液で濡れそぼっていた。


「……っ、ひ、ぁ……っ」
「隠さなくていい。オメガがアルファのフェロモンに屈するのは、逆らえない本能だ。……あの日、俺たち四人に囲まれて、後ろだけで何度もイッてたお前の卑しい顔、俺はずっと忘れられなかったんだ」


勝也の言葉が、鋭い刃となって幸広の誇りをズタズタに切り裂いていく。
あの日のトラウマがフラッシュバックする。
先輩たち、同級生、後輩、そして目の前の先生。四人のアルファに代わる代わる蹂躙され、それでも快感に抗えず、無様に腹を痙攣させて果ててしまった情けない自分。


「……!ふ、ん……っ、!」


掠れた息の音だけで懇願するが、勝也はすでに自らのズボンのベルトを引き抜いていた。
あらわになったアルファのペニスは、常軌を逸した大きさと熱を帯びており、亀頭の下には、一度挿入すれば射精が終わるまで抜けなくなるアルファ特有の恐ろしい器官――『ノット』が、すでにリング状に膨らみかけていた。


(あんなの、入れられたら……また、俺……っ!!)


「佐藤。お前の全部、俺がもう一度、作り替えてやる」
「んっ、あ、…………!!」


勝也の無骨な指が、愛液で滑る幸広の入り口を無遠慮に押し開く。
アルファの強烈な支配欲と、抗えないオメガの悲しい本能。防音壁に囲まれた真っ暗な建設現場で、幸広の「男としての尊厳」が、再び音を立てて崩れ去ろうとしていた。
幸広は最後の抵抗として、拘束を解かれた両手を必死に自分の首の後ろに回し、番(つがい)の証を立てられる『うなじ』だけを、ガタガタと震えながら死守した。
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