失語オメガと4人のアルファ

Aki

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第五話

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「佐藤。お前の全部、俺がもう一度、作り替えてやる」
「んっ、…………!!」


勝也の無骨な指が、愛液で滑る幸広の入り口を無遠慮に押し開く。
アルファの強烈な支配欲と、抗えないオメガの悲しい本能。防音壁に囲まれた真っ暗な建設現場で、幸広の「男としての尊厳」が、再び音を立てて崩れ去ろうとしていた。
幸広は最後の抵抗として、拘束を解かれた両手を必死に自分の首の後ろに回し、番(つがい)の証を立てられる『うなじ』だけを、ガタガタと震えながら死守した。


「……無駄だと言ってるだろう」


勝也は鼻で笑うと、幸広の両脚をさらに大きく割り、自らの巨大な熱を容赦なく奥底へと突き入れた。


「はぁ……っ、!、あぁっ……!!」


声にならない絶叫が、幸広の閉ざされた喉の奥で空しく木霊する。
引き裂かれるような物理的な痛みに全身の筋肉が強張ったのは、ほんの一瞬のことだった。オメガの悲しい本能が、アルファの巨大な楔を迎え入れるために、幸広の身体を強制的に作り替えていく。


勝也の唾液――アルファソースを飲み下してしまった影響で暴走した男子宮から、とめどなく溢れ出す愛液が潤滑油となり、激痛をあっという間に恐ろしいほどの快楽へと変換してしまったのだ。


「はぁ……っ、佐藤、お前の中……すげぇ熱い……っ。こんなに締め付けて……俺を待ってたみたいだぞ」
(違う……っ! 違う、やめろ……っ!)


首を激しく横に振るが、勝也の腰の動きは止まらない。鳶職で鍛え上げられた強靭な体幹から繰り出される深いストロークは、幸広の抵抗を一切許さず、一番敏感な粘膜の奥を的確に穿っていく。


「あ、あっ、ぁあ……っ!」


トレーニングで鍛え直したはずの腹筋も、太ももの筋肉も、勝也の放つ濃厚なフェロモンの前では完全に弛緩し、ただ快楽を受け入れるためだけの器と化していた。
強くなりたかった。かっこいい男でありたかった。あの日奪われた尊厳を取り戻すためにジムに通い、必死に汗を流してきたのに。


結局のところ、自分はアルファの下で喘ぎ、力でねじ伏せられることしかできない『オメガ』なのだという残酷な現実が、幸広の心を粉々に打ち砕いていく。


前を触れられてもいないのに、後ろから容赦なく突き上げられる圧倒的な快楽だけで、幸広の身体はガタガタと震え、視界が白く明滅し始めていた。言葉を発せられない喉からは、ヒュウヒュウと掠れた息と、甘い鼻声だけが漏れ出す。助けを呼ぶことも、罵倒することもできない己の失語症が、今日ほど恨めしい日はなかった。


「……っ、ああ、佐藤……っ! もう、ダメだ……っ、そんな締め付けたら……」


勝也の荒々しい息遣いが耳元に落ちた直後、幸広は自分の腹の奥で『それ』が異常な膨張を始めるのを感じた。


(……っ!? 嘘だろ、抜いて、お願いだから……っ!!)


恐怖で目を剥き、勝也の分厚い胸板を必死で押し返そうとする幸広を嘲笑うかのように、勝也の亀頭の下にあるリング状の器官――『ノット』が完全に膨らみきり、幸広の抜け道を物理的に塞いだ。


「……っ!! あ、が……っ」


ガッチリと体内から鍵をかけられたような、逃げ場のない拘束感。
ノットが抜けなくなるというオメガバース特有の現象は、アルファが射精を終え、興奮が収まるまで絶対にこの結合から逃れることはできないということを意味する。オメガを確実に妊娠させるための、獣の恐ろしい本能。
防音シートに囲まれた冷たいコンクリートの空間で、熱く脈打つ勝也のノットに捕食され、絶望に涙を流す幸広。
さっきまで、激しく乱暴に突き上げていた勝也は、一度動きを緩める。幸広の頬を、大きく分厚い手が、ひどく優しく包み込んだ。


「……泣くなよ、幸広」


今まで『佐藤』と苗字で呼んでいた勝也の口から、甘く熱を帯びた声で下の名前を呼ばれ、幸広は背筋に粟立つような悪寒を覚えた。


「俺は……ずっと後悔してたんだ。あの時、お前を獣みたいに襲ってしまったことを。だから教師も辞めた。お前に再会した時も、本気で謝るつもりだった。これ以上、お前を傷つけるつもりなんてなかったんだ」


ノットで深く繋がれたまま、勝也は幸広の額に落ちた汗を拭い、懺悔するように語り始めた。しかし、その瞳に宿っているのは純粋な反省などではない。ドロドロに煮詰まった、狂気と執着だ。


「でも……お前は俺の謝罪を受け入れてくれた。相変わらずの、優しい笑顔で……。そのお前の優しさが、俺の理性を完全に壊したんだ。お前のその顔を、誰にも見せたくない。俺だけのものにしたい……。ただのアルファの本能なんかじゃない。俺は、お前が好きなんだ、幸広」
(……っ、ふざけるな……っ!)


幸広は真っ赤な目で勝也を睨みつけた。
こんな暴力で押さえつけ、無理やり身体を開かせておきながら、何が『好きだ』だ。あの時と同じように本能のままに襲っているくせに、それを愛情だとすり替えているこの男が心底恐ろしかった。


「番(つがい)になってくれ。一生、俺がお前を守る。もう誰にも手出しはさせないから……っ」


勝也の顔が、幸広の首筋へと沈み込む。荒い吐息と共に、鋭い犬歯がオメガの急所である『うなじ』を探り当てようとしていた。
噛まれれば、終わりだ。心はどうであれ、アルファのフェロモンが完全に身体に刻み込まれ、魂まで永遠にこの男に縛り付けられてしまう。


「んんっ!! ――っ!!」


幸広は最後の力を振り絞り、首の後ろに回していた両手にギュッと力を込め、うなじを鉄壁のガードで覆い隠した。
絶対に、これだけは許さない。その強い拒絶の意思表示に、勝也の動きがピタリと止まる。
数秒の重い沈黙の後、勝也は幸広の首筋から顔を上げ、小さく息を吐いた。


「……今はまだ、ダメか」


無理やり腕をどかして噛みつくこともできるはずの圧倒的な力があるのに、勝也はそれをしなかった。代わりに、幸広の涙に濡れた目尻に、チュッと執着に満ちたキスを落とす。


「いいさ。今は無理やりは噛まないでおいてやる。お前が心から俺を求めるまで待つ。……でもな、幸広。俺は絶対に諦めないぞ」


勝也の瞳が、暗い熱を帯びて三日月型に歪んだ。


「振り向いて、お前から『噛んでほしい』って泣いてすがるように……努力するからな。俺なしじゃ生きられない身体にしてやる」
その狂気に満ちた宣言と共に、勝也はノットを深く食い込ませたまま、さらに激しく、執拗に幸広の最奥を突き上げ始めた。


「はぁ、……! ……!」


憎い。許せない。絶対に絆されたりしない。
そう心で叫び続けているのに、勝也の放つ大量のアルファソースとフェロモンに侵食された幸広の身体は、意志とは裏腹に甘く泣き濡れ、自ら腰を跳ね上げて勝也の巨根を迎え入れるように蠢いてしまっていた。


どんどんの膨れあげる勝也のノット。その時が近づいてきていることに恐怖するが、どんな暴れても抗えない。工事現場のみに響く、リズミカルになる高い音はリズムをあげていく。


「あぁぁぁぁぁぁ!いくぞ、中に出すぞ!あぁぁぁ!あぁ!」


パン、パァンと響き渡る音と、声を持たないオメガの抵抗は、無情にも防音壁の中に吸い込まれていく。
冷たい鉄骨に囲まれた密室で、幸広のささやかな平穏と希望は、抗えない本能と甘く残酷な快楽の波に、完全に飲み込まれていったのだった。
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