異世界の聖杯を拾ったら後輩系彼女ができた件

三色ライト

文字の大きさ
15 / 30

15話 社会勉強はバ先で

しおりを挟む
 リディアと分かれ、元いた品出し場所に戻ってきた。

「……げっ」

「げって何だよ少年」

 するとそこにはやべぇ先輩こと菜々緒先輩が座っていた。

 よく見るまでもなく、ニヤついている。間違いなく俺とリディアのやり取りを監視していたようだな。

「いやぁ、昨日はオーヴェリアちゃんに気を取られてよく見てなかったけど、リディアちゃんも可愛いじゃん!」

「指一本でも触れたら怒りますからね」

「何でアタシ、ラノベの敵役枠なわけ?」

「ほいほい食っちゃうでしょあなた」

「……てへっ」

 否定しろよ。

 だからリディアが和泉屋書店に来ることを避けていたのに。この人と接触させて碌なことになるわけがない。

「ねぇねぇ、リディアちゃん今日だけ職場体験させてみない?」

「はぁ?」

 俺の予想通り、菜々緒先輩は変なことを提案してきた。

 職場体験といえば中学生が通る道。確かにリディアは見た目中学生なので馴染むとは思うが、まともな思考回路が巡っての発言とは思えなかった。

「訝しがるなよー。興奮するだろー」

「やめてくださいマジで」

 俺と菜々緒先輩の性癖は近かったのか。マジで見直そう。

 菜々緒先輩は雰囲気を変えるように、コホンと咳払いをした。

「……真面目な話だけどさ、少年はリディアちゃんとずっと一緒にいたいんだろ?」

「はい。本心からずっと一緒にいたいです」

「いい眼だね。少年は気がついていないかもだけど、リディアちゃんと会う前よりずっといい顔しているよ」

「そう、なんですかね」

 自分じゃわからない。朝顔を洗う時くらいしか自分の顔を見ないからな。

「前向きになった感じ。たぶんリディアちゃんとの出会いが、君をポジティブにしたんだろうね」

 確かにリディアと出会ってから、俺の思考は前向きだ。

 今までは巻き込まれ体質に悩まされ、社会や自分を恨んだこともあった。

 だが今は、リディアに好かれようと自分なりに前を向いている。巻き込まれている最中だが、悪くないと思っている。

 俺は、リディアとずっと一緒にいたい。そうポジティブに夢を見られている。

「それで、それとリディアの職場体験にどんな関係が?」

「もしリディアちゃんが日本にいてくれるのなら少しは社会勉強しておいた方がいいと思うんだ」

「それは……一理ありますね、菜々緒先輩のくせに」

「殴るぞー?」

 リディアに惚れられ、一緒に日本に住むと決めた時、リディアも働くかもしれない。

 ……かもしれないじゃないな、真面目な彼女なら一緒に働く道を選ぶだろう。

 ならば、ここで少しでも職場体験させることは理にかなっている。

「あとはリディア次第ですね」

「私がどうかしましたか?」

「うおっ!」

 突然リディアが後ろから話しかけてきたので、心臓がぶっ飛ぶ思いだった。

 どうやらリディアはライトノベルを選び終えたようで、俺にレジ打ちをしろと言いにきたようだ。そんな中で切り出すのは少し申し訳なくなるな。

「なぁリディア、今から少し働いていかないか?」

「え? この書店でですか?」

「あぁ、職場体験ってやつだな」

「私みたいな異世界人がよろしいのですか?」

 そういえば、店長に確認をとっていなかったな。

「構わないよ」

「うおっ!?」

 またいつの間にか背後にいた店長がボソリと呟いた。

 なんで俺の周りの人たちは背後から話しかけるのだろう。心臓に悪いからやめてもらいたい。

「と、とにかく店長の許可も降りた。どうする、やるか?」

 リディアは少し悩んだ様子を見せた。

 しかし数秒後、晴れやかな顔で

「やります!」

 溌剌とそう答えた。

「決まりだね。じゃあリディアちゃんのレジ打ち、少年が教えなよ」

「え、でもこの品出しは」

「そんなんアタシに任せろって。自分の品出しは終わったら大丈夫」

 ……もしかして、こうなることがわかっていてさっき俺にレジを任せたのだろうか。

 気兼ねなく、リディアとの時間を増やしてくれるために。だとしたらこの先輩、本当に素晴らしい人格者だ。

「あーでもレジで一線越えないでね、匂いでわかるからやめろよ若者どもー」

 前言撤回。絶対に偶然だ。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

最強賢者の最強メイド~主人もメイドもこの世界に敵がいないようです~

津ヶ谷
ファンタジー
 綾瀬樹、都内の私立高校に通う高校二年生だった。 ある日、樹は交通事故で命を落としてしまう。  目覚めた樹の前に現れたのは神を名乗る人物だった。 その神により、チートな力を与えられた樹は異世界へと転生することになる。  その世界での樹の功績は認められ、ほんの数ヶ月で最強賢者として名前が広がりつつあった。  そこで、褒美として、王都に拠点となる屋敷をもらい、執事とメイドを派遣してもらうことになるのだが、このメイドも実は元世界最強だったのだ。  これは、世界最強賢者の樹と世界最強メイドのアリアの異世界英雄譚。

地味スキル「ためて・放つ」が最強すぎた!~出来損ないはいらん!と追い出したくせに英雄に駆け上がってから戻れと言われても手遅れです~

かくろう
ファンタジー
【ためて・放つ】という地味スキルを一生に一度の儀式で授かってしまった主人公セージ。  そのせいで家から追放され、挙げ句に異母弟から殺されかけてしまう。  しかしあらゆるものを【ためる】でパワフルにできるこのスキルは、最高ランクの冒険者すらかすんでしまうほどのぶっ壊れ能力だった!  命からがら魔物の強襲から脱したセージは、この力を駆使して成り上がっていく事を決意する。  そして命の危機に瀕していた少女リンカニアと出会い、絆を深めていくうちに自分のスキルを共有できる事に気が付いた。 ――これは、世界で類を見ない最強に成り上がっていく主人公と、彼の元へ集まってくる仲間達との物語である。

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

処理中です...