18 / 30
18話 リディアとデート
しおりを挟む
まず入ったのは服屋だった。俺1人では絶対に入らないような服屋。
店の前にワゴンがあり、セールになった服がいくつも放り込まれていた。といっても秋口に半袖が売られているので、おそらく売れなかった夏服を処分するためのコーナーなのだろう。
それでも、リディアは興味ありげに覗いていた。
「見てください正輝さん」
「ん、どした?」
ワゴンから気に入った服を取り出したらしいリディアは、子どものように目を輝かせていた。
「この花柄のシャツ、可愛くないですか?」
「おー、可愛いとは思うけど」
「けど、なんですか?」
その先を言うのは憚られた。ただリディアの方は聞くまで逃しませんよという態度だったので、恐る恐る口を開く。
「植物、苦手なんじゃないの?」
「私が苦手なのは本物の植物だけです。これは所詮刺繍ですから」
「な、なるほど」
「本物の植物が怖いのは変わらないですからね、もし植物で悪戯なんかしたら本当に嫌いになりますからね!」
「そんなことしないよ。俺をなんだと思っているんだ」
「本当は、克服したいんですけどね」
リディアは俯いた。
幼い頃のトラウマはそう簡単に払拭できるものではないだろう。俺だって、子どもの頃に食べたピーマンが苦すぎて今も嫌いだ。
俺の例えはあまりにスケールが小さいが、ともかくトラウマは克服したいけど難しいのだ。
「まぁ無理するな。誰だって苦手はある」
「そう、ですかね」
「苦手なところを補うのが人間の美しさだと思う。俺とリディアはラブラブカップルだから、補っていこうぜ」
「前半は同意ですが、後半に関しては議論の余地があります」
ちぇ、いい話の流れに流されて同意を得ようとしたのに。
そんなことをしても意味がないのはわかっている。しっかりとリディアの口から、本心で俺のことを好きと告げてもらわねばならないのだ。
服屋を出て、さらに人混みがすごい大通りに出る。ここは人気なお店が立ち並んでおり、土日になれば人で溢れかえる道だった。
「す、すごい人です。押されるようで……」
「リディア、俺に寄れ」
「えっ?」
「リディアが他の人に触れるのはその、やきもち妬いちゃうから」
「……嫉妬深い男性は嫌われますよ」
「リディアに嫌われなければそれでいいさ」
「も、もう。バカですね」
そう言いつつも、リディアは俺に寄ってきた。
ふにゅ。
肘に、何か柔らかいものが当たっている。
リディアは俺の腕に彼女の腕を絡ませた。必然的に密着状態になる。だから当たったのか。
「……心音が大きいです。どうかしましたか?」
「天国だ」
「そ、それは良かったです」
肘の感触も天国だし、リディアの頭が顔の近くにあるので、彼女の匂いが強く鼻をつついた。
バニラのような香りだ。心優しいリディアにぴったりだと思う。
「なにかいかがわしいことを考えてはいませんか?」
「いえまったく」
「本当ですか?」
「本当だ」
「なぜ目を逸らすのですか!」
やはり俺も考えが顔に出やすいらしい。リディアの目が見られなくて、覗き込まれたら視線を泳がせてしまった。
なんとかこの場は誤魔化して先に進んだ。
途中、通行人と肩がぶつかってリディアとの密着が強まった。肘に伝わる柔らかいものを、より強く押してしまう。
「んっ」
「えっ?」
「な、なんでもありません!」
こればっかりはマジで追及しない方がいいやつだ。俺の第六感がそう告げている。
数分歩いて、ようやく目的の店に到着した。
その店は瀟洒な外観を誇るインテリア・雑貨ショップだ。ここに店を構えていたのは知っていたが、実際に入ったことはない。
だがこの店ならリディアへのプレゼントが見つかる。根拠はないが、そんな気がするのだ。
「さぁこの店だ」
「あ、はい」
店に入るので、この密着状態ともしばしのお別れだ。寂しい。もっとくっついていたい。
ふと、腕を気にした様子でさすっていたリディアが目についた。
「リディア、どうかしたか?」
「えっ!? な、なんでもないです」
「そ、そうか。それならいいんだけど」
俺の力が強すぎて痛めたとかだったら嫌だからな。リディアは腕も繊細で、すぐ折れてしまいそうなほどに細かったから心配だ。
俺たちは少しぎこちない距離でインテリア・雑貨ショップに入店した。初めて入る店に、俺も少し緊張気味だ。
まず、店内の匂いに驚かされた。
木材の匂いだろうか。どことなく上品な甘い匂いが鼻をつつく。もうこれだけでいい店だと理解できた。
何気なく置かれている雑貨も、どこか芸術性を感じるものだった。そういうものに無頓着かつ疎い俺でも良さが理解できるのだから、レベルが高いのだろう。
「リディア、欲しいものがあったら言ってくれよ」
「は、はい。でもお金は……」
「そもそもが今日のリディアの給料だ。いっさい気にすることはない」
「わ、わかりました!」
ようやくリディアは自分の欲しいものと向き合い始めた。
店の前にワゴンがあり、セールになった服がいくつも放り込まれていた。といっても秋口に半袖が売られているので、おそらく売れなかった夏服を処分するためのコーナーなのだろう。
それでも、リディアは興味ありげに覗いていた。
「見てください正輝さん」
「ん、どした?」
ワゴンから気に入った服を取り出したらしいリディアは、子どものように目を輝かせていた。
「この花柄のシャツ、可愛くないですか?」
「おー、可愛いとは思うけど」
「けど、なんですか?」
その先を言うのは憚られた。ただリディアの方は聞くまで逃しませんよという態度だったので、恐る恐る口を開く。
「植物、苦手なんじゃないの?」
「私が苦手なのは本物の植物だけです。これは所詮刺繍ですから」
「な、なるほど」
「本物の植物が怖いのは変わらないですからね、もし植物で悪戯なんかしたら本当に嫌いになりますからね!」
「そんなことしないよ。俺をなんだと思っているんだ」
「本当は、克服したいんですけどね」
リディアは俯いた。
幼い頃のトラウマはそう簡単に払拭できるものではないだろう。俺だって、子どもの頃に食べたピーマンが苦すぎて今も嫌いだ。
俺の例えはあまりにスケールが小さいが、ともかくトラウマは克服したいけど難しいのだ。
「まぁ無理するな。誰だって苦手はある」
「そう、ですかね」
「苦手なところを補うのが人間の美しさだと思う。俺とリディアはラブラブカップルだから、補っていこうぜ」
「前半は同意ですが、後半に関しては議論の余地があります」
ちぇ、いい話の流れに流されて同意を得ようとしたのに。
そんなことをしても意味がないのはわかっている。しっかりとリディアの口から、本心で俺のことを好きと告げてもらわねばならないのだ。
服屋を出て、さらに人混みがすごい大通りに出る。ここは人気なお店が立ち並んでおり、土日になれば人で溢れかえる道だった。
「す、すごい人です。押されるようで……」
「リディア、俺に寄れ」
「えっ?」
「リディアが他の人に触れるのはその、やきもち妬いちゃうから」
「……嫉妬深い男性は嫌われますよ」
「リディアに嫌われなければそれでいいさ」
「も、もう。バカですね」
そう言いつつも、リディアは俺に寄ってきた。
ふにゅ。
肘に、何か柔らかいものが当たっている。
リディアは俺の腕に彼女の腕を絡ませた。必然的に密着状態になる。だから当たったのか。
「……心音が大きいです。どうかしましたか?」
「天国だ」
「そ、それは良かったです」
肘の感触も天国だし、リディアの頭が顔の近くにあるので、彼女の匂いが強く鼻をつついた。
バニラのような香りだ。心優しいリディアにぴったりだと思う。
「なにかいかがわしいことを考えてはいませんか?」
「いえまったく」
「本当ですか?」
「本当だ」
「なぜ目を逸らすのですか!」
やはり俺も考えが顔に出やすいらしい。リディアの目が見られなくて、覗き込まれたら視線を泳がせてしまった。
なんとかこの場は誤魔化して先に進んだ。
途中、通行人と肩がぶつかってリディアとの密着が強まった。肘に伝わる柔らかいものを、より強く押してしまう。
「んっ」
「えっ?」
「な、なんでもありません!」
こればっかりはマジで追及しない方がいいやつだ。俺の第六感がそう告げている。
数分歩いて、ようやく目的の店に到着した。
その店は瀟洒な外観を誇るインテリア・雑貨ショップだ。ここに店を構えていたのは知っていたが、実際に入ったことはない。
だがこの店ならリディアへのプレゼントが見つかる。根拠はないが、そんな気がするのだ。
「さぁこの店だ」
「あ、はい」
店に入るので、この密着状態ともしばしのお別れだ。寂しい。もっとくっついていたい。
ふと、腕を気にした様子でさすっていたリディアが目についた。
「リディア、どうかしたか?」
「えっ!? な、なんでもないです」
「そ、そうか。それならいいんだけど」
俺の力が強すぎて痛めたとかだったら嫌だからな。リディアは腕も繊細で、すぐ折れてしまいそうなほどに細かったから心配だ。
俺たちは少しぎこちない距離でインテリア・雑貨ショップに入店した。初めて入る店に、俺も少し緊張気味だ。
まず、店内の匂いに驚かされた。
木材の匂いだろうか。どことなく上品な甘い匂いが鼻をつつく。もうこれだけでいい店だと理解できた。
何気なく置かれている雑貨も、どこか芸術性を感じるものだった。そういうものに無頓着かつ疎い俺でも良さが理解できるのだから、レベルが高いのだろう。
「リディア、欲しいものがあったら言ってくれよ」
「は、はい。でもお金は……」
「そもそもが今日のリディアの給料だ。いっさい気にすることはない」
「わ、わかりました!」
ようやくリディアは自分の欲しいものと向き合い始めた。
11
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜
KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞
ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。
諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。
そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
最強賢者の最強メイド~主人もメイドもこの世界に敵がいないようです~
津ヶ谷
ファンタジー
綾瀬樹、都内の私立高校に通う高校二年生だった。
ある日、樹は交通事故で命を落としてしまう。
目覚めた樹の前に現れたのは神を名乗る人物だった。
その神により、チートな力を与えられた樹は異世界へと転生することになる。
その世界での樹の功績は認められ、ほんの数ヶ月で最強賢者として名前が広がりつつあった。
そこで、褒美として、王都に拠点となる屋敷をもらい、執事とメイドを派遣してもらうことになるのだが、このメイドも実は元世界最強だったのだ。
これは、世界最強賢者の樹と世界最強メイドのアリアの異世界英雄譚。
地味スキル「ためて・放つ」が最強すぎた!~出来損ないはいらん!と追い出したくせに英雄に駆け上がってから戻れと言われても手遅れです~
かくろう
ファンタジー
【ためて・放つ】という地味スキルを一生に一度の儀式で授かってしまった主人公セージ。
そのせいで家から追放され、挙げ句に異母弟から殺されかけてしまう。
しかしあらゆるものを【ためる】でパワフルにできるこのスキルは、最高ランクの冒険者すらかすんでしまうほどのぶっ壊れ能力だった!
命からがら魔物の強襲から脱したセージは、この力を駆使して成り上がっていく事を決意する。
そして命の危機に瀕していた少女リンカニアと出会い、絆を深めていくうちに自分のスキルを共有できる事に気が付いた。
――これは、世界で類を見ない最強に成り上がっていく主人公と、彼の元へ集まってくる仲間達との物語である。
痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~
ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。
食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。
最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。
それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。
※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。
カクヨムで先行投稿中!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる