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22話 お風呂パニック
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風呂はいい。労働の疲れ、買い物の疲れ、人混みの疲れ。そのすべてを癒してくれる。
どんなに面倒でも、俺は風呂を溜めて入るようにしている。日本人のDNAなのか清潔感への憧れなのかはわからないが、とにかく毎日だ。
「あー、五臓六腑に染み渡る」
おっさんだ。菜々緒先輩のことをバカにできないレベルの発言だ。
しかし風呂とは完全にプライベートな空間。公的な自分と、私的な自分を分ける結界が張られている。
なぜなら裸だから。裸は自分か、最愛の人の目にしか映らないものだ。決して、公的な場で出すものではない。一部の変態を除いて。
だからこそ裸でいられる風呂は自分を曝け出せる。弱音も、弱点も。
「リディア、俺のこと好きになってくれたのかな」
両手でお湯を掬う。落とす。チャポン、と音が響く。
思い上がりでなければ、初めて出会ったあの日よりは好感度が上がっていると思う。だがしかし、恋愛感情を抱いてもらっているかといえば話は別だ。
リディアの前ではできるだけ気丈に振る舞うようにしている。ネガティブな男など、誰も好きにならないだろう。
俺はうんうんと唸りながら悪感情を整理していた。
パァン!
唐突だった。浴室のドアが、思いっきり開いたのである。
本能だろうか、俺の手は無意識のうちに下半身の大事なところを隠していた。
「な、なな、何やっているんだよリディア!」
浴室ドアを開けたのはもちろんリディアだった。
タチの悪いことに、最初からリディアは顔を隠して入って来た。なんのつもりか分からないし、そもそも恥ずかしいならやるなという話だ。
「って、えっ!?」
隠された顔に気を取られて気が付かなかったが、リディアはバスタオル一枚を身に纏うだけの、半裸だった。
胸は薄いが、流石にバスタオル一枚だとその膨らみがありありと伝わってしまう。健康的な太ももは隠しきれておらず、そのほとんどを露出させていた。
「見過ぎじゃないですか!? 破廉恥です!」
「いやいや、リディアの格好の方が破廉恥だぞ」
半裸で風呂に突撃してきて、見るなというのはあまりに理不尽だ。見ろ、というメッセージ以外のものを受け取ることができない。
というか、そもそも
「なんで入って来た!」
「お、お背中を流します」
「へっ?」
最上の、情けない声が出たと思う。
それは俺がリディアに背中を流されることを想像したからだ。その扇情的な状況は、とても理性を抑えられるものではない。
「どこでそんな知識を持ったんだよ!」
「ラノベです」
「ラノベかぁ」
そういえばそんな展開もあったなと思う。だが、実際に行動に移す者が現れようとは作者も唖然としていることだろう。
「と、とにかく早く戻りなさい」
「……ご迷惑ですか?」
「えっ?」
「私が正輝さんの役に立ちたいと言ったら、ご迷惑でしょうか」
「そ、それは……」
そんなわけがない。リディアが手を貸してくれるのなら喜んでその手を取る。
だがしかし、その手はこんな状況で取るものではない。少なくとも、全裸と半裸のいまではない。
「リディアよく聞いてくれ。もしリディアが俺のことが好きで、この行動に出てくれたとしたのなら俺は嬉しいよ。でも望んではいない。役に立つとか立たないとか、そんなことで繋がりたくないんだ。ただでさえ、俺は聖杯を人質にリディアを繋ぎ止めている。きっかけは聖杯だけど俺は、本気で、リディアを愛しているから!」
こんな長い言葉を噛まずにいえた自分に驚いた。
それはともかく、俺はリディアに想いをすべてぶつけた。聖杯を人質にして得た関係だけど、それすら超越したいと思うほどに、俺はリディアを愛してしまった。
だから、こんな形でリディアに無理をさせたくはない。
「……ご、ごめんなさい。私、ちょっと感情が落ち着かなくて空回りしてしまいました」
「いいよ、またその感情が落ち着いたらゆっくり話そう。とにかくいまは部屋に戻ってくれ。な?」
「は、はい」
リディアは俺のいう通りに、部屋に戻ってくれた。
「はぁぁぁ」
とんでもなく大きなため息が出た。
あんな状況でよくリディアを追い返したものだ。彼女と出会う前の俺なら、すけべな展開に心躍らせていたことだろう。
俺のこの変化は、リディアのことを本気で好きになったからこそ起こったもの。
リディアの変化は、いったいなぜ起こったのだろうか。
その答えが聞ける日が楽しみでもあり、怖くもある。
どんなに面倒でも、俺は風呂を溜めて入るようにしている。日本人のDNAなのか清潔感への憧れなのかはわからないが、とにかく毎日だ。
「あー、五臓六腑に染み渡る」
おっさんだ。菜々緒先輩のことをバカにできないレベルの発言だ。
しかし風呂とは完全にプライベートな空間。公的な自分と、私的な自分を分ける結界が張られている。
なぜなら裸だから。裸は自分か、最愛の人の目にしか映らないものだ。決して、公的な場で出すものではない。一部の変態を除いて。
だからこそ裸でいられる風呂は自分を曝け出せる。弱音も、弱点も。
「リディア、俺のこと好きになってくれたのかな」
両手でお湯を掬う。落とす。チャポン、と音が響く。
思い上がりでなければ、初めて出会ったあの日よりは好感度が上がっていると思う。だがしかし、恋愛感情を抱いてもらっているかといえば話は別だ。
リディアの前ではできるだけ気丈に振る舞うようにしている。ネガティブな男など、誰も好きにならないだろう。
俺はうんうんと唸りながら悪感情を整理していた。
パァン!
唐突だった。浴室のドアが、思いっきり開いたのである。
本能だろうか、俺の手は無意識のうちに下半身の大事なところを隠していた。
「な、なな、何やっているんだよリディア!」
浴室ドアを開けたのはもちろんリディアだった。
タチの悪いことに、最初からリディアは顔を隠して入って来た。なんのつもりか分からないし、そもそも恥ずかしいならやるなという話だ。
「って、えっ!?」
隠された顔に気を取られて気が付かなかったが、リディアはバスタオル一枚を身に纏うだけの、半裸だった。
胸は薄いが、流石にバスタオル一枚だとその膨らみがありありと伝わってしまう。健康的な太ももは隠しきれておらず、そのほとんどを露出させていた。
「見過ぎじゃないですか!? 破廉恥です!」
「いやいや、リディアの格好の方が破廉恥だぞ」
半裸で風呂に突撃してきて、見るなというのはあまりに理不尽だ。見ろ、というメッセージ以外のものを受け取ることができない。
というか、そもそも
「なんで入って来た!」
「お、お背中を流します」
「へっ?」
最上の、情けない声が出たと思う。
それは俺がリディアに背中を流されることを想像したからだ。その扇情的な状況は、とても理性を抑えられるものではない。
「どこでそんな知識を持ったんだよ!」
「ラノベです」
「ラノベかぁ」
そういえばそんな展開もあったなと思う。だが、実際に行動に移す者が現れようとは作者も唖然としていることだろう。
「と、とにかく早く戻りなさい」
「……ご迷惑ですか?」
「えっ?」
「私が正輝さんの役に立ちたいと言ったら、ご迷惑でしょうか」
「そ、それは……」
そんなわけがない。リディアが手を貸してくれるのなら喜んでその手を取る。
だがしかし、その手はこんな状況で取るものではない。少なくとも、全裸と半裸のいまではない。
「リディアよく聞いてくれ。もしリディアが俺のことが好きで、この行動に出てくれたとしたのなら俺は嬉しいよ。でも望んではいない。役に立つとか立たないとか、そんなことで繋がりたくないんだ。ただでさえ、俺は聖杯を人質にリディアを繋ぎ止めている。きっかけは聖杯だけど俺は、本気で、リディアを愛しているから!」
こんな長い言葉を噛まずにいえた自分に驚いた。
それはともかく、俺はリディアに想いをすべてぶつけた。聖杯を人質にして得た関係だけど、それすら超越したいと思うほどに、俺はリディアを愛してしまった。
だから、こんな形でリディアに無理をさせたくはない。
「……ご、ごめんなさい。私、ちょっと感情が落ち着かなくて空回りしてしまいました」
「いいよ、またその感情が落ち着いたらゆっくり話そう。とにかくいまは部屋に戻ってくれ。な?」
「は、はい」
リディアは俺のいう通りに、部屋に戻ってくれた。
「はぁぁぁ」
とんでもなく大きなため息が出た。
あんな状況でよくリディアを追い返したものだ。彼女と出会う前の俺なら、すけべな展開に心躍らせていたことだろう。
俺のこの変化は、リディアのことを本気で好きになったからこそ起こったもの。
リディアの変化は、いったいなぜ起こったのだろうか。
その答えが聞ける日が楽しみでもあり、怖くもある。
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