悪役令嬢はもう疲れた

てる

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知らない顔

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私の顔は今頃真っ赤だろう。ガルフの爆弾発言にパクパクと口を開け閉めしていると。暫くきょとんとしていたガルフも私の同様の理由に気がついたのかカァッと顔を赤くして目を見開く。

「っばか…その…変な意味じゃないからな!森に異変があるのにお前を1人にするのは危険だからで!護衛としての意味でだな!」

「わわわ分かってるよ‼︎ちょっとビックリしただけで!」

ブンブンと手と首を横に振ると、ガルフはハァと大きく息を吐いてガシガシと頭を掻くと「とりあえず早く小屋に向かうぞ」と言って歩き始めた。



数分間、2人とも沈黙のまま歩いていると見覚えのある小屋が現れた。

「あ、ここだよ」

こじんまりとした可愛らしい雰囲気の小屋は私の張った結界の効果かぼんやりと光を纏っている。









中に入るとガルフは何も言わずに最低限の家具が置かれた部屋を見まわすとキッチンの方をジィッと眺める。

「…お前…料理とか作れんのか?」

「え?うーん…本は一通り読んだし…シェフが作ってるのもたまに見てたし…なんとか…?多分…大丈夫」

自信のなさと比例して声がどんどんと小さくなる私を見てガルフは何やら考える素振りを見せた後に食材はあるのかと聞いてきた。

「食材ならとりあえず保存の効くものだけあるよ」

家から持ってきた大きな鞄から邸のキッチンから拝借し、布に包んでいたパンや芋、林檎、チーズなどを取り出した。

「こんだけあれば明日の朝は十分か。とりあえずもう遅いから今日は早く寝ろ。」

ガルフは部屋の隅にあるベッドをに目線を向けて彼方で寝るように指示する。

「ガルフはどこで寝るの?」

「俺はどこでも寝られるから大丈夫だよ。俺のことはいいから早く休め。」

そういうとガルフは床にゴロンと仰向けで寝転び目を閉じた

「ダメだよ!体痛くなっちゃうでしょ!ベッド行って!」

「……ベッドって……じゃあ、俺とお前2人で寝んのか?」

「っ…ぅ…でも…」

上体を起こしたガルフは私の腕を引っ張り、引き寄せる。私とガルフの顔の間は3cm程しかなく思わず体が強張る。緋色の目は先程とは違い妖しく光り、片方の口の端を引き上げて笑う姿は、いつものガルフと違い色気のようなものを漂わせていた。

「お前は…俺と寝たいんだ…ふーん…」

「ちがっ」

ガルフの角張ったスラッとした手が私の頬を優しく撫でる。まるで割れ物を扱うみたいに優しく、優しく。あまりにも優しい手つきに、自然と顔に熱が集まるのを感じる。多分今の私の顔は林檎みたいに真っ赤だろう。ガルフは私の赤くなった頬をまたひと撫でするとフッと笑い、グイッと顔がを近づけてきた。反射的にギュッと目を閉じると、フゥッと耳に息を吹きかけられ「護衛って言っただろ…えっち」という囁き声が耳に響いた。

「変なこと考えてないで早く寝ろ。バーカ。」

目を開けるといつも通りのガルフが生意気な表情でニヤニヤしていて、私は何も言えずいまだに赤みがひかない頬を両手で押さえてベットに潜り込んだ。

布団の中で丸くなって目を閉じても、頬の感触や耳の感触が消えなくて。心拍数は早くなるばかりだ。

(なんなの…さっきの…)

私を見つめる熱を帯びた緋色の目も、頬を撫でる大きな手も、甘く低く囁く声も。全部私が知っているガルフのはずなのに、別人みたいで…。

(…あんなガルフ…知らない…)









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