結婚って? 男性に取り、災難の始めかも?

sin,nisi

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物語4

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お店には様々な客が訪れる。
たまに忘れ物が有ったり、適当な言いがかりを付けてくる人、忙しいスタッフの隙を見て食い逃げする奴などがある。
その忘れ物の管理や、クレームや食い逃げの処理も私の仕事だ。
忘れ物はいろいろあるが、携帯など小さな物は専用のビニール袋に入れ、見付けた日付と時間と席番号をメモして、保管庫に入れる。
傘など大きな物は、ビニールひもで縛り、先ほどの情報を書いたタグを付けてしまう。
朝方雨で来店者は玄関横の傘立てに傘を入れて食事をするが、帰りに雨がやむと傘を忘れる。そして後で電話して来るので、それにキチンと対応できる様にしている。
有る時昼の客も少なくなりホッとした時間、電話が有った。
「薄グレーで『大西商事』と書かれた紙袋を忘れたのです。とても大事な物が入っているのですが、お店に有りますか?」と問い合わせがあった。座っていた場所を聞き、保管庫を調べたらそれらしき物があったので、
「有りますよ。今日お昼にお忘れだったんですね。取りに来られますか?」と言うとすぐ行くと言われた。
その人は大西商事の営業部後藤司と言う名刺を出し、丁寧に挨拶し
「有り難うございます、とても大事なデータCDだったんです。有り難う」と言って帰って行った。
こういう丁寧な客なら良いのだが、その数は少ない。 

多いのはちょうど昼の忙しい時に、「財布が無い」と慌てて問い合わせがある。その客が言うには
「多額の金とクレジットカードなどが入った財布は無いか?」と問い合わせがあった。すぐ指定の座席を見たがそれらしき物はないので
「有りませんが」と答えると、客は逆ギレしてきて
「お前のところで盗んだドロボーが居る、これから警察に訴える」と大声で叫んでいた。私は仕方ないので、何も言えないでいた。
だって無い物は無い。でも何でウチの店が、ドロボー扱いされなければならないのかよく解らない?
大体、帰る時にお金を払っているはずだ。だからその時点では、財布は有ったはず。
その財布は客が自分のバックの中にしまい、探すバックを間違えただけだと思った。
それをお金が幾ら入っていたのか解らないが、あんなに大騒ぎしなくても良いと思う。電話で話しを聞いている間でも、客からの注文はひっきりなしに入り、店は忙しかった。理不尽な客も大勢居る物だ。
結局その後は何の連絡なかったから、きっと自宅で財布は見付かったのだろうと思うが、あれだけ騒いで置いたのだから、電話で一言「見付かった」と連絡が有っても良いと思う?
忘れ物の問い合わせでも、客毎に様々な問い合わせがある。それに対していい加減な対応は出来無いので本当に疲れる。
また滅多に無いが「ラーメンに髪の毛が入っていた」などのクレームがある。店のスタッフは、男でも女でもちゃんと髪が落ちない様に、帽子をかぶったり女性ではハンカチーフを頭にかぶり髪の毛が料理に中に落ちない様に気を配って居る。でもそういったクレームが有る時は、いつも決まってあたしが「すみませんでした。お代は結構ですから」と言って帰って貰う。問題は決まった人がクレームを言う、いつも決まった人を狙って髪の毛を入れている訳でも無いのだが。悪く考えると体の良い食い逃げかも?

ポチ 
家のポチは父が元気な頃、捨て犬を保護している動物愛護団体から、貰ってきた柴犬雑種のオス犬だ。
この団体は猫でも犬でも、避妊手術をしてから希望者に避妊手術代(二万円))だけの価格で、里親に出してくれる。
貰ってきた方も、次々に生まれる子供が出来無いため、そのペットを安心して一生可愛がれる。
貰ってきた時は生まれてまもなく、小さくてとても可愛くて縫いぐるみたいで、私は一変に気に入った。それから私の、お気に入りになった。
ポチにはいろいろ助けて貰った。
前の会社で不倫がバレ、辛い思いをしていたときも、家に帰ると私の顔を見て、涙に濡れた頬を優しく舐めて励ましてくれた。
両親はそんな私を残して、数年前に二人とも病気で他界してしまった。とても悲しかったのだがポチのおかげで、独りぽっちにならなくてすんだ。
父と母が亡くなったとき、私が一人で泣いていると、側に来てまるで慰めてくれる様に、身体を寄せて手を舐めてくれた。
ポチのお陰でどれだけ助けられただろうか?ポチは私に取り、とても大事な心の拠り所になっていた。ご飯を食べるときも一緒だし、散歩も毎朝一緒だ。
でもポチは雄犬だ。小さな頃は元気が良く、いたずらを良くした。私が叱ると身体を小さくして、反省しているようだった。その姿に思わず可哀想になり、却って謝りながら抱きしめてやった。すると喜んで、尾っぽをちぎれる程振っていた。
でも犬はトイレの始末が悪い。ポチはだらしなく庭のところにしてしまう。後始末は私がやるのだが臭くて苦手。でもいくら教育しても、だらしさは直らないのだった。最近は根負けして半分諦めた。そのうち自分で気がつくことを祈っている。
人間ならそんな問題は起こさないと思うが、犬では仕方ない。ましてオス犬なので、あちこちに印を付けてまわる。
「ここはおれの縄張りだ」と主張するらしいが、家で飼っているのだから、縄張りもへったくりも無いと思うのだが、オス犬の性格らしい。
ポチと暮らし始めてもう十年になるだろうか?最初は両親が居て、みんなで食事をするのが楽しかった。
ポチは小さな頃は悪戯で、私のブラジャーを良くオモチャにしていた。
安い物なら良いのだが、勝負ブラなどメーカ品は高い。洗濯して取り込み、うっかりして座敷に置いたままにしておくと、良くじゃれて高いブラがメチャクチャに、台無しにされた。
いくら我慢強い私も、つい大きな声になった。
「こら!ダメでしょ。そのブラ一流メーカ品で高かったんだからね。そんなに噛んだらちぎれるでしょ。もー!五千円以上したんだからね、お前弁償してくれるのか?」
そうしたら、ポチは知らん顔して
「そんなの知らないや、でもきれいな模様とさくらの良い臭いが俺は大好きだ。なぜかブラの臭いを嗅いでいると、お袋の様な臭いでつい引きつられる。俺はそんなさくらのブラが大好きだ。お金が高いって怒るのなら、さっさとタンスにしまえよ。いつまでも床に置いて置くから俺だって男だぞ、ついさくらの臭いに引きつけられるんだ」何て顔をしている。
「今度やったら、警察に訴えるぞ」と言っても、馬耳東風だった。
いくら雄でも犬では相手が違う。逞(たくま)しくて優しい男性なら、私も怒ることなど無かったと反省し、それからはキチンとタンスにしまうようにした。「後悔先に立たず」とはこの事だろうか?
でも一度なんか、洗濯して干してあった私の高給な下着を、盗もうとした奴が居た。
まだ明るい夕方、ポチがいきなり大きく吠えだし、犯人のズボンに食いついたので、窓越しに庭を見たら、庭先に干してあった私の下着に手を伸ばした男が居た。すぐ大きな声で怒鳴ったら逃げて行ったのだが、顔はよく解らなかった。
すぐ警察に電話したら、自転車に乗った年寄りの警官が来て
「最近この辺りで下着ドロボーが多いのです。気をつけて下さい」と言って帰って行ったのだが。一一〇番してから、十分以上たって、あんな年寄りのおまわりさんが来ても、犯人は捕まらないと思った。
でもあのお巡りさんが言っていたように、下着泥棒がはやっているなんて、なんだか気持ちが悪い。ただその時ポチの口には、犯人のズボンの切れ端がくわえられていた。ポチはが頭の良い柴犬なので、きっと犯人の臭いも覚えているだろう。
今度来たらきっと捕まえてやろうと思った。
でもおばさんパンツも盗まれるのかな?まあおばさんパンツなら、三枚千円くらいだから、そんなに慌てることもないが、勝負ブラなら高いので、盗まれたら泣きだ。私も天女のブラをいくつか持っている。
それからは、下着は部屋の中に干すようにしている。
でも恋愛って面白い物だ。下着の好みまで変わってしまう。彼氏と裸の関係する機会も減ったので、最近は経済的に安い下着を着け始めた。
でももしあの大田さんとそんな関係になったらと思うと、やはり安物の下着では逢えない。高級品と安物を上手に使い分け、その場に備えることにした。
でも安物の下着なら、庭先に干しておいてもよほど変わったドロボーだって、狙わないだろうね?
 そのポチも最近元気がない、なんだかとても心配だった。今度散歩のときにまた大田さんに相談してみようと思った。
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