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物語5
しおりを挟むウチのお店では、たまに食い逃げが起きる。
スタッフが忙しい時を見計らって、玄関から走って逃げる。
店でも逃げられないように入り口付近にレジを置いて、帰りそうな客が居るとすぐレジに立つようにはしているが、それでも忙しい時は、そうも言っていられない。だから犯人はそこを狙う。逃げられた時には大きな声で叫ぶ、すると店のすぐ横の交番で捕まるから、いい気味だが。
「おまわりさん食い逃げー」と怒鳴ると、犯人が逃げる先で、おまわりさんが道に立ちふさがる。まるでその交番は、店の番人にようだ。
何でもおまわりさんも、犯人に手錠を掛けると、成績が上がるらしい。おまわりさんも成績が上がりいいのだが、店はラーメン代を払って貰えずない。犯人は金が無いと言うのだ。犯人の中にはお金を払わないで、牢屋に入る事を希望する人もいると言うから呆れる。
世の中不景気だ、碌に仕事が見付からず、お腹をすかせて、食い逃げしてもその後のことを考えると牢屋に入った方が、定期的に食事は散れるし、健康も管理できる。
最近では牢屋は、老人ホーム化しているとの噂も耳にする。これも現在日本が抱える大きな社会問題だ。
ただウチの店で起こる食い逃げは、初犯の人が多い。相当困ってお腹をすかせついウチで食い逃げし、おまわりさんに捕まることを覚悟しているのかも知れない。
面白い物で普通常習犯は、辺りの様子が気になるのか?隣に交番がある店では食い逃げなどしない。
ウチで食い逃げする奴は、本当に困って出来心でしてしまう犯人だ。
よほどお腹を空かしているのだろう。どんな事情は有るかよく解らないが?
でも利益率の少ない店なので、食い逃げは困る。
それだけの原材料費を稼ぐのに、何杯ラーメンを売れば元が取れるか?相当苦労する。それを食い逃げされたのでは、たまった物ではない。食い逃げなど人が困ることは止めて貰いたい。
でも私がこう言っては、まずいかも知れないのだが、ウチの店で出す物は私は食べない。自分のお昼は、弁当を持って来る。それを客が居なくなってから、調理場で慌てて食べる。ラーメンより白いご飯の方が、遙かにおいしい。たまに客の顔を見ていて
「良くアルバイトの作った物を食べるな?」と我ながら感心してしまう。
アルバイトはあくまで職人ではないので、麺を茹でるのだって、キッチンタイマーで計り茹でる。春夏秋冬、多少ゆで加減が違っても指示された時間で茹でる。
スープも夜のバイトか社長が作るが、社長だって長年修行した人だか解らない。
結局客が黙って食べているのだから、文句は無い。
事件は私達には関係無いが、しかしその後が問題だった。社長が私に向かって
「此の責任は君にとって貰う」など言い出す。(あたしがドロボーの後始末かよ!)ついそう思う。あたしは調理場でみんなの指揮を執っている。調理場に居る物がレジは監視できない。
「社長、あたしは調理場に居て、客の行動なんて監視していられません。もし責任を問われるなら、ずーっとホール係にして下さい。そして配膳して居なければ、食い逃げなど監視出来ません。」
当たり前の話しだ。調理場に居てレジなんて見ていられない。一体の社長何を考えているのだろう。
「まー、確かにそうかも知れないけれど、でも君に調理場から出られたら、誰が麺を作るんだ?たった一杯のラーメンでも麺を茹でる係、スープを盛る係、具をのせる係などそろってないと、客にラーメン提供出来ない」
「だから今あたしは調理場にいて、全体の旗を振っています。でも調理場からは店の出入り口は見えません。それを食い逃げされたからって、あたしの責任と言われても困ります」
何で私が担当外までの責任を、取らなくては成らないのだろうか?
私は最近社長の考えにむかついている。何かと言えばすぐ「さくら、さくら」人を呼びつけ、用事を言いつけるならまだ良い。
今日の様にとんでもない、言い掛かりのような責任を追及されるのはすごく困る。
(勘弁してよ!、これも普段から奥様の言いつけで、社長の行動を監視している腹いせか?)よほど口から出かかったが、グッとこらえた。
実は、先日奥様から電話があり
「家の人は横井さんのことを、頼りにして居るんです。私もあなたがその店にいてくれて、とても助かります。これからもよろしくね」と言われたばかりだった。
でもそう思うなら(バイトでは無く、正社員にして欲しい)ついそう思ってしまう。
雇う側は社員の給与など、考えていないのが現実だ。
でもこの年になって、他でアルバイトしても同じだろう。此の店ではまだ奥様の信頼を勝ち得ているだけ、良い方だった。
思えば前の会社で不倫などしなければ、こんな事にはなって無いはずだった。今頃は子供を二人くらい作り、幸せな家庭を作っていただろうな?
でも今は出逢いも無い。この年で望んでも仕方ないか?
ふと、太田さんの顔が心に浮かんだ。なぜだ?
太田仁志
俺は三十七歳で身長は百八十二cm、顔などは芸能人の誰かに似ているとか、友達などから良く言われるが、本人はそんなことは感じたことはない。
至って平凡でノンビリした性格だ。でも仕事となると、粘り強く客の無体な要求にも耳を傾け、出来る範囲で丁寧に粘り強く説明する様にした。俺にはそれが俺流の、仕事スタイルなのだ。趣味はペットと遊ぶ位で、居たって平穏そのものだ。
会社は金町駅前に有るビルの中にあるノーブルシステムという会社で、業務システムを作っている。ウチのERPパッケージソフトは、小規模な会社だが、小回りに聞いたサポートが結構人気があり、前に居た企画室長のアイデアで売り上げを飛躍的に上げた。
大学は東京理科大葛飾キャンパスにある、基礎工学部 電子応用工学科でデータベース関係の知識を学んだ。電子工学でも様々な分野があるが、データベース技術は応用の範囲が広く、とても大切な技術だ。
このキャンパスはJR金町駅より徒歩で十分、途中にスーパーなどの商店会が有り、友達との飲み会にも便利だった。
通学は家から自転車で五分以内で大学に着く、だから休みの日でも、自宅で勉強するより、大学の研究室にこもった方が遣り易かった。良く研究室の長いすに横になり、研究書に囲まれて朝を迎えた。
データベースにデータを蓄積する研究は、簡単な物は預金管理などの、資産管理が解りやすいだろう。
誰でも銀行の通帳は持っている。十円預ければ、残高は十円増える、またそこから五円支出すると、残高は五円減る。このように日付欄・入金欄と出金欄、残高欄をパソコンで置き換えた物が、データベースと言われる物だ。
もちろん実用的な業務システムを作るには、もっと構造的に複雑になる。
今では無店舗銀行の、SBJネット銀行や楽々銀行・セブン利息銀行などの、ネット銀行が幾つも出来ているが、当然個人認証などのデータを管理するデータベスはある。そのデータベースが複合して、銀行として機能しているのだ。
売りは無店舗で営業できること、店舗の経費が掛からない分だけ高い利息に出来る。
その高利息で客を集めている。誰でも預金利息は、高い方が良いに決まっている。
警察では犯罪者の履歴や指紋をデータベース化して、犯罪現場から採集された指紋照合をするが、昔と違って、数万人分の指紋照合を短時間で行える。DNA鑑定もそうだ。
このほか気象庁の天気予報も、データベースのお陰で予報の的中率も上がった。
そんな便利な技術を勉強すれば、きっと世の中の役に立てるはず。そう思ってデータベースの勉強をした。
元々趣味で、ある程度のことは知っては居たが、本格的な勉強になると、いつも大学の研究室にこもりきりになる。同じ仲間達と知恵を出し合うが、肝心な疑問は自分だけの物で、絶対に人には教えない。
これだけ苦労して得た知識を、易々と人には教えられなかったのが現実だ。皆同じように、仲間同士それぞれ自分の課題は自分の物だった。
俺が最初に考案したのは、ある条件でデータを検索した時、データーがヒットすれば良いが、ヒットしない時の状態の問題の解決だ。
パソコンでは「データーが無いと。エラー」になり、システムが止まってしまう。それでは使う人は困る。
マイクロソフトのアクセスなどのシステムでは、エラー処理が用意されているので、それでヒットしない時にエラー処理をした。
「条件に合ったデータが有りません。条件を変えて検索し直して下さい」とメッセージを出し、使っている人に注意を呼びかけた。
ただ大学を卒業し、就職活動をしたのだが、大手企業にはめぼしい職は見付からなかった。
さんざん苦労し、何社も面接を受けたが、無駄だった。
友達も皆就職には苦労していたし、親に頼み込み大学院に行く奴もいたし、地元の小さな会社に就職した奴もいた。
でもまだ進路が決まっている奴らは良い方だ。職も無くバイトや派遣会社で短期間契約だけだ働く奴らは、契約終了と同時にまた就職浪人だ。そんな風ではたまらない。やはり決まった期間安心して働けないと、夢も希望もなくしてしまう。
結婚だって考えられない。子供を作ることなど、遠い夢にまた先の夢だった。
「どうしよう」と悩んでいるウチにひょんな事から、(株)ノーブルシステムが地元にあり、自分の学習してきた知識を生かせる仕事が有ると言う事で、入社を希望し面接試験を受けた。
不況の現在、他の会社も応募したが、あまり良い返事は貰えなかった。それだけ会社役員がSEと言う仕事を理解してない所為だ。
システムエンジニアは作業効率を上げる知恵がある。その為の勉強をしているのだ。
何も電子工学の学生は、ロボット作りばかり遣って居るわけではない。
ただノーブルはシステム作成の会社だから、上司共々PCの仕事には精通している。やはり人間環境が合わないと、出せる力も出せない。
ノーブルに入社が決まると営業部に配属されたが、営業は経験がなく慣れるまで一苦労した。
なんと言っても、大学で勉強したのは電子応用工学で、営業では無かった。
しかし客先でシステムの話しをする時、その知識が役に立った。
パソコンをどう利用したら業務の役に立つかを話し、客が興味を示したら、システムの詳しく話し始める。
ノーブルの業務システムはクラウド型で対ウィルス性やハッカー対策などの安全性を丁寧に詳しく話しをして説明する。
パソコンのウィルス対策ソフトなど必要ないのだ。
また業務システムの話も、税金関係の財務会計システムの話から、クラウドシステムの優位性について、顧客の興味を引きつつ話ををする。
時には会社の幹部まで、プレゼンテーション出来るチャンスも有った。
俺には森松と言う同期入社の、仲の良い友達兼ライバルが居た。
俺は葛飾区白鳥にある袋詰め機械のメーカーや、宝町にある高速度自動直線切断機のメーカーなど訪問し、クラウド・システムのメリットなどを説明して廻った.
袋詰めの会社は、社内SEが自社サーバの管理で苦労していた。
自社サーバの場合、そのサーバが壊れたら、会社全体の処理が止まる。
そのサーバー管理者も、製品の設計とサーバの管理の仕事で追われていた。第一にシステム自体の、基礎設計が出来てない。
だからサーバーはサーバーでも、単なるデータサーバとしてしか、役に立っていなかった。
システムサーバとデーターサーバでは機能が百倍も違う。そこを説明したが、責任者はあまりいい顔をしない、自分が馬鹿にされたと感じたのかも知れないが、古人曰く「餅は餅屋」だ。
ただ社長は興味を示した。でも、懸命に説明しても懐疑的な客はまだ納得しない。後日改めて訪問できるように約束し、パンフレットを置いて一時帰ってくる事にしたのだった。
俺のやり方は余り無理強いはせず、客の納得を得て買ってもらう、トラブルの少ない営業だった。
森松も同じ営業だが、客先は葛飾区新宿にある紙おむつの(株)ラストケアーと言う会社だ。
この会社は生産を地方の労賃の安い所に持って行き、生産コストを下げていたが、此の事で多数問題を抱えていたのだった。
まず品物と伝票の到着がバラバラで、事務処理するのに数量などが違ってくる。
当然客に対する請求額も違ってしまう。
客に請求する金額が少ない場合、客は何とも言わないが、例え十円でも請求額が多い場合、電話の向こうで客の怒鳴り声が聞こえる。
また商品を発送してから、送り先が違ったりする。上手く返却されればまだしも、間違って送られてきた商品は当然支払いは無い。品物を貰ったと客は喜ぶが、ラストケアーの方は困る。
これには、ラストケアーの社長も、頭を抱えていた。
森松は此処にメスを入れ、ノーブルのクラウドシステムを売り込んだ。
売価の安い紙おむつが商品の会社にとり、導入コストが馬鹿に出来ない金額のシステムでは、慎重に検討しなければならないが、そのシステムのおかげで、商売がうまくいくのであれば、導入の価値がある。
ただ両社とも社長自身が先進的な考えの持ち主で、会社の運営について新しい設備投資は積極的だった。
二十一世紀の世の中で、自社の情報をどう集め、どうコントロールするか、どう判断するのかで、会社の利益に差が出て来る。
それを早く掴み入れ、会社の役に立てるか?それがその企業の経営者の手腕であるし、営業マンはそれを助ける材料を提供するのだ。
その辺をうまく理解し行動しないと、営業マンとして失格だ。営業は常に客の要求が何処にあるか、いつも心を砕いているのだった。
俺の勤務する(株)ノーブルシステムは、インターネットを利用したクラウド・コンピューティングで、日本の中でも中小企業相手では、トップシェアーを誇る会社だ。
JR金町駅から歩いて二ー三分、高層ビルの二二階から二五階にオフィースが有る。
受付は二五階で、ビル東側にあるエレベーターを降りるとすぐに、正面玄関脇に来客用電話機が置かれていた。来客はこの電話器で所定の部署を呼び出す。
二五階にはエレベータホールの正面に通路が有り、北側に給湯室やトイレと洗面所・休息室でたばこが吸えるように、機械が設置されて有る。
通路を挟んで南側には総務部と営業部が有り、二四階に社長室と大中小の会議室が三つ、二三階は開発部でシステム開発の人間が働いて居る。二二階はサーバー室とサーバー管理部が置かれていた。
ただサーバー管理部と言っても、部員は三人居るだけだ。サーバー自身触ることなど殆ど無い。みんな開発部の連中でも、サーバ管理は出来たがいざと言う時、即対応する為にサーバー管理部の人間が必要だった。
またサーバのデータはアメリカのロス郊外にバックアップサーバーが有り、東京全体が駄目になってもロスのサーバーが即時動作するようにしてあり、二四時間三六五日システムは動作する。だから顧客の契約期間中は安心して、まるで自社サーバのように、ノーブルのシステムを使えたのだ。
俺はいつも二五階の営業部の窓から下の風景を見て、顧客のことを考えていた。お客様のシステムがちゃんと上手く動作するか、お客様の仕事が効率よく処理出来るためには?
新しいお客様には、どうやってシステムの魅力をアピールするか?などいつもお客さまのことを考えていた。
目の下には、京成金町駅が見えるし大勢の人々が行き交うが、そんな景色など目に入らなかった。
会社の規模は社員数五十人と小規模だが、システムの企画開発力は、社長以下開発部のユニークなアイデアで他社を圧倒していた。
社長自身システム関係の技術者で、クラウドシステムの根幹であるサーバーを、ネット犯罪から防御したり、顧客データの保護に力を入れていた。
営業部長には稲垣吾郎が就任し、部下達に檄(げき)を飛ばし、システムを売る事より顧客の信頼獲得に力を注いでいた。
彼の方針は「顧客の満足するユーザーインターフェースを、客毎に提供する」だった。
お客様からすれば、オリジナルシステムを使っているのと同じなので、自分の会社の仕事をすぐシステム化出来、大変事務効率が上がる。
このシステムは、当時まだ営業係長だった稲垣吾郎が開発部の西田一雄と相談し、社長の肝いりで今回のシステムの基礎を作った。
しかしワープロなど端末のソフトではない為、決して安価なシステムではない。
システムの魅力を理解し、導入しようと企業が真剣に取り組まなければ、いくら優れたソフトでも、宝の持ち腐れになってしまうのだ。古人曰く「猫に小判」に成ってしまう。
理解の早い客ならそんなに苦労はないが、頭が固くなっていて、なまじPCに詳しい客になると独自の考えに凝り固まり、なかなか半既製のシステムの理解は難しいのだ。
何度同じ説明をしても、次に訪れた時にはまた同じ要求をされる。その要求もスパイラルするのだから始末が悪い。要求する本人は、至極当たり前の要求だと悪気もない。
自分が言っている事が正当で、あたり前だと思い込んでいる。
俺たち営業マンは、「そんな理不尽な要求!」と思っても、顔で笑顔を作り客の話を理解する振りをして、何とか隙を見計らい話を元に戻す話術が武器になった。
だから営業には、少しいい加減で人の話を聞く人の方によくなじむ仕事だ、なまじまじめで実直な人間には向かない仕事だった。
ただこういった仕事でも、ライバルは居る物だ。同じ葛飾区新宿(にいじゆく)のある大西商事がノーブルのライバル会社だった。
特に森松が担当する(株)ラストケアーは、森松と大西商事の熾烈な営業合戦が行われていた。
大西商事の弱みは自分のところでは、ソフトは組まないで他人任せなところだ。
クラウドシステムも、NTTの代理店としてしか営業してない。だから客の要求に、すぐ応えられないらしかった。森松はその点、有利に話が出来た。
営業も「ただ買って下さい」ばかりでは、客は食いつかない。「このシステムを導入すると、御社の業務効率が改善され、コストダウンや納品ミス、『言った言わない』などのトラブルが無くなります」と具体的にお客さんの立場に立ち提案する。それが客に興味を持たせる、絶好の武器だった。
でも俺は一旦仕事を離れると、家ではペットのマル子が待っている。
この犬は保健所に行き無料で貰ってきた犬で、俺が貰ってこなければ殺処分されていたところだった。
だからマル子もそれで俺に感謝して居るのか、俺が帰ると大喜びして、俺に絡みついてくる。
ペットがいると、客先でイヤなことがあったりしても、マル子のお陰で心が癒やされる。
ただ犬もやはり動物だ。病気にかかる時もあれば、ストレスで体調を崩す時もある。そんな時は散歩をして、気晴らしをして上げるのが一番だったが、病状が悪くなると薬学部の後輩に相談して、人間用の薬をマル子に合わせ調合して貰う。
人間でも犬でも薬は同じだが、分量加減が全然違う。だから薬もただ与えれば良いという物で無く、注意深く様子を見ながら与える。
最近公園で会う横井さんのポチとは、仲が良いんだか悪いにか解らないが、しばらく絡み合い遊んでいるが、話しが合わないのか、そのうちそっぽを向いてしまう。
でも人間同士は良い仲間だと思って居る。
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