23 / 35
物語23
しおりを挟むしばらくは後藤さんから電話は無かっが、後藤さんはちょくちょく店に食事に来る。
私とすれば器用な方でも無いし、仁志さんが居るので男性は間に合っている。
でもちょっぴり気にはなったのは(後藤さんの方が私の相性が合っているのか解らない。もしそうなら、あまり邪険にしてもまずくないか?それに仁志さんに振られたら、この先恋愛のチャンスは無いだろう)ついそう思った。
後藤さんは店に来る度に、調理場の私が見えるカウンタの席を選び、顔を合わせると笑顔で挨拶する。
どこかに誘ってくれるなら、「今お付き合いしている人が居るので」と言えるが、相手が店の客でただ笑顔だけ投げてくると、抵抗のしようが無い。
後藤さんの言いたいことは解っている。普段は何も意識しては居ないが、店に来る度に見つめられたのでは、心の中が騒ぐ。アルバイトの子達はおもしろがって
「チーフ、あのお客さんまた来てますよ。チーフに気があるんじゃ無いですか?」等人の気持ちも解らないで、面白そうに話をしている。
「くだらない事言ってないで、ちゃんと仕事しろ」と叱るが、人の噂に戸は立てられない。
(困ったなどうしよう)といつも頭が混乱してしまう。
そんなある日お店に、後藤さんから電話が掛かった。周りの目があり、あまり職場に電話されても困る。
アルバイトの娘などは、後藤さんが店に来る度、ひそひそと噂話に花を咲かせている。それが電話も加わり、おもしろ半分に騒いでいる。(くそー、その内苛めてやる)
「もしもし後藤です。横井さんですね?」
「そうですが!」私ははじめから(どうしようかな、いっその事『電話迷惑です』と言うか思い悩んでいた。でも仁志さんが、もし、あたしの事を振ったら)と考えたら、後藤さんからの関心は無視できなかった。
「今度あなたのお誕生日にプレゼントがあるんです。どこかで会って貰えますか?」(えー?プレゼント?どうしよう。仁志さんに言ったら、きっと嫌みな女だと思われる。仁志さんには黙って居なければ)と思い
「あのーあたしそんな物、貰う理由が無いので」
「でもお店の電話に電話したら、アルバイトの娘達が、うるさくないですか?君ともゆっくり話しもしたいし、携帯電話プレゼントしますよ」
「あたし普段仕事で忙しいので携帯電話使いません」と言って断った。
でも相手は営業マン、それからなんだかんだと、「君ともっと話をしたい」とか「周りいのアルバイトに聞かれたら、君が困る」と長々と口説かれた。
「さくらさんの声は、聞いていて心地良い、仕事の励みになる。もっとゆっくりとお話ししたい」
「えーでも今仕事途中なので困ります。また今度暇な時に電話して下さい」言ってから(しまった、罠にはまった。)と覚悟した。
「今度って?今日の夕方でも良いの?そうだ家の電話番号教えてよ。夜なら夕食を食べながらでも電話できるし、朝起きたらすぐ電話できるよ。とにかくもっと話をして互いに理解し合いたい。一日朝昼晩と電話しますよ。君が風呂に入っていても構わない。話が出来れば良い。却って風呂場の方が裸の付き合いが出来るからいいかも?」など冗談めかして話をしている。
お昼時を過ぎ、店は客がちらほらだったが、客はまだ居る。あまり長話も出来無い。
とうとう根負けし
「じゃ来週の土曜日の午後なら」と承知した。
「では土曜日の一時金町駅の改札で」と会う約束をした。
でも過去男性からこんなに口説かれた経験は無いので、とても慌てて正常な判断が出来無かった。ちょっとだけ会うだけと思って、承知しただけだった。
(でも後藤さんの忘れ物を預かっただけなのに、なんでこんなに口説くのかしら?)訳が解らなかったし、でも心が動揺している。(もし後藤さんが本当のあたしに取り、白馬の王子なら???)あまり邪険にしてもまずいはず。
でもすでに仁志さんと仲良くして居るので、とても困る。(神様の意地悪、今まで不倫相手しか付き合った事が無いのに、今度は二人一遍だなんて)すごく困った。
0
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
靴屋の娘と三人のお兄様
こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!?
※小説家になろうにも投稿しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
おばさんは、ひっそり暮らしたい
波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
置き去りにされた転生シンママはご落胤を秘かに育てるも、モトサヤはご容赦のほどを
青の雀
恋愛
シンママから玉の輿婚へ
学生時代から付き合っていた王太子のレオンハルト・バルセロナ殿下に、ある日突然、旅先で置き去りにされてしまう。
お忍び旅行で来ていたので、誰も二人の居場所を知らなく、両親のどちらかが亡くなった時にしか発動しないはずの「血の呪縛」魔法を使われた。
お腹には、殿下との子供を宿しているというのに、政略結婚をするため、バレンシア・セレナーデ公爵令嬢が邪魔になったという理由だけで、あっけなく捨てられてしまったのだ。
レオンハルトは当初、バレンシアを置き去りにする意図はなく、すぐに戻ってくるつもりでいた。
でも、王都に戻ったレオンハルトは、そのまま結婚式を挙げさせられることになる。
お相手は隣国の王女アレキサンドラ。
アレキサンドラとレオンハルトは、形式の上だけの夫婦となるが、レオンハルトには心の妻であるバレンシアがいるので、指1本アレキサンドラに触れることはない。
バレンシアガ置き去りにされて、2年が経った頃、白い結婚に不満をあらわにしたアレキサンドラは、ついに、バレンシアとその王子の存在に気付き、ご落胤である王子を手に入れようと画策するが、どれも失敗に終わってしまう。
バレンシアは、前世、京都の餅菓子屋の一人娘として、シンママをしながら子供を育てた経験があり、今世もパティシエとしての腕を生かし、パンに製菓を売り歩く行商になり、王子を育てていく。
せっかくなので、家庭でできる餅菓子レシピを載せることにしました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる