29 / 35
物語28営業の助け
しおりを挟む森松は、俺の助け船に感謝した。森松がちょっとした不始末で、(株)ラストケアー社長の機嫌を損ねたのだ。
訪問する時間が来ても、別の客先でもたついていたのだ。このままだと、ラストケアーを待たせてしまう。
森松はラストケアのプレゼンにミスした。他の会社のトラブル処理で出ていて、ラストケアーのプレゼンに間に合わなかったのだ。
プレゼンの予定問い合わせの電話を、(株)ラストケアーから掛かった時、たまたま受けた俺が出て急遽(きゆうきよ)対応し大事にはならなかった。
ただ俺はラストケアに対し、森松がどのような説明をしているのか、解らなかった。だから説明不足になり、後日直接ノーブルの体制などを、見て貰うことになったのだ。
「大変申し訳ありません。弊社担当の森松が、別のお客様のサポートで出ています。よろしかったら一度、御社社長様か、社長様のご予定が悪いようでしたら、どなたか役員の方に現物を見て頂ければ、百聞は一見石計とも言いますし、ご理解頂けるのでは無いかと思いますが?」
と言うことで数日後ラストケアーの美人役員をノーブルに招待し、システムの説明やフォロー体制・サーバの管理などを見学させた。
(株)ラストケアー美人役員浅田美智子(三七歳)はモデルにしてもおかしくない位の良いスタイルだし、芸能人の誰かに似ていそうな顔立ちだった。
しかし経済観念がしっかりしていて、ノーブルのシステム導入に慎重だった。
「サーバー本体は此処で全てのデータを管理しています。同じバックアップサーバーがロスに有り、東京大震災が来て、此処のサーバーが駄目になっても、ロスのサーバが瞬時に立ち上がり、お客様のシステムは二四時間安心してお使い頂けます。東京とロサンゼルスが同時に動作不可能になる可能性は、ほぼ無いと思いますが?如何でしょうか?」
「ふーん!この体制なら、一応安心ね。あーでもそれはあたしの感想で、会社役員には反対の人も居るから・・・」
「でも社長様はお仕事の問題で苦労されていると聞いていますが?」
「確かに言った言わないで、揉めては居ますが。なんと言っても商品が安いので、これだけ高価なシステムを導入するには、どうしても慎重になるわ」
「おしゃる通りです。物事を決めるのでも、石橋を渡るという事も言われていますが、慎重になりすぎて、石橋にダイナマイトを仕掛けて、壊れたからって言うのは行き過ぎです。」
「えーあなた面白いことを言うのね。森松さんとは印象がかなり違うわね」
「それは人間が違えば言い方も変わります。でも森松も決して御社の利益にならないことはお薦めして居ないはずです。ウチの営業は成績で評価するので無く、お客様からのクレームを、お客様の要望として、解決することにしています。ですから不満がある時には、ご遠慮なく言って下さい。その方が我々の勉強になります」
「あたしはあなた方の先生では無いわ、でも導入してもし不満があれば、遠慮無く言わせて貰うし、システムの作り直しもお願いするかも知れないわ」
「その点はまず仕様を検討する段階で、十分な打ち合わせを行わせて頂きます。その仕様で良ければ、仕様承諾書に印鑑を頂きます。でもまれに設計段階で解らなかったことが出る場合があります。その場合、システムを使い始めて一ヶ月以内にご連絡頂ければ、無償にてその不具合をお直しいたします。ただ使っていて、もっとこうして欲しいとか追加の仕様が出た場合、追加の部分については別見積もりになる場合がありますが、それもご遠慮なく担当の森松にご相談下さい」
「もし森松さんが煮え切らない場合、担当変えと言う事も出来るの?」
「お客様がお望みならそうしますが、でも森松は過去一度もそう言った事が有りません。先日も別の客さま先で、様々なことを説明していましたので、ご迷惑をおかけしました。誠に申し訳ありませんでした。」
俺はサーバ管理体制が、万全で有ることを丁寧に説明したし森松のミスについても謝った。
その成果が上がり、お客様は喜んでシステムの導入に踏み切った。その結果に森松も満足し、ラストケアに対し万全な、体制でサポートの当たった。
「おかげで助かった。お前には感謝するよ」勤めの帰り同僚達と飲み会で、森松は俺に礼を言った。
「いやお互い様だ、俺だっていつお前に助けて貰わなければならないかも知れない、お互い様だよ」
森松は俺と同じ高校を卒業後、慶応大学に入学し情報工学科を卒業した。
俺とは(株)ノーブルシステムの同期入社の仲間だ。
互いに気が合い、度々会社の帰りに飲んで帰る。
話は主に女の話、どうしたら持てるか?などであったが互いに楽しく話が合った。
俺とは良いライバルであり、親友だった。
最近では互いの女性関係についても、突っ込んだ話をするまでになっていたのだ。
ああ言う気の強いだけで、ブスな女はイヤだとか、どこぞの事務員は良い子だ、でもその娘にはすでに恋人が居るぞ、それを口説くのがやり甲斐がある、女を口説くのも山登りに似ている。等々話に花が咲いていた。
二人とも恋人は欲しかったのだ。
でも飲み会で話すのと、現実ではまったく違う。二人とも女を口説くには少し、職業が営業のくせに消極的だった。
0
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
靴屋の娘と三人のお兄様
こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!?
※小説家になろうにも投稿しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
おばさんは、ひっそり暮らしたい
波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
置き去りにされた転生シンママはご落胤を秘かに育てるも、モトサヤはご容赦のほどを
青の雀
恋愛
シンママから玉の輿婚へ
学生時代から付き合っていた王太子のレオンハルト・バルセロナ殿下に、ある日突然、旅先で置き去りにされてしまう。
お忍び旅行で来ていたので、誰も二人の居場所を知らなく、両親のどちらかが亡くなった時にしか発動しないはずの「血の呪縛」魔法を使われた。
お腹には、殿下との子供を宿しているというのに、政略結婚をするため、バレンシア・セレナーデ公爵令嬢が邪魔になったという理由だけで、あっけなく捨てられてしまったのだ。
レオンハルトは当初、バレンシアを置き去りにする意図はなく、すぐに戻ってくるつもりでいた。
でも、王都に戻ったレオンハルトは、そのまま結婚式を挙げさせられることになる。
お相手は隣国の王女アレキサンドラ。
アレキサンドラとレオンハルトは、形式の上だけの夫婦となるが、レオンハルトには心の妻であるバレンシアがいるので、指1本アレキサンドラに触れることはない。
バレンシアガ置き去りにされて、2年が経った頃、白い結婚に不満をあらわにしたアレキサンドラは、ついに、バレンシアとその王子の存在に気付き、ご落胤である王子を手に入れようと画策するが、どれも失敗に終わってしまう。
バレンシアは、前世、京都の餅菓子屋の一人娘として、シンママをしながら子供を育てた経験があり、今世もパティシエとしての腕を生かし、パンに製菓を売り歩く行商になり、王子を育てていく。
せっかくなので、家庭でできる餅菓子レシピを載せることにしました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる