転生して竜の親になりました~でも、スライムなんですけど?!~

桜月雪兎

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竜親、町興し編

六十八話、話し合い⑤

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 次はあの甥っ子リザードマンね、あの子の所為で救えるものも失う所だったわ。
 リザードマンの族長さんには悪いけど、ここで容赦したら示しがつかないわ。
 そう思ってリザードマンの族長さんの方を見ると彼は頷いて、部下の方を見るとすぐに部下の方がいつのまにか取り押さえていたあの甥っ子リザードマンを連れてきた。
 うん、こう言うのは少し予想してなかったわ。だって、その甥っ子リザードマンは後ろ手に縛られていたから。
 悔しそうね。
 仕方ないじゃない、あなたがやらかしたんだから。
「何でここにつき出されたか分かる?」
「…………」
「あら、だんまり?それとも本当にわかってないの?」
「黙れ!スライムごときが!」
「貴様!」
「ソーガ、いいの。族長さんたちも落ち着いて」
「しかし!」
「この愚か者が!」
「なぜ、なぜスライムごときに」
 周りの反応に困惑しているみたいね。この子は本当に無知なのね。私が哀れに思うほどに。
 でもね、無知だから許される話じゃないのよ。
 あなたがしたことはね。
「ただのスライムなら誰も何も言わないし、気にもしないし、それ以前に私はここにいないでしょうね。それでも私はここにいる」
「…………」
「特殊個体と言うのはそれだけ意味があるのよ」
「さよう。お前は最弱・・のスライムと言うが、スライムが最弱と言われるのは成長していないベビースライムだけだ」
「「「な?!」」」
 あら、そうなの?
 私の思いが分かるドラグーンはあきれてため息をついた。
 だって、知らないわよ!私を送った女神様もひきつった顔をしてたもの!
≪そうなのか?それはおかしいのう。スライムは成長すれば厄介なものなんだがなぁ≫
 そうなのね。
 私も含めて驚いていたのは全ての種族の若いものたちだったわ。良かった私とこの甥っ子リザードマンだけじゃなくて。
 あきれた年長者たちは説明してくれた。
 これは私にとってもありがたいわ。
「成長したスライムは意思を持たぬものも多いがまず物理攻撃が効きにくい。場合によってはまったく効かん」
「魔法もな。どの進化を遂げたかで分かれるが、効きにくい。通常進化のスライムでもな」
「唯一の弱点である核だけが倒す術だがそこを攻撃するのが難しいのだ」
「ましてや、ティア殿のような意志・思考を持つものは核となるものが無くなっているのだ。そうなると弱点となるものが分からん。敵対するより友好をとる方が懸命なんだ」
 話を聞いていた若者全員が驚いている。かく言う私もだが。
 そうなのね。
 確かに、私にも核なるものはない。思考する頭はあるけどね。
 それが核ではないのかと言われれば謎が残る。
 だって、人でいう脳みそにあたるが明確に存在しているのが見えないから、あるのかもしれないが場所はわからない。そういうことなのだ。
 とりあえず、私は知っていたふりをしてのりきろう。
 自分のことなのに分かってなかったわ。
 反省はいつでも出来るからとりあえず、この場を終わらせないと。そのために私は話を続けた。
「そう言うことよ。まぁ、私のことは良いの。今の問題はあなたがやったことよ」
「俺がしたことだと?」
「分かっていないのね、あなたは作戦を無視した上に相手と自分の力量の差を考えもせず飛び込んで死にに行こうとしていたの」
「っっ!」
「それだけじゃないわ。あなたがしたことで二度リザードマンの立場が悪くなったわ。最初の合同軍での話し合い、お互いが相手との距離をはかりながらどうするべきか考えていた時にあんな不遜な態度では見放されるか、囮に使われても仕方ないわ」
「!!」
 あれは完全に気づいていなかったわね。
 あの子の中では誇り高いリザードマンがへりくだる必要はないと思っていたのでしょうね。なめられてはいけないという思いもあったのかもしれないわね。
 でもね、こういう場合は逆効果なのよ。
 周りの年長組のリザードマンたちが頷いたり、甥っ子くんを睨みつけてるので理解したみたい。項垂れてしまったわ。
 でも、今更気づいても遅いのよ。
 それに君を裁く権利は総大将になってしまった私にあるのよ……そう、私が裁かないといけないのよね。面倒だわ。
《仕方なかろう》
 分かってるわよ。でもどうしたものかしら?
 ソーガが間に合ったから全て未遂で終わってるのよね。でも、命令違反は重罪だし~。こういう相手はしっかりと罰しないと同じことをやりかねないから困るわ。
 まぁ、妥当な所はこれかしら?
「そういうことで、裁きの結果を言わせてもらうわ」
「…………」
「一から出直しなさい。あなたは族長さんに子供がいないから後継は自分だと考えていたのでしょうけど、そういうのは抜きよ。族長さん」
「ああ」
「あなたたちのもとにいればまた彼は甘えるわ。修行と思って別のところに預けるのを勧めるわ」
「確かにそうですな」
「なら、うちで預かりましょう。見てて目に余りましたからな」
「そうですか?なら、頼みます。良いか、これはティア殿の恩情でこれで済んでいるのだ。そこをしっかりと心に刻み修行に励め!甘えなど許さん!」
「ああ、ティア殿の恩情なければこの場で切り捨てても良いほどだ。お前が侮った方の懐の広さを刻め!我らは一切お前を甘やかすことはない」
 うん、これで良いわ。
 これでこの子はやり直すでしょうね。ましてや行き先はオーガの里、甘えるなんてありえないでしょうね。
 でも、これで恩情なんだ。
《まぁ、未遂であろうと命令違反は死罪じゃからのう。命あるだけで恩情じゃわな》
  え?!なにそれ!怖っ!
 まぁ、彼には頑張ってもらいましょうか。
 ここからの巻き返しは難しいでしょうけどね。





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