転生して竜の親になりました~でも、スライムなんですけど?!~

桜月雪兎

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竜親、町興し編

七十話、ゴブリン迎え②

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***(コボルドside)***


 私たちコボルドは毒の臭いが立ち込めるゴブリンの村に向かっている。
 今回の大きな犠牲者たちだ。
 正直、争う前の私たちならそこまで彼らゴブリンたちのことを考えなかった。
 だが、ティア殿と出会い私たちコボルドだけではなく、オークやリザードマンにオーガたちまで変わった。
 ゴブリンたちや今回の争いの発端となったダークエルフたちのことも考えるようになった。

 確かにダークエルフたちの話を聞けば同情する。どこの種族でもそうだが子供は大切な宝だ。
 それを人質に取られたら私たちだって敵わないと考えながらもオーガにも刃を向けただろう。
 低位の魔物であるゴブリンなどは蹂躙されてしまうだろう。

 だが、ダークエルフたちはせめてもの抗いとしてゴブリンたちを逃がした。
 ならば助けよう。そう考えることは私たちには出来なかった。それをさも当然としたのがティア殿だ。

 あの優しさはすごいと思う。
 それに行き場を失くした者たちやダークエルフたちのことも受け入れたあの懐の広さ。
 実は多くの者たちが見ていた首謀者たちに対する厳しさと非情さ。
 
 そのすべてがあの人の魅力となった。
 そして、私たちはある考えが出た。
 それはいずれ大きな形となると私は考えている。

 だが、今は目の前のゴブリンたちだ。

 やっと着いたゴブリンの村の近くではうずくまるゴブリンたちがいた。
 ああ、怯えた目をしている。
 相手が私たちコボルドだと分かると少し怯えが収まった。
 そして、この村の長であろうゴブリンが前に出てきた。

「これはコボルド殿、何か用ですかな?」
「ああ、あなたはこの村の長で合っていますかな?」
「はい」
「では、頼みがある。どうか冷静に私たちの話を聞いてほしい」
「話ですか?」
「そうだ。とてもあなたたちにとって重要な話だ」
「わかりました」

 私はすべてを話した。
 ダークエルフたちの進軍は止まったこと、ダークエルフたちが進軍してきた理由、背景にいた人間のこと、その被害状況、そしてそれをおさめたティア殿のこと。

「そうですか」
「ああ、そして、ティア殿はあなたたちを受け入れようと考えている」
「しかし、ダークエルフと共にとは……もちろん、同情しますが」
「……そうだろうが、この地にいると毒で弱ってしまう。せっかく助かったのだ」
「…………」

 やはり、難しいか。
 誰もが下を向いている。
 当たり前だ、彼らも何となくダークエルフたちの進軍は違和感があったようだ。
 だが、それを許せるかと言えば難しいだろう。ましてや彼らは他の種族に補食される側だ。

 しばらく沈黙が続いた。
 どう説得すればと考えていると若いゴブリンが話に入ってきた。

「そのティアって方のもとに行けばどうなるのですか?」
「ティア殿は現在町を作られており、新たな生活の場所は確保できる。ましてやティア殿のもとにはすでにゴブリンたちがいるので安心できると思う。妖狼族もいるので守りは固いだろう」
「妖狼族が!?」

 まぁ、驚くよな。
 あの妖狼族がゴブリンと共に暮らし、守るのだから。
 私たちもこの目で見て驚いたぐらいなんだから。

「ああ。それは私が確認しているので確かだ。それに今回のことであなたたち同様行き場を失くしたオークやオーガたちも共に住むことになる」
「オークやオーガも……なるほど、とても懐の広い方なんですね」
「そうだな。ティア殿はダークエルフの件はすべて自分が責任を持つと言われた。もし、彼らが約束をたがえるならティア殿がその事に対して対処してくれる」
「なんと……」

 なんだが話が好転しそうだ。
 今回の被害者全員に言えることだが次に住む場所をみつけるのは難しい。
 勢力図が変わるのだ、低位の魔物など捕食されかねない。
 そんな中で住む場所が決まっており、上位の保護を受けれるのはかなり好条件だろう。気掛かりになるであろうダークエルフたちのことも責任者がいるのだ。
 さて、ゴブリンたちはどう出るかな?



***(ゴブリンside)***


 コボルド殿がやって来た。
 話は今回のダークエルフたちの件だった。
 すべて解決したとのことで首謀者は人間たちらしい。
 だけど、私たちの暮らしていたこの土地は毒で汚染され、もう暮らせなくなっている。
 この毒も人間たちの仕業らしい。
 どうもダークエルフたちも知らなかったどころか、彼らの土地も同じらしい。
 これもコボルド殿たちが見てきたとのことだ。

 彼らは私たちに新たな土地での生活を勧めてきた。
 そこにはダークエルフたちもいる。
 どうするべきか考えていると一人のゴブリンが行った場合のことを尋ねた。

 それはかなりの好条件だったし、同じ被害者である面々もいた。
 私たちより強い種族たちだ何かあれば自ら守ることも出来る。そう思っていたら、新たな土地の主がダークエルフたちのことを責任持つと明言している。
 つまり、私たちでもその主に言えばダークエルフたちより泣き寝入りすることはない。

 しかし、新たな土地の主がスライムと言うが気になるが。
 コボルド殿が言うには『特殊個体のスライム』で名持ちとのことだ。
 その名を『ティア』殿というらしい。

 私がどうするべきか考えているとさっきコボルド殿に質問していたゴブリンが意見してきた。

「村長」
「どうした?」
「俺はダークエルフとも共に生きても良いと思う」
「な?!」
「何をいっているんだ!」
「そうだぞ!」
「こんな風にしたのは…」
「人間ですよね」
「「「?!」」」

 周りの驚きと戸惑いはすごい。
 だが、そのゴブリンは凛としている。

「なぜ、そう思う?」
「ダークエルフたちも被害者ですし、何より」
「何より?」
「彼らが本気だったら私たちはここに生きていないはずです」
「!」

 そのゴブリンに言われて私たちは気づいた。
 そう、私たちゴブリンは低位の魔物である。
 そんな私たちがこんなに多く生き残れたのは相手であるダークエルフたちが生かそうとしてくれたからだ。
 村が壊されたぐらいなら再建はできていた。
 そう、土地が毒で汚染されていなければ。

「すべてが被害者でこんな好条件なら行くべきだと思う」
「…………」
「村長」
「村長」

 村のゴブリンたちが私の判断を待っている。
 確かにあのゴブリンの言うとおりだ。
 うむ、行ってみよう。
 何より私たちと同じゴブリンがすでにティア殿のもとに居るということだしな。

「コボルド殿、私たちはそのティア殿の世話になろうと思います」
「ああ、それが良い判断だ」
「では、お取り次ぎを」
「いや、すぐに迎えが来る。荷車になるがそれに乗り込んでくれ」
「わかりました」

 こうして、私たちは新たな土地で生きることになった。


  
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